2020/11/01 のログ
■神代理央 >
「体力が資本、で合っているよ。難しい言葉を知っているものだな。
う…まあ、そうだな。君もきちんと運動して、いざという時にバテて仕舞わない様にすることだな」
体力と運動不足がデフォルトな己の事は棚に上げつつ。
にこにこと笑いながら頷いていた――のだが。
「……そうか、ではレディに相応しい扱いをしなければならないな?
先ずは、レディに対する態度で無かった事への詫びを。頭を撫でるなど、不躾な行為であるものな」
ほんの一瞬ではあるが、僅かに少女が見せた空気と雰囲気。
…もしかして、少女の姿は仮装ではなかったりとか。
仮装でないとしたら、外見年齢と実年齢が見合っていないのかとか。
色々と頭を過る。過ってしまう。
だが、まあ、此方も色々と手遅れ。散々子供扱いしてしまったし。
という訳で、取り敢えずそういう扱いは変えないものの――撫でていた手は、そっと離した。
柔らかでふわふわな赤毛から手を離すのは、ちょっと惜しい気もしたが。
「…う、うにゅうにゅ?何だか良く分からないが、うむ。
安心して学業に励むと良い。君の日常は、私が…いや、風紀委員が護ってみせるとも」
と、遠くに視線を向けた少女に釣られる様に視線を向けて。
直ぐに此方に向いた少女の問い掛けに、ああ、と思い至った様に唇を開いて。
「ああ、そう言えば名前も名乗っていなかったな。
私は、神代理央。風紀委員会の二年生だ。何か困った事があれば、何時でも風紀委員会を訪ねてくると良い。
…それと、もし良ければ、で構わないんだけど、君の名前も教えて貰っても構わない、かな?」
どうか実は年上だったり、実は上級生だったりとかしませんようになんて思いながら。
自分の名前を名乗った後、小さく首を傾げて見せるだろうか。
■鎗次飛車丸 > 「拙者 ものしりでござるからなー。
にんにん♪ 拙者 常世鉄道より俊敏に動けるでござるー」
常世鉄道より素早いでござるーと言いながらその場で小さく反復運動をシュッシュとし始める。
それだけだったので多分出だしは速いだろうけど子供なので距離では鉄道に負けるのは確定…。
「レディになれていないからいいのでござる。
でもレディとは何をするのでござろうかなー。わからないでござった」
あ。そもそもレディとは何ぞ、が抜けてた。
胸はないしすとーんな体つき、色気はないので悩殺できる何かもない。
ぼんきゅぼんな体つきならまだよかったけど、そうでないのでがくっと肩を落としたとか。
「気にしないでござるー、ぺーぺーの学生なので
荒事は苦手でござる、調理(おしごと)と掃除(始末)は得意でござるが。
二年生でござった―、風紀委員会の神代殿でござったかー。
拙者の名は 4年 鎗次飛車丸佐々羅でござる。だましてすまんー!!!」
実は上級生だったことに着地。見た目は若いのだけど上級生だった。
最後に土下座する勢いですまーんと深々と頭を下げて、
程なくして「またなーでござるー」とか言って別れたのは言うまでもない?
