2020/07/31 のログ
ご案内:「商店街」に227番さんが現れました。
227番 > 学生通りから分かれる路地に入れば、商店街。
そのさらに裏道に帽子を被った少女。

少女は迷うこと無く歩く。
自分の足で歩き回って見つけた近道だ。
もはやこの辺りの"道"については何も見なくても迷わない。

目的は……ふーきの落とし物を届ける場所。
その場所を知っている人を見つけること。
とりあえず、いつもの公園へ向かう最中である。誰かに会えるかな、と。

ご案内:「商店街」に水無月 沙羅さんが現れました。
水無月 沙羅 > スラムやら、落第街やらを歩き続けて早二日目。
一連の事件に少し疲れていた。
少しぐらい表の空気を吸いたいと思い、いつかの公園に向かおうかと思っていた、裏路地を歩いていたその時に。
見知った少女を眼にした。

「ぁ……ぁー……」

まだ気が付かれていないだろうか。
話しかけるのもちょっと気まずいな、といった感じで。

「どうしよ……」

結果として、こっそり壁際から様子をうかがうことになった。
どうにも自分はだいぶ疲れているらしい。

227番 > 少女はどんどんそちらに向かっていく。
目的地が定まってる故に、躊躇なく、まっすぐに。
しかも結構歩くペースは早い。

やがて、こちらを見ている人影に気づいて。
その方に目をやった。

「……?」

そして……首を傾げる。
さて、どこかで、見たような。

水無月 沙羅 > 「ぁ。」

ばれた。 確実に目が合った。
紅い瞳と蒼い瞳が交差して、観念するほかなかった。

「こ、こんばんわ……?」

首をかしげている、自分の動きが不振だからか。
単に覚えられていないだけなのか。
どっちにしても不名誉極まりない。

227番 > 「……こんばんは」

ああ、そうだ、星を教えてくれた──

星に夢中でしっかりと容姿を見ていなかった。
教えてもらった呼び方をしようとして、ふと思い出す。

《本当は、此処にいないはずの人間ですから》

……初めて会った時の挨拶は、なんだったっけ。

「……はじめまして、おねえさん?」

少女はにこりと笑った。

水無月 沙羅 > 「あぁ……そうだね、初めまして。 お嬢さん。」

そう言えば、あの時の私は《幻》だったのだっけ。
少女と交わした星空の授業を思い出してくすりと笑う。
まだ、自分にも笑えるくらいの余裕が残っていたらしい。
それとも、あの夜を思い出させてくれた彼女のおかげか。
不思議な縁もある。

「今日は、なにかこの先に用事でも?」

見つかってしまったモノは仕方ない、このあたりの路地はいろいろ少女には危なさそうだし、案内するのも悪くはない。
もともと風紀委員なのだし。
今その証は腕にないけれど。

彼女がこのあたりを網羅しているなどとはつゆほどにも考えてはいない。

227番 > 「えっと……名前、聞いても、いい?」

あの夜の中でいろんな事を知ったものだ。
大きな星が月ということ。星がどういうものか。
それはとても遠いもので、手が届くことはないこと。

「公園、行く途中。近道。
 誰かに、会える、かもって」

それから、聞かれたことには素直に答える。
初対面の振りこそしているが、知らない人ではない。
当然、警戒は一切してないない。

水無月 沙羅 > 「名前……か、随分有名になっちゃったからな。
 まぁ、貴方になら、いいかな。
 水無月 沙羅だよ。」

少しだけ苦笑いをする。
この名前は、落第街ではすっかり忌み嫌われている象徴の様なもので、目の前の少女にはきっと関係ないのだけれど、それでも少しためらわれた。
後ろめたいことは何もない筈なのに。

