2020/07/09 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 地下食品市場(B1・2)」にオダ・エルネストさんが現れました。
オダ・エルネスト >  
私の名前は、オダ・エルネスト。
          ――― 自 称 ―――
米国からの偵察、スーパーエリートエージェント。
ここではただの転入生に過ぎないが。

今私は食品売り場横でソーセージを焼いたり茹でたりしている。
実演、試食販売というものだ。
仕事というのは尊く素晴らしいもので、
職務を全うすればこそ成果に見合った賃金/保証がある。

先にあった春季学術大会で流れた偏見情報。
それをどうにも国のオエライサンの一人は気にしてるらしい。

―――調査はどうかって?

観光に講義受講、食文化堪能をし自身の趣味まで楽しんだというのに
活動資金の振り込みが停止しやがった。

オダ・エルネスト >  
生まれ持った才能とこの容姿で祖国ではマダムに大人気―――であった。
しかし、この島では私は目立ちすぎるようだ。
青い花や雛鳥たちに私という存在は眩し過ぎている。

―――ああ、自分の輝きが恨めしい。

端を器用に指先三本で回転させ飛ぶ汁は全て計算通りに試食用の容器へ。
突き刺す爪楊枝からは溢れる肉汁と濃厚な香りが広がり、
周囲を支配する。

今 、 こ の 売 り 場 を 私 が 支 配 し て い る。

この輝きこそがいつまでもただの転入生という枠で収まり続けるだろうか。いや、ない。反語。



だからこそ、ここでのバイトは日雇いである―――現実は無情だ……。

オダ・エルネスト >  
「長期で働ける場所を見つけなければ……」

そう呟いて眩しいはずの未来を見た。

どうしてだろうか、自分の職務を全うしてから考えろと誰かに言われた気がする。
嫌な上司はここにはいないはず……なのにな。

試食品のソーセージはたまに食欲旺盛な少年少女がキャッキャしながら食べていくくらいで
余り売れていないが、先程からその端は売ってるのかとかその瓶のオリーブオイルの売り場は?
なんて関係のない商品についてしか聞かれない。

バイトで生活費も試験の勉強もしっかりやらなけりゃいけない。
これが学生のつらいところだな。

オダ・エルネスト >  
結局、どうやら私は店側のノルマを達成できなかったようで、
またお声がかかる事はなかった。

アウェーでは輝かしい自身の才能も、全く意味を成さないのだ。
そう学ばされた気がした。



しかして、別の売り場のヒトは彼をスカウトしようと探そうとしたとかしなかったとか。
それはオダ・エルネストには繋がらなかったお話である。

ご案内:「扶桑百貨店 地下食品市場(B1・2)」からオダ・エルネストさんが去りました。