2022/03/04 のログ
ご案内:「学生通り」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
学生通り、片隅の一角にて。
車椅子に乗った少女が無言のまま瞑目している。

電池の切れたロボットのように、糸を切られた
操り人形のようにぴくりとも動かないその姿は
眠っているか、死んでいるかと見紛うばかり。

そんな彼女、黛薫の正面には耳を澄ませなければ
聞こえないくらい小さな駆動音を立てる直方体の
機械──有体に言えば自動販売機が鎮座している。

考える。己の行く末を。取るべき選択を。

いや、別に大したことではないのだが。
ただ単に何を買うか悩んでいるだけである。

黛 薫 >  
しかし今の彼女には悩まねばならない理由がある。

季節は3月初頭。未だ寒い日が続いているが、
気象学的には春と呼ばれる季節。例年通りならば
春一番の到来もこの時期前後。まだ寒いからと
しっかり着込んで出かけた日に限って春の陽気を
先取りしたような日差しが照り付けてきたりする。

黛薫はちょうどそんな日に突き当たってしまった。
2枚重ねのシャツがじっとり汗で湿るほどの陽気、
食の細さに起因する低血糖も相まってふらふら。

急遽自販機に立ち寄って甘い飲み物を買おうと
考えたのだが……何故か不幸とは重なるもので。

「…………」

ついさっきの光景を思い出す。
電子決済のために開かれたホロモニターに
表示された "Network Outage" の文字列を。

通信障害の所為で電子決済が出来なかったのだ。

黛 薫 >  
黛薫は元落第街の住人である。その中でも立場は
底辺に近く、現金なぞ持ち歩いていては理不尽に
奪われかねない生活をしていた。

従って、現金を持ち歩く習慣は根付いていない。
復学支援対象という立場を得て、口座の所有及び
キャッシュレス決済が出来るようになった今なら
なおさらである。

そんな彼女の現在の所持金は152円。
150円あれば自販機の飲料ならギリギリ買える。

そう思っていたのだ。さっきまでは。

152円の内訳は100円玉が1枚、10円玉が2枚、
5円玉が4枚、1円玉が12枚。……自動販売機は、
1円玉と5円玉での支払いに対応していない。
実質的に使えるのは120円。

そんなことを知らなかった黛薫はつい先ほど
投入した側から釣り銭口に返却される5円玉に
ひとしきり狼狽える羽目になっていたのだった。

黛 薫 >  
せめてこの5円玉、1円玉が10円だったら。

使いにくい細かい小銭の枚数がやたら多い理由は
自覚している。不自由な手先で硬貨を取り出すのが
面倒で、端数を揃えて支払うのを怠けていた所為だ。

自動販売機で売られているペットボトル入りの
清涼飲料水は150円〜160円。1円玉と5円玉が
使えないお陰で手が出ないお値段。低血糖解消の
役に立たない天然水の110円という値段設定さえ
今の黛薫には恨めしく見える。

それなら1サイズ小さい280mlの飲料を……と、
思ったらこれも軒並み130円でギリギリ買えない。
微妙に容量の少ない240mlのエナジードリンクは
何故か値段が上がって160円。やはり買えない。

ポピュラーな飲み物が並ぶ中、微妙に場違いな
携帯栄養食は200円と頭一つ抜けて値段が高い。

これが買えれば低血糖とエネルギー不足の両面を
解決し、公園に寄って水飲み場で喉の渇きを潤す
選択が取れたが、無い物ねだりをしても仕方がない。

黛 薫 >  
狭まっていく選択肢。じりじり照り付ける日差し。
苦しい戦いを強いられている。何故今日に限って
地味に暑いのか。因みに気温はそんなに高くない。
朝の寒さに騙されて重ね着してきた自分が悪い。

