2019/03/04 のログ
ご案内:「商店街」にジャムさんが現れました。
ジャム > この異邦人の半獣が最近聞いた話。
この地球には「私服」「制服」という衣装チェンジシステムがあるらしい。
服といえば着れたらいいや、ぐらいしか考えていない脳筋異邦人にとって、たまに学内と学外で別の服を着用している様子は不思議だった。

常世学園ではそのあたりが緩く、自分と同じように公私に無頓着の異邦人も居るけれど。せっかく地球に来たんだし、と春休みに合わせて服を買いに商店街に来たのだった。

「服屋さん……服屋さんとー。どのあたりにお店があるんだろ。
――あー!ここかな!?」

バイトのお給与握りしめてやってきた、普段行かない場所。
うろついた後にそれらしきお店を遠くに見つけて小走りに駆け寄っていく。

ウインドウごしにマネキンが纏う、ふわふわフリルのついたメイド服、スリットが腰の上にあるチャイナドレス、面積の少ない競泳水着に、巫女服、全身銀ラメスーツ。

――地球文化に不慣れな異邦人は気づいていない。
お店の看板には甘ロリな文字で「コスプレショップ」と書かれているのだった。

「これが私服かあ……!
どれにしようかな……!」

すっかりこれが普段着だと勘違いしつつ、ウインドウに張り付いてあれこれ楽しげに見ている異邦人。

ご案内:「商店街」に玖弥瑞さんが現れました。
玖弥瑞 > 春休みに入れば、教諭の仕事も比較的手隙になる。
もっとも玖弥瑞は来年度から正式にカリキュラムを割り当てられるため、この1ヶ月もしっかり準備せねばならぬが。
それでもデスクや仮想空間に引きこもってばかりでもいけない、1日数時間の散策はかかさない。
いつもどおりのスク水姿で街をゆく。まだまだ春は遠く、その装いは寒々しい。

……と。アパレルショップのショーウィンドウに張り付くひとつの人影が気になり、脚を止める。
背後からでもよくわかる獣耳。さて彼女は異邦人だろうか、自分と同じ妖怪だろうか、それともコスプレだろうか?
それよりも、春休みになったというのに制服姿のままという方が気になる。
遊ぶときくらい気ままな衣装を纏ったほうが開放的になれるだろうに……。

「……もし、そこの女子。お前さん、コスプレに興味あるんかぇ?」

声を掛ける。
振り返れば、ジャムよりもやや小柄な狐耳少女が目に入るだろう。
玖弥瑞の装いと似た衣装が、ショーウィンドウの中にあるかもしれない。

ジャム > ビキニほどしか面積が無いのに、胸元には赤十字のマークがついた看護師スタイルに、召喚儀式につかえそうな赤白の清楚な装い。かと思えば胸元と背中があんぐりってほど開ききった珍しいセーターが並んでいるのを、瞳きらきらと物珍しそうにしている。

「あー!玖弥瑞せんせ!こんにちはー!
……そうだよー!僕、この学校から貰った制服気に入ってるんだけど、友達から私服も持っておいたほうがいいって言われて。買いに来たんだー」

既知の相手、小柄で愛らしいスク水狐さんの授業には何度か参加した事がある。振り返れば、教師の相手としては「そういえばこんなヤツ授業にきてたかもなー」ぐらいの認識の既知かもしれないけれど。見知った先生へ明るい声音の挨拶して事情を話す。

「そういえばー、あの服、あの動きやすそうな服。
せんせと同じデザインだー」

ふと気づいた似た装い。あっちとこっち、とばかりに店の奥へ指差して。

玖弥瑞 > 「お、おう。妾の臨時講義におった子じゃったか。すまんの、妾はヒトの顔を覚えるのが苦手でな…。
 今思い出すからの。ええと、んー………ああ、ジャムじゃったか?」

振り返った獣人の顔は、たしかにパソコン初級講座で見たことがあるような気がする。
しかしその顔と名を一致させるのには時間を要した……実のところ、人知れずこっそり検索通信を行っている。
普段ちょっとした調べ事にも検索を多用していることの弊害である。

