2019/03/11 のログ
ご案内:「商店街」に紅乃 月華さんが現れました。
■紅乃 月華 > 「あと、必要なのは……。」
そう呟きながら女はまだ人通りがそれほどない商店街の中をメモを片手に歩き回る。
昨日は目当ての店が開いてなかったので直ぐに帰ってしまった。
帰り際にアイスクリームを食べながら一人で歩いている小学生がいて、一応声をかけようかと思ったが余計なお世話だろうかと思いそのまま帰ってしまった。
■紅乃 月華 > 「おっと、着いたかな?」
そんなことを回想している間に目当ての店に辿り着いたので入店する。入ったところは一風変わった店。
必要な、特殊な材料が何故か手に入るこの店は彼女のお気に入りであり店主とも顔なじみである。
「いつものお願い」
この一言で材料を手に入れるとお礼を一つ言い代金を支払うと
早々に立ち去っていく。
ご案内:「商店街」から紅乃 月華さんが去りました。
ご案内:「商店街」に白鈴秋さんが現れました。
■白鈴秋 > 福引、それは本来嬉しいことのはずである。
旅行だったり高額商品だったり、当たって嬉しい人はおれど当たって嬉しくない人など居ない。
そう、居ないはずだった。
「ここまで来ると運が悪いんじゃねぇかって思いたくなるな」
だがこの男は違う。偶然が重なり結果嬉しいはずの福引は嬉しくない物となった。
彼が持つものはまず片手には買い物として買ったであろう買い物袋2つ……そう2つである。なぜ2つかと言えば単純。本来これを両手に1袋ずつ持って帰る予定だったからだ。
そしてもう片手には……大きな箱を持っている。新生活が始まるこの時期、景品として本来は喜ぶべきである物……扇風機。それが入った箱を持っていた。
プラスチックの持ち手のお陰でなんとか持てているが、それでも重いし邪魔である。
本来は台車を借りれるはずだったのだがまさかのまさか、彼の前にミニ冷蔵庫を当てた人がいたらしくそっちに貸し出し中との事。帰ってくるまでスーパーで待つというのも手だが2時間くらいかかるとのことで断った。
そんなこんなで彼は本来ならば両手で持つべき物をそれぞれ片手に持っているというとんでもない苦行となったのである。
「その辺に捨ててくわけにもいかねぇし、クソ」
その表情は完全にイライラしていますといった様相。そのせいもあって尚更人が寄ってこない……ある意味歩きやすくはあった。
しかも夕方にはいるかどうかといった時間帯。人通りはそれなりに多いが彼を避けて通る。本当に便利だ。
ご案内:「商店街」に玖美・E・Aさんが現れました。
■玖美・E・A > 「ひーん、まさかまさかだよー……こんなに運が悪いことってあるんだなぁ……」
少し前に大きな買い物をして、なんと十二枚ももらった福引券。そして港運にも友達から貰うことのできた三枚も合わせて十五枚。これだけあれば三等の牛すき焼き肉セットか、そこまではいかずともその下のお菓子詰め合わせ位はもらえるはず。
……そう思って挑んだ結果、玖美が手にしたのは無情にも十五個のポケットティッシュだった。福引きのお姉さんもすごく気まずそうな顔をしてた。切ない。
泣きたくなるのをこらえながら帰り道につこうとしていたところで、
「……あのぉー、大丈夫ですかー?」
大きな荷物を抱えている人がいるなぁ、と思ったのと、その人に話しかけるまでのタイムラグは、とことこと歩み寄る約三秒を合わせても五秒弱程度だった。
背の高い(少なくともこちらよりは大分高い)彼が険しい表情をしているのも、躊躇いを抱く理由にはならなかった。
■白鈴秋 > 「……そもそもなんだ扇風機って、明らかに廃品処理じゃねぇか」
イライラの原因は重いというのも勿論だが、それに加えてこの微妙な景品である。
なんとなく引けるからという理由で引いたのが運の尽き、何時もの通り無視すればよかったのだが。
そんなのも重なりのこの表情である。
「あ?」
さて、そんな事を考えながら歩いていると聞こえた声。声のした方へ振り返る。
「正直言えば大丈夫ではねぇな。腕が後2本は欲しい」
そうすれは本来必要な腕の数とかみ合うのだろう。手を動かしたいものの、もはやそんな余裕はない。
ふと手元に視線がいった。そこにはティッシュの山。