黛薫は瞑目したまま動かない。何度も確認した
お陰で自販機のラインナップも覚えてしまった。

120円で購入出来るのは550mlの天然水、及び
185ml入り缶コーヒーの一部。同じく缶入りの
お汁粉とコーンスープ、炭酸ゼリー飲料。

この中から最適な選択肢を選ばねばなるまい。
しかし、これといった決め手がなく……いや、
むしろ全てに買うのを躊躇う理由がある。

まず天然水は論外。喉の渇きが潤せても低血糖は
解消されない。強いて買う利点を挙げるなら値段の
割に量が多い点だが……それなら公園の水飲み場で
水を飲めば良い。黛薫には天然水と水道水の差など
分からない。

黛 薫 >  
缶コーヒーは120円と130円の品が混在している。
無糖、微糖が120円。加糖やミルク多めが130円。
低血糖でふらついている今、微糖を選ぶのはやや
勇気がいる。微ってどのくらいだよ。かといって
130円の品はそもそも所持金不足で購入出来ない。
絶妙な値段設定に泣かされている。

また、缶コーヒーの購入を躊躇う理由は糖分の
多寡だけではない。暦の上で春と呼べるように
なったのはここ数日のこと。気温の低い日は未だ
多く、従って冷たい飲み物より温かい飲み物の
需要が勝るのも自然な話。

事実、3段に分かれて陳列されている自販機の
商品は上1段を除きすべて『あったか〜い』で
統一されており……つまり、購入できる値段の
缶コーヒーは全て『あったか〜い』なのである。

この暑い日に、熱い缶コーヒーを飲むのはキツい。
繰り返しになるが今日は少し日差しが強いだけで
特別暑くはない。厚着が仇になっているだけ。

唯一『つめた〜い』の段にある缶コーヒーは
プチ贅沢と銘打たれたミルクと砂糖たっぷりの
130円。隣に並んだ130円のミルクココアと
併せて今の自分を笑っているようにさえ思える。
考えすぎである。

ご案内:「学生通り」に阿須賀 冬織さんが現れました。
黛 薫 >  
お汁粉とコーンスープを躊躇うのも近い理由。
この2品は『つめた〜い』表記とは無縁である。
とろみのある甘い飲料……飲料?は糖分補給や
エネルギー摂取には間違いなく適しているはず。
しかし暑いからという理由で食指が動かない。

付け加えるなら、缶コーヒーは炭酸ゼリー飲料は
ペットボトルと同じキャップ式の缶。指先に力が
入らなくても開けやすいが、こちらはプルタブ式。
今自力で開けられるか、正直自信がない。

炭酸ゼリー飲料は120円の予算で買える唯一の
『つめた〜い』飲料……飲料?である。飲料って
書いてあるから飲料。ゼリーって本当に飲料か?
缶を振って崩して飲むタイプ。

難点は言うまでもなく、コレで本当に喉の渇きは
潤せるのか?という疑問に尽きる。潤せないなら
やっぱり飲料を名乗るべきではないと思う。

黛薫はぴくりとも動かずに考え込んでいる。

阿須賀 冬織 > 「……あっぢー」

この時期の気候はまあよみにくいもので
ここ数日が肌寒かったこともあり、温かめの服装で出たのが運の尽き
昼を過ぎてこうして我慢できなくもない微妙な暑さに辟易とする学生の誕生である