■神代理央 >
「鉄道より早く動けるのなら、是非風紀委員会に来て欲しいものだが。
風紀委員会は何時でも優秀な人材を募集しているでな」
良く言えば俊敏かつ機敏。とはいえ、本当に鉄道に勝てるのかどうかは――まあ、見てみないと分からないが。
とはいえ、優秀な人材であれば年齢種族関係無く引き入れたいのは事実。
なので、一応軽く、緩くではあるが勧誘の言葉を投げかけつつ。
「レディとは…そうさな。私も男だから良く分からないよ。
とはいえ、レディを目指そうとすることは大事だと思う。
素敵なレディになれる様、私も応援しているよ」
可愛らしい外見の少女は、きっと成長すれば多くの男を惑わせる女性になるだろう。
其処には強く確信を抱きながら、にこにこと笑みを浮かべて答える。
しかしその笑みは、少女の名前と学年を聞けば――
流石に、バツの悪そうな苦笑いになってしまう。
「……何となく予想はしていましたけど、先輩だったなんて。
此方こそ、色々と無礼な態度を取ってすみませんでした。
いきなり、子ども扱いしてしまって」
と、深々と頭を下げる少女には慌てた様に首を振って。
己の非を此方も頭を下げて謝罪するだろう。
「ええ、また。今度、お詫びにお茶でも御馳走させて下さいね。
あと、余り夜更かししたり街中を遅くまでうろついたらいけませんよー!」
何だかんだ、見た目は可憐な少女なのだから補導される可能性も無くも無い。
だから、立ち去っていく少女に言葉を投げかけながら見送るのだろう。
そうして、平和な一時を過ごした後。
交代の人員が訪れるまで、先程よりも少し朗らかな様子で生徒達に声をかける少年の姿があったのだとか。
ご案内:「学生通り」から鎗次飛車丸さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「学生通り」にレオさんが現れました。
ご案内:「学生通り」に御白 夕花さんが現れました。
■御白 夕花 >
──────10月31日。
なんだか街が賑やかだと思ったら、そうだ。今日は確か「ハロウィン」とかいう日らしい。
どこかの国の伝統行事で、いろんなお化けの格好をして"お菓子をくれなきゃイタズラするぞ"と言って回るとかなんとか。
こういうお祭り騒ぎはあんまり得意じゃないけれど、賑やかな雰囲気はけっこう好き。
だから、申し訳程度の仮装(白マント)をして学生通りにやって来た。
「いろんな格好の人がいるなぁ……」
あっちを見れば吸血鬼、そっちを見ればミイラ男。
私みたいに簡素なものから本格的なコスプレ衣装まで……もしかしたら『本物』も紛れてたりして。
そんな事を思いながら目的もなくぶらぶらと歩いている。
■レオ >
「あ……
トリックオアトリート。お菓子…どうですか?」
仮装をして歩く少女を見て、声をかける者が一人。
そっとお菓子……棒キャンディを少女に差し出した声の主もまた、振り返れば仮装しているのが分かるだろう。
比較的普段と変わらぬシャツ姿に、普段はつけないサスペンダー。
首元は緩くネクタイが巻かれており、ボタンは一個外してある。
頭につけられた獣耳。
腰からはモサモサと、剛毛気味の尻尾。
肘まで届く、獣毛の手袋は、指先に獣のような爪がつけられている。
昔一時期流行った、ドワーフウサギとハイイロオオカミのラブロマンスを描いた漫画をモチーフにした衣装。
今でもひっそりと人気があるようで、こうしてハロウィンの衣装のモチーフになる事もあるようだ。
勿論、少女がその漫画を知っているかは不明だが。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
柔らかい笑みを浮かべる彼は、いつぞや、血まみれという奇妙な状態で出会った青年だ。
今はそのような様子はない。いや、そもそもそんな状態がそう何度続いていたらそれこそ不自然なのだが。
■御白 夕花 >
「……えっ、私ですか?」
不意にかけられた声に振り向くと、そこにはキャンディを持ったオオカミ男がいた。
わぁ、カワイイ……! でもこの衣装、どこかで見たような……?
と相手の格好を爪先から頭まで眺めたところで、それが会ったことのある人だと気付いて。
「あっ……あなたは確か───」
■御白 夕花 > 「夜の公園で服を脱ぎながらお金を渡してきた人!」
■レオ >
「それを大声で言わないでください」
真顔になった。
人通りも多いから通報されかねない。
風紀委員だけど。
■御白 夕花 >
「ご、ごめんなさい! あまりにもその部分だけ印象深くて……
確か……レオさん、でしたよね。風紀委員の」
人が多いぶん、騒がしさに紛れて注目は集めなかったみたいだ。
ぺこぺこ頭を下げながら記憶を思い起こしていく。
当たり前と言えば当たり前だけど、今はなんともなさそうで一安心だ。
■レオ >
「あはは…はい、御白さん。
風紀委員の仕事の一環で、パトロールがてら仮装してお菓子を配ってるんです。
よければ一つ、どうですか?」
少し苦笑して、改めて棒キャンティを差し出す。
実際最初の出会いは改めて思えば最悪だった。
よくもまぁ、今こうやって普通に話しをして逃げられないものだ。
怪我の手当なんて慣れない事をしてもらったのは、忘れようとも忘れられないだろう。
「御白さんは…これからハロウィン、漫喫ですか?
