2021/11/23 のログ
セレネ > 「本当ですよ。
私の想像以上に似合ってたので、嬉しくて。」

良くも悪くも、ワイルドさがあって似合っていた。
楽しそうに蒼を細めては、帰った後にでも写真を撮ろうと心に決めつつ。

「――その。ペアリングが欲しいな、と思いまして。」

別の友人と、ではなく。
相手と己との。周りはカップルが割と多い。それにクリスマスもひと月近い。
ダメ元だからというのもあってか、告げる言葉は少し弱々しい。

クロロ >  
「ならいいンだが……ア?」

ペアリングが欲しい。それが彼女のお願いだ。
要するに、お揃いのアクセサリーが欲しいらしい。
"別にほしいなら買えばよくね?"と喉から出掛かったが、飲み込んだ。
此処に来るときに、服装の一件で痛い目を見ている。
少なくとも、彼女の気持ちを知らない訳じゃない。
寧ろ、知っているからこそ何とも受け止め難い状況に陥っているんだ。
己の立場に、そして価値観が乙女の恋心を受け止めるのを度し難く思っている。
裏側で生きる男、喪失した記憶、そして生ける炎としての体。
誰かと歩くのは、とてもじゃないが無理な話だ。
何時も険しい表情をしているが、少し考えるように腕を組んだ。

さて、それはさておいてほしいといったペアリング。
何故ほしいのか。流石に理由を聞いたら今度こそ何を言われるかわからない。
恐らく、だが好きな人とお揃いになると言うのは特別な行為なんだろう。
道端のカップルらしき人々も、そう言えば同じ服装をしていたり、アクセサリーを付けていた。
つまり、そう言う事なんだろう。

「……………なァ」

漸く口を開いたと思えば手をほどき、ズィと顔を近づける。

「オレ様の事がそンなに好きなンか?マジで趣味悪いと思うぜ、ホントに。
 何処に惚れたかなンてわかンねェ。危険物に色目使ってるようなモンだぜ?」

セレネ > 「――。」

にべもなく一蹴されるのだと思っていた。
彼の立場を考えれば、己とはただの友人であるべきなのだろう。
だが、恐らくそうではなくなっているのかもしれない。
己の”傷”を知り、己が抱えている想いを知っている彼は。
優しい彼は、己を冷たく突き放すのはいけない事だと思っているのかもしれない。

「……っ!?」

不意に頭上から彼の声が振り、繋いでいた手が解かれた。
そして近付く金の色に小さく息を呑む。

「…えぇ。私は貴方を好いています。
そもそもまともな価値観なんて持ち合わせておりません。
――貴方はどうでしょうか?そんな趣味の悪い女とは付き合うつもりはないのですか?」

クロロ >  
「─────……」

静かに目を細めた。
でもほんの数刻だ。すぐに溜息を吐いて、彼女から離れる。

「わかンね」

それが、答えだ。

「お前がオレ様の事好きなンは知ッてるよ。多分、焚きつけたのはオレ様だし。
 どンなモンか見てみたかッたてのはあるけど、いざそうやッて向けられるとわかンねェ」

「どう応えていいかわかンねェや。オレ様はな、誰かを隣に置くなンだ考えてねェからな」

自分の大切なもの、好きなものは常に"後ろ"だ。
自分の背中に背負ったものを護り、誰かの道標になる"篝火"だ。
どんなにか細く、暗い道でも、目標が見えれば前に進める。
己の生き様は、常に誰かの前に立つべきだと定めていた。
そんな中、混濁とした意識が、雨の弾みで月の女神をその気にさせてしまった。
おまけに、何を聞いてもきっと離れはしなさそうだ。
そんな彼女の好意をくべる先を、篝火は知る由もなかったのだ。
自分勝手な男だと、幻滅してくれるならその方が楽だと思う位には、だ。
きっと、男として最低な部類なんだろう。アンニュイな表情のまま、己の後ろ髪を掻いた。

