2020/11/03 のログ
■毒嶋 楽 > 「さ~て、そんじゃいただきまぁーす」
白く輝く麺の上に添えられた温泉卵を箸で割り、出汁つゆと麺を絡ませ合ったうえで刻みねぎを投入。
掬い上げた麺を口へ運び、一思いに啜り上げる。
昆布出汁の香りに続き卵のまろやかさが口の中へと広がり、もちもちとしたコシのある麺を口いっぱいに頬張る。
「んむんむ。……んー、んまいっ」
そこにシャキシャキとしたネギの歯応えと独特の青臭みが遅れて加わり、男は頬を綻ばせた。
男の名前は毒嶋 楽。学年は一年生、所属は公安委員で配属先は風紀委員と少々ややこしい肩書きを持つ。
ご案内:「商店街」に織機セラフィナさんが現れました。
■織機セラフィナ >
「おじゃましまーす」
暖簾をくぐって入ってくるおっぱい。
いや事務員さん。
今日は事務員じゃないけど。
お仕事はお休み、部屋の掃除中にお腹が空いて、うどん屋で一杯ひっかけようと言う魂胆である。
「ええと、釜玉うどんの三玉盛りにえび天といか天、たまご天乗っけてください。あ、あとお稲荷さんも三つ貰えますか?」
怒涛の注文である。
一杯どころじゃなかった。
「――こんにちは」
そして店内の先客に笑顔で一礼。
彼から一つ席を空けて座る。
■毒嶋 楽 > 『いらっしゃい。』
もすもすとうどんを啜っていた楽も、店主の声に新たな客の方へと顔を向けて。
そしてつるんと口からはみ出ていた麺を啜りながら、怒涛の注文に目を瞠る。
『はいよ、釜玉3のえびいかたま天、それに稲荷3つね。』
……何だあのおっぱい。戸惑いの視線を投げてから、流石に不躾だったか、と我に返って一礼を返す。
「どーも、こんにちは。
随分食うねぇ、ま、ここのうどんじゃ無理もないかぁ。」
美味いもんねえ、と一つ空けて隣に腰を下ろした淑女へと。
自分も特盛(2.5玉)を頼んだ身の上で言えた義理でもないが、感心と共に。
■織機セラフィナ >
「あら、そうなんですか?」
初めて入った店だが、どうやら当たりらしい。
常連っぽい雰囲気を漂わせる彼の言葉に期待が高まる。
うどんの前に稲荷がやってくる。
更に並んで、三つ。
「いただきます」
箸を取って手を合わせる。
ひょい、ぱくり。
もぐもぐもぐ。
「わ、おいしい」
思わず手を口に当てて驚いた表情。
続けざまに二個三個と口に。
ひょいぱくひょいぱく。
■毒嶋 楽 > 「そうなんだよ。
おっちゃんのうどん食べたら他所じゃ満足出来ないねぇ。」
胡麻擂りも兼ねて得意げに頷く。
何せ店主自身は口数少ない職人気質を拗らせたような男だから。こうして客が持ち上げないとすぐにでも傾きそうな店なのである。
案の定無言で麺を茹で始める店主を横目で見て失笑しつつ、出された稲荷ずしを平らげるのを見て。
「おぉ、大した食いっぷりじゃないの~
お姉さん学校の人?それとも商店街でお仕事してる人とか?」
はてどこかで見たような覚えがある。
一度見たら忘れなさそうな体躯であるからして、多分遠目に顔だけ見たのだと考えて。
食べっぷりもさることながら、身に着けているモノが凄いな、とついつい視線は下降気味に。
■織機セラフィナ >
「お稲荷さんがこんなに美味しいんだもの、それだけで期待しちゃう」
楽しそうに笑いながら。
お稲荷さんが美味しいうどん屋は美味しい。
と言うか美味しい店は大体何でもおいしい。
「学校の事務員さんです。織機セラフィナ、よろしくね」
にこっと笑って右手を差し出す。
視線に関しては気にしていない。
だってみんなそうだもん。
■毒嶋 楽 > 「お出汁がね、いい味してんのよここのは。
だからお稲荷さんも美味いんだ。」
へらり。自分の事のように笑いながら店主へと同意を求めるべく目を向けるが、無言の背中しかなかった。
いつだってこうだ、と半ば呆れながら肩を竦める。
ともあれ、馴染の店の味を良いと評価してくれる客が増えるのは有り難い限り、と。
「ほぉ、学校の事務員さん。セラフィナさんね……
俺ちゃんは二度目の一年生してる、毒嶋 楽っての。よろしく~」
差し出された右手をそっと握って。