「……確かこのあたりに自販機あったよな……」

暑いと自然と喉が渇くもので
そういえばちょうどこのあたりに自販機があったなと思い出す

「……おっ、あったあった」

そうして辿り着いた自販機の前には、車椅子に乗った少女がいた
買うのかなと少しの間様子を見るだろう

黛 薫 >  
厚着をすれば暑く、一枚脱げばやや寒い今日、
何を買うべきかと自販機を前に考え込むのは
別に不自然ではない。

ただ一点、不自然な点を挙げるとするなら。
自販機の前で沈黙する少女は本当にぴくりとも
動いていなかった。電池が切れた人形のように。

とはいえ、それは男子学生が様子見に入るまで。
何気なく様子を見ていると、電源が入ったように
急に顔を上げて振り返った。

「えぁ、ご、ごめんなさぃ。立ち止まっちゃって。
 あーし、まだ決めてなぃんで。先使っても」

慌てた様子で車椅子を操作し、自販機の前を空ける。
車輪が備え付けのゴミ箱に引っかかり、大きな音が
鳴ってしまった。

阿須賀 冬織 > 「えっ、ああ。…じゃっ、じゃあお先に……」

不思議だな、と思う前に
急に振り返って声をかけられたことに、若干驚きながら
先にどうぞと言われて前を空けようとする様子を見てそのまま自販機の前に立とうとして――

「えーっと何があるかっあ!? 大丈夫か!?すごい音したけど」

すぐ横で大きな物音がした。
驚いて視線を自販機からその方向へと向けるだろう

黛 薫 >  
「ご、ごめんなさ、大丈夫で、倒してなぃ、ので」

目深に被ったフードと長い前髪、殆ど顔が隠れた
少女はやや萎縮した様子で手を振る。

ゴミ箱はぐらぐらと傾いでいたが、彼女の言葉通り
倒れずに済んでいた。しかし車椅子の車輪が当たり、
これ以上後退すると今度こそ倒してしまいそうだ。

従って彼女はこの後一旦前進する必要があるが、
自販機の前を譲ったばかりの相手に一旦退いて
欲しいと頼む度胸は無かったらしく。

「……今日、朝寒かったのに急に日差しが強く
 なったんすよね。あーしもそれで喉渇いて」

無言のまま半端に近い距離待つことに耐えられず、
見切り発車で会話を切り出す。狼狽えて謝っていた
さっきの仕草からしても会話慣れしているようには
見えない。

阿須賀 冬織 > 「ならいいんだけど」

ゴミ箱を見れば確かに絶妙なバランスで立っている
早く買うかと自販機の方に向き直って

「んー、おしるこコーラはないか」

残念、マイナーな好物はなかった模様
仕方がないので別のを見繕おうと

「……ん、ああ。それすっごいわかるな。俺もちょうど同じ感じでさ。
暖かくなってくれるのはいいんだけどこうも突然だとなあ……」

突然の言葉に少し間があくが、人と話すこと自体嫌いでもないので
返事を返す

「んー、これでいっか。………あれ?」

清涼飲料を適当に選んで、端末を取り出して代金を払おうとしたところで
"Network Outage"の文字が浮かび上がった

黛 薫 >  
「おしる……何? なん、なんて?」

耳慣れない謎飲料の名前に思わず聞き返す。

いや、2つ並んだ単語の意味自体は分かる。
分かるのだが、それが共存する状況、環境が
想像できない。甘くて黒っぽいくらいしか
共通項が無いのでは?

「そーーなんすよね。急にあったかくなんのも
 厄介っすけぉ、あったかくなったからって
 薄着すっとまた寒くなって体調崩したりとか」

微妙に渋い声音から察するに、経験有りと見た。

「あー、あー……今、通信障害起きてるらしくて。
 あーしもそれで支払ぃ出来なかったんすよね。
 ちょーどイィ額の小銭も持ち合わせてなくて、
 そんでどれ買おっかとか悩んでまして」

