2020/07/12 のログ
ご案内:「商店街」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね > 夜半の商店街。
そこのコンビニで買った肉まんを表で食べながら、あかねは笑っていた。

「……こうしてられるのも、いつまでかしらね」

ぽつりと、呟きながら。

ご案内:「商店街」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
ご案内:「商店街」に227番さんが現れました。
ご案内:「商店街」に227番さんが現れました。
227番 > 案内板の見方を教わった帰り道。かなり夜更けになってしまった。

夜中の商店街。街灯だけがほんのりと照らしている。
ここを通ろうと思ったのは、ただのなんとなく、である。

227番 > もとより、遅くなるのは覚悟の上でもあった。
自分がやっていることは、地道すぎる、途方も無いもの。

今日は教えてくれる人が居たから話は大きく変わったものの。
どのみち案内板でわかるのは道だけで、そこに探しものがあるかどうかはわからない。
結局の所、自分の足で出向かなければならないのだ。

227番 > だから、明日も、明後日も少女は体力の続く限り、あらゆる道を歩く。


外に出る時に頼ると決めた人に会うために。
外で会う約束をした人に会うために。

もしかしたら、どこかですれ違っているかも知れない。
だからと言って、待ってていても、それはおそらく来ないものだ。

いつか、見つけてみせる。

ご案内:「商店街」に群千鳥 睡蓮さんが現れました。
227番 > 少女は、帰りを急ぐ。
群千鳥 睡蓮 > その帰路の、曲がり角。

いつも誰かがいて、行き交うこの島で、
だれかとばったり出くわす、というのはよくあることだ。
たとえば部活で店の手伝いをした帰り、ついでに買い物をしていたら、
明日のための復習の時間がすこし不安な、どこにでもいる一般生徒、とか。

角を曲がる。ちょうど帽子の影と出くわす形に。

「―――あ」

227番 > 夜も遅い。早く帰らなければ。ゆーりが心配する。
そんなことを考えながら歩いていると、突然目の前が陰になる。
人だ。横にはけようにも、角の出会い頭。

「……?」

思わず青い瞳で見上げる。そして、目が合ってしまう。

群千鳥 睡蓮 > 手提げにしていた買い物袋が地面に落ちるとほぼ同時、
少女の肩に手をおいて、蒼い瞳を覗き込んでいた。
前髪の向こう、黄金の連星、虎の瞳。

「にになな……?」

確かめた。よく似た少女だという可能性を惑ったものではなくて。
処理しきれない事態に対して呆然としながら、
溢れ出てくる感情が混ざりすぎてて色を失った表情でみつめかえすばかりだ。

227番 > 「すい、れん?」

肩を掴まれる。びっくりしたが、飛び退いたりはしない。
その双眸に覚えが有ったから。
探している人だったから。

肩を掴まれたまま、戸惑いながらも、相手の様子を伺う。

群千鳥 睡蓮 > 彼女の記憶に自分が未だ残っていたことを知った時、
ばちん、と頭のなかで金具が外れる感触があった。
心の平衡を失うなどあってはならない惰弱なのに、
その場に膝をついて、抱きしめずにはいられなかった。

「ごめん」

震えた声を肩に零す。
抱きしめて欲しかったのが。自分が。

「ごめん……、また来るって、言ったのに。
 おまえを、外に連れ出せるか……自信が、なくて」

彼女が自分を怒ってなどいないと、わかっているのに。
わびた。懺悔した。待っていてくれたのではと、罪悪感をぶつけた。

227番 > 会えて嬉しいはずなのに、戸惑いを隠せない。
どうしたのだろう。何かあったのだろうか?

