2020/06/28 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 異能・魔道具エリア(7・8F)」に北条 御影さんが現れました。
北条 御影 > 新しくオープンしたと聞いて足を運んでみたものの、
周りは家族連れや友人連れでごった返しており、独り身の自分には何だか居心地が悪く感じた。
流石百貨店というべきか、食品も雑貨も普段出入りしてる商店街より値段が高い。
結果、服でも見繕おうかとちょっとウキウキしていたのも最初だけで、
気づけば比較的客の少ないこの異能・魔道具エリアへと逃げるように足を運んでいた。

「……あーあー、皆さん楽しそうでよろしいことですねー」

はぁ、とため息交じりに呟く。
誰に言うでもなく、エスカレーター横のベンチに腰掛けてぼやいた。
目の前を通り過ぎて行く人たちの楽しそうなこと。
少し、羨ましくなる

北条 御影 > 「というか。前にも似たようなことやってたな私…」

思い出した。
以前にも街の浮かれた雰囲気にアテられて、一人勝手に腐っていたことがあった。
というか、割と何度かある。

「我ながらいい加減学べ、って感じなんだけども。
 でもなー…こういうチャレンジ精神無くすと、ホントに腐っちゃいそうだしなー」

もう一度溜息一つ。
新しいもの、楽しいこと。
かつては当たり前に享受していたそれらを、今でも求めてしまう。
同じように求めたところで、同じように手に入る筈もない。
今の自分には、共に遊びに行く友人も、恋人も、容易には手に入らないのだから。

だとしても、それらを求める心自体をなくしてしまいたくはなかった。
凡そ人間らしい社会との繋がりを断たれたとしても、
自分から社会と関わらなくなってしまえば、それこそ存在の消失と同義だ―

ご案内:「扶桑百貨店 異能・魔道具エリア(7・8F)」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > 楽しそうだという人並みの中。
つまらなそうに歩く少年。
適当に買い漁った魔術の授業用の道具一式。
かごに入れてブラブラと。テストで努力する気はないが、最低限のことはやらねばならない。
面倒くさいが仕方ない。

通り過ぎるエスカレーターの横。
ベンチに座る赤い髪に目が行く。
派手な髪色だなぁ…だなんて。

北条 御影 > 沈んでしまいそうになる気分を振り切ろうと、ふ、と顔を上げた時。
見覚えのある顔とばっちり目があった。

「―あれ、は」

ん、と一瞬考えて思い出す。
あの時のあの約束はどれほどの効果だっただろうかと。
試す意味も込め、にま、といたずらっぽい笑みを浮かべて腰を上げた。

「おにーさん。こっち見てましたけど、何か御用です??
 こちとら開店セール中の賑やかな百貨店に、愚かにも一人で乗り込んで来て後悔してる可愛い女の子ですよー。
 ナンパするなら今!絶賛売り出し中です」

と、と、と軽く跳ねるようにつま先でステップ染みた歩みで斬鬼丸へ近づいていく。
口にする言葉はすらすらと淀みなく。
ここ最近、真面目に、シリアスに話をすることが多かったからだろうか。
何だかワクワクしてきた。
彼はどんな反応を返してくれるだろう―?

水無月 斬鬼丸 > じっと見るのも何だ。目をそらそうかとする…も
彼女のほうがこちらに目を向けた。
バッチリ目があった。

「え?」

バッチリ目があった少女がなんか笑ったように見えた。
可愛らしい笑顔…というよりは…

「え、え、えぇ…あー……
御用っつーか、つい髪が気になって」

歩み寄ってくる少女。初めてあう…はずだ。多分、おそらく。
少なくとも、記憶にはない。でもなんだか…なんだか、言わなきゃいけない気がする言葉があって
それがつい口をついた。

