2020/09/05 のログ
ご案内:「学生通り」に修世 光奈さんが現れました。
修世 光奈 > てくてくと、授業終わりの学生通りを歩く光奈。
マナーは悪いし、怒られるかもしれないが。
端末のホロ画面を自分の前に出し…休憩時間などでは足りない、とある考え事をしている
鬱屈を吐き出すためか、止まってはおらず歩き回ってしまっていて

「んーーー…、いや、これは、うーん、違うなあ…」

ああでもない、こうでもない、と。
端末のメモ帳に何事か文章を書きこんでは消し、書き込んでは消し。

「はぁ。やっぱり、いろんな人を巻き込むしかないかなあ…忙しいだろうし、あんまりしたくないんだけどー…」

前方不注意のまま、一瞬目を閉じて、また開く。
ただ考え事に気を取られ、人にぶつかりそうになって謝る…というのを繰り返している

ご案内:「学生通り」に水無月 沙羅さんが現れました。
水無月 沙羅 >  
警邏ももう終わる、そんな時刻にフラフラと歩く少女を見かける。
端末をいじりながらあっちへふらふらこっちへふらふら…。
そのうち車の前にでも飛び出そうだな、と危機感を感じる。

仕方ないなと苦笑いしながら近寄って、進行方向の目の前に

「あぶないですよー?」

と注意を促そうとして、腰に手を当てながら前かがみにのぞき込もうと。
しかし、10cmも身長が違うとなると、目線に映りこむかどうか……。

修世 光奈 > 開く資料がどんどん増えていく。
思考の回しすぎに、脳が悲鳴をあげるのを緩和するために足もどんどんと進んでいき。
声をかけられた時に、もし相手が光奈よりも大きいか同程度ならばすぐに止まることもできただろう。
けれど、ぱ、と上げた視界に映らなければ…脚は動き続けてしまって。

「へ?、わ、っと…、っと!」

視線を前から下に降ろした瞬間、相手の姿を見つけて。
慌てて止まろうとするが、止まり切れず。
多少勢いは落ちたものの、目の前の相手にぶつかってしまうか。

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

ただ、相手がそれによってどうなったとしても、まず上がるのは慌てた謝罪の声であることは間違いない。

水無月 沙羅 > 「へぶぁっ。」

止まると思われた少女の歩みは止まらずに、その胸元に顔が埋まることになった。
地味に鼻が痛い。

「あたたたた……ダメですよ、ちゃんと前見て歩かないと。
 私が車だったらどうするんですか。
 考え事だか調べごとだかは分かりませんけど、歩きながらは良くないですよ。」

一歩距離を取って。
風紀の腕章を腕につけた、光奈より少し小さい少女は頬を膨らましながらそう訴えた。

「私は大丈夫ですよ。 心配なのは貴方の方です。」

まったもう、と肩を落として光奈を覗き込むのは紅い瞳だった。

修世 光奈 > ごめんなさい…ともう一度謝ってから光奈も一歩距離を取る。
それから、更にもう一度頭を下げて。
相手は自分よりも小さいが、この島では外見年齢がアテにならないことは既に体験済みだ。

「あ。風紀の腕章…じゃなくて、えっと、ちょっと考え事してて。
こう、長く座って考え事してると、動きたくなっちゃって」

更に申し訳なさそうに。
イメージとしては、相手よりも身体が大きいのに縮こまっていくような恐縮を見せる。

「あはは…あんまり風紀委員のお世話にはならないように意識していたつもりなんですけど、結局怒られてたらどうしようもないですね
注意してくれて、ありがとうございます」

紅い瞳を少し色素の薄い黒目で見てから、苦笑いを返す。

水無月 沙羅 > 「あー……、そこまで頭を下げなくてもいいですよ。
 怪我をしたわけでもないですし、謝ってほしい訳でもないです。
 ただ、あなたが怪我をしたら悲しむ人が居るでしょう?
 っていうだけの話ですから。」

