2022/03/05 のログ
黛 薫 >  
「いぁ……んでも、ずっと隠して隠れてばっかで
 通せるワケじゃねーですし。いずれ慣れなきゃ
 いけねーのも確かなんで。ヘーキっすよ」

もう一度フードを取ろうとして、手が止まって。
せめて会話に付き合ってくれている彼にだけは
見えるようにと、少し前を開けるだけに留めた。
彼女なりの誠意であり、妥協点。

汗ばんで肌に張り付いた長い前髪が風に揺れて、
燐灰石じみた蒼い瞳が垣間見えた。

風に乗って漂う香りは無機質な印象ながら柔らかく。
色に例えるなら、南国の海面越しに覗いた水底の
白砂を思わせる。

「存外日常的な使い方……いぁ、案外そんなもんか。
 便利そーな異能、強力な異能でも使ぅ機会なんざ
 滅多に来なかったりするって聞くもんな」

であれば、普段使いできる用途が主になるのも
珍しい話ではないのだろう。電気という現代で
汎用的に扱えそうな異能ならなおさら。

「……自販機も電気で動いてんだもんなぁ」

会話に気を取られて忘れかけていたが、2人とも
当初の目的は飲み物の購入。そういえば何を買うか
決めていなかったと思い出し、改めて陳列された
商品を眺め始める。

阿須賀 冬織 > 「……すごいなあ」

ポツリと呟く
変わろうとする努力が大変なことはほんの少しだけ知っているから

見えた瞳に抱く感想は綺麗、だろう。

「まあ、特に強力な異能なんかは使わないで済むに限るんだけどな。」

使わないで平穏に暮らせるならきっとそれに勝るものはないから。

「あっ! やっべ、忘れてた。財布財布っと……あったあった」

自販機という単語を聞いて、思い出したように財布を取り出して。
ガコンという音がすれば中から飲み物を取り出して。

「ごめん、先に買っておいてって言われたのに時間かかっちまった」

と、順番を譲ろうとするだろう

黛 薫 >  
「……そーな。やっぱ平和が1番だもん」

例えば、唐突な暑い日差しにくだを巻いてみたり。
飲み物を買いに来た先で会った人と取り留めのない
会話に興じてみたり。当たり前のようで得難い平和。

「んや、会話つぃでに考ぇる時間も取れたんで
 全然気にしてねーです。そもそも、あーしも
 何買ぅか決めらんなくてうだうだしてたんだし」

貴方に続いて、ボロボロの財布を取り出す。

不器用……というより、不自由な手付きで
100円玉を1枚、10円玉を2枚投入する。
車椅子に乗っているのは、足のみならず
全身が不自由だと察せる動き。

そんな彼女が購入したのは缶入りのお汁粉。
暑いのに熱いものを飲むのは、と渋っていたが、
おしるこコーラなる謎飲料に思いを馳せていたら
お汁粉の口になってしまったのだから仕方ない。

阿須賀 冬織 > 「そーいや、そうも言ってたな。……んで、決まったのか?」

と後ろから軽く見ていたが、どうやらお汁粉にしたらしい。
……特定の物の話をしてたらそれが気になる事あるよなあと一人で納得

自販機から取り出しにくそうだったら手を貸そうとはするだろう

黛 薫 >  
「……ありがとです」

車椅子に座っている分、普通にしゃがむより
腕の位置が高い。不自由な手付きも相まって
取り出しに苦労していたところを助けてもらい、
素直に頭を下げる。

取り出し口に手を挟まれて慌てている姿を
見られたのが恥ずかしかったのか、微妙に
目線を逸らしているのはご愛嬌。

「んじゃ、あーしはこれでお暇させてもらぃます。
 お話、付き合ってくれてありがたかったっす」

まだ熱い缶をころころと手のひらで転がしながら
車椅子の少女は小さく手を振った。

些細な選択を真剣に考えて、たまたま出会った人と
話した内容から何となく答えを得る。そんな平和な、
ありきたりな日常が妙に楽しく思える日だった。

ご案内:「学生通り」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から阿須賀 冬織さんが去りました。