「あ、ぁぁ、『はじめまして』」

初めてあったらはじめまして、それは当然なのだが…
彼女の言葉に返すには少しおかしい言葉。まるでナンパに応じたみたいじゃないか。

北条 御影 > 「――」

一瞬、言葉を失った。
ぱちくりと瞬きをして次に浮かんだ表情は笑顔。
先ほどまでの小悪魔染みたモノとは違い、少し照れくさそうな、はにかんだ笑顔。

「―はじめまして」

そうして、『はじめまして』を交わす。
何度も何度も繰り返した挨拶だけれど、相手からされるのは少々新鮮だった。
それは嬉しくて、少し、気恥しくもある。

「フフッ、ナンパにしてはイマイチな挨拶ですけど、そこが初々しくてちょっと気に入りました。
 私的に、ポイント+1、ですよ」

ぴ、と人差し指を立てて笑う。
あの時と同じ声で、同じ仕草で。

彼は決して思い出してはくれないだろうけれど。
こうして同じ言動を繰り返してみたくなるぐらいには、彼の「はじめまして」はちょっとキた。

水無月 斬鬼丸 > 「そ、そりゃどうも……え、今の、ナンパしたってことに?」

なるの?と、視線で問う。
立てられた指先と少女の顔なんども交互に見て。
その笑顔に不器用な笑顔を返す。
なんせ、ナンパやら何やらなど…したことがない。
もしこれがナンパだというのなら、人生はじめてのナンパというやつ。
しかし、初めてのナンパの言葉が『はじめまして』じゃかっこがつかないというか…

「どっかであったっけ?」

おぼえは…ない。
これは確実。知らない子ですね。
妙に馴れ馴れしい感じがするが、おそらくこの少女の気質…か?
だが、暇だったし、こういうところで多くの人間が群れているところ
一人でいることの居心地の悪さもわかる。

「とりあえず…ナンパッつってもここで?」

周囲を見渡せば、あまりにも色気のない売り場だ。

北条 御影 > 「さて、どうでしょう?
 実は貴方は校内の女子の密かな人気ランキングTOP5の中にいるのかもしれませんよ?
 だから、私もこうやって不慣れナンパにも乗っかるわけでして」

目の前の少年の言葉に、再び悪戯っぽい笑みを浮かべる。
こういう反応を返してくれる人は、嫌いではない。
打てば響く、とでもいうのだろうか。
軽口を叩き、たしなめ、からかって。
例え相手に記憶がなくったって、楽しい時間を過ごせるから。

「あー…まぁ、確かに此処じゃ色気も何もないですもんね。
 それじゃアレです?空腹の私にご飯でも奢って、そのあと見返りに色々と要求する流れですか??」

いやーん、何てわざとらしく身体をくねらせてけらけらと笑う。
そんなことをする相手だとは思っていないし、事実しないだろう。
相手を知っているからこその、信頼しているからこその言動。
一方通行で、ひどく身勝手な信頼感ではあるのだが―

水無月 斬鬼丸 > 「ぇぇ……まさかぁ……」

何いってんだこいつ。流石にそりゃないわー…
からかわれているのはあからさま。
訝しげに目を細くする。不慣れナンパと言われればたしかにそうなのだが
からかうにしたってダイレクトがすぎる。

むしろ、なんか狙っているのではないか?と疑いたくもなる。
だが、なぜかそうは思えない。

「しっ、しない!しないけど…まぁ、そうっすね…
一人でぶらついててもつまんないってのはわかるんで…」

しなを作る少女には慌てて否定の言葉。
ちょっと頬が赤いのは、年ごろの男子が女子にそういう冗談を受ければ、まぁうん。
しかも知り合って間もない。期待してしまうのも仕方ないだろう。
まぁ、しないが。

北条 御影 > 「ふふふ、想定通りの回答ありがとうございます!
 いやーいいですね、慌ててちょっと頬を染める男の子」

斬鬼丸の反応にくすくすと楽しそうに笑う。
前回もそうだった。こうしてからかい半分の言葉に、
慌てて頬を染めながら答えてくれたっけ。

一人で懐かしい想い出に浸りながら咳払いを一つ。

「おほん。冗談はさておき。取り合えず、ご飯でも食べに行きません?
 一人でぶらついててつまんない、ってのは貴方も私も同じみたいですし」

ひとしきり楽しんだら小腹が空いてきた。
案内板に書かれた飲食店街の文字を指さしながら問う。

「なんか食べたいものとかあります?」

水無月 斬鬼丸 > 「想定……?俺にはその良さはちょっとわかんないっすけど…」

そんなにベタな反応だっただろうか?
いや、それ以前にそんなに見た目モテなさそうに見えただろうか?
モテない男子としての自覚はあるが、それはそれで少しショックだ。
なお、良さはわからないとはいったが、男の子ではなく女の子であれば
いいという言葉にはうなずいていたところだ。

「そりゃそうだけど…え?あれ?」

どっちがナンパしたのかこれではわからない。
むしろ、自分がナンパされたのでは?
いや、ちがうな…これは………

「…安くてうまい店で」

たかられる。きっとそうだ。

北条 御影 > 「あは、ご心配なく!私もそこまで鬼じゃないですよ。
 たかるんならもっとお金持ってそうな人にたかりますから」

彼の言葉一つ一つに
それに対する返答の一つ一つに心が躍る。
こうして好き勝手に距離を詰めて言葉を投げれば、
それに対して不器用ながらも素直に返してくれるのが、ただ嬉しい。

