2021/02/14 のログ
ご案内:「商店街」にアーテルさんが現れました。
アーテル > どっこもかしこもあんまい匂いがしてんなぁ。

そんな言葉は口を介さず、心の中に納めておく。
2ヶ月くらい前に見た、あの色めきたった雰囲気を思い返しながら、
辺りを見渡しにゃあと鳴くくらいに抑えつつ、雑踏の合間を掻い潜って。
今日はバレンタインデーとやらで、商店街もその商戦に力を入れているのだろう。
通り自体が甘い匂いがしているようにすら感じられた。

黒猫は一匹、そんな商店街をうろついていた。
こんな人通りの多いところで目立つマネはできまいと、猫に扮してお散歩に来たのだった。
ただ、甘い雰囲気につい誘われるように、時折人の流れからするりと外れて、洋菓子店の軒先にお座りなんかして。
大きなガラス窓から覗ける、店の中にショーケースの中のチョコレートやらを眺めている。

とはいえ、いくらねだろうが猫だからチョコは貰えない。猫のようで猫じゃないから本当は食べられるのだけれども。
本人もそれが分かっているのか、ただ、じーっと眺めているだけだった。

ご案内:「商店街」に雨見風菜さんが現れました。
雨見風菜 > バイトが終わり。
商店街に差し掛かった風菜。

「ふー、今日も頑張りましたねえ。
 ……あら、猫ちゃん」

ショーケースを眺めてるように見える猫を見つける。
見覚えのない猫のはずだが、なんだか知ってるような気がする。

アーテル > 猫ちゃん。

そんな言葉が聞こえた。
この場で猫と言えば、自分くらいしか居なかろう。
声の方向へと、首を向ける。

「にゃあ。」

こいつ、知ってるぞ。時計塔かで会った覚えがある。
糸だかなんだかを使って登ってきたんだっけか。
とはいえ、声を掛けられたのに無視するのもなんなので、
自分のことか?と、猫なりの返事をしてみた。

青い眼が、彼女の顔をまっすぐに捉えている。
そこから下へは視線を向けないようにしているのは、化け物なりの礼儀だろうか。

雨見風菜 > 返事をされて直感する。
ただの猫じゃない、と。
……ただ、風菜も人間。
常識に流される人間であるため、偶然だろうとその直感を流してしまう。

「んー、可愛い猫ちゃんですね。
 毛並みが良い艶してる……ということは、飼われている?」

近づいて、撫でようと手を伸ばす。

アーテル > ごろごろ。ぐるぐる。
伸びてくる手には目を細めて、僅かに額を押し付ける。
猫としての処世術はばっちり身についているつもりだ。
これをすれば大抵のニンゲンは堕ちる。

「にゃぁん。」

飼われているか、という問いかけには、まるで肯定するように一鳴き。
実際飼われているつもりはないが、家に押しかけて世話されるような不思議な関係を持つ相手はいるのだから。
ただ、それを猫の言葉で表すのが難しいので。

ショーケースからは興味が外れたように、今はただの猫として目の前の人間に応えてみることにした。

雨見風菜 > 「あー可愛い。
 この可愛さに勝てる人はそうそういないでしょうね本当」

伸ばした手に額を押し付けてきた。
これはもう撫でて良いサインだろう。
遠慮なく、しかし優しく撫でまくる。

「……そうだ、でしょうかね?」

返事と思しき一鳴きには否定の感情は感じられない。
まあ否定されたとして猫の場合自分が上だとでも思ってそうだが。
寧ろ人間を毛のない猫だと思ってるのでは、という話も聞いたことがある。

アーテル > ぐるぐる。ごろごろ。
撫でる触るくらいなら無問題らしい。
望まれるままに身体を差し出して、その手に、指先に弄ばれる。
短毛種らしくさらさらと、艶やかだが柔らかい毛並みの感触が伝わるだろうか。
すると、誰かの飼い猫だという認識を持たれた気がしたので。

「にゃー?」

ちがうが?と、語尾が上がる感じの鳴き声で、ここは一つ念のために否定の意を込めておく。
飼われてるつもりはない、というスタンスを崩すつもりはないが…
どうにも猫の言葉でそれを十全に表すことが難しい。
とはいえ、野良っこだと思われるのも少し違うと、ややこしい立場であることを伝わればよいが。

