2022/11/16 のログ
神代理央 >  
「そうかね?とはいえ、風紀委員会は平和…と言うと大袈裟だが、学園の風紀を守る組織だ。私は兎も角、他の風紀委員には多少は愛想を良くして欲しいものだな」

まあ、本人の心構えを強制する訳でも無い。少なくとも、同僚ではあっても自分の部下では無いのだし。

「それは何より。まあ、あまり鼻の下を伸ばさぬ様にな」

此れもまあ、社交辞令の様なものだ。
風紀委員会の女子は得てしてまあ…"強い"女性が多い。
そう考えると、社交辞令と言うよりも忠告、の方が近いのだろうか。自分でも少し悩ましい。

「…ふむ。私は君の適性や能力を正確に理解している訳では無いが、端から自分を無能扱いするのは宜しくは無いな。異能、魔術。それ以外にも様々な能力を持つ者…いや、能力を持たざる者でも、風紀委員会と言う組織の中で貴賤の差がある訳では無い。学園の風紀と生徒を守る、という理念に従う事は、立派な事だ」

「とはいえ…まあ、撃たれれば死ぬ。違反部活や落第街での任務には、そういった危険が伴う事も否定はしない。私も数回死にかけたからな」

「それが嫌なのであれば、そういった現場とは遠い部署か……それか、落第街や歓楽街を少し警邏してみれば良い」

「風紀委員会が戦う相手、と言うものは様々だ。敵を知ることは、勝利への何よりの近道であり……勝てば、死なないのだからな」

と、笑ってみせた。

ジョン・ドゥ >  
「はは、勝てば死なないのか。そいつは楽でいいですね」

 先輩殿の言いぶりに笑っちまう。
 勝ち負けが明確な戦争ばかりだっていうなら、そんなに楽な事はない。

「鼻の下を伸ばせるような美女が居るなら小躍りしますよ。愛想はまあ努力しますよ、俺なりにですけどね」

 こんな学園の美女ってなれば、一癖も二癖もあるだろうけどな。お近づきになれるなら悪くないだろ。

「能力の有無は明確な「差」だと思いますよ?強い力を持ってる相手に、真正面から逆らえる人間はいませんからね。
 精々身の程を知るくらいに大人しくしておきますよ、俺なんかは異能も魔術も使えませんのでね」

 肩をすくめてみる。ラクダイガイ……ああ、歓楽街の奥の方にある危ない場所だったか。
 わざわざ近づきたい気持ちはないもんな。
 

神代理央 >  
「楽だとも」

笑う青年を見上げて、その通りだ、と頷く。

「勝つまでやるか、負けを認めるか。争いはその二択だけだ。そして勝てば生き残る。それは国家だろうが、企業だろうが、個人だろうが変わらない。引き分けとは、次の争いまでの準備期間に過ぎないからな」

それが極論であることは自分でも理解している。
しかし、間違っているとは思っていない。
争いが発生するなら勝敗が発生する。その条件を満たすのが難しいだけで、究極のところ勝敗を求めて争う事に何ら変わりはない。
だから、勝てばいい。それだけだ、と。

「無理に愛想を振るまえ、とも言わないがね。何せ、私に言われても説得力など無いだろう?」

初対面から偉そうな自分に愛想よくしろ、と言われて努力すると答えてくれただけ彼は善人だと思う。
少なくとも、自分は模範的では無いのだし。

「そうだな。確かに能力の有無は区別すべきものではある。
だが、逆らう事は出来る。少なくとも、学園が守る治安の中では、強大な能力を持っているから偉い…という訳では無い。それが社会のルールで、学園の風紀で、規則だからな」

「そして、我々が守るべきはそういう『風紀』なんだ。ジョン・ドゥ。能力を持たざる者でも、能力を持つ者に意見出来る。力が無いから死ぬのは、ルールを守らない者達だけで良い」

「社会のルールを守る限り、あらゆる庇護が与えられる。それが、私達が守るべき社会で。私達が守るべき人々だ」

個人の戦闘能力が強いから、逆らえない。
それは無法の空間では成り立つが、常世学園の統治が行き届いた場所では否定されるもの。
その社会に生きて、そのルールを守る人々を守る事が、自分達の仕事だ、と告げた少年は────

