2020/12/23 のログ
神樹椎苗 >  
 素直に楽しいと言ってくる少女は、いつも通り――いつも以上に元気がいい。
 このイベントの空気にテンションが上がっているんだろう。

「はいはい、あんまりはしゃぎ過ぎるとバテますよ」

 手を振り回されそうになりながら、何とか宥めつつ。
 角を曲がって細い路地に入ると、薄暗い道が続いていた。
 路地はイルミネーションもなく、表通りに明かりも入ってこない。

「くらいから足元に気を付けるのですよ」

 すでに日は沈んでいて、あるのはうっすらとした月明かりだけ。
 街灯もない路地は、足元も真っ暗だ。
 

> 「えへへ、しーなちゃんと居ると楽しいから」

すーはーと深呼吸しながら

「なんか暗いね?」

わーとキョロキョロ眺めながら
大人しく手を引かれながら

神樹椎苗 >  
「まあ、普段はヒトが通るところじゃねーですからね。
 所謂抜け道ってヤツですよ」

 暗い道はしばらく続いて、人気はない。
 薄暗い中を二人で歩いていくと、ようやく路地の先に光が見える。

「ほら、この先ですよ」

 そうして路地を抜けると、そこは光に溢れていた。
 ビルのように大きく聳える一本の木。
 ライトアップされ、きらびやかなイルミネーションで飾られたクリスマスツリーだ。

 色とりどりのイルミネーションは、星が輝いているように見えるだろう。
 見上げた視界いっぱいに映り込むツリーは、息を呑むほどの美しさがある。
 

> 「そうなの?」

キョロキョロ好奇心で眺めながら

「わぁ」

キラキラとした目を輝かせ

「きれー」

ふんわりと見上げながら

神樹椎苗 >  
 ツリーの周囲には少なからずヒトがおり、同じようにツリーを見上げていた。
 事前に調べた通り穴場ではあるようで、混雑しているという事もない。
 が、少しばかりカップルが多いだろうか。

「――これは、随分立派なツリーですね。
 話題にならないのが不思議なくれーです」

 きっと商店街自体が、これを売り出していないのだろう。
 静かな穴場スポットとしておきたいのかもしれない。

「どうですか――って聞くまでもねーですね」

 目を輝かせる少女は、この光景に満足してくれているようだった。
 それなら、場所選びは成功だったと言えるだろう。

「それじゃ、早速ですがプレゼント交換と行きましょうか。
 時間も遅いですし、あまりのんびりできるわけじゃねーですしね」

 空は晴れているだけ、月明かりはあるのだが、すでに足元は真っ暗になる時間だ。
 いくら治安のいい場所とはいえ、暗い中で少女を連れまわすのは気が引ける。
 

> 「わぁ」

見惚れながら、友人の声で気がついて

「しーなちゃんしーなちゃん、キラキラだぁ」

目を輝かせながら

「あ、うん、えとね」

袋から布を取り出して、マフラーだ、ネコマニャン模様の

神樹椎苗 >  
 すっかり見惚れていた様子で、キラキラした目は繋いだ手を嬉しそうに引いてくる。

「ふふ、そうですね、キラキラですね」

 少女の瞳に反射したイルミネーションの色は、目の中に星を描いている。
 ツリーのイルミネーションよりも、少女の瞳の方が綺麗に見えた。
 そんな少女が取り出したのは、椎苗の好きなネコマニャンのマフラー。
 それを受け取ると、思わず頬が綻んだ。

「ネコマニャン――んふふ、よくわかってるじゃねーですか。
 ありがとうございます。
 ――折角ですし、巻いてもらえますか?」

 と、受け取ったマフラーを少女に渡して。
 

> 「えへへ、はい、いいよ」

くるり、と練習していたのか首にうんしょうんしょと巻いてあげて

「後は、はい」

それはクッキーであった、ネコマニャンの形の

「てづくり、がんばった」

むん、といびつながらも頑張った形跡が見えて

神樹椎苗 >  
 少女の手でマフラーが巻かれる。
 冬の外気で冷えていたはずだが、巻いてもらったマフラーはとても暖かく、心地よい。
 少女の気持ちが籠ってるからの暖かさだと思うと、目が細まる。

