2020/12/23 のログ
■神樹椎苗 >
素直に楽しいと言ってくる少女は、いつも通り――いつも以上に元気がいい。
このイベントの空気にテンションが上がっているんだろう。
「はいはい、あんまりはしゃぎ過ぎるとバテますよ」
手を振り回されそうになりながら、何とか宥めつつ。
角を曲がって細い路地に入ると、薄暗い道が続いていた。
路地はイルミネーションもなく、表通りに明かりも入ってこない。
「くらいから足元に気を付けるのですよ」
すでに日は沈んでいて、あるのはうっすらとした月明かりだけ。
街灯もない路地は、足元も真っ暗だ。
■希 > 「えへへ、しーなちゃんと居ると楽しいから」
すーはーと深呼吸しながら
「なんか暗いね?」
わーとキョロキョロ眺めながら
大人しく手を引かれながら
■神樹椎苗 >
「まあ、普段はヒトが通るところじゃねーですからね。
所謂抜け道ってヤツですよ」
暗い道はしばらく続いて、人気はない。
薄暗い中を二人で歩いていくと、ようやく路地の先に光が見える。
「ほら、この先ですよ」
そうして路地を抜けると、そこは光に溢れていた。
ビルのように大きく聳える一本の木。
ライトアップされ、きらびやかなイルミネーションで飾られたクリスマスツリーだ。
色とりどりのイルミネーションは、星が輝いているように見えるだろう。
見上げた視界いっぱいに映り込むツリーは、息を呑むほどの美しさがある。
■希 > 「そうなの?」
キョロキョロ好奇心で眺めながら
「わぁ」
キラキラとした目を輝かせ
「きれー」
ふんわりと見上げながら
■神樹椎苗 >
ツリーの周囲には少なからずヒトがおり、同じようにツリーを見上げていた。
事前に調べた通り穴場ではあるようで、混雑しているという事もない。
が、少しばかりカップルが多いだろうか。
「――これは、随分立派なツリーですね。
話題にならないのが不思議なくれーです」
きっと商店街自体が、これを売り出していないのだろう。
静かな穴場スポットとしておきたいのかもしれない。
「どうですか――って聞くまでもねーですね」
目を輝かせる少女は、この光景に満足してくれているようだった。
それなら、場所選びは成功だったと言えるだろう。
「それじゃ、早速ですがプレゼント交換と行きましょうか。
時間も遅いですし、あまりのんびりできるわけじゃねーですしね」
空は晴れているだけ、月明かりはあるのだが、すでに足元は真っ暗になる時間だ。
いくら治安のいい場所とはいえ、暗い中で少女を連れまわすのは気が引ける。
■希 > 「わぁ」
見惚れながら、友人の声で気がついて
「しーなちゃんしーなちゃん、キラキラだぁ」
目を輝かせながら
「あ、うん、えとね」
袋から布を取り出して、マフラーだ、ネコマニャン模様の
■神樹椎苗 >
すっかり見惚れていた様子で、キラキラした目は繋いだ手を嬉しそうに引いてくる。
「ふふ、そうですね、キラキラですね」
少女の瞳に反射したイルミネーションの色は、目の中に星を描いている。
ツリーのイルミネーションよりも、少女の瞳の方が綺麗に見えた。
そんな少女が取り出したのは、椎苗の好きなネコマニャンのマフラー。
それを受け取ると、思わず頬が綻んだ。
「ネコマニャン――んふふ、よくわかってるじゃねーですか。
ありがとうございます。
――折角ですし、巻いてもらえますか?」
と、受け取ったマフラーを少女に渡して。
■希 > 「えへへ、はい、いいよ」
くるり、と練習していたのか首にうんしょうんしょと巻いてあげて
「後は、はい」
それはクッキーであった、ネコマニャンの形の
「てづくり、がんばった」
むん、といびつながらも頑張った形跡が見えて
■神樹椎苗 >
少女の手でマフラーが巻かれる。
冬の外気で冷えていたはずだが、巻いてもらったマフラーはとても暖かく、心地よい。
少女の気持ちが籠ってるからの暖かさだと思うと、目が細まる。
「これは、嬉しいもんですね。
大事にします――?」
続いて差し出された、ラッピングされたクッキー。
それは形こそ歪ではあったが、一生懸命作ってくれたことが分かる、手作りの品だ。
