2020/07/03 のログ
ご案内:「商店街」にマルレーネさんが現れました。
■マルレーネ > 商店街の外れにある小さな修道院。
もちろん、彼女が普段からいる修道院とは別の場所。
そこの老神父に頼まれて、本日は代理で管理にやってきました、異世界シスターがここに一人。
教義は違えど、やることは同じ。
懺悔にやってきた人間の話をしっかり聞いてあげること。
そして清潔に建物を保つこと。
「………いいのかなぁ。」
信じている神はこの世界の神ではない。
つまるところ、ものすごーくストレートに言ってしまえば異教徒なわけで。
■マルレーネ > とはいえ、依頼されたなら頑張りましょう。
窓を拭いて、床を掃いて。
修道院に用事のある人間が来るまでは、老人にはつらい場所のお掃除タイムだ。
濃い色の修道服にフードをかぶった金髪の女は、せっせと頼まれた場所の掃除をしては、誰も来ていないことを確かめ、そして更に次の場所の掃除に移る。
「……ふぅー。」
汗をぬぐって溜息一つ。
この世界に飛ばされてからしばらくの時間が過ぎた。
自らの神という存在が、もう己の記憶の中にしか残されていないこの場所。
他人のために働きなさい。そんな手垢の付いたような教義を愚直に守るのは、いつか、そんな教えすら、擦り切れて記憶から消えてしまうのではないか、という恐怖のせい。
彼女は彼女なりに、恐怖と戦っている。
その戦い方が、人のために一生懸命になる、という手段だっただけだ。
■マルレーネ > 表には普段の自分がやっているように。
『懺悔・相談・悩みごと・愚痴その他 なんでも聞きます』
と看板を立てかけてある。
懺悔室は綺麗に掃除され、誰がやってきても問題ないようにはしてある。
老神父曰く、そんなに相談は来ないよ、ということらしいが……
「後は………雨漏りがあるんでしたっけ。」
掃除を一通り済ませれば、腰をとんとんと自分の拳で叩きながら、天井を見上げて。
■マルレーネ > 看板には
『御用の方は屋上に声をかけてください』
と記載を追加しておいて。
よいしょ、っと商店街の人通りの中、修道院の表にはしごをかけて、修道院の屋根の上に登っていくシスターが一人。
通り過ぎる人は物珍しそうに眺めては立ち去っていく。
「さて、雨漏りのする場所は………ここでしたっけ。」
商店街の人通りを一望できる屋根の上。
当然、商店街を通る人からも丸見えで、修道院のイメージキャラみたいになっている。
屋根の上のシスター。
ご案内:「商店街」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
■日ノ岡 あかね > 「へぇ、雨漏りってこうやって直すのね」
いつのまにか、すぐ隣にその女はいた。
音もなく現れたのは、風紀の腕章をつけ、常世学園制服に身を包んだウェーブのセミロングの女。
黒いチョーカーをつけた黒い瞳の女は、楽しそうに……屋根の上のシスターに声を掛けた。
「お手伝いしましょうか? どう手伝えばいいのか教えて欲しいけれどね」
にこにこと、女は面白そうに笑う。
■マルレーネ > とんてんかん、とんてんかん。
大工仕事は昔やらされたんですよね。ふふふ、何でも来いと言ったのは事実、事実。
やれと言われたらやるしかないのです。
そして「できない」ではなくて「できるようになるために努力しろ」なのです。
私の世界の試練バリエーションが豊か過ぎる件について。
できないのは嘘つきの言葉とかそういう話を聞いて聞き覚えあるなあ、と思ったのは内緒だ。
「ひゃぁっ!?」
流石に思わず悲鳴が上がって、腰が浮き上がって滑り落ちそうになり。
わっとっとっと、と必死になる。
屋根の上で一人大騒ぎをしては、何とかその場に落ち着いて。
「………えー、っと。
修道院に何か御用でしょうか。 私、代理で管理保全をしていますマルレーネと申します、けど。」
相手の言葉にひとまずは答えずに、視線を相手の顔、腕章、また顔へと滑らせながら自己紹介。
「お手伝い………。」
反芻する。何故? いきなり屋根の上? 風紀? 風紀ってどんな組織だったかしら? 不思議な人多くない?
