2021/03/28 のログ
ご案内:「商店街」に照月奏詩さんが現れました。
照月奏詩 >  
 夜の商店街。ベンチに座っているのはどうにも暗い雰囲気の青年。手にはジュースのペットボトルを握っているもののあまり減っておらず、それを力なくプラプラと揺らしている。

「……どうすっかなぁ」

 食事をしないといけない寮に戻らないといけない。そんな事を考えてはいるものの、やはり食欲はわかないし寮で一人でいるという気にもなれない。
 原因はわかり切っている。朝の一件だ。
 別に殺しに慣れていないというわけはない。むしろ慣れ過ぎている位慣れている。しかし、しかしだ……慣れたからといって平気な訳ではない。
 更に言えば今回殺した相手は全く罪もない、むしろ被害者ともいえる人物なのだ。どうにも気分は沈んでしまう。
 何度目かわからない溜息。

ご案内:「商店街」に藤白 真夜さんが現れました。
藤白 真夜 >  
祭祀局からのお仕事を一通り終えての、帰り道。
すっかり暗くなってしまった……と思いながらも、足りなくなっていた日用品を買い足して、寮への道を歩いていると、そこには落ち込んでいそうな男の人。

(ああっ……なんだか困ってそう……!で、でも男の人だし、放っておいたほうがいいのかな……)

そんな、内心そわそわと、変な人と思われても声をかけるべきかとかかけまいべきかとか悩みながらも。
以前公園で悩んでいた私に声をかけてくれた親切な人を思い出して。

(……よし!)

「あ、あの~?だ、大丈夫ですか?ご気分とか、優れなかったり、します……?」

こそ~っ、と心配するようにお顔を覗き込みながら。
むしろ私のほうがご気分が優れないくらいびくびくしながら、勇気を出して声をかけてみたり、するのです。
そう、緊張のあまり一度顔をあわせたことも気づかずに……!

照月奏詩 > 「ん、あーまぁたしかに体調はあんまりよく……は……?」

 とどこかで聞いた声。ふとそっちに視線を向ける。
 自身の今の状態も含めて少しだけ記憶の照合に時間がかかって……

「……真夜だったか? あの時の公園以来だな」

 今日は元気そうだななんて少しだけ笑おうとして。
 彼女の香り、血の香りを感じて。

「っ、座るか? 俺は大丈夫だから」

 あの少女と被ってしまった。
 パッと少しだけ避けるように立ってしまって。
 それから少しだけやらかしたなぁって感じで顔をしかめた。

「あぁ、悪い気にしないでくれ。お前が悪いわけじゃないから」

藤白 真夜 >  
「え、えっ!?……あーっ!」

いきなり名前で呼ばれてかなりびっくり。
ですが、面を上げてこちらを見るそのお顔には、私もばっちり覚えがありました。

「照月先輩! お久しぶりですね。
 つ、つい、元気が無さそうだったので声をかけてしまいまして……。
 あの時とは逆ですね、えへへ」

なんてちょっと意識しすぎなのでしょうかとか、笑って誤魔化そうとしながら。

私を見て慌てて立ち上がる照月先輩。
……実のところ、そういう反応も割と何度もあって慣れていたものだったり。

「あ、あはは。
 ……匂っちゃいましたか?」

こちらのほうこそちょっと申し訳無さそうに。

「どうぞ、座っていてくださいね。
 気分が良くない時は身体くらいは休めないと……」

……けど。
以前の彼とは、少し違って視えた。
血を流す私を見ても驚かず、慣れていると言っていた優しい彼とは。

「……なにか、あったんですか?
 ……、い、いえ、私で力になれるかなというか、私で力にはあんまりなれないかもなのですが、話すだけで楽になったりとか良く聞く話ですし……!」

照月奏詩 >  
「ああ、ホント逆だな今度はこっちがなんか落ち込んでる感じだわ」

 とハハハと力なく笑った。今はどうにも笑う気分には慣れなくて。
 申し訳なさそうな顔をされると、こちらも申し訳ない表情を浮かべた。

「いや、そんな……能力のせいなのに今みたいな反応するとか最低だよなホント。悪い」

 普通にそんな匂いがするとは思えず、おそらくそういう能力なのだろうと思ってそう解釈した。
 促されれば大人しく座って。それから少しだけ目線を泳がせて。

「あー……そう、だな……避けちまった言い訳ってのも変だけど……すごい嫌な夢を見てさ。食欲もわかない、寮で一人って気分にもなれないでウロウロしてたって感じよ」

 情けないだろなんてここだけは少しだけ笑えた。
 ジュースを一口飲んで。

「同じくらいの年の女の子を殺す夢。その夢でも血の臭いがしてて感覚も手に残ってて……血の臭いとか色々重なってどうにもかぶっちまった」

 変な話だろと言ってから。

「こういう嫌な夢見た時ってどうすりゃいいんだろうなぁって。あんまり悪夢とか見る事無いから慣れてなくて」

 と夢を言っている物の少しだけ手は震えている。そして目も泳ぐ。
 まるで本当にあったことのように。

藤白 真夜 >  
「い、いえっ。異能を使うとどうにも、匂いがついてしまうみたいで……。
 気分を悪くされる方もいるので、最近気をつけていたつもりなんですけれど、こちらこそすみませんっ」