「…だから、ルールを守らず。ルールを守る者に危害を加える連中には」

「容赦する必要は、無い」

社会の外に存在する者を、切り捨てる。
と、宣うのだった。

ジョン・ドゥ >  
「清々しい社会正義ですね先輩殿?」

 ルールを守らない相手なら死んでもいい、と。随分とご立派な事で。

「あんたの言うやり方じゃ、死人が増えるだけだ。それで守れる風紀ってのは、随分安いもんだな先輩殿?」

 「敵」がいなくなるまで殺せば「秩序」が守れるなら、本当にお手軽だ。どこも戦争なんて起きやしない。

「どうも俺は、あんたの言うような社会正義には馴染めそうになさそうだ。悪いね、素行不良になっちまいそうだ」

 ポケットに手を突っ込んで、背中を丸めて笑った。まったく、学園に放り出されて早速こんなガキに鉢合わせるとは思わなかった。

「というわけなので、先輩殿には、精々立てつかせていただきます。能力がなくても逆らっていいんでしたよね?」

 ニヤつきながら敬礼。
 

神代理央 >  
「安くはないさ。人間の歴史は、常にそうやって社会を形成してきた。何千万人が戦争で死のうとも、未だこれ以外の解決方法を人は見つける事が出来ていない」

「であれば、これが現状では最善であり、最適なのかもしれないだろう?」

人間は、石と棍棒の時代から。ミサイルが戦場を飛び交う時代までずっと争い続けて来た。それ以外に、自らの正義を掲げる手段を知らないからだ。
なら、代わる手段が現れるまではそれが正しい。数千年争った歴史が、それを是とするのならば。

「構わないよ。…と言うよりも、風紀委員会内部でも正直私の思想は少数派だ。君の反応は真っ当で、正しく、当然の事だ。
それを素行不良とは、流石の私も責めないよ」

そう、犯罪者なら。違反部活なら。落第街の住民なら。
犠牲を気にすることは無い、なぞ過激派も良いところ。だから風紀委員会において、この意見は少数派。
少数派…つまり、自分一人では無い、と言うところが笑い話にもならないが。

「勿論。但し、今後も風紀委員会に努めるつもりであれば、風紀委員会の指示には従って貰う。個人に従う必要は無いが、社会に、組織に従うのも、ルールだからな」

それこそが、能力を持たない────戦う術を持たない者達を守るルールなのだから。
だから、ニヤつきながら敬礼する君を一瞥し、風紀委員会という組織には従う様に…とだけ、念を押すのだろう。
それも難しい様であれば、別に風紀委員会だけが学園の委員会では無い。進むべき道は、数多くあるのだし。

「…と、長話に付き合わせてしまったな。私もそろそろ仕事に戻る。君はまだ配属先が決まっていない…のかな?であれば、実際の現場を見に行く事も奨励はする。
但し、危険な場所へ赴くのは自己責任だ。歓楽街や常世渋谷程度にとどめておくと良い」

まあ結局のところ、それに尽きる。
他の風紀委員、生徒、更には取り締まるべき犯罪者まで。
様々な者と交流してこそ、自己の正義と言うものは成り立つ。

「では、これで。願わくば、私の部署に配属されない事を祈っているよ」

これは本心。殉職率の高い自分の部署に。新入りを迎えるのは流石に偲びない。
そんな思いが苦笑いとなって表情に現れた少年は──最後に小さく肩を竦めて、街の雑踏の中に消えていった。

ジョン・ドゥ >  
「わかりませんね。正しいか悪いかで戦争なんかしてませんので」

 最善最適、そんなものは存在しない。そんなものが在れば、人はもう少し、死なずに済むはずなんだ。

「……でしょうね、あんたの意見が多数派なら、俺は風紀委員をやめなくちゃなりませんので」

 さて、そうしたらどうなるかな。俺の首が飛ぶか、頭が爆発するか……。

「くくく――」

 そんな事で死ぬのもバカバカしいが、納得のいかない命令に従うのはもっと馬鹿らしいからな。

「了解(ヤー)。それなりには従いますよ。納得がいけばですがね」

 少なくとも、風紀委員が触れ込み通り「弱いもの」を守るって言うなら、ほどほどには従えるだろう。

「ええまあ、現場はそのうち見に行かせてもらいますよ。まだ右も左もわからないものでしてね。……ご忠告どうも」

 ラクダイガイは危険、と。で、コイツが「死んでもいい」と言った社会悪か。
 ……なるほどな。

「こちらこそ。まあその時は是非とも背中から撃たせてもらいますよ、先輩殿」

 偉そうな先輩はすぐに、人並みに消えていった。
 俺には納得できそうにない信念だ。戦場であったらうっかり撃ってしまいそうだ。

「……あー、死ぬかと思った」

 だからって、ほんとに死にたくはないんだよな。 どんな能力なのか知らないが、あのガキならあっさり俺くらい殺せるんだろう。
 あーやだやだ。万が一にも、同じ戦場に立たないように気を付けるとしよう……。
 

ご案内:「学生通り」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「学生通り」からジョン・ドゥさんが去りました。