妙に腰の低い人だな、と思う。
実際この島の警察機構として動いているのだからそういう対応にもなるのだろう。
それにしたって別に注意で済む範囲だから、そこまで縮こまらなくても、少しだけフォローした。

「風紀委員とか関係ないですよ。
 危ないからあぶないと注意しただけです。
 警察機構として注意してほしいなら、端末の没収とか、罰金とかになりかねませんけど?」

よそ見をしながら、端末をいじりながら歩くというのは存外に危ない物だのだ。
再発の可能性があるなら対処だって視野に入れることもある。
もちろん、事をそこまで大きくするつもりはみじんもなかったが。

「私、水無月沙羅といいます。 貴方のお名前は?」

とりあえず無駄な警戒を解くために自己紹介でもすることにしようかと、名前を名乗った。

修世 光奈 > 本来はここまで腰が低いわけではないが。
けれど、風紀委員に怒られることで彼に迷惑がかからないかな、という心配が光奈にそうさせていた。

「う。そ、それはちょっとー……、普通に注意、の方でお願いします…以後気を付けますから」

罰金は一応問題ないが…端末の没収は今、とても痛手だ。
色々調べものもあるし、そもそも毎日の依頼も続けているのだから。
しゅん、としたまま、警察機構以外の注意を望もう。

ただ、そのしゅんとした顔は、自己紹介を受けたところでぱ、と変わる。
知らない人…それも警察を見る目から、知っている人を見る目に。
会ったことは無いが、その名前は何度も読み返した資料で見ている名前だ。

「あ、沙羅、って…しいちゃんの娘、の?私、修世光奈。えっと、しいちゃんとちょっとした知り合いで…」

驚いたからか、敬語が抜けて呟く。
思わずしいちゃんという名前を出しながら自己紹介を変えそう。

水無月 沙羅 > 「では、普通の注意にしておきますね。」

やれやれと目を伏せる。

名乗ったとたんに表情を変える少女を一瞬怪訝に見るも、聞き知った名を聞いた気がする。
であればこちらも多少は対応が変わるわけで。

「しいちゃん……娘? あ。 ひょっとして、しぃ先輩あーっと。
 神樹椎苗の事です……よね?」

「しゅうせ こうな、初めて聞く名前ですけど。
 そうですか、しぃ先輩がお世話になっているようで。」

敬語が抜けていく少女にくすりと笑う。
この人も随分と彼女に影響を受けたのだろう。
其れも私の名前に、『娘』と呼ぶからにはそれなりに深い関係があるはずだ。
そうでなければ私の名前が出てくることはまずないだろうし、急に態度が軟化するとも考えにくかった。

修世 光奈 > 「あ、と。そうそう、神樹椎苗の事で合って…る!」

敬語に直そうとしたが、一度砕けてしまったので今更感もあり。
強引に言葉を修正しつつ、笑う。

「こーなとか、好きなように呼んでね。お世話…ってほどじゃなくて。
ただネコマニャンのパフェとかを食べに行ったりしただけで…後は…」

そこで少し、言葉が止まる
娘、と言っていたから近しい関係なのはわかる。だから、話しているかもしれない
けれど、逆に近しいからこそ話していないかもしれない。

「…探し物の依頼を受けてるだけ…かな。
実は、考えてたのも、しいちゃんのこと…そのーえーっと、しいちゃんの身体のことで?」

だから、少しぼかす。
あれだけぼーっとしていれば、何を考えていたのか聞かれることは避けられないだろうと判断して。
先に、考えていたことを話そう。
これで何か反応が変われば知っている、ということだし。
聞き返してくるなら知らない、ということ。その時は誤魔化しておこう…と思いつつ、返答を待つ。

水無月 沙羅 > 「あぁ、やっぱり。」

くすりとわらう。
隠し事が苦手な人なんだなという率直な感想と共に、この人は悪い人ではなさそうだという確信に至った。
少なくとも、『椎苗』が心許しているという事はおそらくはそういう事だ。

