2020/12/16 のログ
ご案内:「学生通り」に幣美奈穂さんが現れました。
■幣美奈穂 >
「ひょわぁ~!」
変な声が出ながら、転がるようにパン棚の影に。
具体的には四つん這いで震えながらですけど、
そこで小さく丸まります。
拝啓。
お父様、お母様。
美奈穂は今、地獄に居ます!
助けてくださいまし!
そんな心境におります美奈穂です。
■幣美奈穂 >
『——それは渡せぬ』
『一歩、遅いわ!』
すぐ傍で剣線が走り、それを無手の技で逸らす。
空間をも切り裂く一閃は、居合の拳にて僅かに逸れ。
しかし、棚に当たりそうになる直前に剣先が跳ね、引っ掛け撥ねさせる。
飛び上がったものに視線が向く瞬間、影がはしりぬけ。
それに手を伸ばす影、しかしその指先は瞬時にものの周囲だけに張られた結界に触れる。
その結界を斬!と、切り裂く刃・・中のものは無傷。
・・それが、美奈穂の買い物籠の中にぽとりっ。
――ほうれん草の一束、8円。激安タイムセールの一品。
偶然の産物です。
■幣美奈穂 >
ここは戦場です。
学生街のスーパー『鶴望屋』学生街中央店。
その夕方に行われる週一の特別激安タイムセールのお時間。
激安ではないタイムセールは他の日にありますが、
この週一のタイムセールは質と値段が違います。
時間になれば、セール参加者以外は外に。
そしてシャッターや防壁、そして商品を守る魔術なども張られ。
また、実際の怪我などもタイムセール後にはなかったことになる仕様。
そう、演習場などにあるものを、店舗内という空間に濃密に施されています。
他の鶴望屋店舗でも同じようなものはありますが、
学生街中央店は割引率が少々過激なので、一部の層(主に主婦)には有名です。
その為、一騎当千と言える主婦が集まる場所になっているのです。
そんな場所になぜ美奈穂がいるかと言いますと・・。
■幣美奈穂 > 「これを・・」
美奈穂が悩んでいたのはお酢のコーナー。
いつも買う有名メーカーの米酢(900ml・370円)に対して、
悩んでおりますのは東京で行列のできる某寿司店の寿司酢を家庭用に商品化したという、
桜丘の寿司酢(150ml・1864円)、超高級です。
『~~~んです。参k~~~』
店内放送があり、慌てる人が居る中。
美奈穂は真剣に悩んでいました。
そう、何かに触発されて最近はお寿司に凝っている美奈穂。
先日、お寿司屋さんに行く機会があり、よく勉強しました。
そこでシャリの味の違いを実感したのです・・タネの方にも改良点が見えました。
まずは土台となる寿司米を・・と思ったのですが。
『残り~~、~~ることはできません』
店内放送は続いています。
特別激安タイムセールの参加者以外は会計を済ませて店外に出るよう連絡している放送です。
ですが、今、お寿司料理脳で脳内調理している美奈穂は気付けません。
mlあたりでいえば30倍もお値段が違うこのお寿司用の純米酢。
どれほど違うものなのでしょうか・・。
美奈穂のお寿司も、ワンランクどころか、ツーランクアップするかもしれません。
でもお値段は、すぐに買う決断ができないものです。
悩みます。
■幣美奈穂 >
『お時間になりましたので~~』
魔法をかけられ・・それを感知した美奈穂、慌てて周囲を見ます。
がらがらがらっとシャッターが閉まる音。
はっ!?