「……?」

出会った時の姿勢のまま、抱きしめられる。
……また、不思議な感覚。居心地は、悪くない。
しかし、応じる発想までは出来なかった。

「わたしは、大丈夫。すいれん」

気弱そうな少女の声は、あの時と変わらない調子で。
自分は平気だと。あるいは、赦しとも取れる言葉を口にした。

群千鳥 睡蓮 > 「…………ッ」

びくりと肩がふるえてから、
息を吸い込み、鼻をすする音、しゃくりあげるのは僅かばかり。
少し赤くなった顔。前髪のおかげで潤んだ瞳がわかりづらいのは助かった。
見合わせる。

「……そ、っか、よかった……。
 あたしもなおった。だいじょうぶ」

自分をゆるせたわけではないけれど。
救われた。『大丈夫』であること。彼女が元気でいること。
大きく肩を上下した。安堵した。生きていてくれて。
くしゃっとした微笑みをむける。

「おぼえててくれたんだな……ありがと、にになな。
 ひさしぶり……、ちょっと前に会ったともだちへの、挨拶。
 ……いま、どうしてるんだ? あの路地から、出たんだよな」

227番 > 「泣いてる……?」

無遠慮に、声に出す。
配慮できるような交流能力は、まだ。

「なおった? そっか」

大丈夫なのなら、大丈夫なのだろう。
少女は何も疑っていない。
微笑みを向けられれば口元で微笑む。

「ひさし、ぶり……。

 いちばんつよい、ともだち。わすれない。
 いま、ゆーりのとこ、"保護"、して、もらってる」

知らない挨拶を反芻して覚えつつ、質問に答える。

群千鳥 睡蓮 > 「……泣いてない。あたしはつよいから」

決然と言い放った。
ちょっと泣いたが、泣いてないと言えばそうなるのだ。
誤魔化す笑みはすぐに本物になる。

「すこし、喋るのうまくなったな……?」

無垢な微笑みは変わらないけど。
格好も綺麗めで、虐待の痕もみられない。外出も赦されている。
うんうん、と頷きながら、彼女の言葉を聞いた。
奇異の眼が――あるかもしれない。放っておけ。今は忙しい。

「ゆーり? おんなのひとかな……
 家族、できたんだ。……やさしい人?」

227番 > 「わかった」

泣いていないといわれれば、心配するのはやめる。
過剰に反応して不機嫌にさせても仕方ない。

「……そう?自分じゃ、わからない……」

自覚はないらしい。
語彙が少しずつ増えているのも影響しているかもしれない。

「ゆーり、おとこの人……だと、思う」

あまり相手の性別を気にしたことがない。
ただ、これだけは間違いく言える。

「やさしい、よ。大事にして、くれる」

群千鳥 睡蓮 > 「ちゃーんとできてる。 えらい」

褒めてあげた。いい子だから、言ってあげたくもなる。
彼女は自分で決めた筈だ。そこに行くことも、最後は。
そして恐らく、彼女は悪意や敵意には敏感なほう。

「よかった。 ――そこが、ほんとに、気になってて。
 うちに来る?って言えたら良かったんだけど、さ」

彼女はどうやら、『ゆーり』にだいぶ懐いているらしい。
心底の安堵のあと、そうだ、と考えて、彼女を解放してやる。
あわてて袋を拾い上げつつ。

「ごめん……いま帰るとこ?
 それとも、おつかい?
 こんな時間だし、心配してるかな……?」

スマホを視る。『こども』が出歩く時間にしては、だいぶ遅い。
彼女はどこに向かっていたのだろう。あるいは何をしていたのか。

227番 > 「えっと、ありがとう?」

褒められたら、お礼を言う、で間違ってなかったはずだ。
疑問形ではあるものの、褒められて嬉しい感情は隠せていない。

「……決めれたのは、みんなの、おかげ」

それはあなたも含まれてる、とでも言いたげに。
青い瞳はしっかりとそちらを見つめている。

「うん。帰るとこ。
 道、覚えようって、さんぽ、してた」

というのは、建前ではある。

群千鳥 睡蓮 > 「…………そか」

視線を見合わせる。その後、少し照れくさそうに笑った。

「ありがと」

心がかるくなった。自分の不甲斐なさは消えないけれど。
未だともだちでいてくれる。これから、取り戻せばいい。

「大事だな。あたしも実はまだしっかりは覚えきれてなくて――
 ……うちの近くまで送ってくよ。あたしも帰るとこだし。
 んっと……お、つぶれてないな」

買い物袋のなかにしまい込んでいた何かを、ごそごそと漁って。
取り出した。プロフィトロール。一口サイズのシュークリーム。
夜食にと、陽にあつらえてもらったものだ。それを差し出す。