端から見ればひどく身勝手な物言いに思えるのかもしれないけれど―
ここまでは大丈夫、ここから先はダメなんて線引きはしっかりしているつもりだ。
だって、彼とは初対面なんかじゃないのだから。

「それじゃ、ファーストフードでサクッと行きましょう。
 ポテト、Lにするのを見逃してくれるぐらいの甲斐性は見せてくれると嬉しいんですけどねー」

ほらほら、と手招きしながら歩を進める。
エスカレーターで移動しながらも、あれやこれやと好き勝手に話を投げかけては楽し気に笑う。

水無月 斬鬼丸 > 「あー…なるほど…つまり、貧乏そうでモテなさそう…」

知ってたけど!知ってるけど!!
さすがに少し情けない。
もう少しファッションに気を使うべきなのだろうか?
こういう施設もできたことだし…。
カクリと肩を落として、手招きされるがままについていく。

「L…ポテト……うっ…」

すこしまえにポテトを食ったらポテトが抽選で当たる…
というキャンペーンがあり、その時3連続でLLがあたったことを思い出した。
今思い出しても胃もたれがしそうだ。

「それくらいはいいけど……ってか、やっぱ奢らされるのか…」

楽しげな少女についていってしまうのは、やはり少女が可愛らしいというのがつよい。
男なんてそんなもんだ。かなしいね。
だが、それ以上に…どこかであったっけ?という妙な既視感。

北条 御影 > 「あーほらほら、そんな露骨に落ち込んだりしなーい。
 私、付け合わせの洒落た野菜よりは、ジャンクなポテトの方が好みですから」

ぽんぽん、と肩を落とす斬鬼丸の背中を軽く叩く。
実際、お金持ってそうな知り合いだなんて極僅かしか居ないし、
その人たちに、彼と同じようにたかれるかと言われると多分無理だ。
ここまで距離を詰められる相手というのも、御影にとっては実は貴重なのだった。

「まぁまぁ、最初の一回ぐらいいいじゃないですか。
 次に会った時には私が奢りますから。約束です」

少しズルいかな、なんて思わなくもない。
けれども、この言葉には自分なりの小さな期待も込められている。
「次を」「その次を」
意識的に約束を取り付けていけば、そのうちに―

なんて考えているうちに、レストラン街へとたどり着いた。
たどり着いた、のだが。

「あー……何か、こう、ジャンクなの…無さそうですね?」

立ち並ぶテナントはどれも落ち着いた佇まいのレストラン。
とてもじゃないが、学生が小腹満たしに入れるような気軽なファーストフードではない

水無月 斬鬼丸 > 「フォローどうも…」

フォローにしたって雑だ。
自分がポテトとしたら少し時間がたってしんなりしてしまったやつに違いない。
なんせ貧乏そうでモテなさそうなのだから。しかも冷めてるやつ。
軽く背中を叩かれると、肩どころか頭もガクリと落としてうなだれる。
だというのに、なんでホイホイついてきてしまったのか。

「次ぃ?次……え?次??」

次と言われ、少し訝しげに顔を上げる。
が、すぐに意外そうな表情に。
次?なんで?丁度いい財布とでも思われてるのか?
あったばかりで?金持ちじゃないって言ってんのに!
それとも…ガチナンパなのか?
いや、それはないか…それは…。
小さく頭を振って、気がつけばレストラン街。
そう、レストラン街。
フードコートではない。彼女の言うように、ジャンクなものはない。

「…………付け合せの野菜でも…食う?」

財布の確認をする。ぎりぎり…まにあうか?

北条 御影 > 「―っぷ、あははは!付け合わせの野菜!中々いいですね!」

気まずそうに漏らした斬鬼丸の言葉に思わず吹き出してしまった。
此処で強がるでもなく、無理だと諦めるでもない。
大体の反応は想定していたが、これは読めなかった。
これだから、面白い。

「いや、いいですねそれ。ふふ、どうせなら二人で一品頼んで分けっこしましょうか。
 何なら、ステーキに二人で一緒にナイフ入れたりします?二人の共同作業ーって」

善は急げ、と言わんばかりにぐいぐいと背中を押してステーキハウスへ。

「可愛い女の子と同じ皿で料理を食べられる、ってのも、中々にオツな経験ですかね?
 あ、もしかしてそれを最初から狙ってたり…?」

水無月 斬鬼丸 > ぐいぐいくるな!?この娘!
なんか、ウケたようだがまさかそう来るとはこちらも予想していない。
わけっこはいい。
女子ってシェアするの好きだし!
でも共同作業とか言うじゃん?お財布代わり(だとおもう)の男にそういうこというじゃん?

