2020/08/13 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 スタードトール珈琲館」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 【御約束待ちです】
ご案内:「扶桑百貨店 スタードトール珈琲館」にさんが現れました。
神代理央 >  
オフィスエリアから階段でも行ける距離。
人気の喫茶店である此の場所は、それなりの人で賑わっていた。
かくいう己も、遅めの昼食と昼休憩を兼ねて訪れた身分。
午後からは、扶桑の警備体制についての会議に参加する予定。

「……コレは取り敢えず今週中には落ち着くか。であれば、次のシフトには少し余裕が出来そうだな。
お盆期間が終われば戻ってくる委員達もいるだろうし……」

黙々と、淡々と。
感情の籠らぬ瞳で端末に視線を向けて、キーボードを叩き続ける。
鬼気迫る、という程では無い。寧ろ、此の場所はそういうノマドワーカー達に人気の場所故に、端末やノートPCを開く者の姿は多い。

しかし、仕事に憑りつかれていると言う様な少年の姿は、お洒落を売りにしている此の場所には少々不似合いだろうか。

机に置かれた珈琲――勿論、ブラックである――を啜りながら、客達の喧騒の中に、キーボードを叩く音。

> ふと、スタートドールに入ってきた一人の女。
深緑の髪を揺らし、鋭い眼差しが右へ、左へ。
意外と混んでるな、最初の印象はそれだった。
ちょっとした休憩がてらのつもりだったが、店を間違えた。
と言うか、誰も彼も追い込み作業で利用しているような連中が多い気がする。
もしかして、そう言う駆け込み寺的店なんだろうか。

「…………。」

せめて、家に持ち帰った方が情報面でいいんじゃないか
と、女は思ったが口に出さないことにした。
下手な事を言うと村八分に会いそうだ。
このまま店を出ても良いが、有料スマイル向けてくる店員と視線が合ってしまった。
何もせずに出るのも、気まずい。
仕方ない、と空いてる席を探していれば、一際怒気と言うか
仕事に打ち込んでいるような少年、理央の姿を見かける。
……この辺で妥協しておくか。

「……少年。」

凛とした声が、理央の周りに透る。

「隣、いいかな?席が空いてなくてね。
 勿論、仕事の邪魔はしない。」

神代理央 >  
パチパチパチ、と。
打ち込んでいたキーボードが奏でていた音が止まる。
端末の画面から視線を上げれば、自分より随分と背の高い女性。
男物の中華服を纏った彼女に、一瞬怪訝そうな瞳を向けた後、周囲を見渡して納得した様な理解の色。

「…ああ、別に構わんよ。しかし、茶を飲みに来るだけなら、此の場所は随分と肩身が狭かろうに」

彼女の為に端末を少し動かして邪魔にならない様に。
そうした上で、鷹揚に頷いて相席に同意する。

周囲のノマド達は歯噛みしているだろうか。
私の横も空いてますよ!と言いたげなインスタワーカー達の視線が、彼女に向けられているだろう。

>  
「私もそう思ったよ。入る店間違えたなって」

アテがはずれた、と物憂げに視線を落とした。
何だか視線を感じるがスルー。目は合わせない。
合わせちゃいけない類の目線だと思う。
理央へと拳と手のひらを合わせて一礼。
そして、向かい側へと座った。

「…………しかし」

邪魔をしないと言った手前だが、好奇心が口から独り歩き。

「随分と…、集中してたな。仕事に集中する事は良い事だとは思うが
 杞憂ならそれでいいんだ。ただ、随分と打ち込んでいたように見えたからね。
 別に君が、仕事中毒<ワーカーホリック>なら程々にしとけよ、で済むが……」

指を顎に添え、金色の目を細めた。
品定めするように、理央をじっと見ている。

「経験上、そう言う時は"何かを忘れたい時"と思ってな。
 違ったならすまない、スマイルか一杯奢らせてくれ。」

それで、どうなんだ?と、小首を傾げた。

神代理央 >  
「本来は、気軽に珈琲を楽しめる店であった筈なのだがな。
今は私も含め、作業しながら珈琲を飲む場所に早変わりだ。オフィスエリアに近い階層だから、というのもあるのだろうがね」

物憂げな視線の彼女に、肩を竦めて答えよう。
彼女に向けられている視線に此方も気が付けば、流石に苦笑いを零さざるを得ない。
『仕事していたら中華美女と同席になった件』と、大量のハッシュタグを揃えて写真の準備をしていた者が何人いることやら。
………全員かもしれない。