「手作り――ああ、なるほどこれは」
受け取った手で、そのまま口元を隠した。
そうしないと、緩んだ口元を見られてしまいそうで。
(なるほど、こんな気持ちになるんですね)
手作りのモノを、渡す事はあっても、渡されることは経験がない。
『親しい相手』から受け取る手作りの品というのは、出来の如何に関わらず嬉しいものだった。
「まったく、これじゃあしいのプレゼントがかすんじまうじゃねーですか。
どうしたもんですかね」
とはいえ、今度は椎苗の番であり、もうすでに仕込みはしてしまっているのだ。
「それじゃあ、大したもんじゃねーですが――」
そうして、椎苗が手を上げると、ツリーの向こう側から、大きな袋を担いだ、白い髭で赤い服のおじいさんが現れる。
『さて、やっと出番かな』
笑いながら現れたおじいさんは、少女の前まで行くと体を屈めた。
『こんばんわ、お嬢さん。
友達想いの優しいお嬢さんに、プレゼントだよ』
と、大きな袋から、リボンのついたこれまた大きなものを取り出した。
少女が持つには両手で抱えなくちゃいけないような大きさだが、重さは軽く、柔らかい。
『大きなひつじコレクション No6 シークレット トコヨコリデール』というBIGサイズのぬいぐるみだ。
『それじゃあ、おじいさんは他にもプレゼントを届けに行くね。
では、友達想いの『お嬢さんたち』、メリークリスマス』
そう言って、おじいさんはツリーの広場を後にして去っていった。
■希 > 「えへへ、喜んでくれたら嬉し」
にまーって笑いながら
「わ、わ、わ、サンタさん、あ、有難うございます」
羊のぬいぐるみを抱きしめながら
「えへへ、ありがと、しーなちゃん、サプライズされちゃった」
嬉しそうに、笑うと
■神樹椎苗 >
「お前がちゃんといい子にしてたからのプレゼントですよ。
しいはまあ、ちょっとお願いしただけですから」
ただのプレゼントじゃ面白みがない、と思っての仕込みだったのだが。
手作りクッキーに勝るプレゼントかと言われると。
「むう」
少しだけ悔しい。
それでも、サプライズで喜んでもらえたのなら何よりというところだ。
「お前の部屋はちょっと殺風景でしたからね。
そいつが居れば、少しは賑やかに見えるでしょう。
それに、他にも種類があるみてーですしね」
夏の自由研究の時、羊に囲まれて大喜びしていたのを見ていたからのチョイスだった。
しかし、喜んでもらっても、手作りクッキーと比べてしまうと、なんとなく気恥ずかしい。
「――こほん。
それじゃあ、そろそろ帰りましょうか。
今日はこれから、もっと寒くなるみてーですしね」
そう言って、クッキーを大事そうにポシェットにしまうと、再び左手を差し出した。
■希 > 「えへへ、ありがと、しーなちゃん」
テンションの上がったままで
「うん、だいじにする、可愛いもの、もこもこ!」
目を輝かせ、嬉しそうに笑い
「うん、しーなちゃん、今日はありがと」
手を暖かく握る
■神樹椎苗 >
「ええ、もこもこですよ。
今の季節なら、抱っこして寝てもいいかもしれませんね」
自分と同じくらい小さな手を握り返して。
「こちらこそですよ。
でもまだ終わりじゃねーですからね」
手を引いて歩き出して。
「しいの部屋で、ケーキを食べましょう。
一緒に食べようと思って作っておいたんです」
そうして薄く微笑みながら、家路につくのだった。
■希 > 「えへへ、ありがと」
手を握って貰い
「ん?帰ったら何かあるの?」
くきりと首を傾けて
「ケーキ?やったー、ありがとう、しーなちゃん」
一呼吸置いて
「わたし、すごくたのしい!、しーなちゃんのおかげ!」
キラキラの街中に負けないぐらいに、輝いた笑顔を貴方に向けた
■神樹椎苗 >
「――それは、しいのセリフですよ」
眩しい笑顔に目を細めて。
ささやかな、一足早いクリスマス会を楽しむのだった。
ご案内:「商店街」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「商店街」から希さんが去りました。