2020/08/12 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 展望台(20F)」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
閉店時間まで間もなく、といった頃合いの展望台。
普段は多くの人で溢れかえる此の場所も、今はシン、と静まり返っている。
オフィスエリアで行われた会議が遅くならなければ、もう少し賑やかな此の場所を楽しめたのだろうが――

「……此処が静か、というのは新鮮やも知れぬが……下手な場所よりも、寂れている様な気がするの不思議なものだな」

清掃が行き届き、多くの人の熱気を受け入れていたからこそ。
人気の無い此の空間は、半端な廃墟よりも空虚なモノに感じる。
床を叩く革靴から響く音が、やたらと大きな音を立てて展望台に響く。

「…まあ、誰にも邪魔されないというのは良い事であろうが…此処、禁煙なんだよな…」

夜景を眺めながら吸う煙草はさぞ美味しいだろうに。
掌でライターを弄びながら、小さく溜息。

ご案内:「扶桑百貨店 展望台(20F)」に日月 輝さんが現れました。
日月 輝 > 盛夏を示すような店内の喧噪も静まり返った刻限。
緩やかしく流れるBGMと照明がより、そうした様を強調する刻限。
何とはなしに展望台まで足が伸びて鼻歌混じりにがらんどうを歩くのだけど

「あら、御免なさい。もう終わりかしら?」

その先に風紀委員の制服と腕章をつけた──男子生徒?を視止めると足が一時止まって、
次には其方に向かって動き出す。閉店業務に伴う見回りかしら?

「まだ閉店時間では無いと思うのだけど……あ、もしかしておサボり中かしら」

目隠しの奥で瞳が和んで言葉が楽し気に揺れる。
風紀委員が夏休みの間、激務であることは公然に近いんですもの。

神代理央 >  
投げかけられた声に、窓の外へ向けていた視線を巡らせる。
未だ煌々と灯りの灯る寒々しい迄に広い展望台で己に声をかけたのは。
西洋人形さながらの服装を纏った少女。

「閉店の刻限が近いのは確かだがね。焦って此処を出る程では無いさ。
見学に来たのなら、ゆっくりしていくと良い」

此方に歩み寄る少女に視線を向け続けていれば、その目元を覆うモノは否が応でも目に入る。
それにしては、随分としっかりした足取りだ、とぼんやり眺めていたが。

「生憎だが、こうも堂々とサボる勇気は私には無いよ。仕事が一段落ついたのでね。こうして一人寂しく黄昏れていただけさ」

目隠しをしていても見えない、という訳では無いのだろう。
楽し気な声色で語り掛ける少女に、小さく肩を竦めてその言葉を否定するだろうか。
己よりも少し小柄な少女に向ける視線と言葉は、今のところ真っ当な風紀委員の体を為しているだろうか。

日月 輝 > 「そう?良かった。賑やかしいのは好きだけど、何かを眺めるなら静かな方が好きだもの」

ああ、男の子の声だ。
遠きに鮮やか近くに美麗。金糸のような髪色に紅玉の如き瞳と白皙の肌。
それらに加え、名のある人形師が象嵌したような御顔立ちは、着るものを選べばさぞや映えそうに思う。
つい、品定めをするように目隠しの裏の視線が上から下に、下から上にと動いてしまうのも無理からぬこと。多分ね。

「ふぅん貴方も偶々の御一人様だったのね。あたしてっきり扶桑の警備担当の方かとばかり」
「夏休みともなると迷子のお呼び出しとか凄いでしょうから、それで燃え尽きてしまっているのかなって」

肩を竦める彼に更に近づいてその隣に訪う。窓際に巡らされた丁度いい高さの手摺に肘をつくように凭れて
はて、彼のこと、何処かで見たような気もするけれど──何処だったかしら。

「ちなみに貴方のお仕事ってどんなものだったの?ほら、一口に風紀委員だなんて言っても色々あるでしょう」
「袖触れ合うも何とかっていうし、展望しに来たついでにお話でも如何?あたし、気になるわ」

彼の袖に気安く袖を当てるようにして展望を。眼下に広がる夜景よりも鮮やかしき端正な顔/かんばせを視る。

神代理央 >  
「同感だな。大勢の人々の熱気を眺めるのは嫌いでは無いが、その渦中に長々と居座るのは私も好まぬ。――それに、本来賑わっている筈の場所が、こうして静寂に包まれているというギャップも、私は嫌いではなくてね」

己に近付く少女は、真夏の深緑を其の侭宿した様な髪を、少女然とした髪型――ツインテール、と言っただろうか――で飾っている。
過剰な装飾の洋装は少女を覆う目隠しと相まって、妖し気な魅力と雰囲気を纏わせているだろうか。
控え目な表現をしても整った顔立ちの少女だ。男子生徒からの人気も高かろう。
そんな少女が己を見定める様な視線を向けている事に感づけば、少し不思議そうに首を傾げるのだろうが。