そうして、彼女が席に着けば此方も仕事を再開しようかと端末に視線を戻そうとして――

「……ん、まあな。空き時間を無駄にするよりは、こうして少しでも仕事を片付けていた方が良いだろう?
…いや、他人に同意を求める様な事では無いのだが」

此方を品定めする様な、金色の瞳。
見返すのは、紅に染まる己の瞳。

「……鋭いな。正解だ、と言っておこうか。
では、私から一杯、奢らせてもらおう」

彼女の言葉を否定せず。穏やかに微笑んで。
軽く手を上げて店員を呼ぶのだろう。彼女の注文を取らせる為に。

>  
「成る程、すっかり植民地か。いやな風物詩だな。
 旧日本領土らしいが、そう言う文化まで根付いてるのかい?この島
 なんでも、日本じゃぁその昔『暗黒メガコーポ』ってのが流行ってたらしいね」

労働力に全てを重きを置き、あらゆる人徳を捨てるのが日本の企業のやり方と聞いた。
いみじくも、今の状況はそんな雰囲気を感じる。
……と言うか、なんだかさっきから全員こっちを見てないか?
そんなに浮くのか、私は。やんなるね。
額を指先を抑えて、目線をメニューへと戻した。

「そこは同意。と言っても、ギチギチに予定を詰めても堅苦しくなるし
 ある程度は無駄な時間も必要だけどね。そう言うの、『社畜』っていうんだっけ?」

仕事中毒の別名だったっけ。
なんでもいいか。ふぅん、と適当に一つ相槌。

「そう。じゃ、とりあえず一杯。」

ブレンドコーヒーを指差し、視線を理央へと戻した。

「……"旅は道連れ"、とまでは言わないけど、何に悩んでたんだい?少年。
 まぁ、私も大して人生経験豊富とは言い難いが、同席の好だ。
 エチケット袋の代わりにはなるよ。初対面に、言いづらい事なら悪いけどね」

神代理央 >  
「暗黒メガコーポ………何だその珍妙なのは。ブラック企業という言葉は聞いたことがあるが、類似する言葉かね?」

オ〇ラ・インダストリとかヨロシ〇ン製薬とか、そういう企業の事だろうか。風の噂では社員に過酷な労働を義務付けているとかいないとか。実在しているかも定かではないが。
因みに、彼女が視線をメニューに落とす頃には、流石にノマド達も諦めた。『中華美女発見なう』という投稿に切り替えていく。肖像権の侵害で訴えられてしまえば良い。

「社畜、か。…そうだな。そういう存在かも知れぬ。
いや、仕事にやりがいを見出していれば自らに『畜』などと名乗る事は無いだろうから、厳密には私はその社畜という存在では無いかも知れぬがね」

同僚達が度々口にする言葉は、流石に知識があった。
『夏休みも働かされるとかマジ俺達社畜!』とか言ってた。
私が近づいたら逃げたが。何でだ。


注文を受け、一礼して立ち去る店員を一瞥した後。
投げかけられた言葉に、僅かに瞳を細める。

「……エチケット袋か。初対面の相手をその様に遇するのは、些か本意では無いのだが」

小さく苦笑い。しかし、初対面だからこそ。互いに素性も知らぬからこそ、気軽に話せる事も、ある。

「……些細な事だ。恋人と喧嘩してしまってな。非は此方にある故、言い訳のしようも無く、かといって解決方法も見いだせず。
こうして仕事に打ち込んで、それを忘れようとしている。下らぬ悩みだよ」

>  
「……多分、そっちだな。」

ブラック企業。そっちな気がする。
"言いたい事はわかるが、何も言わないでくれ"。
そう示す様に軽く右手をヒラヒラと振った。
表情には出さないが、ちょっと恥ずかしい。
それを示す様に、視線がちょっと泳いで右往左往。
……ついでに写真を撮られていた。まぁいいか。
肖像権はフリーだった。

さて、そんな事よりは今は少年の話だ。
視線を彼に戻す。深緑の髪が、静かに揺れた。
全てを聞き終えれば、緩く吐息を吐き出す。

「随分と後ろ向きなんだな、君は。」

第一印象は、それだった。

「社畜なんてジョーク一つに真面目に受け取りすぎだよ。
 社畜なんて悪口の一種じゃなかったかな?真面目なのは良い事だが
 君は空いた時間の使い方が分からないタイプか?もしかして。」

いみじくも、言っていたタイプが当てはまってしまったかもしれない。
数度瞬きをし、頬杖をついて訝しげに少年を見る。

「そう言わないでくれ。長い人生のたかがまだ一合目だろう?
 その恋人の"程度"にもよるけど、残り山頂まで二人三脚しようって言うなら
 十分すぎる悩みだとは思うけどね、思春期。まぁ、肩の力を抜いて。」