「……なんというか、お前もお前で中々に運が悪いみてぇだな。15連続で外す奴は聞いたことねぇぞ」
思わず少しだけ苦笑いを浮かべてしまう。15連続で外すのと欲しくも無い物で苦行を強いる羽目になること。どっちが運が悪いかは……まぁ、そこまで変わらない事だろうか。
■玖美・E・A > 「腕ですかぁ、私はサイボーグ技師じゃないのでそれはちょっとお手伝いできないかもです……」
真剣に首をかしげて考え込む。腕を増やす異能、魔術はさすがに聞いたことがない。もしかしたら広い世の中のどこかにはあるのかもしれないけど、少なくとも自分には使えない。しかし、
「そちらはいいものが当たったみたいですねー、羨ましいなぁ……ええっと、それじゃあこれはお祝いってことでー」
そう言って小さく屈むと、口許に手を添えながら、フッと息を吐く。
すると、大きめのシャボン玉のようなものが4つか5つほど飛び出して、彼の手にしている扇風機に当たった。その瞬間、その箱は重さというものから完全に解き放たれる……はず。
■白鈴秋 > 「安心しろ、軽い冗談だ。ホントに腕生やされても困る」
相手が真面目に受け取ったのを見て思わず訂正。本来なら手を軽く振りたいところだが、今は振れない。
「人次第だがな、俺からすりゃお前の持ってるティッシュの方が余程有用だ……一人暮らしで扇風機2台もあってどうするんだって話だしな」
はぁとわかりやすく溜息。なんでも最新式の扇風機……らしいが、風を送れれば良い扇風機に最新も何もあったものではない。
さて、シャボン玉を見て少し首を傾げていたが。
「うおっ!?」
急に軽くなる片手。言い換えれば今までつりあっていたバランスが崩れるという事で。
危うく買い物袋を地面に激突させかけたが、耐えたのは彼の訓練故だろう。
「か、軽くしてくれるなら先に言って欲しい。何はともあれ助かった」
ふわっふわになっている箱を持っている手に袋をひとつ持ち変える。
それからキョロキョロとして。
「あー、時間あるか? やってもらってなにも無しってのもあれだ、少し礼でもさせてくれ」
と顎で指し示すのはベンチ、その傍には偶然というべきか移動クレープ屋が止まっていた。
「自販機で茶でも良いし、アレでも良いしよ」
■玖美・E・A > 「あ、冗談、ですか?えへへ、ちょっとビックリしちゃいました」
照れ隠しのように両手の指を絡めてもじもじ。まぁとにかく彼の助けになれたならよかった、と素直に思っていたのだけど、
「……えっ、いいんですか!?じゃあクレープ!クレープ一緒に食べましょー!あっ、そっちも軽くしますね!ふーっ」
食べ物がもらえる、となると俄然目を輝かせ始めた。待ちきれないと言うように、いつものゆったりした動きも気持ちテキパキとスピーディーになる。買い物袋も勝手にシャボン玉を吹き掛けて軽くして見せたけれど、一応確認だけは取った。
■白鈴秋 > 「クレープな、わかった」
と歩こうとして。一言言われたために今度はバランスを崩さずに済んだ。
「むしろ軽すぎて違和感が出るくらいだな」
重量からの開放。手にたしかに感覚はあるのに一切重さを感じない。
不思議そうに2度3度持ち上げたりしてみる。
「っと、悪い」
彼女が嬉しそうにしていたのに不思議さに囚われ思わず別の事をしていた。
ベンチの方まで歩き、袋と箱を下ろす。そしてサイフを取り出すとそのクレープ屋の前に。
「コーヒークレープ。クリームは少なめで良い。それで……どれが良いんだ?」
と彼女に聞く。好みも知らない上に彼はこういう物をまず食べない為そもそも何が美味しいかすらわからないのだ。
コーヒークレープもそれが好きというわけではなくコーヒーが好きなので頼んだレベルであった。
■玖美・E・A > 「えへへー。私の異能です、便利でしょ?先生に勝手に使わないようにって言われてるから、内緒ですよー」
なんて言いつつ彼についていく足取りは軽い。甘いものは無条件に人を……というか玖美を幸せな気分にするものである。
「あっ、私はいちごチョコスペシャル!お願いします!」
そのテンションのまま躊躇いなくトップクラスに高いクレープを注文すると同時に、半ば無意識にポケットから財布を取り出す。ピンク色の、真新しい長財布だ。
