2020/11/08 のログ
『みみけだまさま』 >  
「ふん……若人に心配されるほどやられてはおらんわ……」

 とはいうものの、流石に老身ということか。短くない間揺られた体は疲れが残っており、頭の上に乗るのもやっとというところではある。
 体に残っていた水分が吸い取られるのを感じる。

春日 遥 >  
 私が思っていた通り、みみけだまさまはなかなか疲れ切っているようでした。

「大丈夫……だと思います。見た目ぐったりしてるかもしれませんが、魔力を注ぎ込んであげればすぐ治りますし」

 頭のみみけだまさまを抱え込んで、帽子を被り直し。身体を通して魔力を注ぎ込みます。ひととは違う不思議な存在、こうしてあげれば疲れも取れるそうな。

「……そういえば、どうしてここに?」

 このお方も、偶発的にここに来たのでしょうか。雨止みを待つ傍ら、そうして聞いてみます。

雨見風菜 > 「なるほど、そうなんですね」

喋った!?と内心驚きつつ、表情には出さない。
それにしても一種の魔法生物のようなものなのだろうか、本当にそれで大丈夫なのだろうか。
まあ、飼い主である彼女がそう言うならそうなのだろう。

「どうして、と言われましても。
 この近辺でこの雨に降られまして」

そう説明しながら、『物体収納』があるんだから長傘を準備すればいいじゃないかと今更思い当たる。
まあ、なにはともあれこの雨がやんでからの話だ。

春日 遥 >  
「突然でしたからね……」

 自分が遠出をしていたからか。ついこのお方もそうなのではないかと思ってしまっていたようでした。

 さて、雨の様子ですが。雨勢のピークは過ぎたようで、雨は私がここに駆け込んだ時よりは少し落ち着いているように見えます。恐らくそれほど時間の経たないうちに止むのではないでしょうか。
 様子を見ていると、つと風が吹きます。秋風は冷たく、濡れた体のままであったら風邪をひいてしまったことでしょう。

「……寒くありませんか? その、もし嫌いでなければ、温かいお茶がありますが」

 ストールで守っているハンドバッグから、小さいペットボトルを取り出します。雨に降られる前、自動販売機で買ったものです。まだ熱は残っています。

雨見風菜 > 「ええ、突然の雨は困りますね」

自分には『液体収納』はあれど、この雨ではすぐに収納限界が来るだろう。
濡れて帰るのも寒いものだし。

そう会話に興じていれば、少々は雨勢が落ち着いてきたような感じだ。
そこに、温かいお茶の小さなペットボトル。

「あら、ありがとうございます。
 お礼と言ってはなんですが……」

この軒下に入ってすぐ『液体収納』を行使したためさほど身体は冷えては居ない。
だが、温かいお茶を貰えるならば遠慮なくいただこう。
自分が夏場に冷えたお茶を勧めたように。
そして、その代わりに……手に魔力を集中させ、『物体収納』していたものを取り出す。
そして差し出したのは小袋に分けたポップコーン。

「商店街のポップダディーというお店の、パンプキンケーキ味のポップコーンです。
 美味しいんですよ、ここのポップコーン」

ニッコリと笑って。

春日 遥 >  
「わぁ、ありがとうございます!」

 笑顔を返して、ポップコーンを受け取ります。ポップコーン、話に聞いてはいましたがあまり食べたことはありません。帰ってからゆっくりといただくことにしましょう。

「私やみみけだまさまを乾かしていただいたり、ポップコーンを下さったり……お優しいお方なんですね」

 偶発的な出来事ではありましたが――ここで二人であったことも、何か意味があるように思えました。
 ……もしかして珍しく雨に降られたのは、優しいひとと巡り会うため? 腕の中のみみけだまさまは、何も言いません。

「こうして出会ったのも何かの縁、でしょうか。春日 遥、一年生です。未だ若輩者ではありますが……ふふ、仲良くしていただければと」

 そう言い、丁寧にお辞儀をします。

雨見風菜 > 少女の予想外の喜びように頬がほころぶ。
続く、優しい人という評価は聞き慣れてはいるが、それでも褒められるのは嬉しいもの。

「ふふ、喜んでもらえてよかったです」

「きっと、そうなんでしょうね。
 雨見風菜、おなじく一年生です。
 ええ、こちらこそよろしくお願いしますね」

自己紹介をされれば、自己紹介を返して礼に応える。
普段幸運な彼女が豪雨に降られたのも、このためかもしれないと思うのは傲慢だろうか。

春日 遥 >  
 雨止みは、それから少し経ってからでした。
 完全には止んでいませんが――篠突くという言葉が合っていた雨もいつしか鳴りを潜め、わずかに残滓として軽くぱらぱらと滴が落ちる程度です。これくらいならば、もう濡れずに帰れることでしょう。
 長引かず帰るのが遅くなってしまうということにはなりませんでしたが――もう少しだけ話していたかったと、少しだけ寂しい気持ちにもなります。

「そろそろ、雨も止みますね……。私はそろそろお暇致そうと思うのですが……雨見さんはこのままお帰りですか?」

 帽子の中に、魔力を注ぎ込んだからか少しすっきりしたみみけだまさまを収めつつ、雨見さんにそう問いかけます。

雨見風菜 > あっという間に、すっかり止んだ……多少、雨粒は落ちてくるが。
ほぼ止んだと見ていいくらいになって。

遥を見てみれば、もう少し話したそうな、寂しげな表情。

「ええ、もう寮に戻ろうかと思ったところです。
 遥ちゃんも寮生なら、道すがらお喋りしていきません?」

そう、提案してみる。

春日 遥 >  
「いいんですか? それなら是非! ふふ、やっぱり優しいお方ですね」

 雨見さんからの提案に、喜んでそう答えます。
 男子寮と女子寮、その道が分かれるまでの少しの間ですが――もう少しだけお話がしたいという私の希望が叶った形になりました。

「色々聞きたいこと、あるんです。寮でのお話とか……」

 軒先から一歩、出ます。
 時折わずかに雨を感じますが、もう濡れることを気にしなくても大丈夫でしょう。

雨見風菜 > 「よく言われます」

ふふっと笑顔で、二人で帰路に。

「ええ、良いですよ」

ちょっと遥の言に違和感を覚えたが、気のせいにして会話に興じつつ歩いていくのであった。

寮の分かれ道で、女子だと思っていた遥が男子だと分かって驚くのはまた別の話。

ご案内:「学生通り」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から春日 遥さんが去りました。