楽しんでいって下さいね、折角のお祭りですから。
あ、でも路地裏や危険な所には、うっかり連れていかれないように気を付けてくださいね…?」
風紀委員らしく、注意はちゃんとする。
こういうお祭りごとだからこそ、親しみやすくかつちゃんと仕事をしなければならない、らしい。
まぁ……僕のハロウィンはもう数日前に漫喫させてもらったから、今度は僕が他の人の代わりに仕事をする番だ。
■御白 夕花 >
「なるほど、これも風紀委員のお仕事なんですね。
ありが……あっ、トリックオアトリート! ですっ」
素直にキャンディを受け取りかけて、定型句を言ってないことに気付いて慌てて付け加えた。
あんまり浮かれるタイプじゃない気はしてたけど、お仕事の一環なら納得だ。
普段から危ない仕事ばっかりしてるのかと思ってたから、ちょっと安心した。
「雰囲気だけ味わいに来た、って感じです。
私ああいう……集まってワイワイするのって得意じゃなくて」
通りの一角でお菓子の詰まった入れ物を掲げて大騒ぎしてる人達をチラリと見つつ。
「友達と来てたらもうちょっと楽しめたかもしれないけど……
私の友達も、こういう場所は苦手な子で」
ナナちゃんの顔を思い浮かべて苦笑い。
もう一人、お祭り好きそうな友達もいるけれど、連絡先が分からなかった。
もしかしたら来てるかも。お菓子に釣られて怪しい人について行ったりしてないといいな。
■レオ >
「あはは、じゃあ…トリートの方で」
くすりと笑って、キャンディを手渡す。
可愛らしいオバケさんだ。こうしていると、前の事はすっかり忘れそうになる。
「そうですか…確かに、一人だと少し、楽しみ切れないかもしれませんもんね、こういうのって。
あ……じゃあ、僕と一緒に少し回ってみますか?
前のお礼もしたいですし、今日の仕事は街を回りながらみなさんにお菓子を配る事なので。
何か問題が起きなければ、比較的自由ですし」
折角のハロウィンだから、仕事さえしっかりすれば多少楽しんできてもいいよ、とは言われている。
仕事中に楽しむ……というのも少しイメージが湧かなかったけど、こういう事かな、なんて。
そう思いながら、目の前の恩人に提案してみたり。
■御白 夕花 >
「えへへ……お菓子、初ゲットです」
周りの人みたいに自分から声をかけに行くのができなくて、ここまで収穫ゼロ。
やっと手に入れた甘いものに思わず頬が緩む。
「えっ、いいんですか? ご一緒しちゃって……」
その申し出はありがたいけれど、大丈夫なのかな? と遠慮がちに。
出会い方はアレでも、知ってる人と回れるなら願ってもないことだ。
■レオ >
「構いませんよ。
折角会ったんですし、最近の事なんかも伺いたいと思っていましたし」
くすりと笑って、じゃあ行きましょうかと、歩幅を合わせる。
普段一緒に歩いている人がとても小さいので、人の歩幅に合わせるのは大分……慣れたものだった。
そうしながら、一緒に街を歩いてゆくだろう…
偶に来る子供にお菓子を配ったり、挨拶をしたら逆に、お菓子を貰ったり。
普段よりも、人と頻繁に交流を広げながら。
「前に会った時から、もう二か月くらい経つんですね……
あの時はすみませんでした、救急車まで呼んでもらっちゃって。
10月あたりは結構、こっちも忙しくって中々前のお礼を返しに行く時間が取れなかったもので。
御白さんは…変わりないようでなによりです」
この1,2か月、短い期間の筈なのに随分と濃厚な日々を送った気がする。
自分の身の回りは、がらりと変わって。
自分も随分、その頃よりも変わったのかな、なんて思った。
変わってない事も、当然あるが……
それでも。
■御白 夕花 >
「それじゃあ……えっと、よろしくお願いしますっ」
レオさんの後に続いて歩き出す。
優しいオオカミ男さんは私に歩幅を合わせてくれてるみたいだった。
なるべく負担にならないよう、気持ち早足になる。
声をかけてくる人たちに挨拶したり、お菓子を貰ったり。
一人の時は逃げ腰だった交流も、レオさんが一緒なら少しだけ頑張れた。
「もうそんなに……時間が経つのって、あっという間です。
いえ、気にしないでください。あのまま置いては帰れませんでしたし」
あの時は疲れもあってだいぶ眠そうにしていたレオさんも、今は元気そうだ。
数ヶ月前と比べて大きな事件も減ったからかな?
