2019/05/18 のログ
ご案内:「商店街」にアイノさんが現れました。
アイノ > お金が無ければ生きてはいけない。世知辛い世の中であるが、それはいつでも真理だ。

彼女には両親の心ばかりの仕送りもあるし、彼女を施設にねじ込むために母国政府からもらった補償金もある。
だが、彼女とていつかは自活せねばならない。それは重々理解している。
現在、小遣い稼ぎとばかりに彼女は仕事を始めている。

「………ふー。」

その一つは、彼女の体格に合う衣服のモデル。
モデルといっても比較的規模の小さい、町の服屋さんのチラシに乗るとかその程度のアレだ。
その仕事はこの後控えているんだが、まあそれはそれ。

もう一つは、街の喫茶店やらなんやらの自慢の一品をSNSに投稿する、アレだ。
なんやかんやで、いまだに口コミの持つ広告パワーは健在。
SNSで美味しい店を探すのも、いまだに現役である。

「………やるか………」

誰もいない喫茶店のテラスで一人、溜息をついて死んだ目になる少女一人。

アイノ > きょろきょろと周囲を見回す。
よし、今だ、今しかない。
小さな三脚に乗せたカメラのスイッチを入れて、撮影用に表情を作る。
ちょっぴり目を大きく開いて、明るい陽射しを受けて目の中に輝きを入れ。

「はいどーもこんにちは、アイノです!
 今日は商店街にある喫茶店の、窓ってお店にお邪魔しています!
 窓ってお店の名前、変わってますよねー?」

明るく楽しく、表情を豊かに変えて。
あ、当然店主の依頼で撮ってるから許可はバッチリ。

「実は、……じゃーん! このミニマドレーヌから取った名前だそうです!
 ……これは自慢の一品の予感……!」

机の下に隠しておいたマドレーヌを取り出して目を輝かせる。
よしここまでは計画通り。

アイノ > 「店長さん、拘りをお聞きしたいんですけど……
 あ、でもついでに甘いカフェオレもお願いしまーす。
 それが無かったら出番の部分カットしますからね!」

喋り方と表情と動作が動画向けになっているが、横暴さはあまり変わらなかった。
カフェオレを持ってきて拘りを話す話をふんふんと聞いている振りをして。
なるほどー! なんて心の籠っているような頷きを入れる。

「じゃあ、いただきまーす!
 ………おぁ、ふっわふわぁ………」

へへー、と笑って幸せそうに甘味を食す。

今のご時世、キャラを作ってることくらいはすぐにバレる。
っていうかもうバラしている。
撮影用の顔で褒めちぎって、後で裏の顔で「あれは割と本当に美味かった」なんて付け足す手法。
表裏のあることを公言している外人(自称)美少女である。

時折本気で美味しい時は、本気の笑顔になるのだった。

アイノ > よし。

「……終わった…………」

ばったりと倒れ伏して、溜息をつく少女。
くっそ、このキャラを最初に選ぶんじゃなかった、と今さら後悔。
最近やってなかったけど、可愛い子ぶってー、とリクエストが来たのだ。
二度とやんねぇ。
二度とやんねぇ。

ご案内:「商店街」からアイノさんが去りました。