2021/02/03 のログ
シャンティ > 『「――」笑う。男は力強く笑う。』


女は楽しげに謳い上げる


「ふふ……色々、あって、ね。あま、り……運動、とか……でき、ない、のよ、ねぇ……あぁ、でも――」


くすり、と女は笑う。目の前の男の力強さ。おそらくは何かしら抱えるであろう負の気持ちをかき消すほどの前向きさ。
この、心の強さは、面白い。
ああ――もっと もっと 


「興味、は……そう、湧いた、わぁ……? ね、ぇ……ピーターパン。もう、すこ、しぃ……エアー、スイム、の……こと、教えて……くだ、さる?魅力、と、か……見どころ、とか……色々?」

杉本久遠 >  
「そうかあ、難しいなら仕方ないな。
 だが、興味を持ってくれたなら何よりだ!」

 一体何に興味を持ってもらえたのやら。
 言葉通りに受け取って、久遠は嬉しそうな笑顔を見せる。

「エアースイムの事、というとそうだな。
 やはり、なにを置いても、自由に空を泳げるという所か。
 異能や魔術を使えるヒトでなければ、体一つで空を泳ぐ――ああ、ここはあえて飛ぶと言うか。
 空を飛ぶにはどうしたって、そうした力が必要だ。
 しかし、エアースイムはそれらを必要としない。
 素養のないヒトであっても、道具があれば自由に飛ぶことが出来るんだ」

 「まあ、その道具が高価なんだが」と、笑いつつ。

「それでも、大掛かりな道具を必要としないところは、他に中々ない特徴だろう。
 競技としては、そうだな。
 競技者同士の体格の差、身体的特徴、違いが、決定的なハンデにならないところか。
 例えば腕力の強い選手と、弱い選手が居ても、エアースイムという競技においては一切の差が生まれない。
 まあさすがに手足が複数あったりとなると難しいところはあるんだが、それもまたルールの上では受け入れられている。
 そういった、競技としての懐の広さ、それも一つの特徴――魅力と言えるだろうな」

 頷きながら話す口調には、冬の寒さに負けないような熱がこもり始めている。

「見る者としては、やはりあの空に描かれるコントレールの鮮やかな色。
 選手たちが競い合う軌跡が、それぞれの色で青いキャンバスに描かれるんだ。
 その光景は、うむ、見る者を引き込むだけの魅力があるだろう。
 少なくとも、オレはその光景を美しいと感じたものだ」

 腕を組み、しみじみと語る。
 その口調は、放っておけばまだまだ話し続けそうな雰囲気があるだろう。
 

シャンティ > 歓喜、高揚、興奮……正の感情の洪水
久しく触れていなかったソレは、それはそれで愛おしいものだ
女は淡い色の唇をほころばせる


「空……空、を……そう、そう、ねぇ……ティンク、に……なれ、る、なら……それ、は、きっと――楽し、い……の、でしょう、ねぇ……ふふ。本質、から、は……外れ、て……しま、ぅ……か、も……しれ、ない、けれ、どぉ……ただ、浮かぶ、だけ……も、たの、し、そう……ねぇ……?」


水場よりは安心して浮いていられるかもしれないと、ふと思う。水と本は相性が良くない都合、あまりそういうことからは縁遠くなっていると、そういうのもいいか、と頭を過るのである。


「体格差、が……問題、に……なら、ない……? つま、り……技術、の、問題、に……なる、のかし、らぁ……?さっき、道具、と……言って、いた、し……道具、の……捌き、方……に、なる……? たと、えば……どんな、技術、が……ある、の、かしら……? とん、だ、り……はね、た、り……まわった、り……? あぁ……でも、浮いて、るな、ら……跳ぶ、も……なに、も……ない、わ、ねぇ……」


指で様々な軌跡を描いてみせる。やはりイメージするのは、どこか悪戯なティンカーベルの軌跡。
と、同時に……本を片手、では難しそうだな、と感じる。


「コント、レール……人、だもの……煙、は……でない、わ、よねぇ……魔力、光、とか……その辺り、かしらぁ……? 競う、という、から……スケート、みた、いに……動き、の……美し、さを……競う、感じ……? ふふ。ピーター、は……本当、に……エアー、スイム、が……好き――な、のねぇ……?」