案外、素敵な出会いとかがあったりして。
「そうですね、私は……相変わらずです」
最近は《裏切りの黒》としての活動も特にしていない。
強いて言うなら魔術を覚えたくらいだけど、流石に言えるはずもなかった。
■レオ >
「慣れてますから、急がなくて大丈夫ですよ」
微笑みながらそう言う彼は、前よりも随分柔らかい印象を感じるかもしれない。
まぁ、ふにゃふにゃしていたという意味では前も柔らかかったが。
こう、何処か心に刺さった棘が、少しばかり抜けたような。
「そっか……何事もないなら、よかったです。
僕の方は、どうでしょうね。
いい事も、悪い事も起きて……前みたいに怪我する事もあったけど、今は少し余裕が出来てきた、って感じです。
仕事も慣れてきましたし、そうですね……助けてくださる人にも、恵まれたので」
仕事の慣れもだけど、やっぱり一番大きかったのは、人との出会いだなんて振り返りつつ。
好きな人が出来た。姉のように慕う人も、仕事で頼りにさせてもらう先輩も、できた。
不安な事も多くなったけど……
良かった事も、多かった気がする。
■御白 夕花 >
「……ふふっ、いい人達と巡り合えたんですね。
そういう顔してます、今のレオさん」
隣に並んで見上げた先の表情にそんな感想を漏らした。
あの夜の、余裕のない感じはだいぶ薄れているように見える。
「良かったら少し聞かせてくれませんか?
風紀委員でどんな風に過ごしてきたのか、気になっちゃいました」
風紀には知り合いもいるから、ひょっとしたら名前が挙がるかも……なんて期待も込めて。
■レオ >
「ええ、多分…いえ、確実に出会いには恵まれました。
風紀委員での、ですか…?
うーん……そんなに、面白い事もないかもしれませんが、それでもよければ」
少し苦笑する。
風紀委員の仕事、といっても…華やかなものなんてそんなにはないから。
何を話そうかな、なんて考えつつ。
■御白 夕花 >
「もちろん話せる範囲でいいですよ。
お仕事だけじゃなくて、日常的な事でもいいですから」
レオさんを取り巻く人達について聞きたいだけですから、と付け加えて。
ひょっとしたら、お菓子を貰う時よりワクワクしてるかもしれない。
■レオ >
「じゃあ、少し長くなっちゃうかもしれませんけど…」
前置きをしながら、話し始める。
それは2か月前後の間に起きた多くの出来事を振り返るように、長く……そして沢山の思い出話。
「そう、だなぁ。
何から話したらいいか……
風紀委員に来る前、僕は公安委員会の方に籍を置いていたんです。
島に来る前にお世話になっていた、僕の師匠の知り合いの方に拾ってもらって。
…といっても、3日たらずでクビになってしまったんですけどね。
今思えば……その頃は本当に、僕は人としてぎりぎり、死んでないだけみたいな状態だったんだと思います」
だから、公安の上司である”あの人”は、僕をクビにして風紀委員の方へと移動させたと…前に話していた。
それが本当なのか、それとも冗談なのかは分かりかねるけど。
実際…自分にとってそれが良い結果に繋がってる。
「そのあと、風紀委員の方に行く事になって……
最初に会ったのは、月夜見真琴っていう…とても綺麗な先輩でした。
…ちょうど御白さんみたいに、綺麗な白い髪の毛が特徴的な方ですよ」
すこしだけ、相手の少女を見てくすりと笑って。
なんだか…白い髪の女性に縁があるな、なんてふと思った。
■御白 夕花 >
まだまだ喧騒の止まない通りを並んで歩きながら話を聞く。
みんな思い思いにハロウィンパーティーを楽しんでいて、話しかけられることも減ってきた。
「そうなんですか、前は公安に……って3日で!?」
あまりの早さにビックリしちゃったけど、理由を聞いて少し納得した。