「で、出ます!。あの・・!」
無情に隔壁を下ろされていくごうんごうんという重低音。
慌てて外に出ようとする美奈穂は店員さんに止められます。
少しお買い物に来て、買うもので悩んでいる間に出そびれたのです。
魔法だけであれば、美奈穂は外に出れるのですけど。
シャッターと防護壁には無力なのです。
がくぶるっとなる美奈穂。
まだ島に来たばかりの頃、マンションの近くにあるスーパーでお安いと聞きまして、
この特別激安セールに参加したことがあります。
そのトラウマでお顔が青くなり、身体が震えます。
■幣美奈穂 >
『渡せん、渡せんなぁ~~。今宵はカレパよのぉ~』
悪役然とした台詞を吐くのは、孤児院長の小柄で老齢なシスター。
”お肉売り場の覇者”と主婦たちには言われます。
総力としては美奈穂には及びませんが、自身と狙う鶏肉の周囲だけという濃密な結界は、
魔法・物理双方の障壁となり、総合的には通常の時の美奈穂の結界を僅かに上回ります。
守り巫女による血界であれば比べるまでもないのですけど。
そんなシスター、鶏肉の中でも一番安いg7円の所からは一歩も動きません。
孤児院の子供たちのため・・そんな慈愛の思いでそこを堅守。
g7円の鶏肉は1つたりとも他に渡さない姿勢です。
本音を言えば、牛、さもなくば豚とできればいいのですけれど。
子供たちにお腹いっぱいにお肉を食べさせるのだと、鳥でないとお高いのです。
無謀にも激安鶏肉を奪おうとする主婦を寄せ付けず、
そして”お肉売り場の覇者”と知る常連は、もう少し高いけど十分安い鶏肉や牛・豚を狙い
熾烈な肉戦争が繰り広げられています。
■幣美奈穂 >
『はい、次はジャガイモ。一袋23円!』
野菜売り場では店員が声を上げ、ジャガイモ袋を投げます。
お立ち台に立った店員がそれぞれにお野菜を放り投げてます。
白刃舞い踊り、魔法が飛び交い、ロケットアームが袋をひっつかみます。
『ば、馬鹿な・・私の狐鉄が!?』
刃引きした魔法剣、強靭堅固な魔法を施した剣を断ち切られたのです。
繁華街南店では無敵と言われた主婦なのです。
『ふっ・・刃引きで来るとは素人じゃな。
その腕前だと、繁華街か教員区の南寄りかのう。
ここじゃと、その程度の魔法、紙の如しじゃよ。
せめて繁華街の西店や学生街東店を制してからくるがよい。
——ぬっ!?』
崩れ落ちる主婦に、木刀を肩に担いだ道場着の主婦が言う。
男ばかり3人の子を持つ主婦である。
学園では剣術も教えている立派なパートタイマー教師だ、
育ち盛り食べ盛りの子供だから、いくら作っても足らないぐらいなのだ。
魔法とは違う、”念”を使う剣術を継ぐ主婦、ちなみに夫は修行と言い本土にいるらしい。
無念、と崩れ落ちる繁華街の主婦に助言をしていると・・。
■幣美奈穂 >
木刀の先に下げたジャガイモ袋、それを猿使いの猿が奪う。
籠に入ってなければ、まだその商品は自分のものにはならないのだ。
こらまつのじゃっ!と追いかける木刀主婦に追いかけられたお猿さん。
うきゃきゃっと急いで逃げる、逃げる、逃げる!
魔力の矢を紙一重で避け、レーザーを紙一重で避け、手裏剣をぎりぎりでかわす・・。
毛並みがそのたびにぞりぞりっとなります。
必死で涙目なお猿さん、はたっと、棚の下でふるふる震えている美奈穂と目が合います。
何か勘が働いたのか、お猿さんは美奈穂のすぐ後ろに。
『——それはわしのものじゃ!』
と、木刀を振るい、危うく美奈穂の頭に振り下ろされかけ。
ぴたっと止まります。
美奈穂の結界ではありません・・美奈穂の結界は、邪や穢れ、害意に対してなので。
物理的にはそこまでの効果がないのです。
それに、家の為、子供の為、旦那の為と人を思う邪でない心、
人を害そうという気はなく、商品を手に入れようという思いの力にも効果は薄まります。
それに、ここの主婦の様な達人を超えるような人たちの動きにもついていけません。
「お、お猿さん虐めたらだめです・・」
目から涙をぽろぽろ零しながら見上げて訴える美奈穂です。
■幣美奈穂 >
『おぬしは・・美奈穂ちゃん。なぜこの時間におるのじゃ?