「これは、嬉しいもんですね。
 大事にします――?」

 続いて差し出された、ラッピングされたクッキー。
 それは形こそ歪ではあったが、一生懸命作ってくれたことが分かる、手作りの品だ。

「手作り――ああ、なるほどこれは」

 受け取った手で、そのまま口元を隠した。
 そうしないと、緩んだ口元を見られてしまいそうで。

(なるほど、こんな気持ちになるんですね)

 手作りのモノを、渡す事はあっても、渡されることは経験がない。
 『親しい相手』から受け取る手作りの品というのは、出来の如何に関わらず嬉しいものだった。

「まったく、これじゃあしいのプレゼントがかすんじまうじゃねーですか。
 どうしたもんですかね」

 とはいえ、今度は椎苗の番であり、もうすでに仕込みはしてしまっているのだ。

「それじゃあ、大したもんじゃねーですが――」

 そうして、椎苗が手を上げると、ツリーの向こう側から、大きな袋を担いだ、白い髭で赤い服のおじいさんが現れる。

『さて、やっと出番かな』

 笑いながら現れたおじいさんは、少女の前まで行くと体を屈めた。

『こんばんわ、お嬢さん。
 友達想いの優しいお嬢さんに、プレゼントだよ』

 と、大きな袋から、リボンのついたこれまた大きなものを取り出した。
 少女が持つには両手で抱えなくちゃいけないような大きさだが、重さは軽く、柔らかい。
 『大きなひつじコレクション No6 シークレット トコヨコリデール』というBIGサイズのぬいぐるみだ。

『それじゃあ、おじいさんは他にもプレゼントを届けに行くね。
 では、友達想いの『お嬢さんたち』、メリークリスマス』

 そう言って、おじいさんはツリーの広場を後にして去っていった。
 

> 「えへへ、喜んでくれたら嬉し」

にまーって笑いながら


「わ、わ、わ、サンタさん、あ、有難うございます」

羊のぬいぐるみを抱きしめながら

「えへへ、ありがと、しーなちゃん、サプライズされちゃった」

嬉しそうに、笑うと

神樹椎苗 >  
「お前がちゃんといい子にしてたからのプレゼントですよ。
 しいはまあ、ちょっとお願いしただけですから」

 ただのプレゼントじゃ面白みがない、と思っての仕込みだったのだが。
 手作りクッキーに勝るプレゼントかと言われると。

「むう」

 少しだけ悔しい。
 それでも、サプライズで喜んでもらえたのなら何よりというところだ。

「お前の部屋はちょっと殺風景でしたからね。
 そいつが居れば、少しは賑やかに見えるでしょう。
 それに、他にも種類があるみてーですしね」

 夏の自由研究の時、羊に囲まれて大喜びしていたのを見ていたからのチョイスだった。
 しかし、喜んでもらっても、手作りクッキーと比べてしまうと、なんとなく気恥ずかしい。

「――こほん。
 それじゃあ、そろそろ帰りましょうか。
 今日はこれから、もっと寒くなるみてーですしね」

 そう言って、クッキーを大事そうにポシェットにしまうと、再び左手を差し出した。
 

> 「えへへ、ありがと、しーなちゃん」

テンションの上がったままで

「うん、だいじにする、可愛いもの、もこもこ!」

目を輝かせ、嬉しそうに笑い

「うん、しーなちゃん、今日はありがと」

手を暖かく握る

神樹椎苗 >  
「ええ、もこもこですよ。
 今の季節なら、抱っこして寝てもいいかもしれませんね」

 自分と同じくらい小さな手を握り返して。

「こちらこそですよ。
 でもまだ終わりじゃねーですからね」

 手を引いて歩き出して。

「しいの部屋で、ケーキを食べましょう。
 一緒に食べようと思って作っておいたんです」

 そうして薄く微笑みながら、家路につくのだった。
 

> 「えへへ、ありがと」

手を握って貰い

「ん?帰ったら何かあるの?」

くきりと首を傾けて

「ケーキ?やったー、ありがとう、しーなちゃん」

一呼吸置いて


「わたし、すごくたのしい!、しーなちゃんのおかげ!」
キラキラの街中に負けないぐらいに、輝いた笑顔を貴方に向けた

神樹椎苗 >  
「――それは、しいのセリフですよ」

 眩しい笑顔に目を細めて。
 ささやかな、一足早いクリスマス会を楽しむのだった。
 

ご案内:「商店街」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「商店街」からさんが去りました。