「夜ごはん。 あるだろうから、いっこだけ……な? 
 いま、お菓子屋さんの手伝いしてんだ。
 いつも――はいないけど、ぼちぼち居る」

227番 > 「……?わたしこそ、ありがとう」

お礼を言うのはこっちだ。
外へと気持ちを向かせてくれたきっかけ。
それはとても大事なもので。

「……ほんとは、すいれんと、あかね、探してた」

素直に呟く。もちろん他の目的もあるが。
送ってもらえるなら、素直に頼るだろう。
おもったよりも遅くなってしまったから。

「……甘い匂い」

差し出されたそれを手にとって、透かしてみたり、嗅いでみて。
食べ物を貰うことに、躊躇が無くなっている。ともだち限定だが。

「お菓子屋さん……?」

続く言葉は興味深そうに聞いた。

群千鳥 睡蓮 > 「―――……そ、か。ごめん。
 そだよな、頼れって言っておいて……
 でも、もう大丈夫、かな?……大丈夫だよ、にになな。
 あたしは居るから、ちゃんと……これからは。
 ……えーっと、携帯とか……ある?」

ともだちとしてちゃんと向き合うよ、と。
彼女に受け取らせるには少し苦い詫びの気持ち。
場所を教えて、と言いながら先導する。

「にしても、あかね、か。 夜みたいな眼をした?
 ……ああ、なるほど、なんか読めたぞ。
 あのひとにも、外に行けって言われた?」

遠巻きに見て、ひとことふたこと交わしただけだけど。
なんとなく、彼女に向けた言葉の色くらいは、探れる気がした。

「そ。 食べてみて。 おいしーから。
 たくさん種類あるよ。それのでっかいやつから。
 いろんなケーキに、お茶にコーヒー。
 オーナーの性格がちょっと終わってるけど、職人の腕は絶品。
 ……これ。 来てね、にになな。待ってる」

太陽と王冠を示すロゴとともに、ラ・ソレイユへの地図が綴られたカードを渡す。
『ゆーり』とも会えるかなと、若干の期待を込めた。きっとやさしいひとだ。

227番 > 「うん。あえて、よかった……すべては、ひつぜん」

にこりと笑う。
これからも、頼りにするつもりでいる。
自分のことも、調べていきたいし。

「けーたい?って何?じ、じーぴー……何だっけ、なら。ある、けど」

どうやら連絡手段は持っていないらしい。
それから、帰り道は間違えること無く真っ直ぐ向かっていく。

「……ふーきに、誘われた。そのためには、外に、って。
 そしたら、ゆーりが、行かなくていい、って」

それぞれのやり取りを思い出すように。もうずっと前だ。

「……うん」

ぱくっと一口……とはいかず。口が小さいので齧る形に。
下手なので頬にクリームがくっつく。
そして、少女はその味わいに顔をほころばせた。
あまりの甘味に、話が半分頭に入ってこなかった。

「あまい……うん、カード?……分かった」

地図だ。ついさきほど教えてもらった。
何処か簡略化されているものの、照らし合わせることはできそう。
まぁ、読めなければゆーりに頼めば何の問題もない。

群千鳥 睡蓮 > 「おまえのおかげさ……。
 そうだね、そうだ。此処で会うために、あの時また別れたんだったら」

意志が途を作った。約束は結ばれた。
会いたいと希求していた自分よりもおそらくまっすぐに。
自分の受け売りを口にする姿に胸は擽られるけども、
何度もなでたり抱きしめたりは、あれだ。
ともだちのそれかというと疑わしい。我慢した。

「まだ使えないか……そっか、『ふーき』からじゃないんだ。
 ゆーり、はそっちの人じゃないんだね」

あるく。帰巣本能の後を追って。
見失わないように時折視線を送りながら。

「『おいしい』――だよ。 あまい、けどね。
 ここにくれば、あたしがいることもあるし。
 いなかったら……そうだな、お菓子作ってるにーちゃんに、
 『すいれんにあいたい』って言えば、行くから」

