2020/08/12 のログ
> 「そっかー、ふかい事情かー」

大人が言う時はだいたい言いたくない事があるのだ、ようぢょ覚えてる。

「うん、しーなちゃんと自由研究するの、思い浮かばないから何しようか考えようかなって」

友達の名前を出して、にこにこと本を抱えて

御白 夕花 >  
しーなちゃん。確か、前にも聞いた名前。
やっぱり希ちゃんのお友達みたいだ。仲が良さそうでほっこりする。

「自由って言われると、かえって困っちゃう時ってありますよね……」

今の私も絶賛そんな感じなので同意しかない。
サングラスについての追及がないことに感謝しながら頷いた。

> 「覚えたこととか、やりたいこと、いっぱいあるんだけどー」

いっぱいあってやり切れないから、取り敢えず本を読むことにしたらしい

「で、ゆーかおねえさんは、なんで目が星のつけてるの?」

フェイントからの直球幼女、首傾げまでついた

御白 夕花 >  
「やりたい事がいっぱいあるのは……いいことですね」

……前言撤回。
やりたい事もなにもない私とは正反対だった。
途端に希ちゃんが眩しく見えてきて、汗で少しずれたサングラスを直そうと───

「───今そこ触れますかっ!?」

急カーブで戻ってきた!!!!

> 「うん、したいことないの?ゆーかおねえさん?」じ、と見つめながら

「気になったから!」
幼女はパワフルである

御白 夕花 >  
うーん、子供らしい実にシンプルな理由。何も言い返せない……
とはいえ違反部活の話なんてするわけにもいかないし、困った。
なんて思っていたら、またしてもストレートな問いかけ。

「そう……ですね。何をしたらいいか分からない、というか。
 今までは"やらなきゃいけない事"をしてるだけだったのに、いきなり自由を与えられても……みたいな」

小さな子になんて話してるんだろうと思いつつ、つい溢してしまった。
こんなサングラス姿を見られたら今さら恥の上塗りのひとつくらい。

「迷ってるんです。これも迷走のうちですね」

そう言ってサングラスを外せば、私は今どんな顔をしているだろうか。

> 「んー、自由すぎちゃうみたい、な?」

むーと、うなづきやながら

「悲しい?つらい?」
目を見ながら

御白 夕花 >  
「自由すぎる……はい、そんな感じです。
 せめて目的とか目標があれば違うのかもしれないですけど」

晩ご飯のおかず何がいい? って訊いたら「なんでもいい!」って返された時みたいな。
と言いかけて、それは母親の視点で希ちゃんくらいの子はむしろ言う側だろうと思い直した。
自分では苦笑していたつもりだけれど、辛い顔をしているように見えたなら、それは───

「……いえ、大丈夫です。
 自由のない人たちに比べたら、ぜいたくな悩みでしょうから」

それが許されなかった人達を知っているから。
そして、私だけがその中から抜け出してしまったからだろう。

> 「んー、目的って必要?
ただやりたいこと、探さないとだめ、かなあ」
何かするために、何かを、増やしたら不毛だし、悲しい

「ちょっと待ってて」

顔を見てダッシュ、五分後、二人分のクレープが握られていて

御白 夕花 >  
「そんな人達を思うと、ただ何もせず過ごしているのが申し訳なくて……」

そう、これは負い目。
自由を与えられた時からずっと抱いてきた、今の私を動かしているたった一つの気持ち。
同じ施設で過ごした皆を忘れて生きるなんてこと、できない。

「……ふぇっ?」

不意に希ちゃんがどこかに駆けていってしまった。
待ってて、と言われたので大人しくその場で待っていると、両手にクレープを持って戻ってくる。

「ど、どうしたんですか? そのクレープ」

> 「えとね、しーなちゃんが言ってたの、居なくなった人達に私達が出来ることは、幸せになる事だって」

「だから、はい、あげる」

イチゴとブルーベリーのクレープが差し出され

御白 夕花 >  
差し出されたクレープを自然に受け取ってしまってから、またしても奢られてしまったことに気付く。
けれど、そのことに慌てる間もなく、添えられた言葉が私の心に突き刺さった。