「うぇ!?え?チェーン店のステーキだったらワンチャン二人分…
え?え?ちょっと???」

もちろん、安さが売りのチェーン店ではない。
レストラン街の高級…とはいわないまでも
中流家庭の家族連れが来るようなステーキハウスだ。
貧乏学生には厳しいことは事実。
だが、二人で一人分を食べるなら…それほど重くはない。

「連れてきたのは…きたのは…えーと………
あ、名前!俺は、水無月なんだけど…キミは、なにさん?ななしのみーちゃんとでもよべばいい…?」

名前を聞いていなかった。聞いていなかったけど…
てか、なんでみーちゃんだよ。

北条 御影 > 半ば強引に入店し、そのまま背中を押しながら半ば強引に着席。
店員がにこやかに運んでくる水を一口飲んだところで、斬鬼丸の言葉に動きが止まる。

「みー、ちゃん?
 あ、あー。いや、はい。それで…いい、ですよ?」

上手く言葉が出てこなかった。
ただの偶然だとは思うけれど。
彼が覚えているハズなどないのだけれど。
それでも、この偶然は出来過ぎだ。
あまりにも、あまりにも胸の奥底で密かに望んでいた物を射抜いてきた。

「あの、私はー…。北条、御影…なので。えぇ、みーちゃんで。
 はい、決定です。みーちゃん。みーちゃんって呼んでください!!」

呼ばれた名を噛み締めるように幾度か繰り返す。
あだ名で呼ばれるなんて、いつぶりだろう―

水無月 斬鬼丸 > 店員がなんか微笑ましいものを見るような表情をしているが
実際そんなんじゃないんだぞ。
こっちはイロイロいっぱいいっぱいというか
初めてあった女の子に半ば強引にたかられているのだぞ…
ついてきた自分もアレだけど!!そこは健全な男子なので勘弁してほしい。

「ぁ…?え?あー…凄い、偶然…つか、なんでみーちゃんだーって思ってたんだけど
なんか新しい異能でも目覚めたんっすかね」

乾いた笑いとともに少し驚いた様子で。
ちょっとびっくりしたので彼女に習って水を飲む。
っていうか、決定しちゃったよこの娘。

「え、まって。北条さん。北条さんで!いまのはなんだ…無意識!
無意識っつーか、ついっつーか…」

注文も忘れてしどろもどろ。
ちゃん付けのあだなで女子を呼ぶなんて…陰キャに出来るわけ無いだろ!!

北条 御影 > 「ふふ、きっと偶然だとは思います。でも、その偶然が私にとってはすっごい嬉しいんですよね」

意味は分かってはもらえないだろうけれど、本心だ。
この偶然を引き起こしたのが、過去の「はじめまして」であればいいと、心の中で願う。
己のしてきたことは無駄ではないのだと。
繰り返してきた出会いは無意味ではなかったのだと、認められた気がしていた。

「いーえ、ダメです。もう私のことはみーちゃんで決定です。
 言っておきますけど、私にとってあだ名で呼ばれるなんてのはすっごい殺し文句なんですからね。
 不覚にもキュンと来ちゃったこの乙女心をやっぱ無しだなんて、それはあんまりですよ」

200gのリブロースステーキ1つ。ドリンクバー付きで、と勝手に注文しながらの抗議。
此処で折角のあだ名を引っ込められてはたまらない。何としても死守したい構えである。

水無月 斬鬼丸 > 思わず首を傾げる。
彼女が思うように、意味はわかっていない。
むしろ気味悪がるものじゃないだろうか?
ストーカーなのでは?と訝しむところではないのだろうか?
少なくとも彼女はそうじゃないらしい。なんだか…心底嬉しそうに見えたから。

「偶然…っていうか……なんかこう、なんか、イメージっていうか…なんだろ…」

言い訳だってこの通り。
全く上手くいかない。自分だって、思わず口をついたのだからまぁ、こんなもんだ。

「殺し文句って!?えぇ……じゃあ…その……
みー、ちゃ………みーさん、くらいでなんとかなりませんかね…」

さっきの話本気だったのか?
っていうか、注文一つじゃドリンクバー一つしかついてこなくない?
流石にコップ一つをふたりではやばいだろ。

北条 御影 > 「んー………及第点、ですかねぇ。
 今日のところはそれで勘弁しといてあげますよ」

ぶー、と不満を隠そうともせず、彼の提案を渋々認める。
「お一人様一つ注文を…」と呟く店員に、視線を向けぬままメニューのポテトフライを指さして追い払う。
今はそれどころではないのだ。乙女の一大事である。

