2021/11/25 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■神代理央 >
『扶桑の常世鮨』と言えば、子供も大人も気軽に寿司を楽しめる回転寿司として有名である。
…が、扶桑程の百貨店ともなれば、勿論それだけではない。
支払った金に応じて、支払っただけの上質な寿司を、上質なサービスで提供される。
所謂『VIP』の為の席もエリアも、しっかりと設けられているのだ。
「…しかし、珍しいな。紫陽花。お前の方から食事の誘いだなんて」
既に二人の席には数皿の寿司や添え物が並んでいる。
温かなお茶で喉を潤しながら、知人との食事の場所に高級店を選ぶ微妙にセンスの無い少年は、テーブルの対面から首を傾げてみせるだろうか。
「……まあ、色々と言いたい事もあるのかも知れないが。
あの騒ぎの後だ。ある程度の説教は覚悟しているよ」
ことり、と湯呑を置いて。自嘲めいた笑み。
■紫陽花 剱菊 >
「……然のみ、可笑しな事でもあるまい。
戦場で無ければ剣を取る道理は非ず。然れど、いわんや不釣り合いなのは理解している」
鼻腔を衝くは懐かしき酢の香り。
思えば此の幽世へ流れ着いて以降、寿司を口にした事は無い。
凛然と背を伸ばし、男はゆるりと答えた。
いみじくも、互いに戦場に身を置く者。
理央のの言う事に諾うのも然もありなん。
おしなべて、互いに視線を交える刻こそ、死線を交錯させていた。
「互いに血は交えても、言葉を交える機会は少ない。
乙に澄ますだけで無く、時には腹を割って話したいと思ったのでな……」
友垣で在るが、端無く斯様に対面する事はほとんど無い。
立場を省みれば、是非も無し。故に誘うのは自然な事。
戦場で無ければ、残るは絆。必然の作法。
然るに、男は今一つ落ち着かぬと首をゆるりと、右往左往。
「積もる話もある。説教を説くかはさておき……理央。
表の客席とは離れているが此処は……?職人は何処に……?」
異邦人故、異界の寿司の作法を心得ていない。ウカツ!
■神代理央 >
「相変わらず、お前の言葉遣いは良くも悪くも雅なものだな」
くすり、と微笑んで肩を竦める。
目の前の男が、こういった言葉遣いである事も慣れたもの。
…というより、出会った頃からあんまり違和感無かった。
何なら、初めてこんな"軽口"を投げたかもしれない。
「確かにな。話合う機会が零だったとは言わないが…。
こうして、食事をしながらゆっくり語らう機会は、確かに無かったからな」
小さく頷く。そもそも彼とは、血煙と硝煙の中で出会った。
そこから良くもまあ、此処まで親睦を深めたものだと思うが。
これもまた人の縁、という事なのだろうか。
「まあ、確かにな。折角の美味い鮨。美味い飯だ。
先ずは腹を満たしてから……」
と、其処で。
男の言葉に、きょとんとした表情を浮かべた後…。
くすり、と小さく笑みを浮かべる。
「其方の方が好みだったかな?この席は、静かに話をする為の特等席、の様なものだ。
頼めば、職人が幾らでも好きなだけ、最高のネタを使って鮨を準備してくれる」
と、視線を向ける先には小さな枯山水を模した置物。
手を翳せば空中に浮かぶホログラムのメニュー。
一々店員を呼ばずとも、此処から選べば店員が注文の品を持ってくるようだ。
■紫陽花 剱菊 >
「故国の作法故、失礼する」
此の幽世に腰を据えて長きとなる。
然れど、未だすずろのままに言の葉を認める。
如くは無く、柵無くさやかに伝わるのもまた矯正の機会を失ったと言えよう。
然は然りとて、他愛なき理由もありけり。
「如何にも。其方も腰を落ち着かせる刻を見計らった次第だ。
……件については、功罪相半ばとする。私からは如何とも言えぬ」
必要以上に戦火をくべるのは是では無し。
然れど、炙り出さねば尻尾も掴めぬ。心を汲むのは致し方無し。
不問とは言わぬが、沙汰なれば何れ咎を受けるであろう。
其れが己か、或いは他か、程度の違いに他成らず。
「然り。先ずは飯から。最中か、その後でも遅くは……、……」
不意に現れしは淡き朧光。
幾許の寿司の写し絵と名が乗った品書きで在る。