雨見風菜 > 毛並みが気持ちいい。
長毛種も短毛種も、どちらにしても猫はいいものだ。
こうして撫でさせてくれるなら尚更である。

「あら、居着いてあげてる方、でしょうか?」

なんか否定された気がした。
気がした、なので違うのかもしれないけど。
そもそもなぜ意思疎通ができてると自惚れてしまうのか。
人間の傲慢である。

アーテル > 「………。」

ふと気づく。
にゃん、とかにゃあ、とか、猫の言葉で伝えようとするから駄目なのだと。
ここは簡潔に、首を縦に振ればよいのだと。
そんな時に、居ついてあげている方かと言われて、ちょっとしっくり来たものだから、自分の考えの儘に振る舞ってみた。
尻尾がゆらりと振れた辺り、彼女の答えがあっているのだと強調したそうに。

「んなぁー。」

それから、長く一鳴き。
よくわかったな、と言いたげに。

雨見風菜 > 長鳴きに肯定の意味を感じ取り。

「やっぱりそういうことでしたか」

猫だとそういうふてぶてしさも可愛いものだ。
けれどもこれは言葉が通じてないからかもしれない。
実際に口に出して言われたら……それでも猫なら許してしまいそうだが。

「あー可愛い」

しかしいつまでも道の真ん中、それも店の前で猫と戯れるわけには行かない。
抱き抱え、道の端に移動する。
付近の建物の植え込みの縁石に腰を下ろし、そこに猫を下ろす。
抱きかかえるということは、風菜の豊満な乳房は猫にその感触を与えることだろう。
普通の猫ならばそう動じることでもあるまい。
そう、普通の猫ならば。

アーテル > 「んに。」

抱きかかえられる。
その時は別段抵抗するつもりもなかったので、されるままになってみたが、
やれやたらに押しあたるものが、やはり気にはなるもので。

「…………。」

通い先の主がやたらスキンシップを好むので、その豊満な女性の触れ合いには多少は慣れたわけで。
逃げようと暴れたり、抵抗したりはしなかった。
ただ、俺は雄だと言葉にすべきか、すまいか…
そんなことを考えて押し黙る。
決して、その感触を堪能していたわけではない。決して。

「……っ…」

とはいえ、こんなことをされては余計にネタ晴らしがしづらくなった。
元よりそうやすやすと明かすつもりもないが、隠し通した方がよいとも思うことはあまりなかった。
だが、会ったことある相手が自分と知らぬ間にイロイロ触れ合うことになると、後が気まずくて仕方がないのだ。

雨見風菜 > 反応が違った。
風菜も、自分は鈍感だと思っているがそこまで気付かないほどではなかった。

「……もしかして、猫ちゃんはただの猫じゃない。とか?」

ここは常世島。
人に变化する機械竜も居るのだから、猫に变化する何者かも居てもおかしくない。
もしそうだとしても、セクハラ喫茶で嬉々として働く風菜だ。
特に気にすることもない。
さて、特に怒った色のない風菜の声色は。
彼本人(本猫?)にはどう映るだろうか。

アーテル > 「…………。」

ただの猫ではない。
それは、彼女の気付きで、彼女の言ったことである。自分から明かしたわけではない。
…なら、多少はそのように振る舞ってもよいだろうか。と…

「そう、ただの猫じゃあないな。」

そう思うや否や、流暢に喋った。
やっぱりこっちの方が意思疎通はしやすいとばかりに。
彼女の言葉からは、怪しむ気持ちや気味悪がる気持ちもないように思えたものだから。
だったら、喋る猫だっているだろう。この島では、よくある話だ。

「次いで言うと、俺ってば雄なんでねー。
 それを踏まえて触ってくれるといいかもなー?」

彼女のすることを、特に制限するつもりはない。
だが、それ以前に自分は雄であることを強調しておく。
その上で彼女がどう動くか…それを見極めようと。
なお、言って置きながら自分は動かない。

