2020/06/29 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 展望台(20F)」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 > 昨夜の落第街での戦闘の事後処理の結果。
取り敢えずは暫くの間、落第街やスラムでの作戦行動の自粛が言い渡された。というのも、公安委員会との調整だのやり取りだの諸々あるにせよ、単純な理由として。
「……思ったより重傷だったとは思わんだな」
ドクターストップである。ぶん投げられた小太刀は結構ざっくり刺さっていた――というか、刺さり処が悪かったらしく、左腕はしっかりと包帯で巻かれて動きづらい事この上ない。
利き腕が動けば何とかなる、という陳情は一蹴された。折角だから、怪我が治るまで大人しくしておけとの事。
では一体何の仕事を任されるのかと詰め寄れば、養生しながらと念を押されながら与えられたのは、グランドオープンした扶桑百貨店の風紀委員会支所での勤務。
異形で迷子案内しろというのか。
「……まあ、骨休めだと思って…というか、そう思わぬとやっていられんな」
確かに新しいオフィスは快適だし、一時的とはいえ、或る意味希望していた後方勤務なのでそう不満がある訳では無い。
無いのだが、何か物足りない。
今のところはグランドオープンしたばかりという事もあり、風紀委員の出番は多いものの、怪我人の己は何時も支所で留守番だ。
「……全く、我ながら度し難い」
今日の勤務を終え、夜勤の者達に警備を引き継いで展望台で一息。
夕食時だが、展望台は未だ大勢の生徒で賑わっている。此れから此処で夕食をとるのだろうかと、何ともなしに雑踏を眺めていた。
ご案内:「扶桑百貨店 展望台(20F)」に五百森 伽怜さんが現れました。
■五百森 伽怜 > オープンしたばかりの扶桑百貨店に押しかける客は多く、
人が波打つようにあちらこちらへと足を向けている有様である。
しかし展望台ともなればその雰囲気も少し落ち着いて、ゆっくりと息を
つくこともできるだけの余裕はあるようだ。
そんな中、エレベーターから出てくる新たな人影。
小さな鹿撃ち帽を頭に被っているその少女は、最新型のポラロイド
カメラを手に持って、展望台に居る一人の青年に目をやれば、
おおっ、と目を輝かせた。
そして、すすすと小走りで近づいてくると、興奮した様子でこう
口にする。
「も、もしかして……鉄火の支配者……さんッスか!?
本物の!?」
ぐっと両の拳を握り、ずずいと顔を前に出して、目の前の美青年に尋ねる彼女の顔は、
真剣そのものだった。
■神代理央 > 自分も今夜の夕食は此処で済ませてしまおうか。確かエンピレオとかいうレストランの評判が良いらしい――
と、平和な光景をぼんやりと眺めながら今夜の予定について思索に耽っていれば、何やら小走りに此方に駆け寄ってくる少女の姿。
はて、誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。それとも、今時珍しい――というか、骨董品に近い――ポラロイドカメラから見るに、写真部でも来たのだろうかと、ぼーっとその姿を眺めていれば少女の駆け寄る先は真直ぐ己の元へ。
はて?と頭上にクエスチョンマークを浮かべている間に、此方に近付いてきた少女は拳を握り締め、此方に身を乗り出す様にして己の二つ名を告げる。
え、何。こんな所で暗殺か何かだろうか。というか、こんな衆人環視の中で二つ名言わないで欲しい。別に名乗った事無いし、何か痛い人みたいじゃないか。
「…如何にも。私がその鉄火の支配者とやらで間違いはない。間違いは無いんだが、その名で呼ばれるのは、その、ちょっと…」
こんな平和の象徴みたいな場所で風紀委員の二つ名で呼ばれるのは複雑な気持ちになる。
困った様な表情を浮かべながら、先ずは少女の問い掛けに小さく頷いて応えるだろうか。
■五百森 伽怜 > 「申し訳ないッス! 色々噂には聞いてたもので、
一度お会いしてみたいなって思ってたッスけど、まさかこんな
所で会えるとは夢にも思わず、感動のあまり……」
ごめんなさいッス、と勢いよく頭を下げる少女。
あまりに勢いが良かったので、鹿撃ち帽がずり落ちそうになるが、
それをぱさ、と左手で押さえ、顔を上げる。
「あたしは、五百森 伽怜って言うッス! 新聞同好会のメンバーで、
常世中のネタを拾って走り回ってるッスよ!」
そう口にすると、とん、と自らの胸を叩く伽怜。
何やら誇りを持っているらしい。それとなく。
「あー、このポラロイドは相棒ッス!