頭の中を言葉がぞろぞろと流れて落ちていく。
鳥じゃなかったけどシチュエーションとしてはここで鳥ですよね、と虚空へツッコミが飛ぶ。
■日ノ岡 あかね > 「いいリアクションの上に御丁寧な自己紹介までありがとう、マルちゃん。私はあかね。日ノ岡あかね。見ての通りの風紀委員よ」
左腕の腕章以外に「見ての通り」といえる材料は持っていないにも関わらず、あかねは図々しくそう自己紹介した。
脳裏で言葉の洪水が濁流の如く回転しているマルレーネの心中を知ってか知らずか、あかねはただただ笑う。
「相談してもいいって看板に書いてあったからきたんだけど、別にそれ終わってからでもいいわよ? だから、お手伝い」
ニコニコと笑う。
微かに風に揺れて、横髪が流れる。
それを片手で抑えながら、あかねはまた尋ねた。
「とりあえず、道具とったり板抑えたりとかしたほうがいいかしら?」
大工仕事はどうやらほとんど知らないらしい。
■マルレーネ > 「あかねさんですね。風紀委員。………………」
ふーき。うんうん聞いたことあるんですよ、ただちょっとこう意味がですね、喉元につっかえて出てこないというか。
「ルールを逸脱していないか見守る感じのアレソレでした………よね………?」
え、えへへ、と照れくさそうに誤魔化し笑いをしながら、相手に確認を取る。
ということは、もしかしたら私が何かしらルール逸脱をしていたのかもしれない。
建物を直す時には中央政権に対して届け出をしないといけない時代もあったとかこちらに来て何らかの書物で読んだ気がする。
え、えへへへへ……と、愛想笑いになりながら視線が右へ左へと動いて。
「……あ、相談でしたらそちらを先に。
この建物の持ち主の方も、それを望まれると思いますからね。
お手伝い、ということなら、朝からこの場所でずっと一人だったので、お話などできれば。」
ぺろ、と舌を出して笑いながら、お茶でも入れますよ、なんて立ち上がる。
………屋根の上まで、どうやってきたのだろう、と相手の方を見て二回瞬き。
どうやら思っていることが顔に出る方らしく、足を眺めて不思議そうにするシスター。
■日ノ岡 あかね > 「ならよかったわ。私もお話大好きだから」
嬉しそうに両手を合わせて、隣にしゃがみ込む。
足はごくごく普通の二本足だった。
強いて言えば、スカートから覗く足の履くソックスの色が黒くらいなもの。靴も指定のローファーである。
「風紀については……そうそう、大体そんな感じ。まぁ、今はそんなに気にしないでくれていいけどね。私個人の相談で来たんだし」
改めて、中央集権権力所属のあかねはそう笑って、話を切り出す。
そうして、口から出た相談は。
「なんだか、私怖がられることが多いみたいなのよね……個人的にはとっても心外だから、どうしたらいいのかなーって」
酷く、他愛のないものだった。
■マルレーネ > 「ここでいいです?」
じゃあ、あとでお茶は出しますね、と言いながらもしゃがみこむ相手の隣に、ちょこん、と座りこんで。
………梯子を上ってきたなら気が付くだろうし。
その割に、一息で飛び上がってくるような頑強な足にも見えない。
ただ、違和感を覚えるにしてもそれそのものは些細な事。
何故なら、ここにいる人々のことをまだあまりよく知らないのだから。
「…個人的な相談なんですね、もちろんもちろん。
私で力になれるのならば。
………怖がられる? ですか。」
まず浮かんだ言葉。
いきなり背後に立って声かけたら驚かれますって。
「いきなり背後に立って声かけたら驚かれますって。」
とても素直に口にした。くすくすと笑いながらぺろりと舌を出して。
「恥ずかしいところを見られましたからね。あれだけ動揺したところを見せてしまったのですから、そりゃあ怖いですよ、なんて。
……真面目に聞くなら。 ……どんなところで「怖がられている」と感じるんです?
