2023/06/22 のログ
ご案内:「学生通り」にアリシアさんが現れました。
ご案内:「学生通り」にセレネさんが現れました。
アリシア >  
オレンジを片手に学生通りを歩いている。
最近、見たテレビで。
スマホのCMの中で女性がオレンジを片手に晴れた日に街を歩いていた。

ああいうのを“アーバンスタイル”というのだろう。

というわけで私も真似してオレンジを手に学生通りを歩いている。
夕方の学生通りはなかなかの混雑具合だ。

セレネ > 西日が差し込む夕方。
陽は己には毒だ。
外を歩く際は日傘が無いと歩けない。
白い日傘を差して、極力肌に陽を当てないようにしながら
学生通りを歩く。

今日は何を作ろうかしらと献立を考えながら歩いていれば、
ふと視界に入った金色に蒼を其方へと向けて。

『……あら?アリス?』

漏れた言葉は使い慣れた言語。
何故か片手にはオレンジ。…拾ったのだろうか?
彼女の傍へと歩いて行きながら、挨拶でもと声を掛ける。
…勿論英語で。

アリシア >  
「アリス……?」

声をかけられて振り返る。
確かに私はアリス・トゥエルヴだ。
12番目のアリスナンバー。
しかし彼女は知っているように話しかけてくる。

ということは、彼女は私以外の“アリス”を知っているということになる。

常世島にいたアリスは一人だけだ。
アリス・アンダーソン。
2番目のアリス……アリス・トウ姉様だな。

「アリス・アンダーソンの姉様を知っているのだろうか」
「私は妹のアリシア・アンダーソンだ、よろしく」

英語で返した。
やはり慣れた言語というのは喋りやすい。

セレネ > 『ん、姉様?
…あぁ、成程ね。妹さんだったの。』
『なら初めまして、ね。
私はセレネ。貴女のお姉さんとは友人だったのよ。』

彼女は元気で過ごせているのかしら、なんて付け足しながら
目の前の彼女…妹だと言うアリシアへ
片手を差し出して握手を求めようか。

『それにしても、姉妹だけれどよく似ているわね。
双子だったりするのかしら。』

見上げるのも辛かろうと、屈んで目線を合わせながら
しげしげと相手を眺めてしまう。

アリシア >  
「そうか……姉様の友人」

ジプシーが歌いそうな月白の御髪。
白磁のような白い肌。
整った顔立ち、怜悧な印象を受けるコバルトブルーの瞳。
そして……大人の雰囲気。

「姉様はキレイな友人がいたのだな」
「そして………」

片手を差し出した彼女の白い指に視線を向けて。

「何のジェスチャーだろうか…?」

オレンジを片手に小首を傾げる。
アリス・トウの姉様も同じ所作をしたような。

視線を合わせてくれる彼女に頷いて。

「十二人姉妹、全員同じ顔だ」

と断言した。

セレネ > 『綺麗だなんて、お世辞を有難う。
貴女も可愛い子よ?』

未だに慣れない褒められる言葉。
何のジェスチャーかと問われれば、今度は此方がきょとんとする番。

『え…?握手だけど?
…お互いの手を握って敵意がない事をアピールする為の挨拶の一つ…って言えば良いのかしら。』

そのような文化圏で育っていないのか、と思えば
握手の説明を簡単に。
私の手を握ってみて、と促そうとするだろう。

『――12人?それに、同じ顔…って。
まるでそれだとクローンのようね…。』

冗談にしては、そうだと思えないくらいの彼女の言葉。
この時代なら、クローンも比較的簡単に作れてしまうのかもしれないな。

アリシア >  
「お世辞ではないが、可愛いと言われると嬉しい」
「私の顔は敬愛する姉様たちと同じ顔だから」

握手。そうか、握手。
挨拶。ということは私はトウ姉様の挨拶を無下にしていたのか。
今更ながら悲しくなってきた。

「こうか?」

相手の右手を左手で握る。

「ああ、私たちはAの肖像プロジェクトで作られたクローンで」
「私はその12番目の個体、アリス・トゥエルヴで……今はアリシア…」

いやこれ言っちゃいけない話だったな。
どうしよう。汗がダラダラと流れていく。

「という小説の設定があるな………」

手汗がすごい。

セレネ > 『自分の顔に誇りを持っている…って訳でもなさそうだけど。
賛辞を素直に受け止めるのは良い事ね。』

己もそうあらねばとは思うものの、どうにも気恥ずかしさが勝ってしまって。
手を握る彼女の小さな手を、微笑んで軽く握り返した。
「よく出来ました」と褒めればそっと手を離そう。