ぺこぺこと頭を下げて、しんなり。
むしろ男の人に匂いが届いてしまうというのが恥ずかしさとか申し訳無さが渦巻いているのですが……!
とはいえ、ちょっと匂いやらが届きにくいように、少しだけ距離を置いて立ったまま、彼の話を聞くのです。

「……うっ……。や、やっぱりちょっと申し訳なく……!
 でも、確かに、そういう悪夢は辛いモノがありますね……」

やっぱり私のせいでは……?とちょっと落ち込みながらも。
その話には、共感できました。

「……私も、たまにそういう悪夢を見ることがあるんです。
 私の場合は、そういうのを見る度、
 『私はそんな悪い人じゃないから、良い人になれるようがんばるぞーっ』
 ……って、一人で逆にやる気が出たりするんですけど」

……ちらりと彼を見やれば。
どこか、揺らぐように震える彼の、手。

「……。」

……どういう意味かは、わからない。本当かどうかなんて、気にしてもしょうがないし。
彼のことは深く知らないし、言えることはそんなに無い。
けれど、一つ知っていることはあった。

「あなたならば」

「照月先輩ならば、……きっと、何か理由があったのだと、思います」

匂いが届くのも気にせず近づいて。
同じベンチには座らないけれど、しゃがんで彼の手に、手を。そっと、触れて。

「あなたは、悪意を持って誰かを傷つけることなどしない、優しい方だと。
 私が知っていますから、ね?」

なんて、夢のお話ですけど、と照れ隠しするみたいに笑いながら。

照月奏詩 > 「たしかに、真夜は悪い奴じゃないよな。俺なんかにもこんな風に話しかけてくれて聞いてくれるんだから」

 なんて彼女の様子に少しだけ答えて返事をする。
 手に触れられればわずかにビクッと驚くか。
 投げかけられた言葉を聞いて少し目を伏せる。

「俺は……優しくなんてないよ。俺も真夜と同じで”良い人”になれるように頑張ってるだけさ。悲しそうな人とか困ってる人とか放っておけなくて。声かけて、助けようとして」

 手を振り払う事はせずに。ポツポツと。

「……だけど結局助けられるのなんてホントに少しで、場合によっては見捨てるしかない事だってあって。それを優しいって言っていいのか? なんて突然言われても困るよな」

 悪いと少しだけ謝ると
 彼女を見るように目線を上げる。

「だけど俺はそんな偽善者で……どうしょうもない悪党なんだぜホントは。むしろ初めから悪いって言われる奴の方が性質が良いんじゃないかってレベルのホントどうしょうもない奴なんだよ」

 だから優しいなんて言わなくても良いと少しだけ笑う。

「ホント悪いないきなりこんな事。1回しかあってないような奴にする話じゃないよな。結構参ってるっぽいわ」

藤白 真夜 >  
「……。」

想像していたより、ずっと。
こう言うと失礼だけど、私に似ていて。
けれど、きっと優しい人だからこその、迷い。
方向性は違っても、私も考えたことがあるそれら。
私に近しいそれを優しく見つめて、静かに言葉を聞いて。
それでもやっぱり、一つだけ認められない。

「……いいえ。
 照月先輩は、ちゃんと良い人なんです。」

「全ての人間を救うなんて、どうせ出来ません。
 自分の手の中にある人を救おうと努力して、
 こぼれ落ちていくものに苦悩する。
 それが、あなたが良い人である証、です。」

「自分が"良い人"かどうか悩んで、それでも、
 ささやかであっても……良い人であろうとする。
 例え今は悪いものでも、どうしようもなくとも、
 良くなろうとあがいている。
 それが、良い人の条件だと思いますから」

……思わず、にこにこと笑顔になってしまいます。
まさしく、私の求める良い人の在り方そのもののように、苦悩する姿。
それを見れば、応援したくなるのは当たり前の話でした。

「あはは……すみません、なんだか色々聞いてしまって。
 でも、少し気は晴れたんじゃないでしょうか?」

彼の手がもう震えていないのならば、手を離すでしょう。
……実は男の人に触れてちょっと恥ずかしかったりしているのですが……!

照月奏詩 >  
 彼女の言葉をひとつひとつ。頭の中でかみ砕いていく。
 もちろん今そう言ってくれているのは眼前の彼女なのだ。でも、その血の香りのおかげだろうか。それとも彼女の雰囲気が為せる技なのだろうか。
 自分にはまるで手にかけた少女が許してくれたような。そんな都合の良い事を考えてしまう。

「よくなろうとあがいている……それが良い人の条件か」

 そうして彼女の言葉を笑顔を見て思わずこちらも少しだけ笑った。
 
「いや、勝手にベラベラ話したのは俺だ。ありがとうな……これでもう先輩なんて呼ばせられなくなっちまった」

 そうしてさっきまでの力のない、どこか作ったような笑顔ではなくしっかりと自分自身としてほほ笑んだ。
 震えは止まっていた。

「それにしても、お前もこういう夢をたまに見るって。強いな、俺はあんまり見ないのに折れそうになってたってのに……今回のお礼ってわけじゃないけどさ。もし聞いてほしい事とかあったら今度は俺の番な?」

 貰ったままなんてカッコ悪いしなんて少しだけ言う余裕も出てきたのだろう。
 ジュースを一口だけ飲み下す。