きっと上司だっていう人がレオさんの状態を見兼ねたんだろう。
そのまま置いていたら何をしでかすか分からないから、って。
「月夜見……知らない人です。私と同じ、白い髪……」
自分の髪はあまり好きじゃない。
だけど、同じ髪色の人がいるというのはちょっと気になる話だ。
■レオ >
「…よく驚かれます」
実際、速すぎるのは事実だし、突っ込まれ慣れているから苦笑しかできない。
もう二か月前の事、その話をする人もそろそろ、少なくなったけれど。
「ええ、白い髪がとても綺麗な先輩ですよ。
…その先輩に、会う前から目をかけてもらっていたようで。
最前線…と、言えばいいんでしょうか。
まぁ…荒っぽくて危険な仕事が多い所ですね。
そこに推薦されてしまって。
訓練でも…神代理央先輩という方との模擬戦で、それを後押しされる形になって。
神代先輩は…風紀委員でも有名な方だったので、色々と有名にもなってしまって。
……なによりその後、神代先輩含めて、風紀委員で名のしれてる先輩方が何人か、怪我等で入院してしまったりもしたので。
御白さんも、知ってるかもしれませんね。
そのあたりは噂にもなりましたし」
風紀委員の中でも実力の高い神代理央や、山本英治。
そして教員の羽月柊の3人がヴラオと名乗るディープブルーの構成員であろう男と戦い、一人は生死の境を彷徨い、一人は精神的に今も全快とは言い難い状態にまで陥った。
その戦闘は、少なからず常世島の治安に波紋を生んでいて……丁度、巡り合わせたかのようにほぼ同タイミングにレオは、この島に…風紀委員に、やってきた。
「……丁度良く新入りで、戦闘力がそれなりにあって、なおかつ手が空いてるって状態だったので。
穴埋めみたいな感じで……落第街とか、そういった所で過剰に悪さをしてる所を止めたり、ですね。
そんな仕事を、やる事になりました。
正直平穏に、何事もなく過ごしたかったので……前線に推薦された時はとても困ってましたね」
少しだけ、苦笑をした。
ああ、そうだ……
今でこそ剣を振る事を受け入れているけど、あの頃は……出来れば、そんな事がなく、平穏に……
何もない日々を、欲しがっていたんだっけ。
何もない……喜ぶ事も、悲しむ事もない。
息を吸って、心臓を動かすだけの日々を。
■御白 夕花 >
「最前線……それはまた大変な……」
風紀の最前線と言えば鉄火場だ。
もちろん毎日のように戦ってるわけじゃないだろうけど、どうしたって危険は付きまとう。
あんなに大怪我をしていた理由が分かった気がした。
「あー、えっと……確かに噂では聞いた事がありますね」
───ディープブルー。私達も警戒を強めている違反部活。
裏のツテでいくつか情報は掴んでるけれど、一般生徒が知らないような事を知ってるなんて言うのはまずいよね。
適当にはぐらかしながら話の続きを促す。
「力があるからって戦いたいわけじゃ、ないですよね……」
望まない戦いを強いられることの辛さは分かってるつもりだ。
ほんの少しだけ、レオさんの境遇に同情してしまう。
■レオ >
「……戦いたくない、というのも少し違うんですけれどね」
少し、苦笑してそう答えた。
戦いたくないなら……断ればいいのだから。
そこまで縛られる立場でも、自分はないから。
でもそれでもそれを断らなかったのは、ただ……その意志も出したくは、なかっただけで。
「ずっと戦ってきて、少し疲れちゃってたんだと思います。
ちょっと、珍しい力があって……僕にしかできないような事が少しあって。
それをやらなくちゃって思ってて…ずっと続けてたんですけど。
……色々ありまして」
言葉を、濁した。
簡単には話せないような何かが、あった。
それは今でも自分の心臓を締め付けていて……簡単には手放してはくれなくて。
