2021/11/07 のログ
毒嶋 楽 > 「どうすれば納得したか、と言われてもな……」

超難問をストレートに投げつけられて楽の表情が強張る。
そもそも根本的な認識の齟齬を理解してもらうのが先決だろうか。
ファロンにとって偉さの象徴がその胸部であるという事は紛れもない真実なのだろうし、その事に誇りも持っているためにあれほど怒ったのだろう事も察しが付く。

「えーと……本当に難しい問題だなオイ。
 まずこっちの世界では女性の胸は偉さの証、というわけでは無いからなぁ……」

でも大きさでマウント取ったりすることもあるらしい。
残念ながら楽は男なので真偽のほどは不明だが、あるらしいという事は知っている。
……てことは、あれ?別におかしい事では無いんじゃないか?
これまで『そういうもの』として漠然と理解し従って来た事柄に改めて楽は直面し、頭を抱えた。

ファロン > 「例えお前達の文化にそうしたルールがなくとも、我のこの威容を見れば感じるものがあるだろう。我が知りたいのは、どうすればまがい物扱いされないのか、ということだ」

とはいえ、難問なのは変わらない。
確かにこの世界についてはまだまだわからないことが多いが、そうではないはずのラクもこの問いに頭を悩ませている。
そもそもの話、何故ラクは信じなかったのか?いや、ラク以外にも、これを本当の胸だと思わなかったやからは何人かいた。
この胸はそれほどまでに珍しい、ありえない大きさなのだろうか。この異邦人が集う常世島においても。

「やれやれ……あまりにも偉大すぎるというのも困りものだな。強い輝きは見るものの目をくらませてしまうのか」

微妙に自分に都合よく解釈しながら、額を押さえてため息をつく。

毒嶋 楽 > 「まがい物扱いされないか、っつー点に関してだけはこないだのファロンちゃんがとった行動は間違いじゃ無いんだ。無いんだけども。
 そもそも女性の胸部は無暗に見せたり触らせたりってのはご法度、みたいなルールがこの世界にはあってだな……」

あるよな?あるんだよな?もはや自問するほどに揺らいでいる。
女性ならもっと的確に説明、説得出来るのだろうか。だとしたら今すぐ代わって欲しい。そう強く思う楽だった。

「そもそもファロンちゃんは見られて恥ずかしくない……んだよな、きっと。
 偉さの証なら、そりゃ恥ずかしくないしむしろ見られることは偉さの周知にもつながる訳で……」

本当にそんな文化を持つ種族が居るのか?居るんだな目の前に。

ファロン > 「自分の身体を見せて何を恥じる必要がある?ニ目と見られない醜い身体と言うならともかく、我の身体は完璧な美しさだぞ」

どや、と本日何度目かわからないどや顔を見せる。とはいえ、実際この世界にきてから人の裸というものはほとんど見ていない気もする。じゃあ元の世界ではよく見てたのか、と言われるとそうでもない気もするけれど。

「偉さの周知……なるほど、それならラクよ、なるべくルールに違反しない範疇で身体を見せる方法はないか?流石にいついかなる時も全く肌を見せてはならないとか、脱いだら死刑というわけでもなかろう?」

もしそうなら水浴びもできまい。
であれば、規則の抜け道や例外は存在するのではないか。見られても恥ずかしくない、というラクの呟いた言葉からそう思い付いた。

毒嶋 楽 > 「………でっすよねぇ、そういうタイプの認識ですよねぇ
 そこまで行くと一周回って羨ましさすら覚えるから不思議だ」

自分自身に対する完全な自信、自負。
そういうものが少し欠落してる自覚のある楽は眩しそうに目を眇める

「ええ……、そうだなあ。
 まず屋外で不特定多数の目に触れることは諦めたほうが良い、今の時期は。もう少し暑い時期なら無い事もないけど。
 そのうえで異性に対してはもっと制限されるから……見せる方法か……」

うーむむむ、と考えてふと脳裏を過ぎるのは近代文明の利器。

「……あー、そしたら無いわけじゃ無いってのが、頭痛いな……。」

ファロン > 「ふふん、お前達には決して届かぬ神域の美だ、存分に羨むがいい」

なんかわからないが誉められた。
自称神龍がもともと有り余っている自信をさらに溢れさせるにはそれで十分である。

「ふむ、そんなにも強制力の強いルールなのか。教師にも学生にもそんな話聞いたことがないが……まぁいい、何か方法があると言うなら言ってみろ」

時期も悪いらしいが、来年の春なんて待つ気はない。今すぐにでも自分の身体(えらさ)を知らしめたい。
自称神龍は本気でそう考えていた。

毒嶋 楽 > 「まあ、うん……性別的にも同じようになるのは無理だわな……」

褒めてないんだけどね……と満更でもなさそうなファロンを見て思う。
ただそういう所が羨ましいだけに何とも言えない顔をする楽であった。

「そりゃあ、俺ちゃんたちはそれが大前提として生活してるから。
 あー、うん。……ネット配信をしよう。」

媒体は何でもいい。とにかく自己顕示欲を満たすのなら手軽かつ成果も見込める方法だろう。
時代が時代なら彫刻にするとか、絵画にするとかで良いのだろうがそれでは時間が掛かり過ぎる。
ただ黒か白かで言うと限りなくグレーな方法だが、何もないと言って他の人に聞いて回られるのも困る。