「はぁ、なるほど、私服を探しとる。
 で、覗いとるのがコスプレショップと。くふふっ、面白い趣味をしとるのう、ジャムは。
 ……いや、妾の言えたことではないか」

快活な声で語る、彼女の事情を聞く。一瞬吹き出しそうになるが堪え、少し引きつった笑いを浮かべるに留める。
ジャムにそういう趣味があるのかもしれないが、まぁおそらくは勘違いでこの店に気を引かれてしまったのだろう。
だが……それはそれで、面白い。

「んー、なるほど。確かにここには妾と同じ衣装……スク水があるかもの。
 ジャムよ、実際に店に入って試着してみてはどうかね? 感想くらいは付き合ってやろうぞ」

挑発とばかりに、入店を唆してみる。しかし。

「……じゃが、こういうお買い物のときは前もってはっきりさせておくべきじゃぞ。
 自分が今何を買おうとして、普段それをどう使っていくのか、しっかりしたビジョンを……な」

一応釘もさしておく。

ジャム > 「あは!……僕から見たら教室内にせんせは1人だけだけど、玖弥瑞せんせから見たら何人もいるもんね。
でも!覚えててくれたんだね!嬉しいなー!」

相手が検索通信を行っているとも気づかずに。
キーボードのエンターキーの場所も知らなかった自分に調べ物できるまで優しく教えてくれた、信頼してる教師に名前を覚えててもらったんだとぴこぴこ跳ねるケモミミ。

「うん!……あんまりお洋服のことわからなくて。
適当に服屋さんを探してたんだけど、ここ見つけてー。
……?面白い趣味だったかな?」

吹き出してしまいそうなのを仕舞い込んだ表情になっているとも気づかず、続けて今の顛末をかいつまみ。
言葉の後半に軽く首傾げた。

「そうだね!同じ、紺色の服だ!
わー!付き合ってくれるの?ありがと、玖弥瑞せんせ!
じゃあじゃあー、一緒に入ろうよ!
――ビジョン……?
えっとー。……僕は今服を買おうとしてる。
で、買い終わったらそのまま着て、玖弥瑞せんせとお揃いになってハッピーになる!」

入店促されて、ほっそりとした肢体包む彼女のスク水を見下ろして。自分のお買い物に付き合ってくれる事に喜び揺れる尻尾。
釘さされるが、脳筋にはあんまり響かなかった模様。

「ほんといろんな服があるね……!地球ってたのしい!
スク水……と。……あった!これだよね?
じゃあじゃあ、試着してみる!」

色んな衣装の森をかいくぐっていくと、見つけたスクールデザイン。さっそく手に取り、試着室へ、彼女と連れ立って行こうと。

玖弥瑞 > 「ほ、ほう……妾とお揃いになるのがジャムは嬉しいのかぇ。
 そう言ってもらえると妾も嬉しいが……な……ううむ」

箴言はこの無邪気な獣娘の耳には刺さらなかったようだ。
まぁ、自分がここで無理に諌めなくても遅かれ早かれ自覚することになるだろうけれど。
だが一応はこの学園の教師である、なるべくジャムが『間違い』を起こすことは避けたい。
計らったように陳列してあった旧式デザインのスク水を手に取るジャムを追って、試着室へ。
女性同士、そして生徒と教師である。一緒に試着室に入ってもまぁ大丈夫だろう。

「……そうじゃな、お前さんがハッピーならそれもよかろ。
 じゃが、私服っつーのは制服と違い、『自分が他人にどう見られるか』を表現するモノなのじゃぞ。
 ジャムは私服を着て、他人にどう見られたい?
 カワイイ、カッコいい、おしゃれ、無邪気、凛々しい、独特……あるいは、変なヤツ。いろいろあるぞ?
 お前さんの選んだそのスク水は、他人にどう見られると思うね?」

ジャムは早々に着替え始めるだろうか? ともかく、玖弥瑞は周囲の気配に気を配りながら、まじまじとその様を眺める。
そして、通じないことも覚悟のうえで、さらに忠告を続ける。往々にして服というのは高い買い物なのだから。

「……もちろん、着飾る以外にも寒さをしのいだり、怪我を防ぐ役目もあるがな。
 ジャムよ、お前さんはスク水を着てほんとうに外を歩けるかぇ?」

そして、より核心に迫った箴言も。まだ外は寒いぞ!

