2020/08/21 のログ
ご案内:「学生通り」に小金井 陽さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に神代理央さんが現れました。
小金井 陽 > ―――学生通りの端、小さな洋菓子店『ラ・ソレイユ』。

今日は今日とて、小さい店舗ながらに繁盛し、日に日に常連客を増やしている次第である。

「んんー…
…よっしゃ、今日も一段落した、なぁ…!」

夕暮れに入ってから、ぐぃーん、っとバックヤードで大きく伸びをして一段落。
先刻まで中席もテラス席も、お喋りと甘味に舌鼓を打つ女性客中心に満席だったが、そのお客さんたちもようやく帰路につき始めたところだ。

神代理央 >  
そんな洋菓子店に、そっと入り込む小さな人影。
ドアを少しだけ開いて、ひょこ、と揺れる金髪。
店内を見渡した紅い瞳は、ピークの時間帯が過ぎ去った事を確認すると、そろそろと店内へ足を踏み入れる。

まるで泥棒にでも入った様な有様だが――己は、この店の関係者。
というか、スポンサー。
では何故、こんなコソコソしているのか。理由は簡単。

最近仕事続きで中々訪れる事の出来なかったこの店の心配半分、色々な気まずさが半分。
恋人の担当医を兼ねている保険医が、御茶菓子に使っていたくらいだから繁盛はしているのだろう、と思っていた。
その予想は、店からきゃいきゃいと騒ぎながら出て来た女性客の群れに確信へと変わる。先ずは一安心。

「……相変わらず此処は、近くにいるだけで誘蛾灯かの如く甘くて良い匂いがする…。…最近、甘いもの食べれてないしなあ…」

店が繁盛している事に満足そうに頷きながらも。
久し振りに訪れた店内で、ちょっとぎこちなく周囲を見渡しているだろうか。

小金井 陽 > 「んんーっ……さって、もうひと頑張りすっか…ぁんんんん?」

もう一度伸びをして、バックヤードから店内へ…入口で、まるでコソドロのように落ち着かない様子の少年……かなり久しぶりに見かける、神代理央の姿を見つけて、バッチリ目が合う。
既に店内のママみ溢るる少女?や、理央の動向で呆れ顔のメカクレ少女には気づかれているというのに、びくっとする少年へと、まんまる猫目を苦笑の形に細め。

「…なーにやってんだ、アイツは。ったく…つまんねーこと考えて二の足踏んでそうだが…


おうっ、理央っち!久し振りィっ!!」

まごついているオーナーへと、ぐいぐいっと距離を詰めてくるパティシエ。
ショーケースを見る視線が完全に「おかしたべたいこどもの」ソレだったのだから、陽的に引っ張り込まない理由が無い。

神代理央 >  
突然投げかけられた言葉に、あからさまに肩を跳ねさせる少年。
ビクッ、というか、ドキッ、というか。そんな感情がありありと見て取れるだろうか。

とはいえ、距離を詰めてくる彼に、まごつく事はない。
どのみち、バレない訳が無いのだ。ただ、久し振り過ぎてちょっと戸惑っていただけ――

「…ああ、久し振りだな。小金井。元気そうで何よりだ」

小さく笑みを浮かべて彼の言葉に応えつつ、先程擦れ違った女性達を思い出せば。

「店も大分繁盛しているみたいじゃないか。招かれた先で、此処の茶菓子を見かける事も出て来たよ」

と、穏やかな笑みと声色で彼に言葉を紡ぐ。

小金井 陽 > 一か月か、二か月ぶりくらいだろうか。店の経営を任されてから、本当に久しぶりに顔を合わせる友人に、翳りの無い笑みで破顔し、ぐいっと肩に腕を回す。

「おう、俺は元気だぜーっ!
理央っちは…なんか疲れてね?大丈夫か?甘味足りてっか?」
距離の近い友人の顔をしっかり観察する。こうしてみると、本当に猫か、それに類する動物の瞳のようだ。

「繁盛も繁盛、千客万来って感じでなっ。俺の腕前も順調に上がってっぜー。
お、お土産で買ってってくれた人のを理央っちが食べたんか?そういうのを聞くと嬉しくなるなぁ。」

理央の報告に、人懐こい笑みを深める。
…血煙とも、硝煙とも無縁の、平和な日常を感じられる空間だ。

「勿論、今日はたんまり食っていくんだろ?…とっておきのスイーツ作ってっからよ。」
こしょこしょと耳打ち。…周りの客に聞かれると厄介なのだろうか?

