2021/12/01 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「扶桑百貨店 元祖本格握り寿司専門店「常世鮨」(回転寿司エリアあり)」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■神代理央 >
「……しかし、理性ある生物は必ず戦わねばならない。
大なり小なり、な。争いを否定する事は知性の否定。
さりとて積極的な肯定は理性の否定だ。それは認めよう」
彼のそんな笑顔は初めて見るな、なんてぼんやりとした思考を
巡らせながら、言葉を続ける。
頑強な理性と、善性有りきの此の世界で戦い続けてきたからこその、一種の虚無感。
「落第街に対する武力の行使。
圧倒的な理不尽。膨大な火力と武威による畏怖。
風紀委員会の『恐怖』を示す為に、特務広報部は――私は、戦い続けてきた。
"そういう"組織と、"そういう"在り方を行う者が必要だと考えたからだ。
尤も、当初の予定とは大分変わってしまったが…」
そう。本来己が求めたものは、風紀委員会内部における憲兵隊の様な役割だった。
されど紆余曲折の末に特務広報部はこういう組織になった。
まあ、それはそれで必要なものである――と、全力を尽くしてきたのだけれど。
「しかして」
そこで一度、言葉を切る。
少しばかり思案…いや、未だ悩んではいるが、決めなければならないと決断を迫られる様な――
「……特務広報部は、既に十全にその役目を果たしたとは思う。
その名が、落第街の住民に畏怖と侮蔑と恐怖を示す様にはなった、と思う。
であれば、組織の在り方……少なくとも、私個人の役割は、変わらねばならないだろうとは」
「思っているよ」
小さく肩を竦めて、苦笑い。
■紫陽花 剱菊 >
愁眉を開くば何とも弛んだ苦笑いか。
就中は、既に彼自身が幕引きの刻を理解している事。
「男児、三日会わざれば……と、言うのは二度目だな」
一度目は何時だったか。転機は幾度も成ったで在ろう。
三日所の話では済むまい。謂わば皮肉めいた真言である。
斯様に気づいたのは言い終えた時だが、詮無き事。
綯交ぜ、輩(ともがら)の旅路の節目で在る、と。
湯呑に映りし剱菊の表情や、憂い帯びたまま。
和やかな店内とははからずもまたぞろにしとど濡れそぼり陰鬱也。
つとに思うは、闘争の是非を語る事。僅かに眉を顰め、湯呑を煽る。
「……底が割れた、とは思わん。相好を崩したようには見えぬがな……」
未だ、山二合、三合か。
千尋に長し、人生の山頂。未だ己も、山頂は見えず。
腹の底から彼と笑には未だ時を得ず。
幕引きを見定めた以上、仕損じる事は罷り成らぬ。
斯様な事をいわんや、己が言う必要は無い。然るに、理央自身が良くぞ理解しているはずだ。
故に、つづがなく言問いはしない。今も尚、肺肝を崩すは理央か。
寧日は何時か。故に、問うは唯一つ。
「然るに……其れは何時だ?」
■神代理央 >
「早い方が良いだろうな」
それは確信を持った声色。
組織としての在り方。
闘争を続けてきたが故の、意志と…まあ、小賢しい事だが、政治的な判断も含まれる。
「先日の落第街の抗争で、特務広報部は或る程度…まあ、あくまで或る程度ではあるが、戦果を上げる事が出来た。
日々落第街に足を赴かずとも『特務が動く』と思わせる事が出来れば、それで十分」
と言うよりも――
「まあ、現実問題として隊員達の練度が其処まで高いとは思っていない。
妥協ラインとしては…そうだな。余り自分を過度に評価する言い方は好ましくは無いのだが。
『鉄火の支配者が動く』という事そのものが、一種の威嚇。或いは畏怖として認識される事がベストだ」