ジャム > 水着の不思議な手触りは、自分の元いた世界には無かったもの。スク水の繊維に手を触れさせると、滑らかな表面を撫でたり、頬をすりすりしてみたり。この世の裁縫技術の高さに感動している様子。
試着室に彼女が一緒に入ってくるのに一瞬、このお部屋ってそういう使い方だっけ?みたいな表情になるけれど。同性同士だから良いや、と思い直した顔芸。

「うーん……。そうだなあ……。
かっこよくてかわいくて、学生街のちょっと高いカフェでしゃべってる人間みたいなおしゃれがしたいな!
この服はー、えっと。……泳ぎが上手そうって見られるかな!」

試着室内に入れば、ぱぱぱっ、と手早く制服の胸元を緩め、ファスナーを上げ、スカートのフックを外し。異邦人にとって下着も服の一部なので、下着も脱ぎ払う。その姿のまま、軽く首を傾けて考えたそのままを口にして。
箴言という相手の気遣いにも気づかずにIQ低そうな答えを笑顔で答えるのだった。

そんな姿で、スク水を着ようと四苦八苦してる。
腕と足と頭を通す穴がどれなのかよくわからず、参考までにと相手を見ながら身に付けてみる。
ほっそりとした体躯に、紺色の生地がぴたりと張り付いて。なだらかな胸から細い腰つきまでが妙に強調されていた。
なんとなく、グラビアポーズみたいに両脇を見せて微笑みかける。

「どう?僕似合ってるかな!
――あー……。このままお外歩くのは、……まだ寒いなあ。
せんせとお揃いになれないのは残念だけど……他の買おうかな。
……ね。他の服で僕に似合いそうなのって何かな?」

相手の核心迫る箴言に、ようやく納得した模様。残念そうにするも、するするとスク水を脱ぎ始め。
脱ぎながら尋ねてみせる。

玖弥瑞 > 「くふふっ、そうじゃ、ジャムはよく分かっとるの。これは本来、水泳のときに着る衣装じゃ。
 泳ぎが上手そうに見えるのは確かじゃろうが、海の季節はまだまだ先じゃの。
 そのときになってまた見繕えばええ」

事もなげに脱ぎ払った下着類を拾って畳んだり。
スク水のような単純な作りの衣服にすら四苦八苦するジャムに、時折救いの手を差し伸べたり。
実際のところ、異邦人の赤裸々な場面にこうして深く付き合うのは初めてである。
玖弥瑞の顔からは苦笑いが外れないが、それでも、実に様々な生活様式の者たちが集まっているのだと実感する。

「……おお、なかなかキマっとるじゃないか。妾ほどじゃないがな! くふふっ。
 スク水もいいが、もう少し際どい水着も似合うかもしれんの。夏を楽しみにしとくとええ。
 ……うむ、じゃが今着るには寒かろう。よく気づいたの。止めといたがええ」

褒めるところは素直に褒める。引き締まった体は高露出な服、あるいはピッチリした布を纏ってこそ映えるというもの。
でもその『カッコよさ』は、先程述べたジャムの『おしゃれ』のイメージとはちょっと離れているだろうか。
無駄に囃し立てず、薄地の肌寒さに気付いたのならばピシャリと制止する。

「ちと遅いが言っておくとじゃな……この服屋は『面白く見られたい人』のための服屋じゃ。
 大道芸人とか、劇団員とか、あるいはお祭り向けの……な。コスプレショップという。
 お前さんが『おしゃれ』に見られたいのなら、もっとよい店があるぞい。
 連れてってやるから、はよ着替え……あーいや、慌てずに脱げよ。コスプレ用のスク水は破れやすいからの」