実際は丁度良い額どころか現金そのものがほぼ
すっからかんだったのだが、少し見栄を張って
お金自体はある風を装う。

阿須賀 冬織 > 「ああ、おしるこコーラっていう
あー……粒あんお汁粉味?のー、炭酸飲料?が
…………やっぱ、自分で説明してても不思議だな」

実際自分も最初に他の人に勧められて見た時は驚いた
当然のように、とても人を選ぶ飲み物?だ

「あー……。かといって、脱いでも大丈夫な感じで重ねても脱いだ服が邪魔だしなあ」

クローゼットに入れているときは小さいのに、鞄に押し込むと突然体積を増すのが不思議だ
渋い声に同感するように頷く。

「うえ、マジか……流石に通信関係は無理だしなあ。……小銭あったかな」

停電とかならなんとかなるのになあと財布を探しながらぼやく

黛 薫 >  
「……何つーか、ゲテ……イロモノ枠?みてーな
 飲み物とか食べ物、たまに売ってんすよね。
 いぁ、好きな人は好きなんだろーけぉ……」

流石に教えてくれた相手の前でゲテモノ扱いは
自重した……が、あんまり言い換えた意味はない。

変わり種の飲み物、食べ物は話題性も大きいが
意外と好む人もいたりするから不思議なものだ。
事実、黛薫の同居人もその手の食べ物に対する
チャレンジ精神は旺盛だし。

「服ってクローゼットにしまってあっとそんなに
 場所取らねーよーな気ぃすんのに、外で脱ぐと
 めちゃめちゃ嵩張るってか、邪魔なんすよね」

暑いと言いながらパーカーのフードまでしっかり
被っている少女、嵩張るのを嫌ってのことなのか、
それとも他に事情があるのか。

「……通信関係『は』無理、っつーコトは、
 そーじゃなぃタイプの問題なら解決出来る
 見込みとか、あったりしたんすかね?

 電気関係の学科……は、違ぅよな。スキルが
 あったって勝手に弄るのはダメでしょーし。
 っつーコトは……直す系の異能、とか?」

阿須賀 冬織 > 「ああ、俺も最初飲む……いや食べるか?
まあ口にするまではゲテモノ扱いしてたし気にしねえよ。」

あまり変わらない言い回しに苦笑しつつそう返す。
実際に初めてそれを渡されたときは受け取り拒否をしようか迷ったのでなおさら。
当時の本人も甘いものだったので興味がギリギリ勝った形だ

「ホント不思議だよなあ。
……ところでさ、流石にそのフードは暑くねえのか?」

あまり深く追求する気はないけれど、気にはなったので軽く話題に沿って聞いてみる。

「んー? ああ、一応異能で電気関係はな。っても、情報みたりとかそっち系は全然でさ」

人によってはそういった事も出来るらしいが、生憎とハッキングやら何やらは向いてなくて
特に隠すことでもないのでそう伝えるだろう

黛 薫 >  
「おしるこなら別に『飲む』でイィんじゃ……
 あー、んー? いぁ、でも『食べる』つっても
 違和感ねーな? んん……」

餅入りなら『食べる』の方がしっくりきたかも
しれないが、流石にコーラ成分と衝突しそう。
その場合は『飲む』扱いで良いのだろうか。
些細な疑問だが黛薫は細かいことを気にしがち。

取り留めのない思索に耽っていた彼女だが、
フードについて指摘されるとびくりと身を
竦ませるような反応を見せた。

「えぁ……いぁ、コレは……単に、苦手ってか、
 取るのが落ち着かなぃ、みたいな、感じで」

前髪で隠れ気味な瞳がうろうろと不安定に揺れる。
しばし迷った様子を見せた後、おずおずとフードを
脱いだ。

「電気関係の……ん、そか。あーしは、その。
 そーゆー、便利な感じの異能じゃねーってか、
 デメリット?が、目立つ感じの、ヤツで……
 フードも、その対策、みたぃなトコあって」

きょろきょろと落ち着かない様子で周囲を見渡し、
脱いだばかりのフードをさっきより深く被り直して
顔を隠してしまった。パーカーの袖から絆創膏と
ガーゼで手当てされた傷だらけの手が覗く。

阿須賀 冬織 > 「気分的には飲む、かな?」

気にしているようなので個人的見解を添えておいた。
餅要素はないのでコーンの入ったコーンスープとかと同じイメージではある

「ああ……わりぃ、苦手なのに」

すぐに隠したのを見て、本当に苦手なんだなと感じて。
ちらりと視界に入った手に、あまり深く聞かないほうがよさそうだ


「んんっ……まあ、便利っちゃ便利だな。充電気にしなくていいし」

誤魔化すように咳き込んで自分の話に戻そうと。
使い方は凄く庶民的