危ないであろう』
少しかがんで、頭をなでなでとする木刀主婦です。
ここや他のお店で顔を合わせる事もある、買い物お友達なのです。
9歳の来た頃から自炊を頑張る美奈穂にお料理なんかも教えてくださいます。
そして、このタイムセールを怖がっている事も知っているのです。
美奈穂は、お買い物に悩んでましたら出るのが遅れまして・・と素直にいいます。
『そうか・・あっちに待避所はあるが・・。
総菜コーナーの前はまた激戦区じゃからのぉ。
わしも、まだ野菜を買わねばならん。米も狙っておる。
助けてやりたいところじゃが・・』
苦渋のお顔をする木刀主婦に、大丈夫です、がんばります・・。
と震えながらいう美奈穂。
まあ、ここで倒れてもタイムセール後は傷も残らないのでいいか、と。
それぐらいは殺伐思考な主婦なのです。
無理はするな、というお言葉で野菜コーナーの戦場にさっそうと戻る主婦。
ジャガイモは逃したが、キャベツと大根は手にしたい。その重い身体。
お猿さん、美奈穂の後ろから出てきて、ごめんねぇ、と伝えるように。
手で肩をぽんぽんっとすると、ジャガイモ袋を美奈穂の籠の中にいれまして。
ご主人様の元へと戻ります。
■幣美奈穂 > (続きは後程!)
ご案内:「学生通り」から幣美奈穂さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に幣美奈穂さんが現れました。
■幣美奈穂 >
野菜売り場の戦いは、激戦である。
『タマネギ一袋、15円です』
『キャベツひと玉、31円!』
『人参一袋、23円となりまーす』
次々にお立ち台の上から戦場に投げ込まれるお野菜たち。
空間歪曲でつかみ取ろうとしたら、その歪を殴り消し吹き飛ばされる。
光学迷彩された小型浮遊砲台からのレーザーが飛び交い、
それを白刃で受け、正確に跳ね返す。
『ハンバーグの為、頂きます!——《幻影騎士》よ!』
最近結婚したばかりの、ハイエルフの姫。
父母と妹と共にこの世界に飛ばされ、しかしこの世界の者と恋愛結婚したのだ。
今日は王妃である母親がぎっくりごしとなり代わりに来たが、
『お前にはまだ無理よ・・』という母親の言葉を振り切ってだ。
生でサラダもいいし、炒め物や、刻んでもいい。
お野菜界の王子、玉ねぎを狙う。
入り婿の旦那様と家族にハンバーグをと計画しているのだ。
これでも教員区中央店では《プリンセス・エッグ》の異名がある、
教員区中央店の四天王の1人なのだ。
異名は、一パック42円おひとり様1パックまでというのに、この召喚魔法で
幾つも買おうと《幻影騎士》と共に並んだからだ。
もちろん、お店の方にすぐばれて騎士分は認められなかったけど。
その魔法、剣や槍を持つ虹色に輝く無敗の重装甲冑騎士たちの召喚である。
空間が揺らめき、彼らの姿が現れ――。
■幣美奈穂 >
『・・その青き衣に包まれるがいい・・《百鬼夜行》・・』
和装の黒髪の妖艶な女性、口元を隠していた扇子をぱちりと閉じ、
呪を唱えます。
まだ子宝に恵まれないですが、結婚3年目でもラブラブ新婚気分。
『今日は君のロールキャベツが食べたいな💕』という、
朝に言われたのです。
なかなか減らないけど欲しくなるキャベツ。
明日は生姜焼きにしましょう、なんて考えるのです。
今日、このお店に来たのは偶然ですが、研究区南店であれば
この特別激安タイムセールの経験があります。
主に、リカーフロアでちょっとお高めなワインの争奪で。
その時にも無敵を誇ったのが、彼女の使う陰陽術《百鬼夜行》。
様々な魑魅魍魎を使役し、数で売り場を占有する技です。
『ジャマ』
『遅い』
『トウシロが』
出際の隙を潰され、陣を断ち切られ、豪快に顎を打ち抜かれ、
無数のビームで撃たれ、魔手で空間を抉られ、極薄の結界に切り刻まれる
学生街中央店のタイムセール常連の主婦たちにとっては、騎士も魍魎も鎧袖一閃。
呼び出した瞬間が隙だらけなのです。
広い場所や距離が離れているならともかく、狭い店内であれば悪手にしかないのです。
一瞬で蹴散らされるのに顔を青くしてへたり込むエルフ姫と和装美人。
『はい、ブロッコリー33円!』
更に放り込まれるお野菜に、戦場の中へと消えていくのです。
『はい、そこのひよこエプロンの奥様、食パンお買い上げです』
そしてルールもあります。
――対象商品以外を傷つけない事、棚などを壊さない事などなど。
幾ら保護の魔法がかけられており、全店でも有数の術師がそれをしているといえども。
その強度に限度はあります。
そしてこの店の特別激安タイムセールに来る主婦であれば、それを超える事もあるのです。
そうして傷つけた場合、通常表示価格での買取になります。
それを見逃さない、鶴望屋バードウォッチング同好会の社員。
主婦たちにも、それを見極める技量や技、位置取りなどが重要なのです。
■幣美奈穂 >
籠を守りながら四つん這いでなんとか逃げ延びている美奈穂です。
とっても怖いです。
天井も自由に走る忍者ママさんやスパイダーウーマンさんなどもおります。
がくぶるがくぶる。
腰が抜けかけていて立てません。
目の前に金棒が振り下ろされまして、その風で髪や服がぶわーとなりました時は、
一瞬、しんじゃったかと思いました。
「ひゃいっ!?」
拳銃使いママさんの銃弾を、革上着な世紀末風奥様が人差し指と中指で受け止め、
それを返します。
美奈穂の後ろと前を銃弾がかけていったのです。
そんな美奈穂の籠の中、ほうれん草にジャガイモ、ニンジン、タマネギ。
それにどこからか飛んできて入っちゃった牛肉さんが入ってます。
『次はココです!。人気の常世カレールゥ1箱65円』
お声が美奈穂の上から・・天井を開けて顔をのぞかせた店員さん。
ぽいっ、ぽいっ、ぽいっとカレールーを撒きます!