……そうして、ジャムが制服に着替え直すのを待って。
コスプレ店の店員に2言3言謝罪をしたのち、ジャムを連れて店を出よう。
玖弥瑞が連れていくのは、コスプレ店からそう離れてもいない立地の、ごく普通のレディースアパレル。
きゅっと締まって飾り気もくどくない、薄桃色のワンピースがマネキンに仕付けられている。

ジャム > 「あはっ、ありがと!
もちろん、玖弥瑞せんせの可愛さには叶わないよー!
際どい水着かあ……。そういえば、お胸とお股のところが丸く開いてる水着、さっき壁にかけてあったよ?
うんー、今はやめとくよ。お揃いするなら夏かな?
せんせと海にいって、浜辺でビーチバレーする時にでも!」

褒められて嬉しそうにお礼を告げると、相手の愛らしさには及ばないとばかりに頷いて。
際どい水着、の際どさの意味を勘違いした模様でオープンクロッチの水着のことを口にする。
それでいてもお揃い願望は諦めていない様子。
スク水たる存在がひときわ輝く頃に夢を定めるのだった。ぐ、と片手の拳握りながら。

「面白く……?
へぇー、そうなんだ?うーんじゃあ、ここはサーカステントのピエロの人が着るような服を売るお店なのかな?
よくわからないけど、わかったよ!」

黒尻尾で?マークを作りながらも、丁寧な解説にようやく合点がいった様子。半分ぐらいは。
言われるままにゆっくりとスク水を脱いで。
拾って畳んでもらっていた下着を見につけ、制服に袖を通し直した。

「わ、かわいい……!収穫祭の舞踏会に出られそうな服だね……!
えっと……お値段は……。」

お目見えしたワンピースの品の良さに、ぱっと顔色を弾ませて。
自分でも手が届く値段だろうかと、おそるおそる値札を覗き込み。

玖弥瑞 > 「ぶっ……くふっ、くふふふ……そうかぇ、そんな斬新な水着もあったかぇ……妾は気づかなんだ」

オープンクロッチ水着を目ざとく見つけたジャムに、玖弥瑞は危うく吹き出しかける。
そして目線をそらしながら、どう言い繕おうかとしばし逡巡するが。

「……まぁアレだ。妾がこうして街中で着ているように、『泳ぐためじゃない』水着っつーのもある。
 用途はさっき言ったように『面白く見られるため』というのもあるが、その他の用途もある。
 どういうのかは……くふっ。自分で調べてみるとええ。せっかく妾の授業でパソコンの基礎を伝授したんじゃからな」

相手もまるっきし子供というわけでもない。過度に言い含めず、はぐらかしもせず。
この世の真実には自分の手と足で迫ってほしいという期待をこめて、そう言うにとどめた。

さてさて、『マトモ』なアパレルショップの前にて。
あくまでもここは学生向けの商店街である、価格帯も学生基準の程度に抑えてある。

「お高い服がほしければココより繁華街の方に行くほうがよかろうて。
 とはいえ今は春物真っ盛りじゃから、コレもそう格安というわけでもなかろうが……ふむ」

値札に書かれた額は、現代の価値基準にして6,000円程度。安めといえようか。
桜を思わせる淡い桃色の無地、袖は肘の丈、襟元にささやかなレースがあしらわれているがそれ以外に飾り気はなし。
裾も膝下までゆったりと伸びるが、プリーツが多めに繕われ、歩けばきっとふんわりと優しく広がるだろう。

「悪くない額じゃの。ジャムの予算がどれほどか知らぬが。
 妾の見立てでは、こういうワンピなら街中を歩くには十分におしゃれだと思うぞ。色合いも季節感がある。
 そんでもって、ジャムのような元気な女子なら、裾は広めのタイプがええ。
 長すぎずキツすぎず、走りやすい造りじゃし、風に舞って広がる裾はなかなか絵になろう。どうかね?」