「こんな時間に風紀委員が居れば、そう思うのも無理はない。私とて、同業の者が此処にいればそう思うさ」

「燃え尽きた面々は既にベッドの中さ。日中の戦争を戦い抜いた戦士達を、日が落ちた後迄酷使するのは流石にな」

己の隣で足を止め、手摺に凭れる少女に小さく苦笑い。
草臥れ果てて帰宅の途についた同僚達に、一瞬思いを馳せながら視線は再び窓の外へ。
煌びやかな学生街の灯りも、少しずつ夜の帳に掻き消えていく様な時間。

「どんな、と問われると中々説明しにくいものだな。だが、まあ。強いて言うなら」

「君の様な少女に聞かせるには相応しくない仕事だ。歓楽街の奥の奥で、犯罪者と剣を交える様な、泥臭い仕事だ」

「夜の展望台で語るには、余りに無粋な仕事を、主に務めているよ」

正しく袖振り合う様な距離で。
此方に視線を向ける少女に気付けば、夜景から目を離して視線を合わせようか。
常夜の色と似た目隠しの奥。少女の瞳を覗き込む様に視線を向けて、緩やかに笑みを浮かべるだろうか。

日月 輝 > 「誰も居ない美術館とか、遊園地とか。学校内だとか。人が大勢いるべき場所に誰も居ない。不思議な感じよね」

言葉を切ってその場でゆうるりと視界を巡らすようにターン。
展望台にいるのは二人ぼっち。それを改めて確認するような所作。
それが済んだら唇を撫でるように右人差し指が添う。此方は、少し考えるような仕草。

「わざわざ燃え尽きるまで大変ね。……なんて言うと怒られちゃうわね」
「皆さん大本は志願して委員会に入っているのだろうし……」

なぜ?どうして?何のために?この島の治安維持に関わろうと思ったの?
なんて事は恐らく面接とかで聞かれようもの。
予想するしかなくてあたしには解らないけれど、きっと見定めた目標がある人達なのだろうと思う。
考えるような仕草はまだ続く。

「堅苦しい言い回しをするのね。監督官が居る訳でもないのだから気を抜いてもいいんじゃない?」
「見た所……あたしとそんなに歳、変わら無さそうだし──」

あたしを少女と言う彼は少年だ。
実は100年以上生きている長命種である。とでも言われたらお手上げだけれど解らないから唇が少しだけ尖っちゃう。
続く言葉が、些かに物騒であったなら尚の事。

「まあ、所謂"落第街"という所の?それはまた……いわゆる違反部活とか怪異の摘発を?」

悪所として勇名を馳せる公然の秘密。歓楽街の奥の名称を口にして問い返す。
無粋と語るその内容を探るように、目隠しの裏の眼が紅色を視る。

神代理央 >  
「本来あるべきモノが其処には無い。しかし、欠けているからこそ。空虚だからこそ人は惹かれる事もある。
大袈裟な物言いをすれば、今此の空間も、ミロのヴィーナスの様なものなのだろうさ」

欠けているからこその偏愛。空虚への好奇心。無を埋める想像力。
それらが、己と彼女しかいないこの空間にも、もしかしたらあるのかもしれない。
優雅にその身を翻し、ふわりと舞う様に回る少女。
そうして、考える様な素振りを見せながら言葉を紡ぐ少女に、静かに唇を開く。

「それが与えられた仕事であり、義務。されど、大変だと気遣う言葉に目くじらを立てる事は無いさ」

「志願したとはいえ、皆等しく学園の生徒には違いない。行って当然の事でも、それを評価されて喜ばぬ者などいないさ」

様々な理由で風紀委員会の門をくぐった者がいる。
大小様々な理由と覚悟を以て風紀委員の制服を纏っていても、疲れる時は疲れるし、時には投げ出してしまいたくなる者も、きっといる。
だから、少女からの感想を頭ごなしに否定するものなどいないだろう、と。穏やかな表情の儘言葉を投げ返して。

「癖の様なものでな。それに、風紀の制服を纏っている以上、今此の場での監察官は言うなれば君だ。庇護すべき者の前で、みっともない真似は出来ぬだろう?」

「歳は…まあ、そうだな。恐らく大差あるまい。君がエルフだの異邦人だので実は数百歳、という訳でなければ。私は16だ。きっと、年齢も近いとは思う」

図らずも、彼女と同じ事例を引き合いに。唇を尖らせる少女に少し困った様に笑いながら、己の年齢を告げようか。
その笑みは、次いで彼女が此方に投げかけた言葉の前に、より一層深くなるばかり。

「…中々に物知りな事だ。出来れば、全ての生徒がその名を知らぬ儘卒業を迎えてほしいと、思ってはいるのだがね」

小さく溜息。

「その認識で間違いない。違反部活や怪異の摘発、または殲滅。
それが今の私の仕事。与えられた仕事。
夜景を背後に語るには、些か血生臭いというものさ。私の仕事は、大分に殲滅へと寄ったものだからな」

此探る様な少女の瞳を、伺う。
しかしその瞳は、目隠しという帳によって遮られ、直接視る元は叶わない。