『男の言葉はどんどんと熱を帯びていく。口は早く、力強く、説明は続く』

くすくすと笑いを乗せて女は謳った

杉本久遠 >  
「はは、きっと楽しいぞ。
 気ままに体一つで空に浮かぶのは、それはそれで気持ちがいいからな」

 実際に、競技に参加せず、そうして空を泳ぐこと自体を楽しみにする人も少なくはない。

「うむ、体格差自体は決定的じゃないんだ。
 道具捌きと言うのは正しいな。
 道具の仕組み上、全身を使って動くことになるから、身体の大きさをどう使うか、その技術が肝心になる。
 そうだなあ、空中で側転や前転なんかもするが、腕や足の振り方一つで姿勢が大きく変わるから、手足の使い方も重要だ。
 しかし、なによりもエアースイムでは泳ぐ姿勢が大切でな、体幹を上手く使う事も含めた姿勢制御が勝負を決める事が多い。
 エアースイムじゃ体勢を崩した方が負けると言っても過言じゃなくてな。
 つまり、如何に自分の泳ぎやすい体勢を維持して、相手の体勢を崩すか、そういった技術が競われる競技と言っていいだろう」

 好きな事には饒舌になるもの。
 興味を持って聞いてくれる相手というのが貴重なのも相まって、やはり声には熱がこもる。

「そうそう、魔力の光が尾を引くんだ。
 それが選手たちの泳いだ軌跡を作る。
 それを、オレ達はコントレールって呼んでるんだな」

 とはいえ、それがどんなものかは見て見ない事にはわかりづらいだろう。

「おお、そうだそうだ、どんな競技か話してなかったな。
 美しさを競う、というのも昔はあったらしいが、今はそうだな。
 一番代表的な種目を例えれば、空中で行う総合格闘技、と言ったところか。
 三次元的な動きをしながら、最大十人が入り乱れてぶつかり合う光景は、他の競技ではそうみられるものじゃないだろう」

 とは言え、もう長い事常世島大会では、最大人数での試合は行われていなかったが。
 それだけ競技人口そのものが少ないのだった。

「だはは、そう様子を謳われるとどうにも恥ずかしいな!
 しかし、うむ、オレはエアースイムが大好きだ!
 それこそ、この先の人生を賭けてもいいと思えるほどにはな」

 笑みが一瞬消えて、真剣な表情が垣間見えるだろう。
 それは真摯に、自身のこれからを見つめている人間の表情と言えるだろうか。
 しかしそれもすぐに破顔して、朗らかな笑みに戻る。

「それにしても、なんだ、君はまるで吟遊詩人だな。
 どうかな、オレの想いは君の心に残るものだろうか。
 オレの想いは君に謳ってもらえるような、熱量のあるものだったかな?」

 

シャンティ > 「あ、は……悪く、なさそう、ねぇ……」

空を泳ぐ。それが熟練者であれば、自在に飛べるようになるというのであれば実に夢のあることだ。
なにより、道具で、というのがいい。ああ――あれも、これも……思いつくことは色々ある。
ああ、本当に――いろいろと


「資格、とか……制限、とか……あ、るの……かし、らぁ……? お空、の……お散歩、とかぁ……でき、たら、いいなって……思った、り……する、の……だけ、れ、どぉ…… あと、は……そう、ねぇ……うっか、り……スピード、出しす、ぎ……と、か……なら、ない、かし、らねぇ……なれ、るのに、時間、かかった、り、とか……」


