2020/08/10 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 展望レストラン「エンピレオ」」に神代理央さんが現れました。
■小太りの風紀委員 >
「此処で君と食事するのも久し振りだねえ。どうだい、温泉楽しかった?」
良く分からん国の良く分からんフルコースを堪能し、デザートを頬張りながら眼前の少年に尋ねる。
若手ばかり集まった風紀委員の慰安旅行。綺麗どころも多々集まったと聞くし、さぞ華やかだったんだろう。
おまけに監視対象迄3人勢揃いとくれば、後を預かった身にもなってほしいものだ。
従って、コイツの金でフルコースを貪るのは当然の権利であるし、何の遠慮も必要無い。
ああ全く。若いというのは妬ましいもんだ。
■神代理央 >
「…ええ、まあ。それなりに。皆も楽しんでいた様ですし、良いリフレッシュになったのではないかと」
丁寧にデザートを咀嚼し、飲み込んで頷く。
確かに、彼とこうして『食事』の場を持つのは久し振りな気がする。
査問会前が最後だっただろうか。
「2泊3日とはいえ、多くの風紀委員が職務を離れましたので、何かあればと心配していたのですが…杞憂だった様ですね」
紅茶の注がれたカップを手に取り、喉を潤す。
クラシックが静かに店内を満たす空間で、交わされる会話は一件穏やかなもの。
しかして、これは腹の探り合い。或いは、商談。
己を見つめる男の目は、何時もにこやかで、何時も笑っていない。
■小太りの風紀委員 >
「何事もない様にするのが僕達の仕事だからねえ。
それに、新しい子も入って来たし "今のところ"違反組織に目立つ動きも無い。連中も夏休みなのかな?そうだといいんだけどねえ」
ぺろりとデザートを平らげる。
こういう上品な料理は往々にして量が足りないと思う。
まあ、腹八分目くらいが丁度良いか。
この後歓楽街に取ってある店で"運動"に励むのだから、食べ過ぎても良くない。
「それで?久し振りに仲良くご飯して終わり、って訳じゃないんだろう?今回のおねだりは何だい。勿論、出来る事と出来ない事はあるけどねえ」
コイツからの呼び出しは、大概碌なことじゃない。
まあ、卒業まで遊び惚けるだけの金と、安定した進路を確約してくれるなら安いものではあるけど。
こういう時の為に身を削り、頑張って出世したのだ。
少しくらいは恩恵が無いとやってられないでしょう。
■神代理央 >
「新入りですか。この時期にしては珍しいですね。まあ、戦力が増えるなら何でも歓迎ですが」
万年人手不足、とまでは言わずとも。
実戦要員が増えるのは非常に有難い。戦力が増えるという事は、それだけ作戦の幅が広がる。ダメージコントロールが容易になる。
打つ手が増えるという事は、何時だって歓迎である。
「……以前御送りした企画書。目を通して頂いているかと思いますが。あの部隊の新設を、取り計らって頂きたいと思いまして」
この男に回りくどい言い方は通じない。
簡潔に、要点だけを。此方の要望を、淡々と彼に告げる。
気付けば、デザートの皿は空になっていた。
■小太りの風紀委員 >
「企画書…企画書…ああ、アレねえ。うん、アレか。見たよ、一応ね。忙しいのに突然送り付けてくるんだから、君も良い度胸してるよねえ」
あはは、と笑う。
しかし、その内心は思案顔。
謹慎を終え、戦力(駒)としてコイツを使える様になったのは良い。
それに、あの企画書は自分達『右派』の思想にもそれなりに合致している。強く反対する理由は、今のところない――
「でもねえ。部隊、って言っても、暫く君だけでしょ。そりゃね?予算はつけられなくも無いし、君だけでもまあ、運用目的は果たせると思うよお」
「だけどさあ。それなら何も『部隊』として運用することなくない?色々面倒なんだよ。申請書類とか準備とか。