逆さになっている店員さん、『あっ』と手を滑らしますと、
落ちて来たルー3箱が纏めて美奈穂の籠の中にナイスインです。
それを眼で追いかけてしまった美奈穂です。
また見上げますと、ごめんごめん、というように顔の前に指を揃えた手を添えて苦笑いしてますけど・・。
■幣美奈穂 >
『うそっ!?繁華街の方だと528円もしたわよっ!?』
奥様方が殺到する主戦場に!?
瞬間移動を駆使する超能力者ママさんが手に取ろうとしますと、
獣人化して素早さを上げた奥様が手に取りかけたそれを蹴り、足で掴みます。
が、オーガー母さん、そんな獣人奥様に豪快なラリアットを。
くるるっと空中で回るカレールーを手に、自身の買い物籠の中にいれようとしますと・・、
合気使いのお婆様がその下ろす手を、加護に入る前に受け止め、ふんっ!
理で飛ばされるオーガー母さん、他の終端を巻き込み倒れる中、
合気お婆様は籠にルーをいれるのでした。
『あら、お嬢ちゃんもお買い物?
えらいわねぇ~、あっ、飴ちゃん食べるかい?』
座り込んで震えていた美奈穂を、小柄なお婆様がにこにこして。
飴を渡してくれます。
ありがとうございます・・と小さなお声でなんとかお礼を言う美奈穂です。
■幣美奈穂 >
――美奈穂は生き延びました。
タイムセール時間が終わりますと、和気あいあいとレジに並びます。
ここは自動化なんてせず、手でやるので美奈穂もお買い物できるのです。
『もやししか・・』『もっと鍛えて・・』
としょんぼりしている奥様、比較的若い方が多いです。
『シスター・・ルーは駄目でした・・』
『孤児院の夕食、唐揚げ・・でしょうか?』
『唐揚げはね・・数が3つとかになるから子供たち物足りないと思うのよねぇ』
前に並びますのは、教会のシスターらしき人達。
集団で、コーナー毎で待ち構えて確保していたようなのですが、
カレールーの場所は判らず突発的だったので、手に入らなかったようです。
お野菜やお肉にお米などを籠一杯にしてますけど、浮かないお顔です。
『カレーだったら色々誤魔化せるんだけど・・』
そんな困ったお顔です。
食べ盛りの子供たち、お肉が大好きですけど全員分となると大変なようです。
「あの・・これですか?
わたくし、肉じゃがにしようと・・」
前に並ぶシスターさんたちに、恐る恐るカレールーを見せます。
『いいの?』と尋ねますシスターさんたちにこくりっ。
カレーは家で作ったら余って結構困る美奈穂なのです。
感謝されて、カレールーを3箱とも引き取って頂きます。
禍根は残さない。
バトルが終われば仲良しな奥様方。
和気あいあいと・・『あの一撃、どうやってるの?腰のひねり?』・・和気藹々とした雰囲気。
お酢を買いに来て、何故か加護に肉じゃがの材料が揃いました美奈穂なのでした。
ご案内:「学生通り」から幣美奈穂さんが去りました。