2022/01/10 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」に山本英治さんが現れました。
■山本英治 >
寒い日に温かいものを食べる。
それは割と誰でも思いつくものだ。
でも今日は寿司! 寿司が食いたい!!
ってなると……非番の日の俺の食欲を誰にも止められないのだな。
とはいえ回転寿司エリアだが。
「ふぃー………」
座って温かいおしぼりで手を拭う。
ここで顔を拭ったら完全におっさんだな。
回転寿司だからといって職人さんは一切手を抜かない。
そういう風情の店のようだ。
「なんかテキトーに2、3握ってもらえませんか」
子供の頃、親友と……遠山未来の家族と一緒に回転寿司に来た時。
俺らは職人さんに何か言うのが怖くてレーンの寿司ばっかり取ってたっけ。
懐かしいな。
■山本英治 >
そして、目の前に出された寿司は。
穴子……だった。よく煮込んだツメがかかっていて美味そうだ。
美味そうではある。
だが。
本来、寿司の食べる順番のセオリーには。
最初に白身魚のような淡白な味わいの白身魚……
というのが定石だ。
俺ぁ、てっきり。
味付けの濃い穴子なんかは後半に食べるものだとばかり。
こりゃどういうことだろう。
そう思って顔を上げると、職人さんは自信アリという表情。
フム。これは奇怪………
食べれば、美味い。
『ウナギは捌けても穴子は捌けない』……という言葉がある。
締めてから2、3日経った穴子は身も柔らかく、骨も複雑で捌きづらい。
ツメもごく上等。これは腕の良い職人が作ったことがわかる。
回転寿司でこれが出ていると思うとなかなかどうして驚くものだ。
だが……味が濃い。この後に何か食べても味がボケてしまうんじゃないか?
■山本英治 >
次に出てきた寿司は……白身魚。
独特な模様、カサゴか。
それを湯霜づくりにして寿司に仕立てた、というわけだ。
だがどうにもな………
確かにカサゴは脂も甘いよ。上等な白身魚だ。
でも、甘ぁいタレのかかった穴子の後に食べても。
味がわかんねぇんじゃねぇのかな……
訝しがりながら食べたカサゴの湯霜は。
じんわりとした甘みが優しく、心の底から温まるような。
そんな味わいの寿司だった。
「!?」
バカな、あんな味の濃いものの後に食べて白身魚の味なんてわかるわけがない!!
どんなトリックがあるんだ……!?
ふと、皿の脇を見る。
そこにあったのは……ガリ、だった。
そうか!! ごく上等なガリで舌をさっぱりとさせたんだ!!
味の濃いものを食べたらガリに手が伸びる、
そこで手間をかけたガリで舌をリセットさせるというわけか!!
なるほど、やってくれるぜ……常世鮨!!
■山本英治 >
こうなると気が抜けない。
次に出てくる寿司はどんなものになる……?
職人さんが目の前に出したのは。
カニの寿司………だった。
なんか、普通だな。
今までが突飛なコンビネーションで来ただけに。
回転寿司らしい寿司を出されて毒気を抜かれてしまう。
ただの湯引きしたカニ脚かぁ……
美味いんだろうけど。なぁ。
今までの寿司の組み立てに、俺は驚かされた。
魅了されたと言っていい。
そこでカニの脚をバーンと出されると、ちょっと拍子抜けしてしまう。
「…………」
まぁいい。食べてみればわかる。
口に運んだ瞬間、味が弾けた。
これは……!? カニを出汁にくぐらせた、カニしゃぶの寿司か!!
美味い! 美味いが、それ以上に………
温かい!!
そうか、今までの寿司に共通するポイント!!
それはツメをかけた煮穴子、湯で皮を引いたカサゴ、出汁にくぐらせたカニ脚!!
それはじんわりと温かいということだ!!
俺のアガリ(茶)はほとんど減ってない!!
温かい寿司で体全体の温感が上がったからだ!!
体が冷えれば食欲も失せるし、お茶を飲んで寿司の後味を殺すだろう!!
これは……寿司の温度さえも計算に入れたコース…!!
■山本英治 >
なるほど……そういうことか…
ここの寿司、侮ってかかるわけにはいかない。
「後の寿司もお任せでお願いしたいのですが」
そう言った瞬間、職人さんの両目が細められた。
ように見えた。
さぁ、戦いが始まる。
俺の! 俺たちの!!
寿司バトルだ!!
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」から山本英治さんが去りました。