2021/11/26 のログ
■紫陽花 剱菊 >
食卓を彩るは一面の寿司の川。
成る程、食事処も斯様に便利に相成ったか。
些か、店員の過剰な気遣いが気に成るが、悪くない。
「頂きます……」
諸手を合わせ、感謝を示す。
作法は何処も変わりはせぬ。丁寧に静かに、音も立てず鮪を頂戴する。
醤油を一滴、口に運べば程よい油と米の触感に舌鼓。
故国の味とは異なる旨味は、理央の食生活が潤沢かを物語る。
斯様、寿司も此処まで化ける程の食材か。かくも、今宵ばかりは、肖るとしよう。
「…………」
其の一言に如何程の意味が在るのか。
いわんや、理央が堆い程に積み上げたもの。
知らぬ存ぜんぬと言えぬ立場では無い。
然るに、成ればこそ寿司を飲み下し、口を開く。
「……斯様に必要か?」
或いは無法者の受け皿。
或いは無法への憎まれ役。
或いは法の番兵たるや、鉄火の活躍紅蓮の如く燃え広がる。
最早、朝な夕な日陰に身を顰めれば嫌でも耳朶にしみ込むやもしれぬ。
所詮買い被り、たかが個人と侮る莫れ。
いみじくも、悪名名声、恩憎入交単衣にあくるは"象徴"ともする輩も居た。
同じくして、戦場に身を置くが故に、一定の理解を示してきた。
故に、思う。今や"鉄火の支配者"とは、此の幽世に必要なのか、と。
凛然としたまま、姿勢を崩す事無く射抜くように黒の視線が紅を覗く。
■神代理央 >
「必要か不要かで言えば」
えんがわの皿を空にした後。
ついで手を伸ばすのは、秋刀魚。
最近は値段が高かったりするとかしないとか聞くが…まあ、この席では全部時価だ。大して関係無い。
「少なくとも、必要では無い」
丁寧に箸で摘まんだ鮨を頬張り、飲み込んで。
温くなった茶で、流し込んで。
穏やかな声色で、彼に言葉を返す。
「少なくとも、今の学園には不要だろう。5年後、10年後には分からぬが。
今の学園の体制は概ね確立している。強大な武力で態々落第街を抑えつけずとも、いざとなれば"生徒会"が動く。
学園の体制が揺らぐ事は無い」
彼に返す言葉は、自身の不要論を述べるもの。
穏やかな声色で、穏やかな表情で。
砲煙と硝煙を振りまく自分の存在は、此の学園都市にとって少なくとも異物であることを。訥々と、淡々と。
「だが、不要ではない」
ナプキンで、一度口元を拭う。
「風紀委員会は、法の執行機関であって軍隊では無い。
特別攻撃課の様な強力な一騎当千の生徒を集めた少数精鋭の部隊こそあれ、彼等はあくまで『個人』の集まりだろうさ。
異能と魔術を駆使する、若年層の集合体。
風紀委員会は、そういうものだ。公安は知らぬがね」
かちゃり、と箸を置く。今のところ、少年が頼んだ品は全て空。
「だからこそ、何れ必要になる。
学園は何時までも子供の儘ではいられない。
警察機構だけではない。個人の集合体ではない。
明確な武力を持った組織。上意下達で行動する組織。
感情論ではなく、命令書によって駆動する組織。
それが、何れ必ず必要になる」
笑う。尊大に、傲慢に。そして、自嘲めいた笑み。
「……結果論として。特務広報部の存在が落第街の敵意を煽っているというのなら、それはそれで構わない。
潜られているよりも、表に出てきて貰った方がマシだ。
武力でやり合おうというのなら、少なくとも風紀委員会は、負けない」
「"特務広報部"は、敗北するだろうがね」
■紫陽花 剱菊 >
「…………」
唯、静かに、言問うのみ。
「────其れが、其方の望みか?」
■神代理央 >
「……………」
少しの沈黙。僅かに、ではあるが。
確かに、ほんの一瞬ではあるが…押し黙って。
「……流石に、部下達の敗北を率先して望む様な事はしない」
返す言葉は『特務広報部部長』としての言葉。
組織の長なら、そう言うだろうな、という様な。
そんな言葉だ。
■紫陽花 剱菊 >
「……此度は今、其方の私二人のみ」
公安として、百目や壁に耳を立てる者も居よう。
然るに、今此の瞬間はそうでは無いと言う。
人の口、とは立てられぬ。人となりとは隔離された、他愛ない一幕。
「長としてではなく、"神代 理央"個人は如何にする?」
またぞろ、言問う。
胸襟を開く砌は、互いに今しか無かろう。
察する等と無粋は言わぬ。食事を挟み、語らうと誘ったのは此方故に。
畏怖は消えぬこそ、今や日常の一幕故に男は再び光に触れ、品書きをなぞる。
■神代理央 >
「………始めた責任はある」
ぽつり、と言葉を零す。
「部下達を今更放り出す訳にもいかないだろう。
彼等は二級学生で、表で学生になる為に私の手をとって
それでも戦う術ばかりしか知らないから、私に忠誠を誓って戦っている」
此処迄は、半分が"長"の言葉であり、半分は"神代理央"の言葉だ。
もう一度吐き出す溜息は、短いが、深い。
「逆に聞くがな、紫陽花」
品書きを。ホログラフをなぞる彼に敢えて視線を向けず。
ぼんやりと中空を眺めながら、言葉を続ける。
「今更、私に何を望めというのかね?」
それが望みか、と問われれば。
そうだ、と長としては答えなければならない。
では、個人としては?
