2020/11/10 のログ
サヤ > 『ではセミダブルがよろしいですね、ご案内いたします。』
と涼しい顔で店員が先導する。

「え、あの、ちょ、ちょっと、えぇ…?」
と当人は正座したまま意味のない言葉を出し続ける。手を引いて動かすのが手っ取り早いだろう。

迦具楽 >  
「あ、そうそう、セミダブルでー。
 ほらほら、ぼけっとしてないでいくよー?」

 先にベッドから降りると、彼女の手を握って立たせようとしたものの。

「――あ、もしかして、抱き上げてあげた方がいい?
 お姫様抱っこ待ち?」

 と、手を取りつつ。
 

サヤ > 「た、立ちます!ちゃんと歩きますから…!」
抱っこなんてされたら恥ずかしすぎる、慌てて立ち上がり、案内される事への抵抗も忘れて手を引かれるままに歩く。

『こちらです。』
と恭しく手で示されたのは設置されたフローリングや畳の上に置かれたベッドと布団。
『御用がありましたお呼びください。』
そして自分はさっさと去ってしまう、若い二人でゆっくりと、とでも言う姿は奥ゆかしい。

「ううぅ………。」
だがサヤにとっては唯一味方になり得る存在が居なくなってしまったことになる。
「あ、あの……本当に、私と一緒に、寝るつもり、なんですか……?」
握った手にもう片手を重ねて、確かめるように、不安げな声で。

迦具楽 >  
「なあんだ、残念」

 慌てて立ち上がった彼女の手を引きながら、店員の後を追いかけて。

「おー、ほらサヤ、布団もあるよ。
 うわー、この敷布団厚みもあってしっかりしてるなあ」

 『ありがとー』と声を掛けて、店員を見送り。
 さてどうしようかと彼女を見ると、不安そうに気弱におどおどした姿。

「んー、私は構わないけど、サヤが嫌なら寝ないよ?
 一応私もほら、自分の部屋も布団もあるし。
 だけど、たまに一緒に寝たりとか、そう言うのもいいのかなぁってさ」

 重ねられた手に、自分の手もまた重ねて。
 何がそんなに不安なんだろう、と不思議そうに首を傾げた。
 

サヤ > 「いえ、あの……好きです、私は迦具楽さんが好き、なんです。でも、それを告白して一週間も経ってないのに、同じ布団で寝るなんて……全てが、全てがあまりにも早く進んでいって………怖いんです…。」
手を重ねられると、握る手に力がこもる。まるで離したらどこかへ落ちてしまうとでも言うように。
「あまりに、変化が突然で……多すぎて……、喜ぶべきなのに……。ごめんなさい、迦具楽さんの好意なのに……大丈夫、ですよね……?
寝相とか……えっと……悪くはないと思います……石蒜はわからないですけど……寝言とかも…多分……言わないと思います。あの、が、頑張ってみます……。」
しどろもどろに、つっかえつっかえ言葉を紡ぐ。あまりに順調に進みすぎて怖いという、ある種贅沢とも言える恐怖と不安。

迦具楽 >  
「ええ?
 まあ距離が近いと辛いっていうなら別だけどさ。
 嬉しいと思うなら素直に嬉しいと思っていていいんじゃないかなぁ」

 好きな相手がまるで受け入れてくれたかのように、順調に好都合に話が進んでいる。
 それが不安というサヤの気持ちは、距離感が近すぎてズレている迦具楽には、いまいち伝わらない。

「そうだなぁ、私は全然、多少寝相悪くてもいいけど。
 あ、さすがに突然こう、襲われたら困るかなぁ。
 サヤならまあ、反撃したりはしないけどさ」

 とはいえ、万が一そういう事があっても、相手がサヤなら許せるが。
 

サヤ > 「あ、はい…。今石蒜にも怒られました…『上手く行っても行かなくても悩むなんて面倒くさい』って。」決まり悪そうに背を丸めてうつむく。

「あの、すみません、私、本当に臆病で……だから、ええと……お、お布団、買いましょう……私、が、頑張ります、から……。でも、その、わ、私から襲うなんてそんなこと出来ません、いえ、迦具楽さんが嫌というわけではなくて、そんな……あの、首輪を貰う立場なのに……。む、むしろその、迦具楽さんからなら……………その………ええと……………はい………。」
俯いたまま、耳がどんどん赤くなっていく。

迦具楽 >  
「まあ、サヤが臆病なのは知ってるけどさ」

 手を重ねたまま、自分の胸に引き寄せるようにして。

「んー?
 私に襲ってほしいの?」

 と、意地悪に真っ赤な耳へ小さく囁いて。
 どんな反応が返ってくるだろうかと、思いながら。
 実際に彼女を襲うかというと、迦具楽自身にほとんど性欲がないためにありえないところだが。
 

サヤ > 引き寄せられるままに、顔を隠すように迦具楽の胸元に顔を埋める。

囁く問いには、小さく、ほんの小さくだが、確かに頷いた。

迦具楽 >  
「んふふ、素直だなぁ」

 そんな彼女の背中を、手を回してぽんぽんと叩いて。

「実際にどうなるか、は置いといてさ。
 とりあえず、良いお布団選ぼうよ。
 ほら、サヤは布団とベッドだとどっちが好み?」

 と、展示されてる布団やベッドを指して。
 

サヤ > 「うぅぅぅ~~~~恥ずかしいぃぃぃ…………。」
顔を埋めたまま、くぐもった声で呻く。

「布団、布団が、いいです………。」
顔を見られたくないのか、それだけしか答えず。

「布団で……いっしょに………うぅぅー、もうダメー………。」
それだけ言うと。サヤの肌が褐色に変じ、雰囲気が変わる。迦具楽の鼻には魂の匂いが変わるのもわかるだろう。