唇に指を当てたまま、考えて、問う。どうせ調べればわかること、かもしれないが……識者に聞くことも重要な情報である
そう、とても大事な情報


「そ、ぅ……"格闘技"、なの、ねぇ……ふふ。それ、じゃ、あ……選手、には……向か、な、そう……ねぇ……けれ、ど……楽、しそう、ねぇ…本当、に。」


男の熱と、笑顔に唇をまた綻ばせる。
もし――もしも、だ。自分の考えていることが実現したら……彼は、どんな顔を見せるのだろうか。ああ――ぞくぞくと、する。


「あ、ら……ごめん、な、さぃ……これ、は……癖、みたい、な……もの、なの。そして――ええ。貴方、の……熱、も……気持ち、も……ふふ。とて、も……とても。心地、良い……読み応え、だわぁ……? 本当、に……素敵……」

くすくすと艶っぽく薄く笑って答える

杉本久遠 >   
「資格も制限も、今のところはないぞ。
 慣れるにはまあ、多少時間はかかるかもしれないが、それも最近は良い物があるしな。
 空のお散歩くらいならすぐに出来るようになると思うぞ。
 まあそれでも、初めてやるときは、経験者と一緒が望ましいかな」

 安全面には過剰なくらい注意を払われたものではあるが、それでも初心者の内は思わぬ事故がないとも言えない。
 いきなり一人で触れるのは、経験者としてはオススメできないのだ。

「はは、楽しそうと思ってくれたのなら何よりだ!
 オレは熱弁しすぎて引かれてやいないかと、ヒヤヒヤしてたぞ!」

 彼女がじっくりと聞いてくれるからか、ついつい話過ぎてしまった気がする。
 エアースイムの事となると熱くなりすぎてしまうのは、我ながら困った癖だった。

「ほう、ユニークなクセでいいな!
 そうかうん、だはは、君みたいな女性に素敵と言われると、どうにもくすぐったいな!」

 と、少しばかり照れ臭そうに頭を掻いて。
 彼女の表情が綻ぶのを見ると、うん、と頷いた。

「君は笑うとますます美人だな。
 うむ、それこそ『素敵』な笑顔だと思うぞ!」

 どこか嬉しそうに楽しそうに笑みを浮かべる彼女の様子。
 それは艶っぽくも可愛らしくもある。
 自分の話でこうして笑ってくれるのなら、嬉しいものだ。
 エアースイムの話も出来て一石二鳥というものである。
 

シャンティ > 「そう……それ、なら……思った、より、は…ハードルは、低、そう……ね、え……」

情報を噛み砕いて考える。ますます、条件は良い。


「ふふ……好き、を……語る、人、は……嫌い、では……ない、わぁ……? ふふ。あぁ……で、も……すこぉ、し……話し、こみ、すぎた、かし、らぁ……」


時計を眺めるような仕草。しかし、実のところ表示は見てはいない。


「ふふ、お上手、ねぇ……? この、間……男の子、に……いじ、わるな、こと、いわれ、て……すこ、し……自信、なくなって、いたから……ふふ、うれ、しい、わぁ……」


美人、という評価はもうすでに自分ではわかりはしない。それでも、そのように言われることは嫌いではない。
思わず、クスクスと、笑ってしまう。


「そう、ねぇ……じゃ、あ……お時間、つい、で、に……道具、の……見立て、か……カタログ……指南書、案内、か…… ご協力、いた、だけた、ら……うれし、い……かし、ら?」

杉本久遠 >  
「まあ、ハードルの高さと言うのなら、金銭的な部分になるだろうなあ。
 それも安価な非競技用モデルが出たから、それなら幾分マシと言えるか」

 好きを語る人は嫌いでない、その言葉はとても嬉しく、はにかんだ笑みがこぼれてしまう。

「上手なのは君の方だろう?
 だはは、自信を無くすことはないさ、すっかりその気にさせられてしまったしな。
 うん、君のような女性に笑いかけられたら、勘違いする男子は多そうだ」

 相手を立てるのが上手い――穿った見方をすれば、相手を乗せるのが上手いと言ったところだろうか。
 言い寄られる事も多そうな女性だが、この巧みな言葉で、上手くかわしているのだろう。