「今更だよ、紫陽花。望もうと望まぬとも。
まあ、落第街への大規模な攻撃は暫く控えるさ。
控えなくては、世間の眼というものもある」
「だが、逆に言えばそれだけだ。落第街に対しての武力としての。組織としての在り方と正義を示す者が」
「私にとっては与えられた役目だからな
」
■紫陽花 剱菊 >
「…………」
湯呑を持ち、音を立てず口を傾ける。
他人に用意された飯を、茶を啜る。なんとも不用心。
斯様な不用心さが、本来の在り様であると男は学んだ。
心の在り様を垣間見て、全てを理解する程能も無し。然れど。
「……泰平無き、滅びの行く末だ」
否応無く、脳裏には故国の戦景色が浮かんだのが言うまでも無い。
置き掛けの湯のみ、揺れる水面に映るは憂いを帯びた黒い水面。
「──────かつて、戦が在った」
静寂に語るは今や己しか知りもしない事。
「群雄割拠、誰もが泰平を夢み、各々の夢に集いし諸人。
千代に八千代、満を持せば屍の山。髑髏(しゃれこうべ)が語り草。
人の口に戸は立たぬが、死者に口など在るはずも無し」
幽世にて、誰が知ろうか。
「……一人立つは雷神のみ。天罰の如く、悉く稲光が武士(もののふ)を焼く。
悉く、戦火を広げる者を焼き払わん。戦は、ゆくりなく幕を引いた」
「泰平の世など、夢のまた夢。天より降り立ち雷神を民草は畏れ
頂門の一針、雷神もまた天に還る。……後に語られる事も無い」
兵共が夢の跡。
「治める者も無く、弱きを護る強きも無い。東西喪い、洛陽。語り部無し」
在りし日の、戦の日々。
異邦の地にて、看取られず滅びた天国(あまつくに)。
「……武力を以て治めんとする。
集いし諸人を気を汲む。然れど、将足らんとすれば、顔色を伺う等以ての外」
其れしか出来ぬ故にと鉄火を打つ。
火花散らして、地を焼く。戦に生きるが故に、痛い程理解出来る。
故に、そう。理央自身も既に申した。
「其れを是とすれば、目前に結果が見えよう」
"今更"だと誹る理央に告げしは影法師。
武力を以て一切合切に容赦を抱かず、振るい続けた末路が"目の前"に居る。
雷神は、身を以て全てを喪ったのだ。
「……然れど、学びも在った」
悪運ばかりは強かった。
あの世ばかりと新天地では武以外の生き様を学んだ。
然るに、此処は学び舎。修めんとする者の一人として、武人もまた生きる術を学んだ。
「其方の望みも、願いも、私が是非を出すべきでは無い。潮時を努々、見誤らん事だ」
如何様に言葉を並べようと、決断の刻は当人のみ。
何時其れを下すか、曇り無き眼で見定めるべきだ。
「……が、そうだな」
■紫陽花 剱菊 >
「───────私としては、事切れるのは勘弁願いたい」
戦場で相見えれば友も家族も斬るのが必定。
然れど、幽世の地はそうに非ず。
互いに積み上げたものは何とも歪で在ろう。
然るに、鑑みても生粋の縁だと剱菊は信じている。
是が切れるのは、煢然たる物寂しさ。
はにかみ笑顔は、そう語る。
■神代理央 > 【此方がリミットなので一度中断致します。続きはまた後日に!部屋は皆様気にせずご利用頂ければ幸いです】
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」から紫陽花 剱菊さんが去りました。