ポラロイドなんて古臭いって思うかも知れないッスけ
ど、現代の最新技術を詰め込んで復活した、チョーイケてる
カメラなんスよ~!」
青年がカメラへ向けている目線に気づいたかそう口にすれば、
カメラを構える伽怜。
一枚良いッスか? などと聞きつつ。
レンズに美しい金髪の顔がちらりと映る。
■神代理央 > 「いや、別に構わないんだが…。噂といっても、どうせ碌なものでは無いだろう。そこまで感動される様な事でも無いと思うがな」
ずり落ちかけた鹿撃ち帽を押さえ、顔を上げた少女に小さく苦笑い。
己の噂なんて大概が落第街関係の黒い噂な様な気がしないでも無いのだが。何か変な噂でも広まっているのかな、と内心首を傾げる。
「五百森、か。私は……と言っても、もう名乗る必要も無い様だが。神代理央。風紀委員会の二年生だ。宜しくな。
新聞同好会……?ほお、それはまた。自分の足で情報を集めているというのは良い事だ。応援させて貰おう」
自らの胸を叩く少女にクスリ、と小さく笑みを浮かべつつ。
自身の仕事に誇りを持っているかの様に見える少女に、穏やかな口調で応えるのだろう。
「へえ…?そういう道具にも需要があるのだな。正直、骨董品の様なカメラはアクセサリーの様な物かと思っていたが、世の中色々と広いものだな」
と、感心した様に少女の説明に耳を傾けていれば、カメラを構えて撮影の許可を尋ねられる。
自分なんか撮って何か面白いのかな、と思いながらも了承の意を込めてちょっとだけ笑いかけてみる。
新聞同好会ともなれば、何かしら記事にされる…かも知れない。風紀委員会の評判を落とさない為にも、愛想は良くしておいた方が良いのだろう、くらいの下心はあったりするのだが。
■五百森 伽怜 > 「いやズババッと悪を裁く、かっこいい風紀委員だって――」
ちょっと怖い、ちょっと過激、ちょっと黒い、
とも聞いているのだが。
そのことは胸の内にしまい込む伽怜であった。
何より、少女は風紀委員というものに憧れていた。
誰かの為に、一生懸命頑張っているというその姿勢に
憧れていた。
「――風紀のヒーローだって、聞いてるッスよ!」
真っ直ぐな眼差しで神代を見つめる伽怜。
カメラを持っていない方の手をグッと握り、
再び、ずずいと前に出る。距離が近い。割とマジで。
「おー、ありがたいッス!! ちょっと、かるーいインタビューも
したくて……さくさくっと協力をお願いするッス!」
おー、美人ッス~、と口から漏らしつつ。
まるで美少女みたいッス、という一言は心の内にしまいつつ。
満足のいく写真が撮れたのか、にっこり笑顔で八重歯を見せつつ、
伽怜はカメラの構えを解き、両腕をばっと横に広げてみせた。
■神代理央 > 「…風紀のヒーロー、か。ならば、その噂は人違いだろう。私よりも、もっと純粋に。真直ぐに人々を救う委員達が、風紀委員には存在する。
私は何というか…そうだな、荒事専門だから」
少女の真直ぐな眼差しが。煌めく"誰か"に憧れる様な言葉が、酷く重たく感じられる。
自分は断じてヒーローではない。ヒーローは3人と2人の何方かを選べと言われれば、何方も助ける存在なのだろう。
自分は、迷う事無く3人を助ける。それはきっとヒーローではない。
だからこそ。少女の言葉に浮かべた笑みは、僅かに自嘲する様なものであったのかもしれない。
とはいえ。そんな空気も感情も、妙に距離が近い少女の前に霧散する。パーソナルスペースという単語の意味を教えるべきだろうか。
ちょっとだけ困惑した様な表情を浮かべながら一歩だけ身を引き、彼女の言葉に少し考え込む様な素振り。
「美人というのは男に対する褒め言葉には不適当だな、記者君?