『………へぇ。』
『そう、それはまた随分と面白そうな設定ね。』

あぁ。これは”真実”だなという事はすぐに察した。
とはいえ、己自身にも基本秘匿している事はあるのだし、
深く問う事はしないでおこう。

アリシア >  
「姉様たちは完璧な美を体現している」
「だから同じ顔の私も決して謙遜は許されない」

相手の手を握ってから離れると。
右手にオレンジを置いて左の手のひらを見た。

「人の手を握る、というのは不思議な気持ちだ」

何かを手に取るための部位なのだから、相互に握ってもいいのだろう。
文化とは素晴らしい。

「そうだ、最近読んだ小説の設定で……」
「そ、そうだ! セレネはオレンジを手に持って歩かないのか?」

「昨日、テレビで流れたスマートフォンのCMで女性がやっていた」
「オレンジを持って賑やかな街中を歩くんだ」

フフン、とオレンジを手に誇らしげに言う。

セレネ > 『成程ね』

彼女は随分とその「姉様達」を尊敬しているようだ。
その気持ちは分からないでもない。
微笑ましそうに蒼を細めては、

『あぁ…そうね。意識している人だと特に…
いやごめんなさい、何でもないわ。』

ともあれこれで彼女は握手をする事を学べた訳だ。
次にもしそういった事があればきっときちんと握手する事だろう。

『オレンジを持ってたのってそういう…。
うーん、私はわざわざやらないかな。
うっかり落としてしまったら嫌だし。』

彼女が何故オレンジを持っていたのかの理由を知り、
その真似しているのかと納得をした。
やらないのかと聞かれれば、首を横に振る。

アリシア >  
「意識? している人………?」
「すまない、それはどういう慣用句だろうか」
「物知らずなため教えてくれると嬉しい」

手を握ったり開いたりしながら聞いてみる。

「………!」
「そうか、オレンジを落とすのは良くないことだな……!」

慌てて錬成したハンカチで手汗を拭うと即座に分解し、
両手で大事そうにオレンジを抱え直した。

「よし」

満足げ。両手は塞がったしちっともスタイリッシュではないが。

セレネ > 『…あぁ。うぅん…。
まぁ、そうね。所謂「好きな人」、かな。』

口が滑ったのは此方なのだし、どうやら彼女は
世間についても疎そうだ。
ならば変にはぐらかすよりも答えた方が彼女の為になるかもしれない。
そうして彼女がハンカチを錬成して、すぐさま分解させたのを見ると
やはりアリスと同じ異能を持っているのだなと考えて。

『ふふ、転ばないように気をつけるのよ?
そういえば、そのオレンジ。持って帰ったらどうするの?
食後のデザートにでもするのかしら。』

久々にオレンジティーが飲みたくなってきたな。

アリシア >  
ふむ。好きな人。そういえばそんな話を聞いたな。

「なるほど………」
「知っているぞ、“関係性の機微”というものだ」
「セレネはいるのか? 好きな人」

転ばないように、と言われるとバッと周囲の地面を確認した。
出っ張りはない。よし………

「もちろんだ、転んだらオレンジが台無しだからな」
「これはオレンジジュースにしようと思っている」

「絞ればいい、簡単だ。火を使わないから一人でもリスクが少ない」

ドヤ顔で答える。
オレンジ一つ買っただけで新鮮なジュースが飲める。

セレネ > 『……。』
『…居る、けど。』

そうだよねぇ聞いてくるよねぇ。
ちょっとだけ言い難そうに視線を逸らした後素直にそう告げた。
嘘を吐くメリットもないのだし。

『あぁ、良いわねオレンジジュース。
なら、帰ったら楽しみね。』

きっと美味しいジュースが出来上がるだろう。
それは良い事だと微笑んだ。

アリシア >  
「そうなのか……人を愛することは素晴らしいことのようだ」
「得も言われぬ満足感があるらしい、私は未体験だが…」

言い淀んでいる。どうやら話しづらいことらしい。
声を潜めて聞いてみる。

「……答えづらいことを聞いたのであれば、謝る」

と言って小さく頭を下げた。

「ああ、器材は作ればいいし異能で半分に斬ればいいし」
「簡易というのは美徳であるように私は思う」

「前に料理に挑戦してみたが………」
「知っているかセレネ、計量スプーンの一番大きなものは大さじとは呼ばないらしい」
「特大さじなのだろうか……恐ろしい罠だ」

神妙な顔つきで語る。
どのような味の料理ができたのか、それは語るのも憚られる闇ッ。

セレネ > 『そうね。誰かを愛する事は良い事よ。
年齢や性別、時には種族すら超える事だってあるし、
愛の形も様々だから一概にこれが正解だって訳でもない。』

『あぁ、いえ。貴女は悪くないわ。
私が恥ずかしがりなだけだから。
人によっては喜んで話してくれる人も居るでしょうし。』

だから、好きな人の有無について聞くのは決して悪な訳ではないのだと。
謝罪をする彼女の頭を、許されるなら撫でようと手を伸ばした。

『手間がかからないのは時短にもなるしね。
私もその通りだと思うわ。』
『……まぁ、何事も失敗して学ぶのだから。
色々と試行錯誤しながらやっていけば上手くなっていく筈よ。
料理の得意な友人に教われば、猶更良いのではないかしら。』