然のみ、其れは問題ではない。深々と輝く初めての光に男は凝視したまま、硬直。
然ながら地蔵と相違無い。謂わばそう、驚いたのだ。
危うく武器を構える程には、肝が冷えたと言うもの。
理央の言葉に平静を取り戻し、一息。
「……成る程。品を呼べば良いと言う訳か……」
然るににあみす。
斯様な霞に触れる等と言う発想は異邦人には無い。
■神代理央 >
「悪いとは言わないさ。別に会話出来ない訳じゃない。
そういう話し方も、嫌いじゃないしな」
何て笑いながら、小さく首を振る。
別に彼の話し方が気に食わないとか、そういう事では無い。
寧ろどちらかと言えば好ましいタイプだ。
戦場で刀を向けられている時でなければ。
「……"ガス抜き"も必要だったのだろう。
何処の、誰に、とは。最早言わぬがな」
戦禍を求める者。戦果を求める者。
立場は違えど、やる事は変わらず、被害を被るのは関係のない者達だ。
短い溜息で、言葉を締め括る。
「………どうした?」
気を取り直して…と思った所で、固まった男に怪訝な視線。
ホログラムと男を交互に見つめて、暫く思案した様な表情を浮かべていたが…。
「……ああ、成程。いや、悪かった。説明不足だったな」
小さな苦笑い。
まあ、これは自分のミスだ。回転寿司のエリアなら、素直にタッチパネルだの店員に声をかけるだの。
もっと簡単な方法があったのだが。
何と言うか…つい身構えて、人に話を聞かれない場所を選んでしまった此方のミス。
「"これ"に触れて、好きな寿司を選ぶと良い。
空をなぞる様で、ちょっと不思議な感覚かもしれないが…まあ、慣れれば楽さ。
少なくとも、砲弾の雨を避けながら突き進むよりはな」
なんて笑いながら。
お手本、と言わんばかりに空中のホログラムを軽くなぞって、スライドさせて。
指先で突いたのは、えんがわ。取り敢えず、彼の分と合わせて2皿頼む。
■紫陽花 剱菊 >
「…………成る程」
即ち、技術の進歩か。
人は幽世さえ支配し、今や光さえ手中に収めた。
是ぞ叡智か。理央は然も当然の様に其れを使っている。
静かに用途を眺める剱菊にとっては、斯様異邦の景色也。
然るに、輝きにて立体を作るので在れば、如何程群像を立てれるか。
いわんや、剱菊は時折思う。是程叡智を重ね、何故此処は存続出来るのか。
戦人で在る故に、叡智が培われる刻は戦で在ると知る。
故に、常々疑問で在った。故国同然、何故此の世は君臨するか。
剱菊にとって其れは"利便"で在れど、"畏怖"を拭えぬ代物で在る。
然りとて、空腹には勝てぬ。
あまつさえ友垣の前で高楊枝等赤面の至り。
人差し指を伸ばせば理央の軌道を追うように光をなぞる。
おずおずと、一つ鮪、二つ鰻、鰤と押して行く。
「……!」
黒き眼、見開きて。何と、有ろう事か夢にまで見た『抹茶ババロア』が見えるでは無いか。
是僥倖と指を伸ばした矢先、『売り切れ御免』
「…………」
渋面。眉間に皺寄せ渋面。
洞の瞳が暫し光を睨んでいた。
さて、一度注文を終えれば先ずは剱菊が口を開く。
「……其方は、"まだ続ける気か"?」
単刀直入に言問う。
此度の一件だけに非ず、鉄火の支配者の在り様、生き様について、だ。
■神代理央 >
「………この店で売り切れとは、余程だぞ。
何と言うか…運が無いのかあるのか…」
彼が注文を進めていく様を眺めながら、のんびりとお茶を啜っていたのだが。
嗚呼、悲しきかな。彼の手に届かぬ抹茶ババロア。
家族連れが多かったのだろうか?スイーツが売り切れとは珍しい。
まあ、此処は鮨屋なのでスイーツはおまけだと言われればそれまでの事ではあるのだが。
何にせよ、彼の手元には望みの品は届かない。
彼の願いは、如何なる文明の利器。発展と栄華の象徴たる物質社会の権化と言えども――抹茶ババロアは。
無いものは無い。
さて、そんな一幕の後。
互いが注文した品は、時を置かずして届けられる。
机に並ぶ色鮮やかな寿司達。
頂きます、と両手を合わせてから、早速、注文したえんがわに箸を伸ばす。
相変わらず此処の職人は腕が良い、と頬を緩めかけたところで。
「……他に誰か」
「私の代わりがいるのかね」
鮨を飲み込んで、お茶で一息入れて。
静かに、彼の言葉に応えるだろうか。