「貴方の名前は?」

せっかくだから、綺麗な瞳の少女に尋ねてみる
以前のように警戒されているわけでは、無いらしい。

「あぁ、じゃぁ目的地が一緒なんだね。
 私も公園に行くつもりだったの。
 一緒に行く?」

本当に、不思議な縁もあるものだなと感心した。
同時に感謝したりもして、今の沙羅には眩しい日常を届けてくれたから。

227番 > 「さら」

少女は『例の件』など知らないので、
苦笑いする様子に首を傾げつつ、名前を復唱する。

「……数字で、にーにーなな。好きなように……ぁー、ニーナで、いい」

この人は、どう反応するんだろうか。
じっと、青い瞳から視線が注がれる。

「……うん。
 でも、さら、会えたから、だいたい、たっせい?」

まぁ、この人が情報を持っているとは限らないが。
でも、なんとなく教えてくれそうな気がした。あの時みたいに。

水無月 沙羅 > 「にーにーなな。 そっか。 それでニーナね。」

その名前なら、たぶんこの子も私と一緒。
なら同情も、悲しみも、必要ない、私たちは似た者同士。
それが少しうれしかった。
沙羅、沙羅双樹、生命の木、復活、そんな意味を込められたコードネーム。
何も変わらない。

「よろしくニーナ。 私に逢えたら、達成なの?」

私に逢いに来たみたいに言うんだなと思って、やっぱり笑みが零れた。
そういえば、私に逢いに来てくれた人って、居ないんだよな。
私が会いに行くばかりで。

227番 > 「うん、よろしく」

すんなり受け入れてもらえた。
珍しい反応。こないだ話した人も、いつもと違ったけど。
少し意外そうな表情を一瞬だけ見せる。

「……えっと。
 ふーきの、落とし物、拾ったから、ふーきに、届けたい。
 場所、知ってる人、探してた」

長く喋るのは苦手である。ゆっくりと言葉を並べていく。
拾ったものが何だとは言わない。
ただ、もしかしたら、それに心当たりがあるかも知れない。
聞かなければ、特に見せたりはしないだろうけど。

水無月 沙羅 > 「意外って顔してる。 まぁ、そうだよね。 あんまり気にしなくてもいいよ。
 似た者同士だなって、思っただけなの。」

そっと、帽子の上から頭を優しく撫でた。
私も小さい頃は、そうしてもらえると嬉しかったから。

「ふーきの、落とし物を、ふーきに届けたい?
 えっと、そっれて?」

多分、風紀委員の事だろう。
彼らが何か落したとすれば武器とか、腕章とか、コートとか、そこら辺だろうけれど。
このあたりでの落とし物……まさかね。
とりあえず見て見なければ始まらない。 スタンガンロッドとかだったらあぶなすぎる。

227番 > 「……にたもの、どうし?」

首を傾げていると、頭を撫でられる。
思わず目を細めて、体を揺すった。

「落とし物……うでに、ついてる、やつ」

それが何かと問われれば、特に躊躇いもせずに、ポーチから取り出して。
相手が落とした──捨てた本人とは知らず、それを見せた。

水無月 沙羅 > 「うん、似た者同士。」

頷いてから、差し出される落とし物を見る。

あぁ、そういう事なのか。 どこか納得して。

「あはは……それね、実は私のなんだよね。」

頬を指で少し掻いては照れくさそうに。

「でも、今はちょっと受け取れない。 まだふーきには戻れないから。
 理由があるの、大事な理由。
 だからニーナ、お願いしたい事があるんだけど、いいかな?」

こんな少女に、お願いすることでもないのかもしれないけど。
この縁が、何かを導いてくれるかもしれない、そんな気がした。

227番 > 「さらの……?理由……?」

さらはふーきだったのか。知らなかった。
返そうかと一瞬思ったが、どうも受け取れないらしい。
疑問に思って口にはするが、深く追求するつもりはない。
あっち側で生きていた少女は、人には事情があると、識っているので。

「……なに?」

できるかどうかは、聞いてみなければわからない。
落とし物を手に持ったまま、続く言葉を待つ。

水無月 沙羅 > 「……えっとね。 『委員会街』の、『風紀委員本部』ってとことに行って、『神代理央』に逢わせてほしいって。
 たぶん、私の名前を出せば呼び出してくれると思うから。」