戦いに慣れぬ隊員の為に。
或いは、落第街の違反部活を武力で抑え込むために。
毎夜の様に落第街に足を運んでいたが…過剰な抑圧から、存在そのものへの畏怖へ。
「まあ、正直に言えば私もそろそろ後進に道を譲りたいのさ。
隊員の育成と、組織運営。何時までも前線に立つばかりでは、後が育たない。
火急の案件になれば、勿論現場に出る事は厭わないが…」
風紀委員としての役目は勿論放棄しない。
唯、その在り方を変えようと言うだけ。
「ゆくゆくは、ラムレイ先輩の様な立ち位置にと思うが…。
私に彼女程の人徳と、誰かを育てるという事への適正があるとは思わない。
彼女よりももう少し、組織の側に寄り添った立場になりたいものだな」
公安の彼なら、レイチェル・ラムレイの名を出せば容易に例えとして理解しやすいだろうか、との言葉。
彼女よりはもう少し軍務官僚の様なポジションになるだろう、と付け加えつつ。
「……まあ、何より」
「"私"の能力は、本来風紀委員としてはらしからぬものだからな。
何時までも落第街を焼いていては、風紀委員会への評判も正直…まあ、今更ではあるが。
だが、ある程度落第街に組織的な動きが無く、特務広報部も休養に入っている今が、チャンスではないかと思ってな」
つまりは、最初の言葉通り。
実行に移すのは、早い方が良い。
後は、その切っ掛け形なんなりを早めに作らなければならないだろうが。
何て、一通り言葉を紡ぎ終えると。
此方はデザートを選ぼうとホログラムに指を這わせる。
そろそろ、甘いものが食べたいのだ。
■紫陽花 剱菊 >
「時は定まらず、か」
汀が早きに越した事は無い。むべなるかな。
みだりに身を摘まむ様な立場でも無し。
いわんや、行き方には時が必要と心得ている以上、口出しは不要だった。
熱い茶を、また喉に流し込む。芯を包む熱が、心地良い。
そろそろ湯呑の底も見えてきた。寿司も既に、腹の中。
「然るに、肝要なのは……"贖罪"で在ろう」
闘争の是非は問わずとも、矢面立てば業を背負う。
戦場に身を置けば穴二つ。けだし、呪いと相違無し。
如何なるものかと言われれば、厄介事故一度立たねば分かるまい。
故に、元来分からなくても良き事。無用の業で在る。
戦場とは切っても切れぬ、双肩に掛かる重量。
一度意識すれば否応無しに潰れかねない。
事実、一入思ってしまった。斯様の騒動の終わりに、墓地で泣いた。
おしなべて、昨日の事の様に思える事だ。
堆い斯様な重みは、墓まで持ち込まねばならぬもの。
但し、清算せねば成らぬもの。
いとど、そうで無ければ居住まいを正す等以ての外。
「鉄火の支配者、聞きしに勝る悪名の高さ。
……私が其れを糾弾出来る立場には非ず。咎を受けた身とは、言い難い」
「然れど、必定で在る。其方は、是を如何とする?」
戦場で多くを斬り、故国を追われ流刑にて。
二度と戻れぬのが贖罪成れば、とはさやかに思う。
然れど、"其の程度"で済まされるべきでは無い。
己も、彼も。何れ咎を受けるべき立場也。
けだし、其れは彼のが早いのでは無いか、と剱菊は思う。
「斯様、生(な)さぬ仲では在る。戦場で刃を向ける時間のが多い。
然れど……、……──────……」
一拍、一呼吸。
はにかみ笑顔に渦巻く感情は十色の混色。
最早会う事も無き、斬り捨てた者の字名。
「……折節思うが、兄弟には斯様な関係も在り得たのか、と」
即ち、斯様な思い方をすることもあった、と。
故に、必定足る是ばかりは清算させねばなるまいと口煩くなるものだ。
■神代理央 >
「私が贖罪したとして。罪を認め、悲嘆と後悔の涙に噎び泣いたとして」
男の言葉に、緩く唇が弧を描く。