ジャム > 「わかったよー!あとで、グググって調べてみるね!
せんせの授業のことちゃんと覚えてるから。あのちっちゃい窓に調べたい言葉入れるんでしょう!」

何やら着地点を迷ってるヘリコプターみたいな物言いの彼女に、ぴしっと片手を上げて了解。
教えてもらったことはちゃんと身についてるとアピって。
……試着室の中でガタガタと苦労しつつも、無事にスク水は商品棚へと戻る事となる。

「みんな春っぽい気持ちだもんね。春のお洋服欲しくなっちゃう気持ちわかるよ。
僕も今、そんな感じ。……せんせは、そんな気持ちにならない?お着替えしたいな、とかさ。
――うんっ、これなら僕のバイト代で買えそう!
サクラって花の色にも似てるしー。ふふ!私服って感じがする!
これに決めたよー。買ってくる!待ってて!」

雑談かわしつつも、一緒になって値札覗き込む。
お手頃な値段に大きく頷けば、デザインを改めて見直した。
シンプルだけれど、ひだの多い足元は春風に揺れるのにちょうど良さそう。
良いもの探してもらえた、とばかりにふぁさふぁさケモミミが嬉しそうに羽ばたいて。
欲しいと認めたら即行動。マネキン脇の什器にかかっていたその服のハンガーをとれば、ぴゅーっとレジへと直行。

「おまたせー!へへー!これ着て帰る事にしたよ。
どうかな?どうかな?」

ほどなく相手の元へ戻ってくる時には、薄桃色のワンピース姿。
片手持っていた、今まで着ていた制服の入った手提げ袋を置き。
くるっとその場で一回転。裾を舞わせて尻尾を伸ばし。にー!と白い八重歯浮かせながらの横ピースで先生にお披露目する。

玖弥瑞 > 一応玖弥瑞としても、ふと目についたワンピを一押しのつもりで評してみたつもりだが……。
このジャムという娘には躊躇という概念がないのか?
風のように店内へと舞い込んで試着もせず購入する様子には、さすがに呆気にとられる。
さらに、購入後に試着室へ。順序が逆じゃなかろうか。

「……お、おう。お早い購入じゃな。
 まーサイズがピッタリなのは分かっておったが、その、アレじゃぞ、ジャム。
 服選びってのはもう少し悩むもの……悩むのを楽しむ一種の『遊び』だと思っとったんじゃが、違うかの」

ここまでジャムに付き合った玖弥瑞も、実のところ、『服選び』という行為に触れたこと自体ない。
アバターである玖弥瑞は、いま着ている寒々しいスク水以外の着衣を選べないのだ。
だから、あくまでも一般常識に照らし合わせて、テンションの高いジャムを諌める言葉を紡ぐ。

「いや、はじめてのお買い物ならいっそ割り切るのもええか。悩むのは次からでもよかろ。
 しかし……せめてもう少し調整をしたほうがええぞ。ほれ、尻尾で裾が持ち上がっとる。
 スカートがはためくのは可愛らしいと言うたが、中身が見えるほどズリ上げるのははしたないぞ」

スカートの中に仕舞われた尻尾の窮屈さは気になるものの、くるりと舞うさまは早咲きの桜のごとくに愛らしい。
彼女が言ったように、収穫祭の舞踏会でも一目置かれそうだ。

………ふと、玖弥瑞の脳裏にちくりと痛みが走る。悪い感情が芽生える……その名は『嫉妬』。
おしゃれを気ままに楽しむジャムの姿に、例えようのない羨ましさを感じる自分がいた。自分にはできないコトだから。
しかし大人であり教師である玖弥瑞は、表情には一切出さない。代わりに、ちょっぴり辛辣に指摘する。

「ほれ、この島は異邦人も多数在籍しておる。ジャムのような……あるいは妾のような尻尾持ちもな。
 きちんと店員に頼めば、尻尾穴くらい作ってくれるじゃろ。ちゃんと位置を測ったりしてな。
 そういった細かい気配りも『おしゃれ』の内じゃぞ?」

ふぅ、と深い息を吐きつつ衣服の調整について説明する玖弥瑞は、少しばかり硬い表情になっていただろうか。