神代理央 >  
肩に腕を回されれば、その勢いにちょっと揺れながらも笑みを浮かべた儘で――

「見ればわかるさ。でも、そう言われると改めて安心するよ。
私か?私は…まあ、そうだな。最近、甘いものは中々取れていなかったかもしれない」

すぐ其処にある友人の顔に相好を崩しながらも、甘味が足りているかと問われれば少しだけ苦笑い。

「先程も、此処を出た女性陣とすれ違ったよ。
客も増え、お前の腕も上がり、それでまた客も増える。良い事だ。
ああ、ついこの間もな。どうして中々、茶菓子としての評判もいいみたいじゃないか」

或る意味で、己に取って非日常の様な空間。
穏やかで暖かくて、甘い香りのする時間。

「…ああ、そうだな。そのつもりだ。最近中々甘いものも食べていなかったからな。楽しみだよ」

耳打ちされればちょっと擽ったそうに身を捩りつつ。
クスクスと笑いながら、頷いて見せる。

小金井 陽 > 「ったーく、甘いものを取れてなかっただけじゃねーだろー?
…彼女、泣かせんなよー?『理央さん』?」

甘味が足りてないことだけが理由ではない。
それを理央の彼女たる沙羅から聞いているし、沙羅が相当頑張っていたからこそ、その苦笑いする額に、ごちんっと軽くヘッドバット。
ラ・ソレイユに入った時とはまた違った理由で、ドキっとするかもしれない。

「客が増えれば増えるだけ期待されっし、されるだけプレッシャーもあっけどな…でも、悪くねぇや。
俺一人じゃこんな大それたことやれなかったしよ。

他のメンツが聞いてるとこじゃなかなか言えないんだけどな。…これでも感謝してんだぜ?理央っち。」

にっかりと。
今まで言えなかった感謝の言葉を太陽のような笑みと共に、理央へと向けるパティシエ少年。

…理央が断行した突発的すぎる投資。
それがこの店の温もりと、先刻賑々しくスイーツの話題を交わしながら退店していった、お客の笑顔を生んでいる。

鉄火の支配者の行いは、決して破壊するだけでは、無いのだと。
目の前の笑みは、それを証明しているようで。

「へっへっへー、理央っちの表情をだらっしねーコトにしいてやっからなぁー。
おし、そんじゃこっちなっ!」

そういって、理央を空き席の一つに連れていく。
…奇しくも、以前沙羅が案内された席の一つである。

神代理央 >  
普段、己の事を『理央さん』等と呼ばない彼が、そう呼べば。
軽く額がぶつけられれば、痛みに少し涙目になりながらも、驚いた様な表情を浮かべてしまうだろうか。

「……アイツから何か聞いたのか。いや、そうだな。その通りだ。
何分、色々とあったものでな…」

きっと、恋人は彼にも何かしら相談したのだろう。
そこに思考が至れば、驚いた様な表情は苦笑いへと変わる。
――カフェテラスで寝入ってしまった恋人への差し入れも、買って帰ろうか、などと思案しつつ。

「…いや、それはお前自身の努力と頑張りによるものさ。
私は唯、お前の菓子をもっと多くの人に食べて貰いたいと思ったから、此の店を出したに過ぎない。言うなれば、私の我儘だ。
それに応えて、結果を出しているのはお前の力によるものさ。感謝の言葉は、寧ろ此方から投げかけるべきことだよ」