「ハッキリ言やァ、お前の事は好きだろうけど、人様の言う"愛"だのなンだのとは多分違ェ」

「あの晩でも、わかッた事だろ?まァ、なンだ。オレ様は見ての通りだ。
 それでもいいッつーなら、なンだ。買いに行こうぜ。ペアリング」

ただ、別にそれが嫌だとは思っていない。
理解を拒絶した訳では無い。
篝火の生き様を今更を変えるなんて、"スジ"が通らない。
かといって、きっと今まで彼女にしてきた態度こそ"スジ"が通っていなかったんだろう。
漸くそれを自覚出来た。その思いに応えるには、時間が掛かる。だから、それでもいいなら。

この灯火を手に取ってみると良い。
ぶっきらぼうに、彼女に手を差し出した。

セレネ > ミシリ、と。
心が軋む音が聞こえた。
頭では理解していたのに、心が。
未だ癒えていない心が、軋む。破片を落とす。

「――そう、ですか。」

そもそも勝手に想いを抱いたのは己の方だ。
だから、傷つくのはお門違い。
軋む心を、口に告ぐ言葉を、飲み込んで。
分かっていた。分かっていたのだから、その上で想いを告げたのだから。
何も言うな。言うべきではない。
きっと自分勝手なのは己もそうなのだろうから。

「…貴方が何であろうと、どうであろうと。
構わないのです。私を受け止めてくれるのなら。
貴方に何をされても構わないと、言った言葉は嘘ではありません。」

己自身神族なのだ。人の部類ではない。
己の気持ちを、受け止めてくれた。今はそれだけで良い。
彼が応えてくれるように己が頑張れば良いのだ。

差し出されたその手を、繋いで。
叶うならその胸に飛び込んでしまおう。
今の己の心を、身体に乗せて。

クロロ >  
見ればわかる。自分の言葉が相手を傷つけたのは間違いない。
ただ、なぁなぁにしていい関係じゃないのは確かなんだ。
自分の気持ちは伝えた。それでもついてくるなら……。

「オ、オイ……!」

素直に、受け止めよう。
飛び込んできた相手をその体が受け止めた。
触れ合う互いの体が、温もりが互いに繋ぎとめる感触。
あの時の夜と同じだ。成る程、確かに悪くは無い。
ふ、と僅かに交換を吊り上げてそっと彼女の髪を撫でた。

「わーッたよ。そこまで言うなら勝手ついてこい。後で泣き見てもしらねーからな?」

「ホラ、ペアリング買うんだろ?行こうぜ」

セレネ > 衝動的に飛び込んだその身体を、受け止めてくれた。
そのぬくもりに安堵し、泣きそうになる。
潤む蒼を彼の胸元に埋め、喉元に上がりかける嗚咽を噛み殺し。

「何も言わず、私を独りにしないのなら…それで、それだけで…。」

独りは嫌。寂しいのは嫌。
叶うのなら隣に立ちたい。けれど、駄目ならば傍に居てくれるだけでも良い。
孤独の寒さに凍えるくらいなら、篝火にくべる薪になる方が良い。
強く強く、彼の大きな身体を抱き締めて。

「――はい…っ」

身体から離れた後も、彼の片腕には抱き着いたまま装飾品が並ぶエリアへと向かうだろう。

クロロ >  
「……あのなァ、オレ様はそンな薄情じゃねェッての。
 テメェで関わッた相手のメンドー位みらァ」

そこまで思われていたのは心外だ。
いや、そう見えるくらいの態度だったのだろうか。
よくわからないが、関わった誰かを一人にしようとは思わない。
……結局、そうやって個人で見ない以上、恋愛に辿り着かないのだ。
それに気づくのは何時かはわからない。空白の期間が多すぎる。

「い、いや、ンな泣く程……悪かッたッて」

流石にこれには困り顔だ。
まぁ、こればかりは己が悪いわけだし今暫く好きにさせよう。
腕に抱き着いた彼女をつれて、一緒にペアリングの元へと向かっていく。

彼女がお気に召すものを選んで、後は彼女の家まで帰ろう。
もう暫くの間は彼女の世話になるのだ。
その時だけは、この篝火を独占させるのも悪くないかもしれない。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」からクロロさんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」からセレネさんが去りました。