2019/03/14 のログ
ご案内:「商店街」に白鈴秋さんが現れました。
白鈴秋 > 「……」
 
 昼を少し過ぎた頃、とある百貨店の中で難しい顔をしている男がいた。止まっていたのはホワイトデー特集のコーナーであった。
 悩んでいる理由はふたつ。まずひとつは色々とあって購入が遅れたため商品もあまり残っていないという事、もう1つの理由は。

「いくらが普通なんだ?」

 良い意味でも悪い意味でもこいつは金銭感覚を知らなかったのである。
 元々家としてもこういう文化にはあまり触れてこなかったし、そもそもそういうのに興味が無かった。というのもあり……いくらが良いのかわからない。その上……

「安いのか? 高いのか?」

 手に取っているのは5000円近いハンカチ。それが相応しいかもわからない。
 今まで贈り物と言えば白鈴家として世話になっている企業や大金持ちに送っていただけである。故に相場は普通に数十万規模だった。
 かと思えば今はいきなりギリギリの一人暮らし生活。5000どころか1000が高いとしった。
 つまり贈り物の相場そのものを知らない。
 ホワイトデーという明るいブースのはずなのにそこにいたのはあまりに似つかわしくない顔だった。

ご案内:「商店街」にアキラさんが現れました。
アキラ > (3月も中頃に入った頃、女は日用品を買うという本来の目的をすっかり忘れて商店街をぶらついていた。そんな目的を失った女がふと視線に止まったのはホワイトデー特集のコーナーに佇む一人の男性であり、少し険しそうな表情をしている顔は見覚えのある顔だった…と思う。杖をつきながらもゆっくりと歩み寄った後、声をかけようとして。)

どうしたんだ?辛気臭い顔をして。
(と声を掛けてみた女も彼の事は顔を見たことある程度であり詳しい事は余り覚えてない。だが行動に移したのは何となく悩んでる様子にも見えた事からお節介を焼きたくなったという所も無いとは言えない。いずれにしても顔を見てから今度はハンカチへと視線を落としてから)

その高級なハンカチを買う前の顔にゃ見えねぇなァ?

白鈴秋 > 「……ああ、アキラ先生」

 声をかけられてそちらを見る。そこにいたのは学校の教師であった。
 名前は知っているが直接話すのは初めだ。ふむと少し頷く。
 こういう分野は完全に自身の不得手とする分野でしかない、その点先生ならばやはり人生経験が長いのだから自分よりは慣れている……はずである。

「ええ、まぁ買うかどうか悩んでいる所でしたから」

 というとハンカチを棚に戻す。はぁと溜息と同時に肩をすくめる。
 先生の方に視線を向けた。

「ホワイトデーのお返しですよ。正直こういうのを返したことが無いからいくらくらいの何を返すべきかとか全然わからなくて」

 あまり年頃の男子生徒が教師にする質問ではないが。生憎そんな事を気にするような男でもなかった。
 視線を棚に戻し上から眺める。高かったり安かったり、無駄に力が入っていたりかといえば逆に駄菓子のように適当な物もある。悪く言ってしまえば売れ残り。経験が少ない人物には難しいかもしれない。

アキラ > よォ、まぁ…この時期にこんな所で悩んでるっつー事は大体そうだよな。
(挨拶代わりに杖を持っていない左手を軽く上げて言葉を返す。顔を見たことある程度だったが彼の方は此方の名前を覚えているらしい。残念ながらズボラの権化のような存在である女は彼の名前が記憶の彼方へ行ってしまっているし、その上こういうイベントには余り詳しくは無いという二重の意味でやらかしていた。でも話を聞きながらも彼の方へと視線を向けて小さく頷いて)

まァあたいも正直な所こういうイベントには詳しく無いっつーか、女心がわかんねェとはよく言われた事があるんだが…あたいはそんなトンデモ無いヤツじゃなかったら気持ち次第じゃねぇか?って思うんだがなぁ。あげた相手からお返しを貰える事が嬉しいってモンじゃないのかなァ。
(何故横から口を出したのかと言われたらそれまでなのだが、女は正直な自分の経験を吐露した。言われてみれば年頃の男の子に対して教師が口を出すという光景は中々無いかもしれない。それも異性の子に対してである。尤も本人はそんな事を気にする様子もなく物色するように棚へと視線を向けて…丁度良さそうな物はもう売れてしまったのだろうか。そうして棚を見ていた女だがふと思い出したかのように言葉を続けるだろう。)