「こーな、さん。 わかりました、じゃぁそのように……うん?」

言葉が停まる、何かを考えているという様子。

「探し物……しぃ先輩の身体?」

特に何かを聞いているわけではないが、椎苗の体のことで、探し物、依頼。
椎苗と自分は同じ不死者だ。
不死者で居る以上、その体について何かを探しているともなればそれは限られる。
というか、おおよそ一つしかない。

「……死ねる方法、ですか。」

ついぞ、彼女はいつだって自分を生きて居ると評した事は無い。
それは彼女の宗教観における『死』が存在しないからだ。
それでも、彼女は自分の事は生きて居ると評するのだから、まったく矛盾していると思う。
それでも、死ぬ方法を知っているのとそうでないのとではやはり違うのだろうか。

少しだけ考え込むようにしてから。

「……しぃ先輩らしいですね。」

と肩を落した。

修世 光奈 > 光奈もまた…淡白そうに見えて優しい依頼主が、娘と呼ぶのだから…
目の前の彼女もまた、『いい人』なんだな、と思う。
本来なら、端末の没収やもっと強い注意もあっただろうに。
そして、考え事の内容を話せば。

「あ、あー……うん。そういうこと」

最初は考えているかのような雰囲気の相手だったが。
ぽつりと零した言葉に、やはり知っていたかあるいは推測できるような情報があったのか。
光奈にはわからないが、後者だとすると少し申し訳なく思う。

「らしい…のかな。まだそんなに会ってはないから、はっきりとはわからないけど…
それでちょっと、私一人だと辛いなーと思いながら、色々調べてて」

今更断るという選択肢は、光奈にはない。
だから、協力を仰ぐ前に色々調べて置こうとしていたのが先ほどの場面だ。

「…生きる為に死ぬ方法を探したいって言われてさ。
実感は出来なかったけど、すごく真剣だったから…ただ単に死にたいわけじゃないんだって思って、依頼を受けたんだ
変わってるけど、良い人だよね、しいちゃん」

事の顛末を簡単に言いながら。
少し悲しそうに笑う。
曲がりなりにも、人を殺す方法を捜していることに少し負い目を感じているから。

水無月 沙羅 > 「私と最初に会った時は、暇つぶしに自殺をする、そんな人だったんですよ。」

ここで話すことでもないなと、光奈の腕を取る。
もう警邏の時間もおわる。
本庁に帰る時間が少し遅れても問題はないだろう。

「場所移しませんか? どこか、カフェにでも。
 道端で話すようなことでもありませんから。」

流石に、この場所で語らう事でもないだろう。
あまり、聞いていて気分の良い物でもない。
人の生き死になど、普通に生きて居たらそう多く触れるモノでもないのだから。

「たぶん、光奈さんの言う通り、死ぬために調べているというよりは、死ねることを確かめたかった。
 それだけなんだと思います。
 私も、死ねるってわかったら安心したから。」

抵抗されることが無ければ、エスコートする様にそのまま歩き続けるだろう。
そして、暗に自分も彼女と同じであることを明かして。

「いい人ですよ。 私に、人として生きる事を教えてくれた。
 水無月沙羅として生きる事の意味を教えてくれた人ですから。」

自分を救った人の事を褒められるのは、純粋に嬉しかった。
だから、彼女のまえで誇らしげに笑って見せる。
悲しそうな顔を吹き飛ばすように、自分たちは十分に幸せだと示すように。

修世 光奈 > 「そんな風には…一応、見えなかったけど…あ、うん。ごめんね、つい…」

会った時は、確かに死にたいとは言われたけれど。
暇潰しのように死ぬ、とは思えなかった。
依頼を受けたのは…、生きる為にという言葉を信じたから。

ただ、ここで話すのは確かにまずい。
仕事が構わないなら、導かれるまま適当なカフェに入ろう。

「…死ねることで、安心かあ…。やっぱり、実感は出来ないかな…」

二人かけのテーブルに対面で座ればそうぽつりと呟いてから。
飲み物…光奈はアップルジュースを頼もう。

「なんていうか、言葉だけじゃなくて本当にお母さん、みたいな感じなんだ
後は…大人びてるけど、ネコマニャンを見るとちょっとはしゃいで見えるのも可愛いって思うんだけど、どう?」

