2022/10/03 のログ
■紫明 一彩 >
あっ、と小さく声をあげる眼前の女性。
年齢は自分よりもそれなりに上のように思えるが、
そう感じさせない、何処か幼さを残した色を感じる。
「…………」
すっと持ち上げた右手の甲に顎を乗せ、再び思考を走らせる。
しかしなんだろう、もしかしたら
この施設のいサービスの一環だとでも言うのだろうか。
少し早めのハロウィンで仮装イベント中とか。
或いは、競争相手が多い中、悩める子羊達を救う懺悔風呂とか。
(全裸で……!? 全裸懺悔……!? どういう需要……!?)
凄惨な罰ゲームにしか思えない。
……随分と的外れなベクトルに思考を飛ばしている気がする。
修正。軌道修正。
続く、女性の言葉。
ほら見ろ、ただ掃除してただけだった。
修道服の謎は未だに解けていないが。
語られるその言葉、その音。
一つ一つに朗らかさが滲んでいる。
明るく温和な性格なのだろう。
そのことが、ぱっと聞いただけでよく分かる。
「……なるほど、清掃をされていたんですね~。
せっかくなんで、空いているお風呂に入ろうと思いますが」
頭を掻きつつ。
やっぱ、これだけは聞いときたい。
「……えぇと。何か話し辛い事情があれば聞き流して貰って
構わないのですが……個人的にええ、どうしても興味が尽きぬところで~」
しれっと、あんまり失礼にならないように
少し神経質過ぎるくらいに、穏やかな音で包んで言葉を渡す。
「なぜ、修道服を?」
だって、気になるじゃん!?
■マルレーネ > 右手の甲に顎を乗せて、じ、っと眺められる。
ええっと、これは………清掃員の視察、百貨店内部の人だろうか……。
それとも何かしら………やはり清掃員がお風呂に入ったら嫌だ、って人だろうか……。
「……え、ええ。他のお風呂は綺麗ですからすぐに入れますよ。
ここのお湯はなんかこう、いい成分を地下からくみ上げてるのでお肌もきれいになるとか。」
凄まじく下手なセールストークをしながら、んしょ、っと下着を外して。
そこであまりにも真っ当なツッコミを受けて、少し固まる。
「…………。」
こほん。
「教会って……アレなんですよ。
何もしてないというか、ずっとお祈りと歌を歌ってるだけと思われがちというか。
で、そうなると人によっては、……特にこういう場所では、役に立たないものだと思われがちでして。」
頬をぽりぽり。実際そういう人もいるにはいたなあ、と思い出しつつ。
「そこで、働くときにはできる限りこの格好で働く、ってことになったんです。
そうすれば、「いろんなところでがんばってるなあ」と思ってもらいやすくなるじゃないですか。」
社会に必要とされるものは残り、必要とされないものは残らない、それは理解する女。
■紫明 一彩 >
「なるほど」
ぽん、と手を叩く。
ハロウィンでも全裸懺悔でもなかった。
「全裸懺……失礼。教会の方だったんですね~。
てっきり何かしらのイベントでそういう格好をされているのかと……」
思わず口にしかけた、己の浅薄かつ飛躍した妄想を彼方へ追いやりながら、
そう返す。
「でも、良い試みかと。
実際今、頑張ってるな~! って思いましたし、私」
教会の人たちも大変なんだな、見えない苦労もあるんだろうな。
そんな風に、素朴な言葉を頭に浮かべて改めて感じ入る。
こうして耳に入れる生きた言葉というのは。
書物の上に書かれているそれとはまた違った、
躍動感ある知識を与えてくれる。
ならば今日は一つ、いい出会いがあったと言えるだろう。
顎にやる手はそのままに、気分良く微笑んだ。
「私、教会っていうのは書物、物語の中でしか知らないもので。
良ければ一度お邪魔したいものですよ~」
そんなことを言いつつ、とことこ歩いてかけ湯かけ湯。
素っ裸で立ち話してたら、風邪を引いてしまう。
夏はいつの間にか過ぎ去って、もうそんな季節だ。
大分過ごしやすくなって来たし、色々出歩きたくもなる季節だ。
行ったことの無い教会へ足を伸ばしてみるのも良いだろう。
■マルレーネ > 「あはは、イベントの時は逆になんか別のコスプレが予約済みなんですよー……。」
遠い目をしてボヤく。前回は悪の女幹部みたいな恰好させられた気がする。おかしい。
今回は何だろうなあ、なんて目のハイライトが消えて、はー、っとため息。
「あ、本当ですか?