そもそもお前さん、無い袖は振れねェだろ?だから別にそこまで立派なモンじゃなくても良いとは思うんだが…。
(ふと女が思ったのは彼が学生の身分で恐らくはそこまで潤沢な資金が無いのではなかろうかという推測だった。ずけずけと物を言いながらも菓子の類の見本と実物を見比べたりして。)

白鈴秋 > 「気持ち次第……がわかりゃ苦労しないって話ですよ」

 それができないから苦労していると言いたげな深い溜息を吐き出す。
 実際それが難しいからこそこうして漠然と金銭に頼ろうとした結果が今である。世の中とは前の福引と言い今回と言い上手くいかないものである。
 
「まぁそれはありますね。一応無い袖ってわけじゃないんですが……まぁそこまで高くないほうがありがたいって言うのは有りますね」

 3月は学校も無い。結果的に昼を切り詰めるなどいくらでも節約の機会はある為袖自体は普通にあったりする。
 が、教師の言うとおり無理やりつぎはぎで作り出した袖な為振りたくないのも本音であった。

「先生、こう……なんていうべきか」

 少し言葉を選ぶように考えてから。

「現状維持というか。友達に送るべき物の相場って言うか。変に考えさせない物の相場ってどの辺なんでしょう」

 結局そうするしかないという結論だった。気持ちといわれた後にそれであった。

アキラ > うーん…それこそあたいに言われてもって感じだがなァ。お前さんが負担に思うのなら高いだろうし、例え世間から見て高い物だとしても負担に思わないのなら気持ちを現す値段としては妥当なんだろうよ。
(少し困ったように左目の眉を少し下げながらも女はマジレスとも思える言葉を返しただろう。金銭に頼る事は正しいと思うが、それの価値をどう思うかは他人じゃなくて自分に思う事なのでは無かろうかと女は思っている。)

だったら手頃なモンで済ませたほうが良さそうだな。例えばこういう簡単な菓子の詰め合わせとかならラッピングして貰えばそれっぽくなるし良いんじゃないか?
(女はまた肯定するように小さく頷いて、それからとりあえず少し高級かもしれない1000円程度のクッキーの類が数種類入っているお菓子の詰め合わせの見本を左手の人差し指で指さした。続く言葉を聞いてはまた少し悩むような表情を浮かべてから)

ふーん…まァ友達で変に考えさせないんだったらそれこそお前さん、お菓子とかの食って終わりな感じの品のほうが良さそうだな。1000円以下とかでも問題無いとあたいは思うが…あくまであたいの物差しだからな?
(結論としては然程高い物でなくとも問題は無いだろうという結論だった。女は念を押すように呟いたのはあくまでこれは女の思う指標であるという事。先述の通り女心が然程理解できていないタイプの人間である為に、自信を持ってこれ!とは断言できない中途半端さがある事も否定はできなかった故に、一応参考程度という事を念押しした。どうする?と尋ねるように彼の方へ視線を一度向けるが、価格の事を聞かれた事自体に対しては否定的な考えを持たなかった。というのも悩んでいる事は事実だろうし、また送りたいという気持ち自体が大切なのではなかろうかと考えていた為に。)

白鈴秋 > 「まぁそうですよね……」

 たしかに先生にそれを言った所でどうにもならない。というより聞いて決めてもらった時点で既にそれは自分の気持ちからかけ離れている。
 指を指された位置においてあるビスケットの詰め合わせを見る。

「手ごろな物か。たしかにそれもありですね……」

 ふむふむと頷きながらその辺を見ている。
 貰ったものを考えてもその辺が1番手ごろと言えば手ごろなのかもしれない。

「そっちでも菓子とかの方が良いって答えですね、ふーむ、なら……」

 と手に取るのはビスケットとクラッカーが一緒に入った1300円程度の物。
 甘めのクッキーと塩気のあるクラッカーが良い組み合わせとか書かれている代物である。
 
「こんなのとか良いでしょうか。甘いのばかりだと飽きますし」

アキラ > 悪ィな…あんまり力になれなくて。
(口調と違いあんまり表情からは申し訳なさそうな様子は感じられないのは性質のせいかもしれない。だが自分が例示した商品を見て思ったよりも悪くなさそうな反応が帰ってきたのを見ると進展はあったように感じられる。彼が手に取ったビスケットとクラッカーのセットの箱を見ては言葉を返すだろう。)

良いんじゃないか?確かに甘いモンばっかは飽きるし、量も丁度良さそうだ。
(肯定の言葉を述べつつも女は彼自身が相手の事を思って商品を選択した事が良い方向だと感じた。微かに笑みを浮かべてからも一応他にも良さそうな物は無かろうかと棚を見渡すだろう。)