「でも、ディープブルーの事件があったときに……一人の先輩に会いまして。
水無月沙羅先輩って言う…同年代なんですけどね。
先に風紀委員で仕事をしていたので、僕は先輩と呼んでいます。
その人が、まぁ……その事件で大分、苦しんでいて。
その姿がとても――――」
とても――――――いろんなものに重なって見えて。
そう言いかけて、やめた。
「……まぁ、頑張らないとなって思ったんです。
それで、少し危険な仕事とかもしてて……
丁度そのあたりですね、御白さんと会ったのが。
結構……仕事で目を回してた頃です」
苦笑しながら、思い出を振り返る。
本当に…余裕がない時期だった。
今も余裕が沢山ある訳ではないけれども。
それでもあの頃が、一番気を張っていた気がする。
■御白 夕花 >
「色々……」
その言葉に測り知れないものを感じて口をつぐむ。
きっと、軽はずみに聞いちゃいけないことだ。
「沙羅さんなら知ってます。私、お友達ですから」
そうでなくても有名人だけど。
ディープブルーの一件は沙羅さんにとっても大きな事件になったはず。
やっぱり……辛い思い、してたんだ。
「なるほど、それで……やっぱりレオさんって優しい人ですね」
無理をしすぎてしまうのは、あまり良くないことだけれど。
誰かのためにそこまでできるのは、いいことだと思う。
■レオ >
「沙羅先輩の?
そうだったんですか……
もしよかったら、会いにいってください。
実は少し落ち込んでいて……
友達と会ったりして、安心してもらいたいな、って思ってたので」
友達、と聞けば少し驚いた顔をして、そのあとすぐに微笑んで、そう言う。
出会った頃から沙羅先輩も、色々な事がありすぎた。
僕は最近出会ったばかりの存在だから……あまり、踏み込んでしまうのもよくないのかもと思ってしまうけど。
御白さんなら、何かいい切欠になるかもしれない。
「……そんな事はないですよ。
抱え込みがち、とはよく言われますけどね。
思う所があって、放っておけないってだけで……」
それは個人的な事で、優しさとは…何か違うような気がして。
優しいという言葉を、上手く受け止められない。
「でも、それからかな。
そのあたりで、色んな人に出会いました。
風紀委員の先輩だったり、この島の色んな人だったり……
その度に色んな事を言ってもらえて、少しずつ…何かが変わってきた気がします。
僕を見かねて、怒ってくれる人も。
自分と似たようなものを持ってる…抱えている人も。
先輩、として…導いてくれようとする人も。
…好きな人が、出来たりもしました」
少しだけ恥ずかしそうにはにかんで言うその姿は、年相応で。
”変わった”という言葉の意味が…なんとなくそこにあると、示しているようだった。
■御白 夕花 >
「はい、そうしてみます。私もちょっと気になってましたから」
お互いの立場上、あまり気軽に会えないと思ってたけれど。
流石にちょっと心配だ。レオさんの言う通り、会いに行ってみよう。
「誰かの分も抱えられるのは、私は優しさだと思いますよ。
余裕がない時ほど人ってどんどん自分勝手になってくものですから」
ちょっとの自虐も込めて、苦笑交じりに微笑みかけた。
「好きな人……わぁ、良いですねっ。
もしかして沙羅さんだったりしますか? それとも、さっきの月夜見さん?」
これまでの登場人物からあれこれ憶測を立ててみる。
それ以降に出会った人の可能性だって十分あるわけだけど。
レオさんがここまでになったのは、きっとその人のおかげだ。
■レオ >
「どっちも…外れです。
まだ名前を出してない人ですよ」
くすりと笑って、そう返す。
やっぱり女の子は、そういう話題が好きなのかな。
光奈さんと話してる時をちょっぴり思い出した。
「……御白さんと会った少し後かな。
