2020/08/17 のログ
ご案内:「商店街」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
夕暮れ前の商店街にて、椎苗は難しい顔をして精肉店の前に立っていた。
目の前のケースに並んでいるのは、様々な肉と値札。
さらにコロッケやカツなどの惣菜も置かれていて、どれも美味しそうに見える。
「むう――」
並ぶ肉を睨みつける。
現在、『娘』がちょっとしたトラブルで部屋に泊まり込んでおり、普段しない料理などをここ数日行っているのだ。
しかし、料理自体はレシピ通りにやればどうにでも出来る物の、素材選びまでは簡単にいかない。
「一番いい肉を――ああいえ、やっぱり自分で選ぶのです」
迷う椎苗を見かねてか、店員に気を使ってもらうものの、『娘』に食べさせる物となれば自分で選びたかった。
■神樹椎苗 >
誰かに料理を振舞うなんて経験は、当然この数日、娘が来てから初めての事だった。
そして、自分の作ったものを嬉しそうに食べて貰える事が、想像した以上に嬉しい事だというのも初めて知った。
だからこそなのだろうか、娘の口に入る物は、出来る限り自分の力で用意したい。
「鳥、豚、牛――やっぱり鳥ですかね。
普段の食事を考えたら、食べやすいものが良いでしょうし」
娘は普段、まともな食事をとっていない。
食事の質と時間を削って他のものに当てているのだ。
それ自体を悪いとは思わないけれど、そうなると消化吸収も普通より弱っていそうなものだ。
■神樹椎苗 >
さらに、娘は内臓がぼろぼろなのだ。
BBQの時は平気そうにしていたが、そこは気を使うに越したことはない。
やはり消化しやすく、食べやすいものが良いだろう。
そうなると脂が多いものは避けるべき。
日系人であることを考えると、本当は動物性たんぱく質も消化には良くないのだけれど。
そこまで気にしすぎると今度は精進料理のようになってしまう。
「それもちょっと、味気ないですしね」
となれば、肉の量は少なくていい。
脂が少なくて、品質の良いもの――見てもわからない。
知識はあっても、実物を見て検討するには経験が足りなすぎる。
「――ええと、量は少なくていいので、脂が少なくて食べやすい鳥肉を。
ああ、値段は幾らでも構わねーですから、条件に合う一番いいのを頼みます」
そう店員に伝えて、見繕ってもらう。
肉はまあこれでいいだろう。
あとは魚や野菜――デザートなんかもつけてやると喜ぶだろうか、なんて考えつつ。
ご案内:「商店街」に柊真白さんが現れました。
■神樹椎苗 >
店員に肉を用意してもらい、提示された金額を確認する。
ネコマニャンポシェットから財布――ではなく、黒いカードを取り出して店員に差し出した。
驚いた顔をされたが、そこは常世島で働く者。
想定外など想定内というわけだ。
「――さて、次は魚でも見に行きますか」
夕飯の主菜になる予定の魚だ。
白身魚か赤身の魚か。
あっさりとした薄味で食べられる魚と考えると、白身魚がよいだろうか。
冷却魔術の掛かった大きな保冷バッグに、受け取った鳥肉を押し込んで。
今度は斜向かいの魚屋へと向かっていく。
■柊真白 >
魚をじいと睨みつける少女がそこにいた。
上から下まで真っ白の少女は、難しい顔をして魚を睨みつけている。
別に選ぶのが難しいわけではない。
考えているのは別のことだ。
「……。」
しかしはたから見れば、どの魚を買っていいかよくわからずに困っている少女にしか見えないだろう。
そんなことには気付かず――元よりどう見られているか気にしても居ない――、少女は魚を睨み続ける。
■神樹椎苗 >
魚屋に向かえば、そこには白い少女が居た。
その真剣に魚を選んでいるような様子を見ると、先ほどの自分もこんなだったのだろうかと眉をしかめる。
とりあえず、何をそんなに悩んでいるのかと隣に並んで見て見るが――わからない。
「さすが、どれも新鮮そうな魚が揃ってますね」
白い少女の隣に並びながら、声を掛けるというには独り言じみた調子で呟いた。
椎苗が黒系の衣服を好むのと対照的な白い少女。
二人が並ぶと、綺麗に白と黒の対比ができあがる。
■柊真白 >
ちら、と横を見る。
黒い少女。
「――この時期ならアジやイワシ、カワハギとかカンパチとかいい」
自分よりも更に小さい彼女の零した言葉に、今が旬の魚を挙げていく。
知っているかもしれないけれど、そのときはその時だ。
■神樹椎苗 >
隣の白い少女の言葉に、椎苗も神妙にうなづく。
「旬になりますからね。
しかし食べたことがないので、いまいちわからないのです。
特に薄味で食べやすい魚となると、どれになりますかね」
ううん、と唸りながら並ぶ魚を眺める。
鮮度はどれも申し分ない。
この時間でも見るからに活き活きとしている。
だがしかし、実際に食した時どういうモノなのか。
やはり知識だけではわからない。
食事を必要としない事の弊害が、まさかこんな形で現れるとは思っていなかった。