ファロン > 「ねっとはいしん」

鸚鵡返しにそう言ったのは、意味がわからないから……ではなく、意味は知っているが思い出すのに時間がかかったからだ。

「あぁ、アレか。直接でなく、ネットや写真なら裸を見せてもいいのか?」

もしそうならなおさらよくわからないルールだ。目で見てダメなものが写真なら良い……というのは、人を殴るのはダメだが剣で切りつけるのは良い、というのと同じような話に思えた。
それとも、見る見ないの問題というより呪術的な制約や危険性の問題なのだろうか?
どちらにせよ、良いと言うなら今のファロンにそれをやらない選択肢はないわけだが。

毒嶋 楽 > 「ネット配信。」

肯いて繰り返す。

「さすがに全部出しちゃうのは良くないが、外を出歩いたら咎められるような露出度の服とかでも大丈夫だ。
 最低限隠れてさえすれば良いって場合もざらにあるしねぇ。」

何故だか腑に落ちないような顔をしているファロンの事はこの際置いておく楽。
まあこれはこれで問題があるにはあるが。

「ところでファロンちゃん……ネット環境と機材、ある?
 ていうかまさかまだ野宿生活してたりしないよね……?」

ファロン > 「なるほど、まぁとにかくある程度はいいわけだな……ふっふっふ」

実際どこまでやっていいのかのラインはよくわからないが、まぁやっていくうちにわかるだろう。習うより慣れろだ。
それ以前の問題として、具体的にネット配信がどういうもので何をするのかすらよくわかっていないのだが、我ほどの偉さと美しさなら、きっとすぐに誰もがひれ伏すように……。

「かんきょう?きざい?」

なにそれおいしいの?とでも言いたげなポカンとした顔で、ブルーの瞳がラクの顔をまっすぐ見つめる。

毒嶋 楽 > 「ある程度だぞ、本当にある程度。全裸はダメ、絶対にだ。
 ……まあやってみない事には何も分からねぇか。」

釘を刺しておかないとこの少女の場合本当に全裸になりかねないと思った楽。
そしてポカンとした顔でこちらを見るファロンに、そんな澄んだ目で見るな……と言い様のない居心地の悪さを覚えたが

「パソコンやスマホのこと。まあ、その分だと持ってなさそうだよな……
 これ説明しなきゃダメかな……吹き込んだ俺に責任…あるよなあ当たり前だけど。」

やっぱ言わなきゃよかったかなぁ、と再度頭を抱える楽だった。

ファロン > 「あぁ、あの箱とか板とかか」

珍しく学校の授業以外で地頭の悪くないところを発揮するファロン。ネットとやらはあれらの機械を使って利用するものだ、ということを察した。逆にいうとそのレベルのことすら今の今まで知らなかったわけだが。
なんにしろ、あれらはそれなりに高価であることも察せられる。となるとそれを手に入れるには……

「ラク。お前の意見を聞きたい。もし我がネット配信で結果を残したら、『この世界に溶け込むための活動』として認められると思うか?具体的には学園にだ」

突如閃いたアイデア。もしかしたら、目下の問題をまとめて解決する方法になるかもしれない。

毒嶋 楽 > 「そう、あの箱とか板とかだねぇ。
 持ってなかったんならひとまず俺ちゃんちでやりゃあ良いかって思ったけど、持ってるんならそれに越した事は無い。」

予想通りの返答。思わず深く頷く楽。
けれどまあ物自体は知っているようで何よりだ、手間が省けたと満足気でもある。
そして知っている=学園から配給でもされたのかな、と思っている。

「え?『この世界に溶け込むための活動』……何だそら。
 ま、まあネット配信が出来る程度にパソコン操作などに慣れ親しめれば、世界に溶け込むための活動と言えなくも……ないな?」

同時に風紀に喧嘩を売ることになるかもしれないが。
まあ公共の場で露出紛いのことをするよりはよっぽどマシだろう。マシだと思いたい。

ファロン > 「ふむ……なるほどな、確かにこの世界では誰も彼もあの板を握ったまま離そうとせんほどだ」

それほどまでに必需品とされている道具ということか。その扱いに慣れるため、という線は使えそうだ。認められなければその時はその時、別の方法を考えるまで。

「わかった、世話になったな。ははは、明日にでもネットで我の勇姿をその目に焼き付けるが良い!」

はーっはっはっは、と高笑いをしながら歩いていく自称神龍のてるてる坊主。
その脳内には、既にネットの世界の頂点に立つ自分の姿がありありと描き出されていた。

毒嶋 楽 > 「歩きながらは危ない、って注意喚起もされてるけどね……
 どうしても見ちゃうんだよな……特に何も無くても。」

つい先ほどまで楽自身も歩きスマホをしていた。
その事を反省しつつ、何やらすごい納得をしているファロンを見て、ちょっと不安になってきている。

「ああいや、うん……ちょっと怖いけど、また何か分からない事があれば聞いてくれよー」

不安が増した。恐怖心すらある。
歩き去るファロンの背を見送りながら、ちょっとどころじゃなく後悔し始める楽なのだった。

ご案内:「学生通り」からファロンさんが去りました。
ご案内:「学生通り」から毒嶋 楽さんが去りました。