「いなくなった人達のためにできるのは、幸せになること……」

たっぷりの生クリームを彩る二色のベリーソースに視線を落としながら、その意味について考える。
お互いしか縋るもののない環境で、彼らとの仲は良いか悪いかで言えば良好だったと思う。
なのに私は、一人また一人と減っていく仲間の為になんの行動も起こせなかった。

「……そんな事をしたら、きっと"お前だけずるい"って恨まれちゃいます」

目の前で少しずつ溶けていくクリームを見ても何もできないでいる今と同じように。
彼らよりも自分の命を優先した……そんな私が、幸せになってしまっていいんだろうか。

> 「わたしも、両親いないけと、
それが、生と死だって、それで、居なくなった人を考えることだってしーなちゃんが、言ってた、死を思えって」

にこー、と笑い

御白 夕花 >  
「えっ……ご両親が……?」

さらっと告げられたとんでもない事実。
なのに希ちゃんは、辛さなんて微塵も感じさせない笑顔を私に向けていて。
こんな小さい子にうじうじした悩みを打ち明けている自分が余計にみじめだ。

「死を思え……」

いなくなった人を考える。いつかあの人に言われたことに似ている。
仲間たちのことを覚えているのは私だけ、だから記憶から彼らを消してはいけないと。
私はそれを、ずっと負い目を抱えて生きていくことだと思っていた。
この命はもう私だけのものじゃない。皆のためにも背負っていかなくちゃ、って。
だけど、幸せに生きることは必ずしも自分のためだけじゃないってこと……?

「……希ちゃんは強いですね。会ったことはないですが、しーなちゃんさんも。
 私なんかより、ずっとずっと色んなことを考えていて……」

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」にさんが現れました。
> 「その分たのしく、過ごせばいいよ、えへへ」

にこーと、笑い

ゆーかおねえさんを肯定し、 

御白 夕花 >  
再びクレープに視線を落とす。
溶けたクリームが生地の淵から零れそうになっていて、慌ててそこに口をつけた。
優しい甘さの中にベリーソースの酸味がじわりと広がる。

「おいしい……」

そのまま一口、また一口と食べ進めていく。
すぐそこで売っていて、誰もが味わう権利を持っているもの。
この味を知ることができなかった皆の分も、噛み締めるように味わっていく。

「美味しい、です。すごく……えへへ」

私は今どんな顔をしているだろうか。
───今ならきっと、自然に笑えていると思う。

> 「えへへ、良かった、みんなもそう思ってくれるよ」

「かわいいよ、ゆーかおねえさん」

にこーと、自分もチョコバナナクレープをたべながら

御白 夕花 >  
「ん゛ぅっ……ま、またそうやって人が食べてる時に!」

二度目だからか、今度は喉を詰まらせたりはしなかった。
わざとやってるんじゃないよね……?

「……今の私を皆がどう思うかは分かりません。
 それでも精いっぱい、胸を張っていこうと思います」

食べ終えたクレープの包み紙を小さく折り畳みながら、希ちゃんに微笑みかける。
目的も目標もまだなんにも決まってないけれど、焦る必要なんてないんだ。
そのことを教えてくれた小さなお友達と、まだ見ぬ希ちゃんのお友達に感謝しつつ───

「ありがとうございます、希ちゃん。クレープも美味しかったです。
 このお礼はまた後日……それじゃあ私、これ買ってきますねっ」

星型のサングラスを手にレジへ向かう。

> 「またね、ゆーかおねえさん」


結果二回めの奢りに成功しつつ


「あ、それ買うんだ」
くすくす笑いながらその場を離れた

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」からさんが去りました。
御白 夕花 >  
希ちゃんには二度の奢り以上の恩ができてしまった。
それを返すには、きっとお金で買えるものだけじゃ足りない。
いつか胸を張ってお返しができるように……これはその第一歩。

お会計を終えて戻ると、希ちゃんの姿はもうなかった。
このまま残りの衣装も揃えてしまおう。
その前に、買ったばかりのサングラスを袋から取り出して装着。
正体を隠すにはもう一工夫が必要だけれど、似合わない仮面よりもこれがいい。

私は真珠星《スピカ》。星になった命たちが迷わないように導く一等星。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」から御白 夕花さんが去りました。