相手の表情からは、何も暗い印象を受けない。
死ねない、死ぬ方法を捜している…そんな、暗い話題を感じさせない明るい笑み。
これは、気を遣った方が逆に失礼かなと思えるほどの雰囲気だ。

それに乗っかって、知っているであろう依頼主の可愛いところを挙げてみよう。
例のカフェを訪れた時に、とてもそう思ったから。

まずは頼んだ飲み物で喉を潤そう。

水無月 沙羅 > 店員に甘めのコーヒーと、おまけ付きのネコマニャンカフェを頼む。
カフェのアイスがネコマニャンに装飾されているコラボ商品で、何でもキーホルダーがついてくるらしい。
これは椎苗のお土産になるだろう。

「普通の人には、理解できないと思いますよ。
 理解されても困るというか、してしまう事の方がよくないと言うか。
 愛する人たちと、老いて死ぬ、共に死ぬ、それができないっていうのは、共に生きることができない。
 というのと同義だから……って言ったら、少しは分かりやすいかな。」

いつか別れてしまう悲しみが永遠と続くのだとしたらそれはとても恐ろしいことだ。
悲しみをいくつも背負わなくてはいけない、悲しみを背負うくらいなら関係性なんてないほうが良い。
最初の彼女は、そういう発想に生きて居たように思えた。

「あはは、言葉にするとちょっと恥ずかしいですけどね。
 いつの間にかそういうことになってて、何度となく助けてもらったりして。
 辛くて苦しくて、どうしようもなくなった時に拾ってもらって。
 今では居候してる……みたいな。
 どうしようもなく、優しい人なんですよ。」

届いたコーヒーを手に取って口に運んだ。
ほんの少し苦みのあるそれは、今の自分には心地よい。
もちろん、砂糖はそれなりの量を入れてある。

「あはは、そうですね。
 ネコマニャンのことになるとすーぐ眼の色を変えるあたりは、まだまだ子供だなーって思います。
 でも、私が子ども扱いすると怒るんですよあの人。」

本当の事なのに、っと少しだけ頬を膨らませて。
そのあとにアハハと笑う。

「夏が始まったばかりの頃は、そんな様子すらなくて。
 でも、今はすごく楽しそう。
 なにか、きっかけがあったんでしょうけど、
 私は何も聞いてないんです。
 聴く理由も、無いかなって。」

お互いに信頼しているから、というのもあるし。
それ以上踏み込む必要は、お互いにないと思っているから。
聴いてほしいと言えば、彼女は自分の事を聞いてくれるだろうし、教えてほしいと言えばきっと教えてくれるのだろうけれど。
そんなものを知らなくても、自分たちは十分につながっていられる。
そういう自信があった。

修世 光奈 > ここにもネコマニャンが!と少し驚き。
マイナーと言えど色々なところにいるものだ。

「…。そーだよね。…ちょっと想像してみたら、わかることだったなあ…」

相手のkと叔母に、少し考えてみる。
自分が好きな彼と、一緒に死ねない。
先に彼が死んでしまって、残される。
それは…嫌だな、と。彼のことを嫌いになってしまうことも万が一あり得るかもしれないが。
もし、この想いが続くのなら一緒に死にたいなと思ってしまう。

「それでごはんとか作ってたーって言ってたんだ、しいちゃん。…だよね。優しくて助けてくれるけど、ネコマニャンには弱いって言うか…
あーでも、それは…『娘』に子どもって言われたらちょっとアレじゃないのかな?」

すっかり楽しく…ここに居ない人のことで話が弾む。
けれど、想いは似ているのだろう。いい人で、優しくて、少し子供っぽい、という。
同じく、またアップルジュースを一口。
爽やかな果実の甘みが喉を潤していく。