誰かに直接言われた? それとも、なんとなく感じるものですか?」
■日ノ岡 あかね > 「あはははははは!! それはそうね」
当然の指摘をされて、楽しそうにあかねは笑う。
実際、それはあかねの悪癖の一つでもあった。
「まぁ、気付かれにくい私が悪いんだけど……今度は気を付けてみましょうかね? ふふ、でも確かに……真面目に言えば、きっと根本はそこじゃないのよね」
マルレーネの真面目な言葉と対応に頷いて、あかねは目を細める。
真っ黒な夜のような瞳が、マルレーネの目をみた。
「両方ね。直接言われたこともあるし、何となく感じる時もあるわ。あと、狂ってるとかも最近はよくいわれるかも?」
冗談めかして肩を竦める。
「失礼しちゃうわよね、そう思わない?」
困ったように眉を下げながらも、あかねは可笑しそうに笑った。
■マルレーネ > 「もうちょっと遠くから声をかけた方がきっと。きっと。」
いろいろと良いと思います。具体的には私の心臓とか。
相手の言葉を、視線を受け止めながら言葉を探す。
「私は。」
じっくりと言葉を選ぶ。 怖がられ、狂っているとまで言われる。
目の前の明るく笑う姿とその言葉とのギャップがありすぎて、昨日に引き続いて二度目の熱中症なのかしらん、なんて与太が頭に浮かんで消える。
輪郭がボヤけて見えたのか、目を少しだけ細めて。
「私は普段のあかねさんを知らないんですから、失礼かどうかはわかりませんよ?
もしかしたらあかねさんはこう見えて、下級生にラーメン12杯食べ終わるまで帰るなー、とか言ってるかもしれませんし。」
自分が知らないからこそ、そうではない、大丈夫だといった言葉は使えない。
てへ、と笑いを交えながら相手に言葉を返して………。
「何かしたんですか?」
微笑みながら付け加える。思い当たる節が無いわけでは無い、そう感じる。
■日ノ岡 あかね > 「何かしたつもりはないんだけど……しいて言えばそうね?」
小首を傾げながら、首元のチョーカーを指さす。
真っ黒な首輪のような形状のチョーカー。
「これね。委員会謹製の……異能制御用のリミッターなの。これを『つけられる』程度には……昔おいたをしたくらいかしら? 私、元違反部活生だから」
にっこりと笑う。
それこそ、大して気にした風もなく。
「だから、この『目印』で『怖がられる』のはもう仕方ないかなっておもってるんだけど……それも承知の上で怖がったり腫物扱いされたりしちゃうから、ちょっと困っちゃってるのよねぇ。私より危ない風紀委員なんて山ほどいると思うんだけど。『目印』ついてないんだし他の人達は」
ケラケラと笑う。
屋上から見える街並みは、少しだけ小さく見えた。
「ラーメン食べ終わるまで帰れどころか、私の分少し食べてくれない? とかお願いするくらいなんだけどねー。あ、でも、先輩いびりはするかも? 趣味だし」
とても楽しそうに笑う。
あかねは、本当によく笑う女だった。
■マルレーネ > 「………制御用? 使えなくなったりするんですか?」
首を傾げながら。ただ、その意味は通じた。
きっとこれは、この世界での枷なのだろう。
罪の数だけ足枷に重りを付けた人間を知っている。
罪の数だけ皮膚を焼かれた人間を知っている。
だから。
「違反ですか。……違反を何故したのかとか、この世界ではどれくらいの問題になるのかとか。
私には分からないこともたくさんありますし、あかねさんが怖いのかどうかはまだわかりませんけれど。
でも、怖かったとしても、怖くなかったとしても。
本当に何とも思っていない、気にしていないのなら、ここにこうやってきて話そうとは思っていないはずですから。」
えへ、と笑ってちょっと寄り、その片手を軽く握ろうとする。
「私は怖がらないです。 違反のことも、普段のことも知らないですから。
そうやって新しく出会った人と怖がらない関係を作って、それを守っていけば、きっと。
きっと。」
穏やかな声で語り掛け、横顔を眺め。
「あ、でも先輩いびりの時は誘わないでくださいね。
私まだ来たばっかりなんですって。」
なんて、冗談を口にしてはころころと。 こちらもよく笑うシスター。
■日ノ岡 あかね > 「ええ、少なくとも好き放題使えることはないわ。今の私は普通の女の子よ……ふふ、でも、口振りからそうじゃないかなとは思ってたけど……やっぱり異邦人さんだったのね? よかったわ、第三者意見を聞く相手としては相応しい相手よ」
『この世界では』という単語を聞いてそれを確信し、あかねは笑う。
そして、握られた手に……そっと指を絡めて、それに応えながら。