思わず苦笑してしまいつつ。

アリシア >  
「やはりそうなのか……」
「愛とは時間や空間も超える素晴らしい力なのだな」

これは漫画の受け売り。

「セレネは恥ずかしがり屋なのか……」

頭を撫でられるとふと、同じようにしてくれたワン姉様のことを思い出していた。

「私は」

少し逡巡して。

「思うのだが……」
「友人というのは料理を作るよりもハードルが高くはないか?」

「学校の家庭科室を借りて一緒に料理をしようと誘える友達を作るんだぞ」
「私の錬成でも到底及ばないハイレベルな問題だ」

弱音のようだが、私には巨大な怪異を殺すより難しい。

セレネ > 『想いが強いのならそういう事もあるかもしれないわね。』

まさか受け売りだとは思ってない。

『そう。だから貴女は悪くないの。』

頭を撫でる事の拒絶はされなかった。
そのまま少しだけ、撫でさせてもらうとしよう。

『うん?…あー…成程、友人が…。
人見知りだったりするなら確かに難しく感じてしまうのでしょうね。』

己も小さな頃は人見知りだったし。
うーん、と少し考え込む。
自分も四年になって多少なり忙しくなってしまったのだよな…。

『でも、貴女なら友人を作るのはそう苦労しなさそうな気がするのだけれど…?』

アリシア >  
頭を撫でられるとセレネの手のぬくもりが伝わってくる。
人の手はやはり不思議だ。
様々なことを行える身体部位で、
安心や危害を相手に与える手段でもある。

「私は発言が突飛らしい」
「物知らずではあるが、それが原因で常識を知らない発言をしてしまう」

「今のままではいけない、焦ってばかりで空回りしてはいるが…」
「いつか、一緒に料理を練習するような友達を作ってみせるぞ」

セレネ > よしよし、と大人しい彼女の綺麗な髪を一頻り撫でれば手を離す。
うっかり初対面である事を失念していた。
可愛い女の子にはつい頭を撫でてしまう。

『”知らない”という事は何もマイナスではないと私は思うの。
知らないなら、知る機会が得られる。沢山の知識を吸収出来る。
勿論、知らない方が幸せな事もあるけれど…。』
『それでも、貴女が変わりたいと。友人を作りたいと思うならきっと出来る筈よ。
応援するし、機会があれば私と一緒に作ってみるのも良いかもね。』

時間が合えばになるけれど、と。
軽く肩を竦めてみせながら。

アリシア >  
彼女が手を離すと、少し気恥ずかしい気持ちになりながら顔を上げる。

「ありがとう、セレネ」

と、素直にお礼を言った。

そして続く言葉にぱぁっと表情を明るくして。

「セレネは料理ができるのか……!?」
「だったら教えて欲しい、私にもできる範囲で!」

「ああいや、厚かましいだろうか、しかしこの千載一遇の機を逃しては」
「いつまで経ってもコンビニで食事を済ませる毎日…」

「知る機会を私に与えてくれ、セレネ」

オレンジを胸に抱えてすごい勢いで頭を下げた。

セレネ > 『どう致しまして。』

礼の言葉にはなんて事はないと小さく首を振ってから。

『えぇ、自炊はしているからね。
……コンビニのご飯も悪くはないけれど、
栄養が偏ってしまうから困りものよね…。』

『――良いわよ。まずは簡単なお料理から教えるわ。』

頭まで下げられてしまった。
そこまでなのかと思いはすれど、彼女にとっては渡りに船かもしれない。
それに、このままずっとコンビニのお弁当や惣菜というのも発育上宜しくない。
なら、力になろうか、と。

アリシア >  
綺麗な人がここまで優しいとは。
世の中には不思議なことがたくさんある。
その神秘の一つに私は触れているのかも知れない。

「重ね重ねありがとう、セレネ」
「トウ姉様はとても素敵な友人関係を構築していたようだ」

オレンジを抱えたまま何度も頷いて。

「それでは……」

おっかなびっくり携帯デバイスを操作して連絡先を交換。
これでよし。

「それでは時間が許せばまた会ってくれ、セレネ」
「では私はこれで」

嬉しそうにその場を後にした。

セレネ > 『そうね…きっと貴女のお姉様はもっと素敵な友人が居るのかもしれないわ。
その人達も、もしかしたら貴女に力を貸してくれたり、
貴女の友人になってくれる人も居るかもね。』

独りで生きてはいけないのは、人も神族も恐らく同じ。
彼女と連絡先を交換すれば、立ち去る彼女の小さな背を見送った。

『えぇ、またねアリシア。気をつけて帰るのよ。』

膝を伸ばせば小さく手を振って。
さて己も行くかと、買い物をしに逆の方向へと歩き出すのだった。

ご案内:「学生通り」からアリシアさんが去りました。
ご案内:「学生通り」からセレネさんが去りました。