2021/06/03 のログ
ご案内:「学生通り」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 「んー。」

それは、通り雨から逃れるように。
濡れ鼠ならぬ濡れ猫が一匹、知らない人ん家のガレージにて雨を凌いでいた。
そこは丁度シャッターが開いている上に、車もそこになく、
ちょうど家の中に明かりも点いていなような、そんな家主が不在そうなところを間借りして。

「よーっく降るなあ。いやぁ、やんなるねえ。」

なんだかんだ人間社会は猫にあまり強い関心もないもので、溶け込むにはちょうどよかったものだから、
発情期の発作的な衝動さえ抑える術をなせるなら、やはりこの姿にはよく化けていた。
それに人間の姿だと、長い赤髪が雨でぐっしょりというのも重苦しいわけで。

「………それになーんかこの雨、ニガテなんだよなぁ……」

どんより暗い曇り空を、雨に当たらないよう恐る恐る見上げる。
普段の雨とは雰囲気の違うそれは、どうにも相性が悪い気がした。

アーテル > 「……ただの雨じゃあないのは確かだろうなあ。」

青い瞳を細める。
自分はただの猫でも、人間でも、そもそもまともな生き物かさえも怪しい。
どちらかといえば、生けるものに見えないもののほうに近しいあり方の存在でさえある。
それ故か、どうにもこの雨からはただの自然現象と片付けられないにおいがした。

「……はー、やめやめ。止むまで休ませてもらおうかねー……」

暫く唸っていたけれども、考えるのをやめる。
こういうものを考察し始めると脳みそがいくつあっても足りないものだ。
迂闊に深淵を覗くつもりはないし、覗かれたくもない。
”そういうものだ”と思考を早々に切りかえて、顎を冷えたコンクリートの上にぺたんと乗っける様に突っ伏した。


「………暇だなあ。」