「…そっか。じゃあ私が会ったタイミングはその楽しくなった何かがあった後」

ふーむ、と頭に入れておこう。それもまた何かのヒントになるかもしれないから。

「だったら、ええと…その。こういう聞き方もどうかと思うんだけど…」

一呼吸おいて、きっぱり聞いてみよう。
先程は、しいちゃんらしい、としか聞いていなかったから。

「しいちゃんが死ねる様に確認…というか、私の目的は死なせる方法を捜すことなんだけど…。
協力、とか…してくれ…ますか」

ちょっと緊張したからか、妙な言葉になってしまったが。
依頼主に近く、依頼主のことを知っている協力者ができるかもしれないことは非常に嬉しい。
だから、様子を伺いながら聞いてみよう。

水無月 沙羅 > 少し想像したらわかる事、その言葉には沈黙で答えた。
それは一つの価値観でしかないし、不死と言っても考え方は様々だ。
それがすべてというわけでもない。

「でも、なんで『娘』なのかなぁ。 
 いや、確かにお母さんって最初に言ったのは私だけども。」

ムムムと複雑な顔をしながら光奈にスプーンを一つ渡して、パフェを真ん中に寄せた。
何を言うわけでもなく、当然のように二人で分けようと。

「うん……?」

何か聞きにくいことなのかな、と少しだけ身構える。
たぶん、彼女の調べごとに関することだろう。

「協力……ね。」

パフェについているアイスを少し掬って口に放り込んだ。
はむっと咥えた瞬間に溶け出すアイスに、ひんやりと広がって行く甘いカシスの香りが口いっぱいに広がった。
頭がすっきりとする感覚に、少しだけ好感を覚える。

「それは、私には決められないかな。
 私は、協力してもいいと思ってる。
 でも、私が思っているのと、実際に行動に移すのはちょっとわけが違う。」

口に残る甘みをもう一度コーヒーでリセットしてから言葉をつづけた。

「だって、それはしぃ先輩の過去だったり、私には言わなかった何かを調べないといけないという事だから。
 私は今までそれを聞いてこなかったし、聴く必要もないと思ってる。
 彼女が『娘』として私を扱うのに、今以上の情報は、彼女は望まないかもしれない。
 わたしが、『娘』で居られなくなることだってあるかもしれない。」

人を知る、という事は、関係性の変化に直結することもある。
過去というものは、人の印象を大きく変えることもあるからだ。

「……もちろん、そんなつもりはないけれど。
 無断で彼女の事を調べたりはできない。
 彼女が、私に全て知られてもかまわない、っていうのなら。
 その時は手を貸してもいい……かな。」

「身近にいるからこそ、知られたくない事って、あるでしょう?」

少しだけ真剣な顔で、そう返した。
自分だけでは決められない。
彼女の意思に反することは出来ないと、はっきりと意思を示す。
 

修世 光奈 > どうして娘と呼ぶのか。
それもとても気になるから、また今度聞いてみようと言いつつ。
渡されたパフェは、ありがたくいただくことにした。

カロリーが気になりすぎるが、それを理由に断るのもちょっと…という複雑な思いだ。
ただ、この夜でも暑い中です、と喉を落ちていくアイスや口の中を幸せにしてくれるクリームはとても嬉しいのは間違いなく。
その感覚を味わいながらも、真剣に話を聞く。

「…ん。……ちょっと焦りすぎてた…かな。実は、まだ成果らしい成果が全然なくって。
期待されてる分、それが強くなりすぎてた……かも?…ありがと、沙羅ちゃん」

自己分析は得意な方ではないが。
案を出すばかりで前にはあまり進んでいないというのが光奈の認識だ。
だから、その焦りから…よく確認もせずに協力を申し出てしまった。

そのことに、相手のはっきりした言葉で気づけたから、まずはお礼を。

「確かに、私が依頼を受けた時も初対面だったから…逆に、しいちゃんも話せたのかな。
…わかんないけどさ」

自分がたまたま探し物が得意だと言ったから。
あんなことを言ったのかな、と思い返し。

「勿論、無理にじゃないから…本当にその、色々条件が揃ったら、協力してくれると嬉しいな
私も、焦らずじっくりとやっていくことにするよ。車に轢かれたくないしね」

学生通りでふらふらと歩いていたのも、その焦りが要因の1つでもあり。
ただ、その懊悩を話せたことで焦りも和らいだ。
怠けるつもりは無いが、焦ってもいい結果は付いてこないだろうと思い直す。

