2020/11/02 のログ
ご案内:「商店街」に毒嶋 楽さんが現れました。
毒嶋 楽 > 「おっちゃ~ん、武蔵冷かけ特盛の温玉添えネギ増し~」

商店街の片隅に位置するうどん屋『二天一』。
讃岐うどんと武蔵野うどんの両方が味わえるうどん専門店として知る人ぞ知る店である。
夕暮れ前の半端な時間に暖簾をくぐり、店主の顔を見るなりヘラヘラと笑みを浮かべて注文をする男がひとり。
がらんとした店内を一望し、その後カウンター席の端っこに陣取った。

「いや~、すっかり秋らしくなっちゃいましたなぁ。
 そろそろ冷から温にチェンジする頃合いかねぇ。おっちゃん、どう思う?」

学生服を身に纏ってはいるものの、その風体は会社員めいたもの。
注文したうどんが届く前から割り箸を手に取りながら、気楽な口調で店主へと語りかける。
語りかけられた店主は一言、『好きにしなぃ』と素っ気無く、寸胴鍋へと目を向けたままだ。

毒嶋 楽 > 「相変わらずうどん一筋って感じだねぇ~。変わんなくて安心したよ。」

へらへらと笑いながら頬杖をつき、改めて店内を見回す。
閑散としているのも当然のこと。この時間は昼間の生徒ならば放課前、授業中だ。
もし学生の客が居るとすれば、サボりかあるいは。

『はいよ、お待ちどう。冷かけ特の温玉。』
「お、サンキュー。やっぱ授業前はこれ食ってかないとねぇ。」

あるいは夜間学校の生徒か、だ。
目の前に出された丼ににんまりと笑みを浮かべて、手に持っていた割り箸をくるくると回す男もまた、夜間学校の生徒の一人だった。