2021/02/02 のログ
ご案内:「商店街」に杉本久遠さんが現れました。
杉本久遠 >  
 『兄ちゃん、恵方巻き受け取ってきてー。
 ついでに豆もぼちぼち買ってきてよ。
 よろしくねー!』

 というわけで、節分である。

 商店街を訪れた久遠は、妹が予約していた恵方巻きを受け取った。
 今年の恵方は南南東らしい。
 妹からそう聞かされていた。
 

杉本久遠 >  
「今年も来てしまったなぁ」

 久遠は少しだけこの行事が苦手だった。
 というのも、昔から妹に泣くほど豆を投げつけられていたから、とかではなく。
 どうしても、大会の事を想起させられて緊張してしまうからだ。

「だはは、もうあの時とは違うが。
 どうにも身構えてしまうなぁ」
 

杉本久遠 >  
「だはは、もうあの時とは違うが。
 どうにも身構えてしまうなぁ」
 
 二年前、はじめて大会に参加した日を思い出す。
 自分がどれだけ未熟かを思い知り、才能と言うものを持たないのだと知った苦い記憶。
 あれから随分と変わったものだが、それでも転換期の記憶は忘れられるものではない。

「特に今年は新入部員もいるからな。
 うむ、情けないところは見せられないな!
 だっはっは!」

 それでも久遠は笑う。
 自分が持たざるものと知って、弱さを知ってもなお笑うのだ。
 それが、今の久遠を支えている。
 

杉本久遠 >  
 ふと、自分が掲示した大会のポスターが目に入る。
 細い目から濃い青が覗いて、足が止まった。
 
 このポスターを、一体何人が目にしてくれただろうか。
 その内、一体何人が興味を持ってくれるだろうか。
 そして、一体何人がこの世界に足を踏み入れてくれるのだろうか。

 それを思うと、少しだけ寂しさを覚える。
 久遠にできる事はそう多くはない。
 顔を上げて、笑って、エアースイムは楽しいぞ、と、全身で伝え続ける事しか出来ないのだ。
 

ご案内:「商店街」にシャンティさんが現れました。
シャンティ > 闇の差す場所から、光が溜まる場所へ
たまにはこういう場も悪くない……とはいっても、もはや自分にそれを感じる感覚自体はない
ただ、"読み取れる”世界はだいぶ違う

誰も彼もが概ね楽しそうで、誰も彼もが大体幸せそうだ
それはとても明るい光景だろうし、素敵な光景だろう

それが歪む瞬間もまた……


『……男の視線はポスターに釘付けになる。その目には様々な感情が浮かぶ。期待、寂寥、挫折……』

ふと、女は謳い上げる。異質をそこに感じたからこそ。


「あら、ぁ……その、ポスター、が……どう、かした、の……かし、らぁ……?」

杉本久遠 >  
「――おぉ?
 だはは、なに、どうというわけでもないんだ。
 ただ、この大会、一人でも多く見に来てくれたらいいと思ってなあ」

 と、そこで女性を振り向き。
 おや、と眉を上げる。

「――エアースイムというスポーツの大会だあるんだ。
 オレはその選手であり、広報を請け負っても居てな。
 一人でも、参加者や観客が増えてくれたら嬉しいと思っているんだよ」

 そうして女性に笑いかけながら、補足を付け加える。
 はたして、彼女は興味を持ってくれるだろうか?
 

シャンティ > 『「――」男は振り向き、眉を上げる。「――」男は笑いながら、言葉を継いだ。その顔はどこか探るような顔つきでもある』


「――エアー……スイ、ム……?」


記憶を探る。確かに、そのような名前のスポーツがあったような覚えはある。
空を、文字通り"泳ぐ”。そのようなものだっただろうか。
ああ、それはきっと――ティンカーベルのごとく、大空を舞うのだろう。


「底、抜け……の、マイナー……と、までは……いか、ない、けれ、どぉ……そう、ねぇ……メジャー、では……な、い――そん、な……競技、だった……かし、らぁ……?」

見下すでもなく、ただただ純粋に自分に確認するかのような言葉を女は口にする。


「広報……そう、そう、ねぇ……宣伝、した、い……これ、で、人、が……集ま、る、のか……集まって、欲しい……そん、な……気持、ち」


人差し指を唇に当てて、考え込むようにする

「で、もぉ……なん、だか……貴方、の目、はぁ……ただ、それ、だけ…じゃ、なかった、よう、に……思え、た、けれ、どぉ……?」

杉本久遠 >  
 その情景を歌うような言葉に首を傾げつつも。
 女性からエアースイムについての言葉が出れば、嬉しそうにするだろう。
 
「おお、知ってるのか!
 だはは、たしかにメジャーとは言えない、マイナースポーツだな。
 うむ、そんな気持ちだな、こういう機会に一人でも多くに知って欲しいからなあ」

 しかし、少し考えこむような仕草から続いた言葉には、困ったように頭を掻いた。

「ん、ああ、そんなふうに見えたか?
 だはは、まあ、選手でもあるからな。
 大会ともなれば思うところもあるさ」

 と、困ったように笑いながら答える。
 

シャンティ > 『「――」男は一瞬首をかしげるが、嬉しそうに笑う。』

自分の好きなことに情熱を傾ける人間は、嫌いではない。
少しだけ、自分も気を良くする。


「そぅ、ねぇ……私、は……自分、では……でき、そうに、ない……けれ、どぉ……"覗く”の、は……悪く、ない、かも……しれ、ない、わぁ……私、は……くわ、しく……な、ぃ……けれ、どぉ……空――を、自由、に、泳ぐ……そん、な……競技、で、よかった、かし、らぁ……?」

人差し指を口に当てたまま、小首をかしげて問う


「ふふ……選手、な、ら……そう、ねぇ……試合、への……不安、とか? それ、とも……焦燥、かし、らぁ……?」


手に持った本を撫でながら女は続けて問いかける。

杉本久遠 >  
 歌うような言葉に、そんな嬉しそうな顔をしていたのかと、自分の頬を触ってみた。

「できない、という事はないと思うぞ。
 まあさすがに競技スイムをするには、困難があるとは思うが。
 ――うむ、自由に空を泳ぐ、まさにそれがエアースイムだ!」

 大げさに頷いて、ぐっと親指を立てた。

「不安、焦燥か。
 確かにそれもあるだろうなあ。
 だが、なにかというなら、まあ緊張というやつだな!
 夏と冬、年二回の大会だから、というのもあるが。
 オレの半年が試される瞬間、オレがどこまで行けるのかが試される瞬間だからな。
 不安でもあり、楽しみでもあり、やはり緊張するわけだ!」

 だっはっは、と口をあけて笑う。
 そこには少しの暗さも含まれていない。
 不安はもちろん、寂しさや過去の挫折を想起はするが、それでも笑う久遠は力強く前を向いている。