少なくとも、腐っても風紀委員だ。 一般生徒を疑うようなことはしないだろう。
彼女のお願いならば、通る確率は十分に高い。

「それでね、言伝、えっと、神代理央って人に、沙羅がこう言ってた、って言ってほしいの。」

「私が、『鉄火の支配者』からあなたを取り戻します。 って。」

「いいかな?」

少しだけ、少女を利用することに罪悪感を覚えながらも、ニーナの目を見て頼む。
これはきっと、小さなお友達への、沙羅にとって初めて対等といえるかもしれない彼女へのお願い。

227番 > 少女はまだ生徒ではないものの、公安の保護下である。
風紀でも調べればわかるはずなので、問題はない……はずだ。

「いいんかいがい……ふうきいいんほんぶ……かみしろ……
 てっかのしはいしゃ?」

小さな声で復唱して覚える。
言伝を引き受けるのは、初めてではない。
行く場所は初めての場所だし、ちょっと内容が難しいが……いけそうだ。
あっちにいた頃のわたしとは、違うのだから。

「……わかった、やって、みる。場所、地図、とか、ある?」

小さく頷いた。
それから。

「あと……これ、その人に、渡す?」

手に持ったままの、落とし物。

水無月 沙羅 > 「……うん、おねがい。
 えっと、地図なら今書くね。
 伝言も、メモしておいた方がわかりやすいかな。」

なるべく漢字を使わないように、周囲の地図を描いてゆく。
沙羅にとって毎日のようにパトロールしていたこの町は庭の様なものだ。
今更迷うこともないし、地図程度ならいくらでも書ける。

「でも、無理はしないでね。 危ないって思ったら逃げていいし、やめていいから。
 私と約束、できる?」

小指を差し出す、ニーナが知っているかはわからないけれど、小さい頃に幼馴染とした約束のおまじない。

227番 > 「地図、あれば、大丈夫」

案内板の文字は未だよく読めないが、
メモと照らし合わせればどうとでもなるだろう。
すでに1ヶ月弱、案内板と手書きの地図を頼りに街を歩き回っている。
すでに地理感は技術として習得しつつあった。

「無理……うん。危なくなったら、逃げる」

《危険と感じたら共に逃げよ。戦うだけが、戦に非ず。》
誰かに教えてもらったことだ。しっかりと覚えている。

「……うん」

数秒考えて……これは、今の保護者とやったことがあった。
小指をひっかける。小さい。

水無月 沙羅 > 「ゆーびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきったっ」

少し昔を思い出して、なつかしさに微笑む。
楽しい思いでも、まだ残っていた。

「よし、じゃぁニーナ。 お願いね。 わたしの『想いと願い』。
 貴方が届けてきて。 『星空の瞳のお嬢さん』。」

あの日の夜を思い出して、願いを託す星を彼女に例えてみる。
似た者同士だからこそ、わかることもある。
彼女はきっと大変な目にあって、誰かに助けられてここまで来た。
だからとても輝いて見えるんだろう。
彼女を照らす恒星は、一体どれだけいるのだろうか。
ニーナは気が付いているだろうか、自分も恒星だという事に。

227番 > 「ゆーびきった」

うろ覚えながらに口ずさむ。
ちゃんと出来ていただろうか。自信はない。

「うん、頑張る。」

もう一度頷いて、腕章をしまって。

「……わたしは、手が届かない、星じゃ、ない、から。
 『届かない願い』には、しない」

届けてみせる。そう意気込んだ。


……それから1息おいて。

「……さら、ごはん、食べてる?」

すこし、不安そうに見る。

水無月 沙羅 > 「たのもしいなぁ。」

目の前の少女は、自分が思っている以上に強かで、心優しいらしい。
偶に自分も総称されるけれど、やはり似た者同士か。

「ん……? ご飯? あー……まぁ、ちょっとね。
 ここ最近帰ってなくて、あー、帰れなくて、かな。
 落第街とかスラムとか、あっちの方に隠れてるの。
 でもちょっとした有名人になっちゃってね。
 生活は苦しいかな、お風呂とか……ごはんとか……。
 ずっと同じ場所に居る訳にもね。」

