2020/09/12 のログ
ご案内:「学生通り」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 猫です。
どこからどう見ても黒猫です。
昨日新しい仮宿が増えました。
そこで頂いた桃がうまかったから、ノリで色々許してしまった気がする。
お風呂に入ったりした気がするし、そんなことはなかった気もする。
でもまあ、桃が美味しかったのでよしとした。桃は全てを解決する。

「んっふっふっふ~っ、ん~ふふっ~……」

鼻歌交じりに学生通りを通る猫。
足取りも軽く、ご機嫌良さそうな様子でてってこてってこ道路の真ん中を歩いている。
進む方向を見るに、マンションやらの居住区域から出てきたところのようだ。

アーテル > 「はー……やっぱ桃はいつくってもうまいなあ。」

ちらと振り向くように視線を向けたのは、高層マンションの最上階あたり。
この辺のおうちってクソ高いのは知ってたし、ましてやその屋上のスペースなんて別格も別格。
そんなところに和風建築なんかおっ建てて、札束お風呂でもできちゃいそうな金持ちなんだなあとぼんやり思ったこともあった。

そこからあれよあれよと飼う飼わないだのの話になり。
流石に永住するのは身上的にアレだもんだから、ここにも通わせてもらうことで手を打った。
まあ、悪い子じゃなさそうだし。猫好きに悪い奴はいねえ。
週に何度か、それこそ織機と同じ感じでいいだろう。

「やー、また通う場所が増えちまったい。
 ニンゲンとの交流は多けりゃ多い方が良い。いやー善哉善哉っ。」

前を向いて、てってこてってこ。
また鼻息交じりにスキップがちな足取りで、道路を喋る猫が往く。

アーテル > そういえば公園であったあの時は、怪異がなんだのと言ってた気がする。
結局その怪異は見当たらなかったし、一体何の話だったのやら。今となっては分からない。

「……しっかし、公園に怪異ねぇ……
 あんまり看過できるもんじゃあねえなあ、俺に身近なニンゲンを襲う奴なら戦う理由になっちまえる。」

あの場に怪異が現れたら?
そりゃもう、自分だったら逃げるだろう。勝利条件は負傷しないことなのだから。
だが、親しいニンゲンが傍にいて、あまつさえ怪異を討伐しようとでもしたら?
そうなったら、自分も戦わなければならない。勝利条件がその時点で変わってしまうのだから。
怪異というやつがどういうシロモノか分からないが、もう少しあの辺りを調べる必要はあるだろうか。
…もし自分の手で何とか出来るなら、その時は……

黒い獣は、少し物思いに耽る様に脚を止める。
あまり自分の安寧を乱されたくないなあ、なんて、まるで縄張り意識のようなものを持ち始めてさえいた。

アーテル > 「………ん。」

ふと、空を見上げる。
どうやら雲行きがどんより沈んでいるようだ。気づけば湿った臭いもする。
これは間もなく一雨来るだろうか。

「やっべ……流石に濡れ猫になるのはカンベンなんだが……っ……!!」

辺りを見回す。
通り雨を凌げる場所はないだろうか?そんな矢先、一体型ガレージの高そうな家を見つけたものだから。
どうやら中が空のご様子、家主はお出かけ中だろうか。なれば今は無人に違いない…
渡りに船とそこに転がり込む。少し場所を借りるがどうか許していただきたい。
幸いこれから何か用事があるわけではない、じっくり待たせてもらうこととしよう。

「……くあぁ。
 こりゃ、いっぺん通り過ぎるのを待つしかねーかなー……」

ガレージの中に逃げ込んできた猫は、コンクリートでできた床にぺたんと身体を伏せって。
間もなく来るだろう雨に、まんじりともせず備えていた。

獣の勘は当たるというものか、やがて雨がざあっと降り始めた。
雨に濡れたくないがためにそこから出ることは適わず、止むまでそこで時間を潰すことにしたのだった。

アーテル > 「―――………ん。」

いつの間にか、僅か眠ってしまっていた。
気づけば既に雨は止み、夜空には星さえ除いている。
秋空らしい切り替わりようだ。

「……きれいさっぱりってわけかい。」

のそのそ、ガレージから出てくると空を眺める。
まるで雨なんて降った覚えなんかないと言わんばかりの快晴だ。
…ただ、地面はその痕跡をありありと残していたが。

「よし、そんならささっと帰るかね。
 今日の寝床はどこにしようか……」

そのまま黒猫は、学生通りを駆けていった―――

ご案内:「学生通り」からアーテルさんが去りました。