「ありがと、マルちゃん……ええ、そうよ、勿論、気にしてるし、あんまり怖がらないでほしいし、もっと一杯喋ってほしいと思ってる……ふふ、シスターに相談したのはやっぱり正解ね」
マルレーネの顔を見て、あかねは嬉しそうに目を細める。
微かに、頬を紅くしながら。
蒼天から差し込む日の光の元……あかねは笑った。
「先輩いびりに誘えないのは残念だけど……怖がらないって約束してくれる人が増えたのは……とっても、嬉しいわ。ありがと、マルちゃん」
互いに笑みを浮かべ合う。
よく笑う者同士、和やかに歓談する。
「アナタに会えて、よかったわ」
あかねはそう言って、傍らの工具を手に取る。
小さな金槌を一つ。
「一つ相談受けて貰っちゃったし、一つ恩返ししないとね。手伝うわ。何すればいい?」
普段、それを手に取ったこともないであろう少女は……そう、やはり気恥ずかしそうに笑った。
■マルレーネ > 「バレちゃいましたね。……違う世界から来たので、厳密にはこちらの世界のシスターではないんですが。そこは内緒にしといてくださいね。」
なんて、軽いウィンクを一つだけ。
相手の指が絡んでくるなら、こっちもきゅっと握り返す。
「人は知らないものを怖がると言います。
ですから、何も隠さず、ただ素直に自分も周りも大切にすれば。
……内緒にしといてくださいね、ってさっき言った口が何を言うかって話ですけど。
はい、いびられたら怖がるかもしれませんけどね。
私はここにいることもありますし、異邦人街で修道院を開いていますので。
何かあれば、いつでも。」
にひ、と歯を見せて笑いかけ、そっと握った手を引き寄せて額の前に持って行って、軽く祈る。
この世界の祈りではないとはわかっていても、心は通じる。
目の前の彼女が、等身大のままに、穏やかに微笑むことができますよう。
「話を聞いただけですから、………褒められると照れますね?」
頬をぽり、と掻いて視線を左右に。
じゃ、じゃあ、抑えてますから釘をお願いします、なんて。照れ隠しのようにお願いしつつ板をぎゅっと抑え。
■日ノ岡 あかね > 「私はいつも全部素直に何も隠してないつもりなんだけどね? ふふ、難しいわね。人付き合いって」
喋れることは、全て喋っている。
明かせることは、全て明かしている。
あかねはそう笑う。
だが、それが『届く』かどうかは……『信頼』がなければ難しい。
哀しい事にそれが恐らく足りないのだが。
そればかりは……時間の解決を待つほかない。
『信頼できない要素を全て取り除く』なんて悪魔の証明には、付き合えないのだから。
「話を聞いてくれるのって……凄い事よ。話を聞くってそれだけ手間をとるってこと。時間をとるってこと。耳を傾けるってこと……それは、誰でもできそうで誰でも出来る事じゃない。だから、マルちゃんは胸を張っていいのよ」
時は金なりなんて言葉がある。
そんな言葉ができるくらいに……時間とは尊いもの。
その時間を自分に使ってくれることは……有難い事。
だから、あかねはマルレーネに……心から感謝をして。
「内緒があるのも嬉しいわ。だってそれ……『信頼の証』でしょ? 修道院、今度顔出すわ。どんな世界のシスターだって……私にとってのシスターがマルちゃんであることに、変わりはないんだから」
そう……あかねは笑った。
歯を見せて笑うマルレーネに、満面の笑みを向けて。
その後、あかねはマルレーネの手伝いをして、寮の門限が近づいた頃に……相変わらず音もなく帰っていった。
野良猫のように、足音もさせず。
どこか、上機嫌そうに。
ご案内:「商店街」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
■マルレーネ > 「………。」
話を懸命に聞くのは大切な話です。
川の流れを想像し、そこにバラバラと大切なものが流れてきます。
流れに逆らわず、それでいて流れに流されず。
大切な物を受け止めなければいけません。
シスター、貴方にはそれができますか?
遠い昔のように思える以前の世界、老いた先輩シスターに言われた言葉が思い出されて反響する。
そこを褒められれば、照れくさくて、恥ずかしくて、でも嬉しくて、ちょびっと誇らしくて。
えへへ、と頬を赤くして笑う。
少しはシスターらしくできたかな。
「……はい、いつでも。 今度こそお茶を用意しておきますね。」
帰るという彼女の方を振り向けば、その笑顔だけが残像かのように姿はもう無くて。
消えたように帰っていく姿に、もう一度足を滑らせそうになるのだけれど、それはそれ。
不思議な島だとまた思う。
それでもきっと、変わらないものだってあるんですよね。
己の中の神に問う。
もちろん、返事は無かった。
ご案内:「商店街」からマルレーネさんが去りました。