思いの外しっかりした手だな、と感心しながらも離し。
「いや~、人生でこんな美人さんと握手なんてした事なかったから、柄にもなく緊張しちゃうねぇ。」
へらへらと緊張感皆無の笑顔で。
■織機セラフィナ >
握手を交わす。
剣を振っているので、確かに見た目ほど華奢な感覚はないだろう。
「やだもう、何も出ないよ」
美人さんと言われて困ったように笑う。
などと話している間にうどんが来た。
大きい器にもりっと盛られたうどんと、その上にどっさり乗った天ぷら。
美味しそう。
「いただきます」
手を合わせて、うどんを持ち上げる。
箸で持っただけでわかる、コシのあるうどんだ。
左手で髪を耳に掛けながら、ふーふーと息を吹き掛け、啜る。
口いっぱいに頬張る量をちゅるるんと上品めに。
「んー♪」
満面の笑み。
余りの美味しさに身体を揺らし、ぶるんと揺れる。
笑顔のままえび天もさくっと。
■毒嶋 楽 > 事務仕事一辺倒の手じゃない、とは見抜いたものの。
まさか剣を振っているとまでは思わなかった。
「何も出なくとも、言って損する事でも無し、サ。」
美人を美人と言って何が悪いのか、と口元で緩く笑ったまま。
自分の分のうどんを再び啜る。美人効果か心なしか普段の二割り増しほど美味さが増した様な気がした。これで十割。
もちもちとした触感を楽しみつつ再度横を見れば。
己の丼よりもさらに盛られた丼を前に期待を顔に顕わにしているセラフィナの姿。
思わずそのまま麺が口の中へ消えてくまでを見届ける。
「ははっ、美味そうに食うねぇ~」
良い食べっぷり、と称賛した矢先。
身体を揺らして喜びを表現する姿に思わず言葉を失う。
だって ぶるん、って擬音が見えた気がしたぞ。
ほぁー、と感心しながらも天ぷらを食べる姿まできっちり納める。まだ食べ掛けなのに何だかもうお腹いっぱいな気分だ。
■織機セラフィナ >
サクサクとした衣に包まれた、ぷるんとしたエビ。
出汁を吸ってちょっとふやけているところもまた美味しい。
彼の言う通り、これは当たりの店だ。
「だって美味しいんですもの。ねえ店主さん」
職人って感じの店主に笑みを向ける。
そうしてうどんに向き直り、うどんを啜り、イカ天を齧り、うどんを啜り、たまご天を齧る。
見る見るうちにうどんが減っていく。
「――ん、すみません、うどんのお代わりください」
あっという間にうどんを八割ほど胃の中に納め、イカ天をもぐもぐしつつ追加注文。
「二玉おねがいします。あとお稲荷さんも二つ」
まだ食うらしい。
■毒嶋 楽 > 『そいつぁどうも。』
仏頂面の店主も少しだけ得意げだ。
客席よりも少し高く設計された厨房で、彼には何が見えてるのか。思わず白けた視線を店主へと向ける楽である。
「しかしまあ、よく食うねぇ~。
事務員の仕事ってのはそんなに腹が減るもんなのかい?」
思わぬ健啖っぷりに舌を巻く。
元々特盛よりも多い量を注文して尚、おかわりまでするとは。よほど代謝が良いのだろう。
ぼさっと見ている内にこちらの分まで食べられるのではとまで思わされて、慌ててうどんを啜り出す。
追加注文を受けた店主は先の様に稲荷を二つ、セラフィナの前に置いて麺を茹で始めた。
その背は少しだけうどん職人冥利に尽きた感じがしている。
■織機セラフィナ >
「職人技ですよこの茹で加減とか出汁加減とか揚げ加減とか」
各種天ぷら半分ずつぐらい胃に納め、残りのうどんを片付けにかかる。
天ぷらを食べてしまうとお代わり分のうどんを食べる時にさみしい。
追加でやってきたお稲荷さんを吸い込みつつ、うどんも吸い込む。
「んん、仕事は疲れますけど、それはそれとして私がたくさん食べるので……」
恥ずかしそうにエヘヘと笑いながら。
人よりたくさん食べる自覚は、もちろんある。
それは仕事とは関係なく自分が大喰らいと言うだけだ。
しかし動いているとは言えいったい食べた分はどこに行くのか。
それと関係あるかどうかはまた別として、笑った拍子に揺れるおっぱい。
それと関係あるかどうかは、また別として。
■毒嶋 楽 > 「だろだろ~?
