2020/06/11 のログ
ご案内:「商店街」にレイヴンさんが現れました。
■レイヴン >
「嘘だろ」
商店街のとある一角。
シャッターの閉まった店舗跡前に、男は立っていた。
目の前のシャッターに貼られているのは、閉店を知らせる手書きの張り紙。
「嘘だろオイ」
呆然と言った様子で再度呟く。
手に持ったタバコの、長くなった灰がポトリと落ちる。
「――マジかよ……」
反対側の手で顔を覆う。
そこは前々から目を付けていた喫茶店だったところだ。
ショーケースに並ぶサンプルや、外から僅かに見える店内の様子からここはアタリだと確信していたのに。
商店街のど真ん中で人の目を気にして気を窺っていたら、とうとう機会を失ってしまった。
「マジかよ……」
手の下で呟く。
この世の終わりのような声。
ご案内:「商店街」にアーヴァリティさんが現れました。
■アーヴァリティ > 「えー...折角来たのになあ」
絶望するレイヴンの隣、彼よりも頭一つ、二つ背の低い茶髪の女生徒が彼と同じ張り紙を見つめて残念そうにため息を漏らした。
それなりに前、今と同じように生徒の姿でこの店を訪れたことがある。
当時はただ純粋に喫茶店というものを楽しみたかったがために訪れた覚えがあるこの店、先日の激闘で疲れた体を癒すためにも、物騒ではない場所、静かな空気の中、パンケーキと甘いオレンジジュースでも食しながら過ごそうと思っていたのだが。
「あーあ...この店折角あたりだったんだけどなあ...またパンケーキ食べたかったなあ」
ここのパンケーキはとても美味しいのだ。そう、あのフワフワの食感と癖になる甘さに舌鼓を打つ時間は筆舌しがたいものであった。
久々に心底がっかりした。
さて、ここで他の店でも探そうか、と振り向くと時を同じくして、ずっと隣で絶望している見上げるような背の男にようやく気が付き、彼も自分と同じタチであろうか、と同情が籠もった瞳で彼の顔をじっと見つめて。
■レイヴン >
「――あ?」
視線を感じて隣を見れば、いつの間にかだれかいた。
制服を着ているところを見ると生徒、だろうか?
「なんか用か」
眉間に皺を寄せたまま不機嫌そうなバリトンボイス。
なんか同情されてるような気がするのが妙に腹立つ。
■アーヴァリティ > 「あ、いえいえ、もしかして貴方もここが閉店じててそんな残念そうにしてるのかなーって思って
私もこのお店にパンケーキ食べに来たんですけどもう食べられなくなっちゃって悲しいです」
どこかでこの人見た気がしなくもないーなどと思いつつ、やはり彼もこの店のパンケーキか他のメニューだかは知らないが、それ目当てで来たのだろう。
どうにも不機嫌に見える。
なんなら、私よりがっかりしている様子。
「貴方はここの何がお気に入りでしたか?私はあのフワフワパンケーキがまた食べたくて来たんですけど」
彼女はレイヴンが一度も入店できていないことを知らない。
■レイヴン >
「――別にそんなんじゃねぇよ」
そんなんです。
こいつめっちゃ喋るな、と言う顔で苦々しく返事。
「お気に入りも何もねぇよ。入ったことねぇしな」
煙草の煙を吐き出しながら。
しかしそうか、フワフワパンケーキ。
食べたかった。
■アーヴァリティ > にしては随分とがっかりしていたようだが。わざわざ其れを言う程捻くれてはいない。別に今は戦闘中という訳でもない。
「あー...それじゃあ、ここら辺に他の喫茶店あった気がしますけど
一緒に行きませんか?」
気の毒に。あのパンケーキを食べられなかったとは可哀想と言う他ない。2度目の堪能ができない自分も可哀想なのだから一度も堪能できなかった彼はそれ以上だ。
そこまでじゃない、と言うのであれば別の店を勧めてみようか。
どこかで見た気がする相手だし、思い出せるまで付き合って見よう。
ついでに、奢ってもらえれば一石二鳥である。
■レイヴン >
「あ?」
頭の上にハテナが浮かぶ。
他の喫茶店?
こいつと?
「ひとりで行け。どこの誰ともわからんガキに奢ってやるほど暇じゃねーんだよ」
どうせ奢らせようと言う魂胆だろう。
だいたい一人でないと甘いものが食べられないではないか。
■アーヴァリティ > 「えーそんなこと言わずに行きましょうよー
そのお店、とっても甘いショートケーキを出してるみたいですよ
スポンジもしっとりしてて生クリームもくどくなくて苺もよく熟れてるんだとか!」
ってこの前殺した生徒が持ってたパンフに書いてあった。
なんなら今の姿の元の生徒だった気がする。
「それに、ちょっと面倒なところにあって簡単にはたどり着けないみたいです。
案内無しでいけますか...?