何か納得出来るそれなりの理由が、欲しいなあ」
■神代理央 >
「……此の島は。この学園は。生徒によって運営されています。
生徒会、委員会、部活動等々。この学園を疑似的な国家と見做した上で、その運営はあくまで『生徒』が主体である都市です」
「その場合、通常の国家では起こり得ない問題が発生します。
国家の中枢を担う生徒会と委員会。これを構成する生徒は、必ず――」
■小太りの風紀委員 >
「『卒業』する」
■神代理央 >
「……そういう事です。学園の規定である『4年』を固く守る理由は無く、入学に年齢は関係ありません。
現に、4年を超えて在籍する生徒も。成人と呼べる年齢になってから入学し、委員会に所属する生徒も数多おります」
残り半分程になったカップに口をつける。
喉を潤して、再び眼前の男に視線を向ける。
「しかして。例えばこの島の旧統治国である日本の様に、国家公務員の定年を60歳としている訳ではありません。
此の島で疑似国家を運営する官僚の役目を担う生徒達に、30年以上委員会で働き続ける者は恐らくいないでしょう」
「従って、統治機構の官僚組織として致命的なまでに『ベテラン』と呼ばれる人員の不足が発生します。
経験豊かな官僚。現場を長く務めた上で、内務に取り掛かる者。
これらの人員が『発生しにくい状況』が生まれるのではないでしょうか」
「……それ故に。パッケージ化しなければならないのです。
『あの部隊』は恐怖の象徴であると。例え何人入れ替わり、何十年経ようと。部隊の名前そのものが、畏怖の象徴となるように。
個人の力ではなく、畏れられる組織の象徴として」
■小太りの風紀委員 >
「……ふーん。何かめんどくさいこと考えてるねえ。君、そんなにこの学園好きなの?」
空になったカップの淵を指でなぞる。
しかし、コイツの言いたい事が分からんでもない。
天上人の様な生徒会の面々はさておき。確かに各委員会に所属する生徒は、順調にいけば4年で卒業していく。
1年生で入って、4年生で卒業。定年4年か。第二の人生歩むには短いな。
かくいう僕も、卒業延期組ではある。今は風紀6年目。4年生2回目だ。いやっほうモラトリアム。
「……まあ、いいや。部隊新設の件は検討しておこう。
『示威活動を主体とした特務広報部隊』だっけか。もう少し、スマートな名前に出来なかった?
君、犬にゴンザレスとかホワイトスワンとかつけちゃうタイプでしょ」
よっこらせ、と椅子から立ち上がる。
そろそろ出なければ歓楽街の予約の時間に間に合わない。
「そんじゃ、結果は期待しないで待っててね。
あ、ごちそうさま。美味しかったねここ。
――君も偶には、僕と歓楽街まで付き合えば良いのに。溜まってないの?色々と」
最後に、目の前のこましゃくれた小僧を笑い飛ばして。
最近更に膨張し始めたお腹を揺らしながら、レストランからサヨナラバイバイ、だ。
■神代理央 >
「……検討、してくれるだけか。余程面倒事に巻き込まれたくないと見える」
腹を揺らしながら立ち去っていく男を見送りながら、小さく苦笑い。
まあ、別に要望が通らないなら通らないで構わないのだ。
通らなければ粛々と、今迄の任務を果たすまで。過激派の連中を後ろ盾に持つ己は、独断専行が比較的行いやすい。
その代わり、基本的に単独行動なのは、頂けないが。
「……しかし、犬に其処まで酷い名前をつける者がいるのだろうか……」
ゴンザレス。ホワイトスワン。
流石にそんな名前をつけることはない。余程酷いネーミングセンスをしている様に見えるのだろうか。
「……さて、後はどうなることやら」
紅茶を飲み干し、店員を呼んでお会計。
数分後には、少年の姿はエンピレオから消え失せているのだろう。
ご案内:「扶桑百貨店 展望レストラン「エンピレオ」」から神代理央さんが去りました。