…まあ、私で答えられる事であれば、少しくらいは協力するとも。生徒の要望に応えるのも、風紀委員の務め故な」
此処で風紀委員のイメージを上げておけば、少しは此の百貨店に一時配属された甲斐もあったというもの。
にっこりと笑みを浮かべる少女に穏やかに頷き、その瞳を見返して――
――奇妙な迄に、彼女に対して仄かにではあるが好印象を抱いている事に、頑固で頑迷な理性が僅かに警鐘を鳴らしていた。
■五百森 伽怜 > 「ははー、神代先輩は謙虚なんスね~!
でも、人助けはしてるッスよね?
荒事専門だとしても。
あたしは、難しいこと分かんないッスけど――」
ふむむ、と顎に手をやる。
親指と人差指で顎を挟むポーズである。
「――誰か一人でも救おうと動いたなら、動こうとするなら、
それができる人なら。あたしはやっぱり、
立派なヒーローだと思うッスよ」
だからあたしも、あたしのやり方でヒーローを目指してるッス、
などと小さく呟いてカメラを持っている手を小さく振って見せる。
それは彼――神代の抱えている大きな闇に比べれば、
どれほどちっぽけだったろうか。
どれだけシンプルだったろうか。
どこまで純粋な答えだったろうか。
それでも。
「少なくとも、あたしはそう思ってるッスよ」
にっこりと満面の笑みを浮かべて、彼女は笑う。
何の警戒も、悪意もない、ただ純粋で前向きな笑みを、
神代に見せる。
「っとと、インタビューだったッス!
インタビューの質問は2つッス!
神代先輩が風紀に入った理由と……それから、
神代先輩が考える『正義』についてお聞きしたいッス!
これ、色んな風紀の方に取材していこうと思うッスけど~」
そう言うと、胸元から一枚の写真を取り出す。
瞬間。
彼女がふっと写真を振ると、そこからメモ帳とペンが出てくる。
ふふん、と得意そうに神代を見る伽怜の瞳。
あまり長い間見つめていると、吸い込まれそうになる気分に
なってしまうかもしれない。この瞳は、『そういう』瞳だ。
■神代理央 > 「…………それでは、君達の様な生徒の期待に応えねばならないな。他の風紀委員にも伝えよう。その言葉一つで、奮起出来る者はきっと多いのだから」
ぱちくりと。悪意も偽りも無い純粋な答えを聞けば、瞳を瞬かせてぽかんとしているだろう。
しかし、その表情は直ぐに可笑しそうに。それでいて楽しそうな笑みへと変化する。真直ぐな善意とは、こうも眩しいものだったのか、と。そして、それが決して不快では無い事に対する驚きと。
彼女の言葉に頷きながら、己にしては珍しく、穏やかで朗らかな笑みを浮かべるのだろう。
そんな和やかな空気の中で始まるインタビュー。
さて、何を聞かれるのかと思考を走らせていれば、当たり障りの無いというか。まあ風紀委員には聞くだろうな、という質問。
ふむ、と視線を宙に彷徨わせた後、再び彼女に視線を合わせて。
「風紀に入った理由は、先ず単純に私の異能が戦闘向けであった事。その異能を人々の為に一番活用できるのが、風紀委員会だろうと思ったからだ。人々を守る為の力、と恰好をつけるつもりは無いがね。
そして、私の考える正義について――」
そこで、彼女が胸元から取り出した写真――取り出す場所はもう少し何とかならなかったのか――から現れたペンとメモ帳。
ほお、と驚いた様に表れた物体に視線を向けた後、えへんとばかりに此方に視線を向ける彼女に瞳を合わせる。
「中々に便利な力だな。異能か魔術かは分からぬが…収納系、格納系、か?何にせよ、実に有用な力だ。是非風紀委員会にスカウトしたいものだな」
少女の瞳を見つめながら、彼女の力を讃え、好意的な感情の籠った言葉が紡がれる。
しかし、その瞳は数秒の後、自然な動作で外される事になる。代わりに浮かぶのは、ほんの僅かな。微小ではあるが揺らめく警戒心。
様々な敵と。力と。生物と。戦い続けたからこそ、彼女へ抱く好意的な感情が"何処から生まれたものなのか"と、理性が警鐘を鳴らすが故に。