ほら行きましょ!」
笑顔でレイヴンの腕を引っ張って強請る。
もし一人じゃないと恥ずかしくて店に入れないだとか、実はコーヒーが飲めないとか。
そういったものが見れるかもしれない、と楽しそうにしており。
■レイヴン >
「いやいかねぇっつってんだろうが」
心底鬱陶しそうな顔で掴まれて引っ張られる腕を引きはがす。
そう言うところは誰にも邪魔されず自由で独りで静かで豊かで救われていないといけないのだ。
「だいたいテメェ、先月の国語の課題出してねぇだろ。テメェだけだぞ終わってねぇの」
び、と人差し指を突き付けて、教師らしい小言。
■アーヴァリティ > 「あっ.......
...あー見逃してくださいなくしちゃったんですよアレ
明日もらいに行くので!」
そうだ、こいつあれだ。学園の教師だ。
にしてもこの姿の生徒はだらしない生徒だったのかもしれな...あ、私のせいか。
「だから行きましょうよ!先生が喫茶店に行ってたとかコーヒーが飲めないとかあっても誰にも言いませんから!」
別にもう誰か分かったし一緒に喫茶に行く理由はもう特にないのだが、面白そうだからもう1度ぐらい強請ってみようか。
払われた腕を彼の腕に絡み付けて密着して上目遣いで。
■レイヴン >
「馬鹿かテメェ見逃す分けねぇだろ」
長身を折り曲げ、指をずずいっと突き付けながら顔を近付けていく。
今にも額をゴツイ人差し指でガスッと突きそうな勢い。
「喫茶店行ってどうすんだ? そこで課題やんのか? なくしてんだろ? あ?」
柄の悪いバリトンボイスでズンズン詰め寄る。
■アーヴァリティ > 「あーえっと...無くしたから出来ないじゃないですか!だったら家に帰っても課題出来ませんよ!」
指先と顔を近づけられれば中々の威圧感。
それこそ昨晩の真円3つより怖い。
実はその生徒ではない、なんて言ってしまっても面白いかもしれないが...
「先生が付き合ってくれるなら今晩中には取りに行きますから!」
苦しい言い訳、なんだか本当に出来の悪い生徒になった気分で楽しい。
絡みつかせていた腕をほどき両手で彼を宥めながら、先ほどの上目遣いは戸惑う視線に変わっているだろう。
■レイヴン >
「今晩中とかヌルいこと言ってんじゃねぇっつってんだ、今すぐ取りに来んのが筋ってもんじゃねぇのか」
見られたら間違いなくこちらがあちらを恫喝しているような雰囲気だが、こちらは教師なのだ。
何も問題はない。
「それを言うに事欠いて喫茶店だぁ? テメェ学校舐めてんじゃねぇぞ」
低い、ドスの利いた声。
教師が出して良い声じゃない。
■アーヴァリティ > 「あははは...ははは...」
この教師、意外と厳しい。
恐らく何を言っても課題を取りに行くまで取りに行けというし僕が課題を取りに行ってる間に喫茶店に行く魂胆だろう。
となると、選択すべきはたった一択
逃げだ
2、3歩後ずされば、その場で踵を返し逃げ出すだろう。
その表情は楽しそうで。
■レイヴン >
「テメェが逃げるのは止めやしねぇけどな」
圧を加えるように折り曲げていた身体を戻し、煙草を吸う。
煙を吐き出し、ポケットから取り出した携帯灰皿に煙草を放り込む。
「『数学教師』が『国語の課題』の催促するわけねぇだろ、阿呆」
国語の課題、と言った時に数学教師だと言うツッコミが無かった。
彼女は自身の授業を受けていたし、何度も質問に来ていたので顔も知っているはずだ。
行方不明になっているとは聞いていたが、さて、彼女が何かしたのかどうか。
「化けるなら下調べぐらいきっちりやれっつーんだ」
どちらにせよこんな商店街のど真ん中でどうにかしようと言うつもりもない。
裏で会ったなら、話は別だが。
■アーヴァリティ > 「あれ、追ってこないな。追って来そうなものだと思ったんだけど...」
ある程度わーきゃーと逃げていたが、後を追う影は無し。
やっぱり誰かと喫茶店に入るのが気に入らなかっただけなのか、それとも
「ばれてた...のかもね」
というかバレてたのだろうな。この姿の生徒が課題を出していないことを指摘された時点で口調だったりなんだり。
偶然一致したのかとでも思っていたが...
「まあいっか!レイヴン先生またね!」
学園に侵入したときにとある生徒がかけていた言葉と全く同じ調子で、彼のいる方に手を振って叫べば、商店街の裏路地の闇へと消えていった。
後日、学園に再侵入した際、レイヴン先生が国語ではなく数学を担当していることを知り、深く納得したという。「してやられた」と。
■レイヴン >
手を振る彼女を見送り、新しい煙草に火を付ける。
アレが成り代わったのか、もしくは何かしらに巻き込まれた生徒の姿を模しているだけか。
まぁ、それは今はどうでもいい。
「――喫茶店、っつってたな」
面倒な場所にある、ショートケーキが絶品の喫茶店。
そう言うのを探すのは、嫌いじゃない。
に、と笑いながらその喫茶店を探しに歩き出す――
ご案内:「商店街」からレイヴンさんが去りました。
ご案内:「商店街」からアーヴァリティさんが去りました。