雨見風菜 > 「あら、やっぱり」

実際に気味悪がることもなく。
予想が当たった、位の喜色を見せる。

「雄であることを踏まえて、ですか」

ふむ、と少し考えて。
ひょいと抱き上げて、胸を押し付けながら頭を撫でる。

「雄でも猫は可愛いものですよ。
 ……もしかして、以前に会った誰かでしょうか?」

こうなってくると、この猫を見たときに感じた既視感も間違いではないのではないかと。
だとしても風菜自身、胸を押し付けながら撫でるのはやめるつもりはないが。

アーテル > 「さあ?
 会ったことあるかもしれねえし、ないかもしれねえ。」

そこははぐらかした。
流石に気まずい思いをするのは御免だと。

「……とは言いつつも、止めねえのなー?」

気のせいだろうか。
雄だと自己申告したころから、どうにも触れ合う面積が広くなってきた気がする。
それも、厭に女性を意識するところへと導いてくるものだから。
されるがままになっているが、念のためにその意図だけでも確認しておこうと。

雨見風菜 > 「なるほど、会ったことあるどなたかでしたか」

語るに落ちたとはこのことか。
実際に会ったことがないならはぐらかす必要自体がない。

「あら、お嫌ですか?」

風菜自身は嫌ではない。
嫌だったら今のバイト自体していないわけで。
例えおっさん思考の子供でも、相手に悪印象がなければ同じように対応しているだろう。

アーテル > 「いやぁ?そんなことないかもしれねぇぞ……?」

だが、続けてはぐらかす。
しかし、それ以上に自分の情報を出すようなことは言わないようだ。

「逆さ。
 お前さんは嫌じゃあないのかい? 猫とはいえ、雄なんだぞ。
 そんでもって、人語を解する。」

嫌…とはとても思えないが、念のために。
それとも、猫とニンゲンとでは扱いが別なのだろうか…なんて思いながらも。

「そんな得体の知れねぇ獣にここまで身体を許すたぁ、あんまり感心しねぇぞー?」

自らを得体の知れない獣、と卑下しておきながら。
始めて彼女の腕の中から、滑らかな毛並みで以て身体を滑らせるようにぬるりと抜け出そうとした。

雨見風菜 > 「無いなら無いで断言すればいいだけの話でしょう?」

正直面識を増やしすぎて心当たりが絞りきれない。
とはいえ、『会ったことがある』以上に追求するつもりはないのだが。

「いいえ、別に?
 寧ろ……ふふ」

この場所が商店街であることを思い出して、茶を濁す。
落第街ならきっと最後まで言ってたことだろう。

「そうかも知れませんね。
 でも、本当にそんな類なら、わざわざそんな事を言う必要もないでしょう」

猫が抜け出すのは特に何も抵抗せず。
そもそも抜け出すのを阻止する術などないが。

アーテル > 「俺ってば嘘を吐けねぇタイプだからなぁ。
 普段からそういうのはあいまいな返事にしておくようにしてんのさ。」

嘘は吐けない、と敢えてそう口にする。
その上で、曖昧なことを言う様にするのだと。

「………。
 守備範囲が広いこって。」

おお、こいつぁお構いなしか。
猫であっても構わないとさえ言いそうな雰囲気に対して、変わらない表情の中に苦笑いを含めた。
すとん、と軽やかに膝の上から飛び降りると、その勢いに委ねるように再び雑踏へと歩みを向けていく。

「わりぃな、今日はこの辺で帰るさ。あんまり変なのひっかけんなよー?
 じゃあな。」

ちらと背後を一瞥、そう一言だけ口にすると、
後は一気に駆けていき、人々の波に飛び込んでいったのだった。

ご案内:「商店街」からアーテルさんが去りました。
雨見風菜 > 「ここまでバレていたら今更だと思うんですよね」

はぐらかしにはぐらかされて苦笑する。
風菜の胸元から抜け出した猫は、あっという間に雑踏に紛れていってしまう。

「……あー、チョコレート渡し忘れましたね」

とはいえ、特に追いかけるつもりもなく。
風菜も、その場を後にするのであった。

ご案内:「商店街」から雨見風菜さんが去りました。