「でも!私は忘れてあげませんからね。
 貴方が私のこと、みーちゃんって呼んでくれたこと。大事な大事な、私のあだ名ですから。
 だから、約束してください。きっといつか…もう少し仲良くなって、貴方が私に慣れて。
 もし、そんな日が来たのなら…もう一度、みーちゃんって。そう呼んで欲しいです」

じ、と斬鬼丸の瞳を見つめて問う。
先ほどまでのふざけた声色は何処にもない。
真摯な願いを込めた瞳。

水無月 斬鬼丸 > ノールックポテトフライに思わず店員と彼女を交互に素早く二度見してしまう。
どこまであだ名にこだわるんだ!?
というか、なんか地雷ふんだか?
ステーキにポテト…3000オーバーってところか…明日のゲーセンは中止だな。

だが、彼女はわりと本気っぽいらしい。
目が真剣だ。
みーちゃんと呼ばれることが大事らしい。
魔術の授業でそういえばゲッシュとかなんとか…そういう話を聞いたことがあるが…
そういうものか?

「あ、あぁ…えーと…あーと、なんだ…ぁぁ……
みー、ちゃん…。ドリンクバー、なに飲みます…?」

頑張った。
彼女が本気の目をしていたから。
ならば…自分も応えるべきなんだろう。たぶん。

北条 御影 > 「―なんでもいいですよ。貴方が選んでくれるなら」

笑みが零れた。
酷く不器用で、不慣れで、不格好だった。
それでも彼は呼んでくれたのだ。
自分を「北条御影」であると認識し、「みーちゃん」と。
こみ上げてくる喜びを何とか表に出さないように押さえつけたけれど、
それでも頬が綻ぶのは止められなかった。

「だから、選んできてください。何を選んでくれても、それは私にとってはすごーく嬉しい一杯ですからね」

なんて、遠回しな言葉で喜びを伝えるのが精いっぱいだ。
だって、あだ名で自分を呼んでくれる相手とのひと時なのだ。
それはもう、何がどうなったって、自分にとっては掛け替えのない思い出になる。
次の「はじめまして」の時にはきっともう呼んではもらえないだろうから。
今は目いっぱい、彼に甘えてみよう。
ちょっと困らせるぐらい甘えてやれば、もしかしたら次の時も。

そんなことを考えながら、レストランでのひと時は過ぎていった。


結局、帰り際に自分の分だ、と半額押し付けて帰るぐらいの優しさが彼女にはあった。
折角の思い出なのだ。最後に見るのが、空になった財布を見て肩を落とす姿だなんてあんまりだろう。

「それじゃ、ご馳走様でした。
 これで―私たちは「お友達」になれましたね。
 ううん、「あだ名で呼び合うお友達」。普通の友達より、一歩進んだお友達です。
 あのゲームセンターでの約束、果たせて良かったです。
 次もまた、私のことをみーちゃんって呼んでくださいね。そしたら私も、貴方のことをザッキーって呼んであげますから!」


なんて、よく分からないことを言い残して彼女は去っていったのだった。

ご案内:「扶桑百貨店 異能・魔道具エリア(7・8F)」から北条 御影さんが去りました。
水無月 斬鬼丸 > 「あは…は…じゃ、コーラ…」

嬉しそうに笑う彼女に
同じく不器用で、不慣れで、不格好な笑顔をむける。
ナンパした女の子に向ける表情としては及第点ももらえまい。
飲み物のチョイスもどこまでも無難だ。
でも、彼女はなぜか笑っていたし、喜んでいた。
だから、非モテで、陰キャで、DTな自分でも少し、勘違いしてしまうわけだ。

コーラを取りに行けば、彼女とステーキを食べただろう。
二人でナイフを入れたか、どのように食べたか
結局、少年の飲み物は水で済ますことになったのか。
それらは彼女の記憶の中。

食事も終えれば彼女はお金を渡してくれたのだが、これはこれでかっこ悪い。
不思議な感じの少女だったが、去っていく彼女の言葉もまた意味深だった。

「ああ、えっと…ああ…また…。みーちゃん、みーちゃん、ね」

彼女の背中を見送りつつあだ名を繰り返す。
やはりなんか、こっぱずかしい。頬をカリカリとかいて、少し軽くなった財布を懐に歩き出す。
しかし、………ゲームセンターで…?それに…ザッキーって…下の名前、教えてないはずなのに…

振り向く頃にはその疑念は記憶の彼方であったとさ。

ご案内:「扶桑百貨店 異能・魔道具エリア(7・8F)」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。