子猫を保護したんです。
親猫が、車に轢かれてしまって……それで、手当したんですけれど、助からなくて。
でも、お腹の中にいた赤ん坊が、一匹だけ。
一匹だけ、まだ生きていて。
その子猫を一緒に取り出して、動物病院まで連れていって…
今、一緒にお世話している人が居まして。
その人が、今好きな人…ですね」
子猫、みますか?なんてデバイスを取り出して。
見るのであれば、そこにはまだ生後1か月ほどの、真っ白な毛並みの可愛らしい子猫の写真が写っているだろう。
マシュマロ、という名前らしい。
■御白 夕花 >
「違う人っ……レオさんも意外と隅に置けませんね……!」
私だって女の子だもん。こういう話には年相応に敏感なんです。
職業柄もあるかもしれないけど、レオさんの周り女の人が多いような気がする。
「子猫……そうなんですか、親が……あっ、可愛い!」
痛ましい出来事を想像して一瞬しゅんとしつつ。
写真を見せられれば夢中になってしまう。
マシュマロ……美味しそう、じゃなくてかわいい名前だ。
■レオ >
「隅に置けな…? え、そ、そうですかね…?」
確かに、言われてみれば女性の先輩が多い気がする。
名前は出していないが、レイチェル先輩や、園刃先輩、日下先輩に、美奈穂先輩……
逆に男性の先輩は、追影先輩と、燈上先輩くらい。
…確かに比率、女性が多いなぁ。
「今は、仕事の間は寮長に預けていて…帰ったらその人とお世話して、みたいな感じです。
その人も凄く面倒を見てくれて…僕が仕事で居ない時でも、相手してくれて。
まぁ、そういう切欠で色々と関わる機会が多くて。
色々知ったり、自分の事を話したりしていくうちに…ですね」
マシュマロというらしい子猫の写真には、時折女性のものであろう後ろ姿や、手などが映っている。
ちいさい手と、ピンク色の髪の毛が特徴的なそれは、全容迄は掴めないが……
随分と写真の中に映る頻度は多い。
きっと、それだけよく来るのだろう。
■御白 夕花 >
「ふむふむ……あっ、この写真に映ってる人ですかね?」
気のせいかな。周りの家具とかと比べると……
ここに映ってる人、かなり小さい気がする。希ちゃんとかナナちゃんといい勝負だ。
きっと遠近感……そう、角度とかの関係でそう見えるだけだよね。
愛くるしい子猫の姿を見ながら、そっと半歩だけ距離を取る。
■レオ >
「ええ、そうで……どうかしましたか?」
どうしたんだろう?と思いつつ半歩下がった少女を見る。
実際、名前を出していないのは詳細を話すと確実に変な顔をされるからではあるのだが。
「……色々、考えさせられる切欠を与えてもらって。
自分が今生きてる理由を、最近はずっと考えてます。
さっきも話した、”僕にしかできない事”も含めて……」
何故、この島に来たのか。
何故、今も生きているのか。
何故、生まれてきたのか。
それを考える切欠は、総て……
「…御白さんにも、いい出会いに恵まれるといいですね」
出会いから、だった。
■御白 夕花 >
「い、いえ。何でもないです。可愛い彼女さんですね!」
後姿しか見えてないけど。
少なくとも、私の知ってる人じゃなさそうだ。
「今を生きてる理由、自分にしかできない事……」
それは私にとっても大事なことで、私の原動力でもある。
こうなれたのも、全部はあの日から始まった。
「いい出会いなら、もうしてるかもしれません。
……あっ、レオさんみたいに好きな人ができたとかじゃないですけど」
思い当たる節があって、思わず頬がほころんだ。
■レオ >
「まだ付き合ってはいませんよ」
自分の認識では、と苦笑しつつ。
その後に続く言葉を聞いて、こんどはこっちから質問を返す事にした。
「へえ、それは…よかったな。
どんな出会いなんですか?