どうどう、と相手を落ち着かせるように穏やかな声音だ。
ついでに、相手もちで一杯ブレンドコーヒーは注文しておいた、抜け目ない。

「私は龍<ラオ>。流石に名前も知らない相手のアドバイスは嫌だろう?
 ……それで、一体どんな喧嘩をしたんだ?一応、私も女だからね。
 そう言う点でのアドバイスは出来ると思うけど……ああ、"ソッチ系"ならすまない。」

可愛らしい顔だし、彼氏とかかも。
性に寛容な時代ならではの深読みだ。

神代理央 >  
右手を軽く振る彼女に首を傾げつつ、無言の要望に応えて素直に口を閉じるだろう。
彼女が次に言葉を発するまで、僅かな沈黙が二人を包んで——―

「後ろ向き、かね。
…確かに、空き時間の使い方、というものに造詣が深いという訳ではないが…」

そんなに自分のタイプは分かりやすいだろうか、と。
少し驚いた様に瞳を瞬かせて、改めて彼女と向き合う。

「思春期、か。まさか私自身にそんな言葉が当てはまる事になるとは思ってもみなかったが…。いや、そうだな。そういう単語が当てはまるべき子供である、という自覚は、時たま薄れている事が有る」

思春期と。肩の力を抜け、と。
投げかけられた言葉に小さく苦笑しつつ、静かに頷いた。
そうしている間に店員が運んでくる一杯のブレンドコーヒー。
己の伝票に書き足された彼女の注文。己が間違えていなければ、それは恋人のものになったのだろうかと、ブラックコーヒーを啜りながらぼんやりと思考が煙る。

「……神代。神代 理央。二年生。見ての通り、しがない風紀委員だ」

身に着けた腕章に視線を落とした後。

「如何せん、此の通り仕事にかまける性質でな。恋人よりも仕事の方が大事なのだろう、と問われて、それを直ぐに否定しなかった。
……生憎だが、同性に躰を許す性質では無い故な。女性は、どうにもそういう話題を好む様だが」

喧嘩の理由を淡々と紡ぎつつ。
ふと投げかけられた性の在り方には、何度目かの苦笑いと共に首を振るのだろう。

>  
頬杖をついたまま、軽く人差し指が己の頬を小突く。

「真っ当に色んな事に悩んだりするのが、"思春期"だと思うよ、私はね。
 君って、多分私より年下だろう?…ああ、見た目だけの判断。
 異邦の人々なら素直に謝るよ。けど、"思春期"って言葉に反応したし
 多分、地球<コッチ側>って見ても大丈夫だよね?」

多分地球側の単語、な気がする。
わからない、異世界にもあるのだろうか、思春期。
真っ当に自分達と同じ感性をしてれば在るとは思うが、今は重要じゃない。思考から排除。

「私もまだ、成人まで一年程度だけど、そうやって悩んで気取る所
 まさに"男の子の思春期"じゃない?男って、カッコつけたがるし」

さながら自分はそんなものと無縁と言いたげだが
龍の目から見れば、思春期以外何だと言うのか。
寧ろ、多感な時期なのだ。此の学園都市と言う体裁が特殊なだけで
そこにいる人間の生まで変わるものか。
『気でも悪くした?君、顔はいいからね』
なんて、茶目っ気も付け加えて口元を緩めた。

「神代……どこかで聞いたような……まぁいいか。」

龍も武を修めるもの。
どんな名で在れ、それなりに武勇を上げるものには
ある程度"目星"は付けている。
とはいえ、今はそんな事は重要でないので、知らないふりをしておく。
コーヒーカップを片手に持ち、芳醇な香りを堪能する。

「で、理央君か。仕事って言うと、風紀の?まぁ、さっき傍から見てても忙しそうだったしね。
 だから、それもジョークの一つで流してよ。冗談だって。」

本当に真面目だなぁ、とちょっと苦笑い。

「それで、彼女に呆れられちゃったって事?ああ、一応先に言っておくけど……」

「『両方の話を聞かない以上、何方の肩を持つ気は無い』」

「そう言うの、フェアに欠けるでしょう?
 私は、君の彼女を知らないからね。で……」

一口、コーヒーを口に含んだ。
コクの深い程よい苦味に舌鼓。

「君はどう思うわけ?彼女ために時間とか、デートとか
 まぁ悪い言い方をすると『御機嫌取り』かな。
 そういうの、ちゃんとやってる?因みに、君から見てどういう女の子?惚気ても良いけど、程々にしてね。」

釘は刺しておいた。