■白鈴秋 > 「まぁこの時期なら先生も巡回してねぇだろうし大丈夫だろ」
内緒ですよと言われると少しだけ苦笑いをしてそう返した。バレた場合自分もまとめて怒られそうだが。まぁ良い、別に責任ある立場でもないのだ。
サイフを出そうとすればそれを手で制する。
「礼だっつってんだろ。俺が出す……イチゴチョコスペシャルで良いそうです」
そうして2人分の金額を払う。
そうして待つことしばらく。クレープが出てくる。
「そういえば、15回も福引引いて何が欲しかったんだ? ……ん」
気になった事を聞くのと一緒にクレープのイチゴチョコスペシャルを差し出す。
上から溢れんばかりのイチゴとチョコソースが見えていた。
対する彼のはコーヒークレープクリーム少な目。わかっていたが黒色が強い。
「って、そういえば名前すらしらねぇな。白鈴秋だ、好きに呼べば良い」
名前すら知らなかったので先に名乗る。一口クレープを食べる。
■玖美・E・A > 「あ、そうでした、えへへ」
『クレープを食べられる』というところにばかり意識が行っていて、奢ってもらうという部分をすっかり忘れていた。ともあれ、念願のいちごチョコスペシャルクレープを受け取る。
「すき焼きのお肉です!最近お肉食べてないのでどうしても食べたくてー……あ、私は玖美・エルメスティーネ・アドラスヘルムです。長いので、玖美ちゃんでもティニでも、お好きに呼んでください」
と、質問の答えと自己紹介とを手短に済ますと、大きく口を開けてクレープを一口。口の回りにクリームがつくのも厭わない食べ方にお金持ちのお嬢様らしさは欠片もない。
■白鈴秋 > 「ああ、あれか。かなり良い肉だったらしいからな……アドラスヘルム?」
ふと聞いた苗字を聞いて少し首を傾げる。
傾げて……あぁ、と声を出す。
「あそこの家の奴だったのか……そうは見えねぇけどな」
食べ方を見てまぁ人それぞれなんだろうなと納得してしまう。
それからティッシュを見て。
「ある意味ラッキーだったな。口元凄いことになってるぞ」
そう少し笑って、彼女が当てたティッシュを指差す。
■玖美・E・A > 「うちのこと知ってるんですか?うふふ、なんだか嬉しいですねー」
ニコニコと笑いながらまた大きく一口。甘酸っぱいいちごとチョコソースが実によく合った絶妙の味わい。それを全く邪魔せず、しかし上品な甘味を主張する生地。そして何よりもたっぷり生クリーム。クレープはこの生クリームを食べるために買うと言っても過言ではない。はぁ……たまらなく美味しい、幸せ……と、顔を綻ばせていると、
「ん……クレープは、こう豪快にいってこそ!なんですよ!女の子らしくとか、かわいくとか、そういう食べ方に囚われてると美味しさが逃げていきます!さぁ、白鈴さんもやってみて!」
口許を拭こうともしないまま、いきなり力説して詰め寄り始める。眠そうな緑の瞳にも、心なしか覇気が宿っている……ようにも見えるかもしれない。
■白鈴秋 > 「名前だけだけどな。一応俺の家も商家だったからよ」
直接取引があったとかそういう話は聞いた事は無いが、それぞれの国でそれなりに財力がある家の話は聞いたことがある。
嬉しいと彼女は表現するがこっちは不思議な気分である。名前だけ知っている家の娘と会うなどとは思っていなかった。
「あ? ああ?」
力説、そして覇気。
彼は自身のメンタルには自信があった。例えマシンガンで武装したマフィア相手であってもためらい無く攻め込めるだろう。
自分より目上ばかりが揃う発表会で静寂を切り裂くなども容易だ。そんな自身のメンタルは凄まじいものだと思っていた。
「お、おう。わかった」
だが、勝てなかった。それらよりも彼女の覇気は凄まじかった。
あ、あーと大きく開き、かぶりつく。
「……ま、まぁクリームとコーヒーの味。だな?」
普通に食べるより美味しいのかどうか。生憎そういう感覚は当の昔に擦り切れているが……少なくともこういう食べ方。いうなれば子供っぽい食べ方をするのは本当に久しぶりであるわけで。気持ち表情がゆるいかもしれない。
そしてそんなまま頬にクリームをつけている姿はさっきまでの表情より幾分か子供っぽく見えるかもしれない。