「おお、構わないぞ。
 と言っても、オレも買い物の途中だったからなぁ。
 専門店まで案内するって所で手を打ってもらえるかな」

 と、買い物袋に入った恵方巻を見せる。
 そう、今日は節分だったのだ。

「オレは杉本久遠。
 学園ではエアースイム部部長をやってる。
 折角だし、そうだなぁ」

 後ろの掲示板、ポスターの下にあるポケットからパンフレットを一冊取り出して、彼女に差し出した。
 大会のパンフレットには、今回の大会に関する事や、連絡先などが書いてあるが。

「大会のパンフレットがあるから是非貰ってくれ。
 一応、オレの連絡先も載ってるし、ああ、読めるか?」

 

シャンティ > 「ふふ、お金……なら、割と、あるか、ら……そこ、は……平気、よぉ……?」

使うこともなく、貯められてきたお金は一財産くらいにはなっている。
新たな収入源も、ないわけでもない


「ふふ、私は……それ、ほどで、も……ない、けれ、ど……まあ、いい、わ、ね。ふふ、そう、浮いた、お話、でも……あれ、ば……いい、のか、もしれ、ない、けれど、ね? ざぁん、ねん。全然、ない、のよねぇ」


くすくすと、微笑を浮かべて戯れのような言葉をかわす


「あ、ら……それ、は……ごめん、なさい? お邪魔……して、しまった、みた、い……ねえ……? お一人、用……で、も……なさ、そう……だ、し。悪い、こと、しちゃった、わぁ。」

そういえば、本日は節分。といっても習俗的に自分には縁のない話ではあるが、行事くらいは知っている。
たしか、邪を払ったりとか幸福を祈ったりとか……そんな感じだったか。


「久遠……さん、ね。私、は……シャンティ。シャンティ・シン。ただ、の……学生、よぉ……ふふ。ありが、たく……いただく、わねぇ……ご安心、を。これ、くらい……"読める"、からぁ」


くすくすと笑ってパンフレットを受け取った。

杉本久遠 >  
「はは、それは羨ましい話だなあ」

 家の手伝いやアルバイトで稼いだ金も、そのほとんどが競技のために消えていくのだ。
 貯める余裕なんてまるでないのが、将来への小さな不安ではあったりする。

「そうか、それは意外だな。
 うん、いい出会い、良縁があるといいな」

 くすくすという微笑が耳にくすぐったい。
 所謂魔性の雰囲気というのは、このようなものだろうかと、他愛のない事を考えた。

「なあに、夕飯までに帰ればいいだけだからな。
 それに店も家も居住区にあるから、遠回りという事もないさ。
 店からは駅も近いし、君が帰るのにも苦労しないと思うぞ」

 常世島唯一のエアースイム専門店、スイムショップ『SIRASAGI』
 試着や試泳、レンタルもやってる三階建ての専門店だ。
 居住区南側の駅に近いため、意外と行き来に苦労はしなかったりする。
 ただ、やけに目立たない場所にあるのが、集客上の欠点だったりするのだが。

「そうか、読めるなら重畳だ!
 この広報の連絡先がオレに繋がるから、いつでも連絡してくれ。
 それじゃあよろしくな、シャンティ。
 短い間だが、エスコートさせてもらうよ」

 そう言いながら、片手を差し出す。
 
「――ああそうだ、途中で節分の豆だけ買って行ってもいいかな?」
 
 危うく忘れるところだった買い物を何とか思い出し。
 それから、彼女を店まで案内しようとするだろう。
 

シャンティ > 「それ、は……都合、いい、わ、ねえ……そこま、で……お手数、に、ならないの、なら……ええ、ええ。是非……ご案内、お願い、する、わ、ねぇ……?」

実のところ、自分の帰り道ことなどはなんの問題もないのだが、この際そこはあまり話題にしなくてもいいだろう。


「ふふ……お豆、でも……お面、でも……どうぞぉ……?」


差し出された手をそっと取って、案内されるままに店へと向かうことだろう。たとえ、その手をとる必要がなかったとしても。

ご案内:「商店街」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「商店街」からシャンティさんが去りました。