石蒜 > 「ぷぁ、ああもー、サヤ引っ込んじゃったじゃん。もう寝れないー!」
完全に石蒜に切り替わってしまう。顔を離すと、眠気を払うように頭を振る。

迦具楽 >  
「あーらら、ごめんね石蒜。
 まあほら、代わりに布団えらぼうよ、寝心地いい奴!」

 と、入れ替わった友人の頭をぽんぽん、と撫でながら。

「少ししたらサヤも落ち着くだろうしね」

 そう言って並んだ布団を指さした。
 

石蒜 > 「石蒜はもう19だからぽんぽんしないで!サヤの世界なら大人なんだよ!」
子供扱いを嫌がる子供のように不機嫌そうに頭を振る。

「んー、もー、サヤもさー、恋人になりたいとか言っといてこれだもんなー。ほんと手がかかるんだからー。」
敷かれた布団にゴロンと寝転がって寝心地を試していく。
背中を擦りつけたり反り返って伸びをしたり、その仕草はまるで猫のよう。顔を洗い始めないのが不思議なぐらいだ。

何個目かの布団に寝転ぶと、眠そうに目が閉じていく。
「んー……これいいなー、ふかふかしてるー。眠いしこれにするー、ふわぁ……。」
大きなあくびをしながら、声も眠そうだ。

迦具楽 >  
「そっかそっか、もう大人だもんねー」

 うんうん、とニコニコ笑って。
 大人だとアピールするところが子供っぽいのだが、友人のそう言うところが好きなのだ。

「恋人かー。
 いまいちよくわかんないんだけどね。
 性欲ってやつが無いからかなあ」

 寝心地を試していく友人を眺めながら、自分がどうして恋愛事にいまいち関心がないのかと考える。
 四年前も慕っている相手はいたが、それだって一歩引いたところで恋人関係を望んだりはなかったのだ。
 やはり人間らしい性欲というのは、その手の感情の発露には必要なんだろうか。

「ほほー、そんなにいい感じ?」

 友人が寝転がった布団へ、隣に寝転がってみると。
 なるほど、これはふかふかでかつ、しっかりと体を受け止めてくれる。

「あー、これいいなぁ。
 ゴロゴロしてるだけで幸せになれそうー」

 猫みたいな友人の隣で、自分もまたふわぁ、とつられて欠伸をひとつ。

「んー、やばい、寝ちゃいそう。
 ほら、石蒜、寝ちゃダメだよ。
 起きて店員さんに注文してこようよ」

 と、今にも寝てしまいそうな友人の肩を揺らした。
 

石蒜 > 「くあぁぁぁ……。あのさー、さっきはサヤもああ言ってたけど、迦具楽、気をつけたほうが良いよー?」
肩を揺すって起こされると、迦具楽に頭を擦り付けながら、細めた上目遣い。

「サヤ、結構えっちだもん。あんまり挑発してると襲われちゃうよぉー?」
もう一度布団に体を擦りつけてからだるそうに立ち上がる。
先程の店員が近くにいるのが匂いでわかる。
「すいませーん。」
と呼びつけて布団を買う手続きを。
「ねぇー、迦具楽。住所どこだっけ?送ってくれるんだってー。」

迦具楽 >  
「うーん、襲われても減るもんじゃないしなあ。
 まあその時はその時に考えるよ」

 貞操観念とかも、結局はそんなものであった。
 すり寄ってくる友人を撫でて、軽く抱きしめてから。
 店員を呼んで話をするのを見守って。

「ん、えっとね、異邦人街宗教施設群の――」

 と、住所を店員に伝える。

「石蒜、支払いは大丈夫?」

 迦具楽は学生証や職員証という身分証明証がないため、いつも現金払いである。
 今日も一応、財布に分厚くお金は入れてきたが。
 

石蒜 > 「まぁ迦具楽がいいならいいけどね、多分サヤは勝手に悩んで落ち込むだろうから慰めてあげてね。」
住所を伝えている間にまた大きく伸びをして、関節をパキポキ鳴らす。

「んっふっふー、サヤのおサイフ結構重たいよー?」
ドヤ顔で分厚い革財布を取り出すと、言われた額を一括現金払い。

「あとはえーっと、包丁とかかぁ。途中でサヤが起きたら変わるから、そっち行こうよ。」
とごく自然に迦具楽と手を結んで歩いていく、まるでこちらが恋人のような親しさ。
そして案内板を見ながら次の店へ向かうだろう。

迦具楽 >  
「あー、それは嫌だなぁ。
 そうならないように気を付けるよ、うん」

 自分が彼女に何かされる分にはいいのだが。
 それで彼女が落ち込むのは、あまり好ましくなかった。

「おー、たっぷり入ってる。
 旅の間にしっかり稼いだんだねえ」

 一括で払ってる様子を見ると、四年の旅がいかに友人たちを成長させたのか感じられる気がした。
 友人なんかは、昔はまともに常識だってなかった覚えがあるというのに。

「あ、そうだね。
 その辺は私も見たいからなー。
 便利そうな道具あったら覚えて帰ろうっと」

 こちらもまた、当たり前に友人と手を繋ぐ。
 確かに距離感で言えば、より親しく見えるかもしれないが――残念ながら、初々しさはなかった。

 こうして、二人+一人のお買い物デート(?)は折り返し。
 生活に必要な道具を一通り買い揃えて、仲良く帰路につくのでした。
 

ご案内:「扶桑百貨店 商店街支店エリア/催事場エリア(1~3F)」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 商店街支店エリア/催事場エリア(1~3F)」からサヤさんが去りました。