白鈴秋 > 「いえ、食べ物という意見を出してくれたのは先生ですし」

 そんなそんなと少し手を振るう。実際一人では何を買っていたかわかったものではない。
 それこそ、1番高い物を買っていた可能性もある。
 
「ああ、これで丁度良いんですね。男の私から見ると少ないんじゃないかって思ってしまいますが」

 袋を見る。自分から見るとすぐに食べ終わってしまいそうな小ささだ。
 こんなもので足りるのか? とか少し考えてしまう自分もいる。

「色々とすみません、こんなことくらい一人で決めろって話なんですが。どうしても色々とかんがえてしまいまして」

 と少しだけ笑いかけた。
 実際スラムで手配書が出た以上完全に生きる世界が分かれてしまった。だからこそ友人で止まれる物を探したかったのである。
 ある意味、買い忘れていたのは幸運だったのかもしれない。

アキラ > そうか?まぁ…そうやって言ってくれるとあたいは嬉しい。
(そう言われては女の方は満更でも無さそうに笑みを浮かべただろう。お節介焼きをしたという自覚はあるが、女はそう言ってくれる事が嬉しく思った。少なくともお財布のダメージからは守れた。)

んー…食事だったらそうかもしれないが、お菓子なんだから堪能できるだけの量があればいいとあたいは思ったが。
(言葉を返しながらも今一度手に持っている袋の方を見た。確かにすぐ食べ終わってしまいそうではあったが主食でも無いだろうし、量としては十分なのではなかろうかと女は感じていた為に言葉を返して。)

いやあたいから声を掛けたしな…。むしろお節介だったんじゃないかとは思ったんだが、いずれにしても若人の悩みが一つ解けたんだったら良かったよ。
(また軽く笑みを返した女は彼の境遇を知らなかった。故に真剣に悩んでる仕草を見てきっと大切な友人なのだろうと、ちょっと事実とはズレた事を思ったりしているのだが、言葉にした通り迷いが解けたのなら声を掛けた甲斐もあったと思っている。)

白鈴秋 > 「お菓子だとしてもですよ。4口ぐらいで終わってしまいそう。まぁ人それぞれなのでなんとも言えないでしょうね」

 まぁそれはあくまでこいつがそうなだけで他の人は別である。つまりは人それぞれなのでなんともいえないという話なわけで。
 
「いえいえ、そんな。お節介だなんて、本当にたすかりました……お礼というのもなんですが。コーヒーでもおごりましょうか? 先生にこんなこと言うのも少し失礼かもしれませんが」

 と告げる。お世話になったのは事実であるためにそんな事を聞いてみる。
 自分もどうせコーヒーを飲むのだからその時に買うついでである。

アキラ > んんー…量的に不安に思うんだったらもうちょっと何か追加で買うか?
(少し悩むような声の後、提案したのは追加するか否かという言葉だった。己のさじ加減では量的には問題なさそうに見えたが、言われてみたら確かに少ないような気もしてきた。どういう選択をするかは本人次第だが、気にしてるのなら追加で何か買っていくという選択肢もありだろうと思った。)

どうしたものか…甘えちまって良いのか?懐が寂しかったら逆に甘えさせてやるぞ?
(建前と本音が戦ってる。頂ける物は頂いておくというのは女が取る選択肢の常だったりするのだが、先程菓子を買う事も悩んでた学生から珈琲をせびるのは何か人間として失格な気がして__逆に奢っても良い旨を伝えるだろう。)

白鈴秋 > 「ああ、いえ俺から見ればなんで。渡す相手もそこまで大きな人ではないですし大丈夫だと思います」

 むしろ小さいくらいの身長だ。問題ないだろう……と思う。
 まぁそれすらも自身の感覚であり、大きさが食べる量に比例しない事例など腐るほどある。
 そしてコーヒーを聞かれると少しだけ悩んでから。

「いえ、それまで世話になるわけにはいきませんので。自分の分は自分で買いますよ」

 そう答えて少しだけ笑う。
 自分用とばかりに小さなクラッカーの入った袋を掴むと。

「それでは、私は失礼します。これも買わないといけませんし。もしかしたら来年先生の科目を取るかもしれませんのでその時はよろしくおねがいします」

 と少しだけ頭を下げると背を向けて歩きだした。
 購入するときにきっとまた包装の事で色々と悩んだことだろう。