最後の言葉は僅かに笑いを混ぜて。

「それにしても、これおいしーねー。また来ようかな」

乙女の動力源である甘味を、再び楽しもう。

水無月 沙羅 > 少々焦っている様子の彼女に、少しだけ思い当たる節があった。
自分もそんな時があったなと過去を振り返る。
いや、むしろ今だってそう大差はない。

「たまにはこうやって休んで、ゆっくりしてみるのもいいですよ。
 考えてばっかりだと疲れてしまうし、結果ばかりを見ていると過程を見失ってしまうこともあるから。
 本当に大事な物、貴方にとって大事なものを優先して?
 それは、きっとしぃ先輩も同じことを言うと思うから。」

相手の為と思って走っていたはずが、逆に相手を傷つけてしまった、何て洒落にならない。
誰かの為に傷つくという事は、そういう事態も引き起こしえる。
少なくとも、目の前の少女にはそういう危険があるように思える。
後さき考えずに走ってしまう、どこがそんな雰囲気を感じて。

「でも、初対面だったから、何て理由ではないと思いますよ。」

また、コーヒーを一口。
自分と似た性格に見える少女に、自分が見たままの印象を伝えてみよう。
すくなくとも、高々探し物が得意なだけの少女に、そんな頼みごとをするとも思えない。

「貴方が、信頼できる人だと。
 そう思えたから、あの人は貴方に任せたんでしょう。
 少なくとも、自分の生死に、未来に関わる事を、まったく見も知らぬただ出会っただけの人に話そうなんて、思えませんよ。
 だから、それは貴方の勝ち取った、貴方だけの彼女からの想いなんでしょう。」

ちょっとだけ妬けますね、と小さく零して。

「うん。 私に出来る事で、私が良いよって言える時になったら。
 協力させてもらう。
 だから。」

「"お母さん"の事、よろしくお願いします。 こーなさん。」

私もあなたを信用すると、言葉の代わりに笑顔で示した。

「うんうん、また食べにこよう。
 こんどはしぃ先輩もつれて。」

彼女の周りが、ゆっくりと変化していることに喜びを感じながら。
目の前にある甘味を堪能した。
あぁ、こういう娯楽もたまには悪くない。

にやけそうになる顔に、頬づえをついておいしそうにパフェをぱくついた。

修世 光奈 > 感情のままに動くことはままある光奈。
だから、同い年くらいには思えない相手の言葉を考えれば、確かに…そうなってしまうかも、という思いはある

「……そういえば、恋人の事にも触れられたよーな。…ほんと、色々なところ見てるなあ…どっちも。
そう考えると、親子っていうのはとっても似合ってるかも。
……大事にするよ。依頼ってだけじゃなくて私も、しいちゃんの力になりたいし」

勝ち取った、なんて自覚はない。
けれど貰った気持ちは大事にしたい。
だから、しっかりと腰を据えてじっくり考えて、この依頼は達成しようと決める。
たまには焦ってしまうかもしれないが、その時はこの邂逅を思い出すことだろう。

「うん。任せて、沙羅ちゃん。今度は3人でこよーね」

お願いします、という言葉には目を見つめながら頷いて。
椎苗からだけではなく。沙羅からの想いもまた大事に受け取ろう。

後は、パフェが無くなって他愛ない話を繰り返し。
ゆったりと、その店を後にし、お互いの家路に着いていく―――

ご案内:「学生通り」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から修世 光奈さんが去りました。