僕ばっかり話しちゃったから…是非聞かせてください」
にっこりと、笑って。
■御白 夕花 >
「あ、そうなんですね。片想いかぁ……」
それってますます怪しい───という言葉はぐっと飲み込んで。
取り繕おうとしたところに質問が返ってきた。
「えっと、なんて言ったらいいのかな……
ちょっと前まで私、自分を見失いかけてて。
このままじゃ色んな人に顔向けできないって気持ちでいっぱいになっちゃったことがあるんです。
そんな時、ある人からかけてもらった言葉が……迷ってる私の背中を押してくれて」
なるべく言葉を選んで、当時の事を思い出しながら話していく。
「その人たちに恥ずかしくないように生きようって、今は頑張ってるところです。
風紀のために戦うとか、そんな大層なものじゃないですけど……」
なんでもない日常を、他愛もない幸せを噛み締めること。
それが、遺された私にできる唯一のことだから。
■レオ >
「――――そっか」
何となく、分かった。
目の前の少女の言葉は、どこか……他人事じゃなくて。
きっとそこまでの経緯や仔細は、全然違うのだろうけれども。
だけど……別々の中に、共通点もあって。
「同じ、ですね」
―――似てるんだ、と。
この人と、僕は。
■御白 夕花 >
「同じ───そうかも、しれませんね」
それは不思議と嫌じゃなかった。
私も、レオさんにはどこか自分と似たものを感じていたからかもしれない。
「……まぁ、だから。今日もハロウィン、楽しめて良かったです」
気が付いたら集まっていた両手いっぱいのお菓子を掲げながら笑う。
■レオ >
「…僕もその”いい出会い”の一つに、なれてますかね?」
ちょっとだけ、気になった。
僕はこの島の色んな人との出会いで変わってきていて、そしてこの少女もまた、人との出会いに背中を押された。
なら……
僕は、どうなのだろう。
出会った人にとって……僕は何か与えれているのだろうか。
自分と似ている彼女に、訪ねてみたかった。
■御白 夕花 >
「どうでしょう……初対面がアレでしたし」
ある意味すごく劇的でしたけど、なんて冗談っぽく言って。
「でも、おかげで今こうしてハロウィンを満喫できてるんです。
レオさんと知り合えてよかった、って思ってますよ」
嘘偽りのない気持ちで、そう微笑みかけた。
■レオ >
「あはは…」
全くもってその通りだ、と苦笑して。
でもその後の言葉は…素直に嬉しくて。
「じゃあ…ちょっと良かった、かな。
御白さん。
……これからも、よろしくおねがいしますね」
その微笑みに、こっちも嘘偽らざる微笑みで返した。
この人も……大事な出会いの一人だったから。
命の恩人で……そしてその恩を、すこしでも返したいから。
それが出来れば、いいなって。
■御白 夕花 >
人の縁は、星座のようなものだと思う。
ひとつひとつは小さな輝きでも、ふたつみっつと線で結べば大きな形になる。
まったく意味のない出会いなんてないんだ。
「───はいっ、よろしくお願いします! レオさんっ」
だから、ひとつひとつの出会いを大事にしていきたい。
いつか夜空に綺麗な星座を描けるように。
ご案内:「学生通り」からレオさんが去りました。
ご案内:「学生通り」から御白 夕花さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に綿津見くらげさんが現れました。
■綿津見くらげ > 人もまばらな夜の学生通り、
街灯に照らされた異質な人影が。
暗い眼に、血色の悪そうな肌。
その素肌の上から全身を包帯でぐるぐる巻きにし、
身体の至る所から血を滴らせている少女。
……彼女の名は綿津見くらげ。
ハロウィンを1日間違えた、学園の生徒だ。
(……今日では……無かったか……。)
本日は11月1日。
寿司の日だったり、犬の日だったり、焼酎の日だったりするらしい。
ハロウィンは、昨日だったのだ。
場違いな恰好に突き刺さる通行人の奇異な視線を感じながら、
少女は茫然と立ち尽くすのであった。