頼んでおかないとな、と考えつつ。いちおうの連絡手段はつくっておいた。
足取りが軽い。夜風が心地よくて、少し泣きそうだ。

「え――っと、ここらへん、かな?」

そんなこんなで住宅地につけば、彼女の様子を見て、
おうちわかる?と、周囲をみわたして。

227番 > 「たよりに、してる」

ここまでも長い道のりだったように思う。

だが、長いのはここからだ。
むしろ、スタートラインから踏み出したばかりなのかもしれない。
でも、少女は、大丈夫だと思っている。
睡蓮が、みんながいるから。

「ふーきでは、ないみたい?」

何かと公安と縁がある少女である。

「……おいしい」

笑顔のまま、頷く。くっつけたクリームはそのまま。

「うん、わかった、覚えておく」

カードは大事に小さなポーチにしまった。
生きるのに精一杯で忘れっぽかった少女はもう居ないのだ。
しっかりと覚えていることだろう。

「うん、あそこ」

そして家の近くまで来れば、"自分の家"を指差す。
227に用事があるのなら、そこを尋ねればいいのだろう。

群千鳥 睡蓮 > 「任せとけよ」

静かに笑って、今度こそと思った。
我こそは強者ならば、もう不覚は取るまい。
彼女は学んでいる。ポーチには、きっといろんなものが詰まっている。
多くのもの。自分は彼女の一部であり、彼女は自分の一部。
そこにいる。

「……あったかそうな家だ」

指し示す姿を見てそう微笑む。
じゃあ今度遊びに行っちゃおうかな、なんて。
路地裏住まいよりも恐らくは安全な住居だ。

「じゃ、こっからは寄り道せずに帰れな。
 ……『あかね』にも、また会えるといいね。
 会えたら、探してた、って伝えとくよ」

少し背を曲げて、いつかのようにぽんぽん、と頭を叩いてやる。
探し人なら頼ってくれても、と彼女の意志を見つつだ。

「また会えて、本当に嬉しかった。ありがとう
 ……またね、にになな。 ……おやすみ」

二度目がなされたら三度目も、と欲張った。
随分遅い帰り道になったが、寮長に怒られたっておつりが来る。

227番 > 「ここまで、ありがとう」

送ってくれたことにお礼。
頭をぽんぽんとされれば、心地よさそうに身体を揺する。

「あかねは……わたしも、探す」

頼らない、とはいわない。
でも、待つだけをするつもりはないようだ。


「うん。わたしも、うれしかった。おやすみなさい。
 帰り、気を付け……すいれん、つよいから、いらない?」

なんて、冗談をいってみせる。
大きく手を振ってから、家へ駆けていく。

群千鳥 睡蓮 > 「これからも、よろしく」

うなずいた。自分で選ぶ、あるく。
その強さにむけるのは穏やかな微笑だ。
あのときの路地裏と同じ……否、自分も前にすすめているはず。

「――――……ふふ。
 気をつけてるから強いんだよ」

子猫はすぐに大人になるという。
情緒の成長に面食らったけども、なんでか嬉しそうにして、
小さく手を振ってから、鼻歌まじりに帰路につく。
 

ご案内:「商店街」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。
ご案内:「商店街」から227番さんが去りました。
ご案内:「商店街」に不凋花 ひぐれさんが現れました。
不凋花 ひぐれ > 「すみません、この大根の半分のを一つ。それとショウガを」

からん、と悩まし気に揺れる下駄が30秒ほどの時間を要して動きだした。硬く目を閉ざしたままの眼先には色とりどりの野菜が並べられている。
己にはこの光景を見ることは出来ないが、匂いで何となくの場所は把握できる。慣れてくれば配置も次第に覚えるというもの。

不凋花ひぐれはオフの日に、懇意にしている商店街で買い物をしていた。日差しは然程暑くない、そこそこ過ごしやすい時分。

不凋花 ひぐれ > 「今年のショウガはどうですか? 此度も美味しいと良いのですが。
 嗚呼そうでした、あとゴボウとニンジンもください。金平に佃煮にしたり、ショウガを和えて擦って頂くというのも悪くはありませんよね」