とほほ、と肩を落とす。
落してから、こんな小さい子に何を言っているのかと正気に戻って。

「いやいや、ニーナが気にすることじゃないっていうか、そんな風に見えた?」

227番 > ただ、人に助けられてばかりだから、人の助けになりたかった。
単純で、わかりやすい理由。難しくても、頑張ってみたい。

「……らくだいがい。」

前に自分がいた所がたしか、そんな名前だったらしい。

「……なんだか、調子悪そうだった」

少女は会話が得意ではないので、相手の表情を、よく見ている。
口にはしないものの、前に会った時と比べて、疲れが見て取れた。

「わたしの、寝床……隠れ家?、使う?
 食べ物も、いっぱい、置いてる。
 そのうち、返して、くれれば、いいから」

水無月 沙羅 > 「寝床……隠れ家?
 あはは、ニーナもそういうところに居たんだ。」

この子にまで気を遣わせて、ちょっとだけ情けなくなる。
それだけ、きっと自分が追い詰められてるという事なんだろう。
彼風に言えば。『殺されている』。

少しだけためらいはあったけれど、今はきっとそういうのをしている場合じゃない。
手段を選んでいられない。
それに、友達がそう言ってくれるなら。

「うん、じゃぁ。 少しの間、借りようかな。
 お友達がそう言ってくれるなら。」

すこしだけ、肩の荷が下りる。
助けられるというのは、存外に悪くない。

最近は誰かに助けられてばっかりだ。
でも、それが少しだけ嬉しく感じるのは何故だろう。
友達に向かって、今できる精一杯の笑顔を見せる。

227番 > 「うん。こないだまで、ずっと」

ひと月前、とはまだ表現しきれない。
ようやく日付の概念を覚え始めたところだった。

何はともあれ、借りたいと言ってもらえたら、少し嬉しそうに笑い。

「うん、わかった。場所は――」

メモ帳にすらすらっと慣れた手付きで地図を描く。
筆圧はちょっと強めだが。
文字は書いてないが、目印と思われる模様がいくつ描かれる。

「ここの、なにもない壁に、まじゅつ?で隠れてるから、
 ノック、2回、1回。」

地図に丸を書き込む。何やら本格的な隠れ家らしい。

すぐにでも役に立てることが嬉しくて
少女は、さきほどばったり会ったときのように、にこりと笑った。

水無月 沙羅 > 「うーん、驚いた。 貴方の周りには本当にすごい人が居るみたい。」

きっとそれだけ、彼女を助けたいと思っていた人が居るという事。
それは、風紀としても、沙羅個人としてもうれしいことだった。
彼らが、私にこの縁を繋いでくれた。
この子の優しさを届けてくれた。

「ありがとう……ニーナ。 ありがとう。」

そっと、ニーナを抱き寄せた。
『生きていてくれて』、『出会ってくれて』、『助けてくれて』
理由はたくさんあったけれど、それを伝えたかった。
口に出すのは、少々気恥ずかしいから、せめて態度でしめそう。

「よしっ、じゃぁせっかくだから教えてもらった隠れ家に行ってみるよ、お腹も減ったしね。
 ニーナ、私の希望。 後はお願いね、私も頑張るから。」

一歩二歩離れて、笑顔を返すように沙羅も笑った。

227番 > 「この、隠れ家は、わたしも、びっくりした」

あの時は不思議だなとおもって流したが、今思うと気になる。
そんな事を考えていると、抱き寄せられる。無抵抗に受け入れる。

「……さら?……どういたしまして?」

お礼を言われたらこれで、合ってたはず。
考えていることまでは読めないが、
あいかわらず落ち着く、不思議な感覚に身を預けた。


「……うん、気を付けて、さら」

願いを受け取った少女は、小さく手をふって、相手を見送る。

水無月 沙羅 > 「もし途中で、女の子みたいな、こーんな目をした男の人が居たら、それが理央さんかもしれないから、よろしくねー!!」

眼を指で細く、眉を吊り上げて見せて。
最後に大きく振って、その場を走り去った。
もうすこし、がんばってみよう。

ご案内:「商店街」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「商店街」に水無月 沙羅さんが現れました。