ええ、がんばっているんです。特に異邦人の持ち込む宗教は、それなりにこう……。
社会貢献しないと、本当に立場がないですからね。」
てへ、と舌を出して笑って見せながら、んん、っと伸びを一つして。
「そうなんですか? ……ふふ、私のところはもう信徒を増やす予定もないですから、ぜひいらしてください。
ただ、有難いお話はないですけど。」
ころころと笑いながら、こちらもお湯を頭から浴びる。
浴び方はどちらかと言えば豪快。子供寄りだ。
「………私はシスター・マルレーネ。マリーとでもお呼びください。
異邦人街の修道院に住んでいます。」
■紫明 一彩 >
「た、大変なんですね~……」
ため息をつきながら遠い目をする美人さんを前にして、
今度はこちらが頬を掻く番だ。
日によっては猫耳とかつけて接客しているんだろうか……。
眼の前の美人さんがそんな格好をしているのを頭に思い浮かべ、
それは確かに集客効果抜群なのだろうと一人納得をする。した。
「土地柄、宗教関係は色々と複雑でしょうからね。
そんな中で、健気に頑張ってらっしゃるのは尊敬に値しますよ~」
片や紫明はと言えば、控えめに湯を流す。
湯が肩にかかった瞬間。ほう、と意図せず小さく息を吐いた。
湯を流すのは良い。色んな面倒事も葛藤も一緒に、
洗い流してくれるような気がする。
「シスター・マルレーネ。マリーさん。素敵なお名前ですね~。
私は紫明 一彩。図書委員をしている者です。
何か必要な本があったら、ぜひぜひ教えてください。力になりますよ」
ぐっ、と拳を握って胸の前に持っていく。
「しかし……色眼鏡であることは百も承知で、
初対面でこんなことを言うのもなんですが……
シスターさんって結構真面目というか、几帳面というか……お硬いイメージの方が
多いように思っていましたが。マリーさんは全然そんな感じがしませんね。
勿論、良い意味で」
これまでの所作から受けた魅力を率直に伝える。
好意は積極的にストレートに。
■マルレーネ > 物理的にできないもの以外は何でもやる女である。
どんな格好でも、どんな仕事でもがんばるのである。……結果ボヤきは止まらないのだけれども。
「あはは、……まあ、そうですねぇ、大変であることは否定はしないですけど。
でも、そういう意味ではまだそれを気にすることができるくらい余裕がある、ってことですからね。」
冒険をしていたころは、教義に背くようなことも多かった。
「紫明さんですね。……本、本ですか。……数学が分かるようになる本が欲しいですね。」
勉強は苦手な修道女、あはは……と遠い目をする。
いやあ、次の定期テスト、もうダメになりそうで……。
「…あー、いや、まあ、そうかもしれませんね。
時間には結構厳しい方が多いですね。朝起きる時間とか………。
性格まで真面目かというと、そうでもないですよ。私の知ってる範囲ですけど。
こっちの世界でも。」
ころりと笑って、ウィンクをぱちり、と一つ。
「……ふふ、ありがとうございます。
褒められちゃうと木にでも登りますよー?」
■紫明 一彩 >
「余裕があると言える見方もある、と。強い方だ。
でもそうじゃなきゃ、務まらないんでしょうね~」
確かに顔や仕草に幼さを残している感じはあるが、
それでもしっかり『大人』な考え方をしているのだな、と感心した。
「数学の参考書の類でしたら、リストアップできますよ。
そういった学習書は実際に手に取るのが良いでしょうから、
お時間のある時にお越しいただければすぐに探せるように場所も書いておきます。
今度、教会にお邪魔した時にお渡ししますね~」
にこりと微笑みながら、ちょっと仕事モードに入りすぎたな、と自省。
「それじゃ、私はシスターにはなれそうにないですね……。
朝は弱いし、時間にきっちりなのは苦手だし。
でもまぁ、性格まで真面目じゃない人も結構いるってことなら、
ちょっと親近感湧きましたね」
腰に手をやって、こくこくと頷く。
そうして話している内に身体の汚れを落とせば――
さて、空いている綺麗な湯に浸かろう。
肩までゆっくり浸かれば、今度こそ大きく息を吐く。
極楽極楽、だなんてよく言ったものだ。
「謙虚なことで~」
そんな風に返しつつ、彼女の肢体をちらりと見やる。
うーん、身体の方は全く謙虚じゃないよなこのヒト……。
ざ・ないすばでぃ。
自分とは正反対だなぁ、などと思いつつ。
ちょいちょいと手招きして、湯に誘う。
初めて来たところだが、やっぱり冒険はしてみるものだ。
いい湯に、面白い出会いもあったし。
満足に感じながら、目を閉じて湯に浸る――。
■マルレーネ > 「まあ……いきなり異世界に飛ばされるって経験すると強くもなりますよー。」
あはは、と苦笑をしながらも、目を少しだけ閉じる。
「………いえいえその、あれです。
多分1から分かってないんですよね……。 数学って、ほら、必要無いじゃないですか………。
自分で火を起こして料理するような生活ですから。
あー、いえ、まあ、………必要がないならなる必要無いですよー。
ああ見えて上下関係は厳しいですし。」
遠い目をしながら、よっこらしょ、と手招きされるがままに隣に入る。
スタイルはしっかりしているものの、本人はそれを何か気にする様子も隠す様子もなく。ふあー、っと声を出して手足を伸ばし。
「………そうなんですよねー、お掃除とかならいいんですけど、あいさつ回りとかもありまして………。」
そう、ボヤきは止まらない。溜まっているって奴なのかな?
ご案内:「扶桑百貨店 展望温泉「少名の湯」(13F)」からマルレーネさんが去りました。
■紫明 一彩 >
「なるほど、異世界から……。
また良かったらぜひ、色々とお話が聞きたいものです」
異邦人のお話。
それはとっても、興味があるもので。
――そんな昂りを、あたたかな湯の中で抱きながら。
ただただ、穏やかな時が過ぎていった。
ご案内:「扶桑百貨店 展望温泉「少名の湯」(13F)」から紫明 一彩さんが去りました。