感謝している、と太陽の様に笑う彼に、穏やかに笑いながら首を振る。
己はただ切っ掛けを作ったに過ぎない。幾ら金を用意し、積み上げたところで。己には、この店の客達にあんな笑顔を与える事は出来ないだろう。
だから、感謝するのは此方の方なのだと、穏やかに、笑う。

「……むう、そんなにだらしない表情をしているつもりは無いんだがな。いや、鏡を見ながら食べている訳じゃないから、何とも言えないんだが…」

スイーツを頬張る自分は、そんなにだらしない顔をしているのかな、とちょっと考えてしまう程の無自覚。
しかし席に案内されれば、自然その表情がわくわく、と言う様に変わっている事に、本人は気付いていないだろう。

あずかり知らぬ儘、嘗て恋人が腰掛けていた席に促される儘に座りれば、先ずは小さく溜息を吐き出して肩の力を抜くのだろうか。

小金井 陽 > 「察しの通りってな。
…あとで土産も持ってってやんな。いい彼女持ってんだから、しっかり見てやらねーとさ?」

その思考を読んでいるかのように、肩ポムしながら提案する銀髪青年。
といっても、目の前のパティシエは『疲れには甘味』というスイーツバカな発想なのだろうが…

「いやいや、無意識の我儘で良い事してるってのはすげーことだと思うぜー?んじゃ、相互に感謝、ってことでオッケーだ。Win-Winの関係なら完璧じゃねっ?
理央っちは出資金返さなくていいっつってるけどよ、俺は借りっぱなしで居るつもりはねーからさ、のしつけて返してやるぜー?」

冗談めかして言ってはいるが、目の前のパティシエなら絶対にやり遂げるだろうと妙な予感を抱かせる言葉。
お互いに感謝してるのだからそこに落着させようと、にっかり笑う。

「あとで一枚写真でも撮ってみるか?自分でも驚くくらいの顔してると思うぜ…っと、今日はどうする?

お任せでいいんなら、パティシエのおススメで一式揃えるけどよ?」

席に背を預け、菓子を待つ姿勢だけでも程よく脱力した年相応の表情を見せたスイーツ大好き少年へ、によによと笑いながらそう提案し。
なお、前回沙羅が泣いたときもそうだが、この席は他の客から顔が見られにくい。よって、思う存分表情を崩したり舌鼓を打てるという寸法だ。

神代理央 >  
「…そうしよう。今、アイツは知り合いの所に身を寄せているらしいから、挨拶代わりの菓子にも丁度良いかもしれんな」

思考を読まれたかの様な彼の言葉には、浮かぶ苦笑いが深くなるばかり。
尤も『疲れには甘味』は少年も同じ。というわけで、彼の言葉にも至極当然だろうとばかりに頷くだろうか。

「Win-Win、か。そう言ってくれるなら…そうだな。素直に、お前の感謝は受け取っておくことにしよう。
しかし、のしをつけて返すとなると相当な金額になるぞ?精々頑張ってくれ、パティシエさん?」

開業資金の一切合切も、きっと彼ならやり遂げる。それは、己もまた抱いた予感。
だけど、それをその通りだと認めるのは少し照れくさいので。
悪戯っ子の様に揶揄う様な声色で首を傾げ、クスリと笑うのだろう。

「……いや、やめておこう。自覚するとこう、表情筋を鍛えなければならなさそうだ。
ん、そうだな。折角だから、おススメで一式揃えて貰おうか。久し振りに此処で食べるんだ。期待していても、構わないんだろう?」

写真など撮られれば羞恥心で死んでしまう…様な気がする。
いや、きっとそんなおもしろ――おかしな顔はしていない筈だ。していないだろう。していないといいな。
等と、思考を走らせつつ、彼の提案にこくりと頷いた。

他の客から顔が見られにくい。つまり、鉄火の支配者の尊厳は守られる。尊厳が守られる様な席に案内されたという事は、スイーツに舌鼓を打つ己の貌は――此れ以上は、考えない様にしておこう。