愛想は悪いけど、うどんに関する腕は一品だからなおっちゃんは。」
食べっぷりの良い姿を見ていると何だか気持ちが良い。
作った訳でも無い客の楽がそう思うのだから、作った当人は一入だろう。
ましてやそれがぶるん美人ならなおさらだ。
ほぼ吸い込む様に見えるほど豪快に食べ進める姿には思わず手も止まる。
「なーるほど。元々大食いなんだ。
まあでも一杯食べる子の方が好ましく思うし、良いんじゃないかなぁ。」
へらへら。言いも言ったりと笑い返す。
なるほどそれだけ食べるのならご立派に育つのも納得だ。
食べた物が全て行くであろう先を見て、自然と顔の締まりも緩む。男だもん、仕方ないじゃない。
「そういや天かすや、はねた汁で服汚さない様に気を付けてねぇ。
紙エプロンとか……ってもう遅いか。」
■織機セラフィナ >
「愛想が悪いなんて言っちゃだめですよ。店主さんは背中で語るタイプの職人さんですよ」
めっ、と言う様な顔で。
もしかしたら本人も気にしているのかもしれないし。
もぐもぐもぐ。
おかわりのうどんを器に追加投入し、水を一口。
「でも大変なんですよ。食費はかかるし、食べた分動かないといけないし」
普段から剣の稽古はしているが、それでも意識的に身体は動かしている。
そうしないとすぐ体重が増えてしまうのだ。
どこが、という訳ではないが。
「大丈夫ですよぉ。それに汚れてもすぐ洗えば落ちますし」
食べたら帰るだけだし、家もそんなに遠くはない。
流石に染みを作ったまま帰りたくはないが、ハンカチを濡らして叩けば目立たなくなる。
実際食べる勢いの割に食べ方は大人しく、跳ねる気配もなく食べ進めているのがわかるだろう。
などと言っている間に天ぷらもうどんもお稲荷さんもすっかり平らげ、箸をおいて手を合わせる。
「ふう、ごちそうさまでした。それじゃ楽くん、また学校で。美味しかったです、また来ますね」
彼が事務室に用事があるかどうかはわからないが、その時はよろしく、と言い立ち上がる。
支払いを済ませ、店主と彼に笑顔で手を振って店を出て行こう。
美味しいものも食べたし、また掃除を頑張るか、と背伸びをして家に帰ろう――
ご案内:「商店街」から織機セラフィナさんが去りました。
■毒嶋 楽 > 「まあ、そりゃ否定しないけども。」
確かに背中で語る事の多い店主なのは否定しない。
しかし今回ばかりは意図的に背中を向けていた気がしないでもない。
チラリと店主を見れば、少しだけ頬が緩んでいるのが窺えた。くそうムッツリさんめ。
「食費は……確かに死活問題だろうなあ。
俺ちゃんでさえたまーに断食を覚悟するってのに。」
お察しします、と深く深く頷く。
まあ自分は学生で、相手は学校の事務員とはいえ社会人だ。使えるお金にも差はあることだろう。
少しだけ羨ましく思ったりもしたり。
「そっかそっか、そりゃお節介だったねぇ」
実のところ服よりも素肌を汚すのでは、と案じていたのだけれど。
どうやらどちらにせよ杞憂だったらしい。一杯食べるうえに食べ方も綺麗とは恐れ入る。
「お粗末様でした、って俺ちゃんが言うのも変な話か。
じゃあねぇセラフィナさん。学校で~。」
綺麗に全て平らげた事務員さんへとひらひらと手を振り返して。
先に居た自分よりも先に暖簾をくぐって出ていく後ろ姿を見送った後は、静かに店主と顔を合せて。
「いやぁ~……すごかったねぇ。」
食べっぷりも、揺れっぷりも。
そんな感想を口にしつつ、まだ残っている己のうどんをつるつると片付け始めるのだった。
ご案内:「商店街」から毒嶋 楽さんが去りました。