 マイバッグとポイントカードもあります。慣れた手つきで所定の位置にしまった財布を取り出しながら、予定の数だけ代金を支払う。
 次の行き先は分かるか? という八百屋のおじさん。
 「大丈夫です。では失礼します」そう言い残して次の店へと向かう為に白杖を左右に振る。
 人通りは多くはないこの商店街。とはいえ自転車が来れば危険が伴うし、子どもが飛び出してこないとも限らない。
 周囲の音は供犠の影響で遠く深くまで聞こえるようになっているからあまり心配はないが、過信は無用。
 次の行き先は肉屋である。

不凋花 ひぐれ > 「すみません。鶏ひき肉200g……いえ、300gを」

酒とみりんを混ぜて、片栗粉に卵、ショウガを混ぜて鳥団子を作る。
小分けして冷凍庫に入れておけば暫くの間は持つし、栄養食としても手軽に食べられるようになる。
食堂で適当に済ませるのも良いが、いずれ独り立ちした時の為に適当なものでも作れるようになっておかないとこの体では不便をかけることになる。
実家に戻れば御家の道場を継ぐなりでそれ相応のやり方はあるが。それはそれ、これはこれ。
嫁が料理出来んでどうすると小言を言われるのを想定するのも悪くはないはずだ。

不凋花 ひぐれ >  いつも調理済みの惣菜しか買わなかったのに、という肉屋。
 己はさも得意げに鼻を鳴らし、計りにかけてくれている彼に向けて胸を張る。

「火を使わない料理ばかり作ってきましたが、今年は一つ挑戦しようかと。
 私、まだまだ成長期なのですよ」
 
 貪欲に、従順に。
 武芸を求めて東奔西走。ただ一つの武術に拘るのみならず、様々な術理を納めた己。
 剣だけで食っていけるならそれも悪くない。だがここは現代だ。それだけでは足りない。
 それどころか飯を作って風呂を焚いて、あらゆる武芸に秀でた者とて戦国の世にも大勢存在した。
 盲目で武術に秀で、いかに強力な異能を保有していようが、所詮は個人。かの人間五十年のように政治や戦術が保守的でもないし、かの狸爺のようなおおらかさと短絡性で何百年と時代を築ける手腕もない。
 一人は一人らしく、人の中でそれとなく皮を被らなければ生きられん。ならば料理と言う文化に触れるのは決して間違いではないのだから。

不凋花 ひぐれ > 「同じ年ごろの娘ならば、水着を着る為に頑張って貯金したり、ひと夏の思い出を得る為に頑張るのでしょうが。
 ……私は世代が遅れておりますね。おばあさまのよう」

 試験期間が終わればすぐに夏が来る。訓練場に引き籠ってひたすら素振りをしたり、術理の学習に励むことになるに違いない。
 その間に出来る事と言えば日常内における技術の修得、即ち炊事洗濯掃除諸々。一人で出来ないことを出来るようにするのである。

不凋花 ひぐれ > 「水着……ビーチ……」

ほんの僅かに上の空になっていた己の頭を軽く振る。身じろぎしたことで腰の鈴がしゃらんしゃらんと鳴る。

「は、すみません。
 ……浜辺でランニングも良いなと思いまして」

お嬢はそればっかりでお堅いねぇ。そんな憎まれ口を叩かれると反射的に笑う。肉屋から鳥団子を貰い、想定より多く購入したことでお金の枚数が一枚増えた。予備の財布のポケットから差分のお金を手渡す。
こういう時、慣れた相手であれば相手に渡して貰う方が早いのだけど、それこそ甘えるわけにはいかない。

「ありがとうございます。良い夏を」

不凋花 ひぐれ > かつ、かつ、かつ。
からん、ころん、からん、ころん。
一通りの買い物を終えて、小気味よく杖で叩く。
歩き慣れた道。じわじわと照り付けるアスファルトから上がる熱気を感じながら。

「ニンジンさん、サンショウさん、シイタケさん、ゴボウさん」

からん、ころん。

「あなーのあいた、れんこんさん。
 すじーのとおったふーき」

――このレパートリー、今の子どもが嫌いそうなものだな、と思うのは内なる声に留めて。
機嫌よく歌いながら商店街を後にするのだった。

ご案内:「商店街」から不凋花 ひぐれさんが去りました。