穏やかに微笑む様は、少女の様であり。
或いは、年頃の少年の様であり。
或いは、擦り切れた兵士のソレであり。
或いは、老練な政治家の様な笑み。
「"私"には悪名が必要なのさ。風紀委員会にではなく『鉄火の支配者』には悪名が必要だ。
風紀委員会の善性を否定し、無益な殺戮を繰り返し、多くのモノと者を焼き払った。
それは最早、振り払い難いものだ。その悪名と罪過そのものが、畏怖へと繋がるものになる」
自分と歳の近い者を焼いた。
自分の兄姉の様な年齢の者を踏み潰した。
自分の両親の様な年齢の者はもう何人殺したか覚えていない。
自分より幼い子供も、当然、手にかけた。
「だから、紫陽花。努々忘れるな。
戦争を導く者に、謝罪と贖罪の機会など与えられてはならない。
その覚悟も無いのに、戦を世に振りまくなど有り得ない。
戦場に立つ兵士には、それが許される。
だが"支配者"にはそれは許されない。
絶対に。絶対にだ」
多くの者の人生を狂わせ、奪い、焼き払っておいて。
"それを後悔しています。ごめんなさい"などと。
誰が許すだろうか。『許される』という事そのものが、憎悪の対象にすらなりかねないと言うのに。
「憎悪の末に。感情の儘に。私を害しようとする事は仕方のないことだ。
それは、受け入れよう。その選択は、選んだ者の自由意思であるからな。
それだけだ。私の最大の咎は、それを咎と思わぬ事だ。
風紀委員会は善性のもので、人々と触れ合う風紀委員は、落第街の者にも寄り添う」
注文の品を決めて、虚空を指先で叩く。
青白く光るホログラムが、一瞬瞬いた後に消えて。
二人の間を遮るものは、何も無い。
「だが、私は違う。風紀委員会の暴力性は"今のところは"私一人が保証する。
指示を出し、引き金を引かせ、刃を振るう様に命じたのは私だ。
駒を動かしたのは私。であれば、私を憎悪する事を止めさせる等もっての他」
「故に、私は君臨する。落第街の憎悪の象徴として。
畏怖の象徴として。復讐の案山子として。
私はずっと、そうあれかしと」
注文の品が届く。
季節のフルーツが色鮮やかに盛られたフルーツパフェ。
それを一瞥した後、彼の言葉を耳にすれば。
浮かべた笑みが、少しだけ幼くなる。
「兄弟、か。可笑しな事を言う。
有り得ないさ。紫陽花。私とお前は、どのみち戦場からは離れられない。
どんな出会い方をしたとしても、必ず一度は刃を向け合っただろう。
だから、今のままで良いじゃないか。こうやって、偶に食事を共にするくらい。それだけ。
それ以上、私に深入りするものじゃないさ。お前には、お前の『日常』があるのだから」
■紫陽花 剱菊 >
静寂に首を横に振るう。
黒絃が揺れ、静かな眼差しは唯、幾許か冷やかなもの。
「───────勘違いをするな」
凛然とした声音が空に浸透す。
「即ち、区切りで在る。鉄火の支配者が畏怖されるのは
今の暴君合ってこそ。名にしおうも、矩を踰えれば崩すのは容易」
「烏合の衆で在る」
後顧の憂い等と宣う等、悪名等と片腹痛し。
彼が何を言わんとしても、特務広告部等支配者を抜きとすれば烏合の衆。
練達の差では無し。一重に"神代 理央"に依存し過ぎたと見る。
燃え広がる鉄火の打ち手。賊への威嚇には十二分、過度が過ぎる程に。
故に、一定の効果を成した。行く行く退くべきでは在ろう。
後続を育てると謂うが、頭目無ければ何れ虚仮脅しだと暴かれる。
いわんや、さやかに言えば今迄の"反動"が、堆く積み上げた彼の咎が、雪崩と成ろう。
一度燃え広がれば、草分け失くして火は広がる。
何れ、"風紀"という名目が火を放つお題目と成り得よう。
大袈裟では無い。戦場で、必要以上に火を広げれば如何様かは互いに骨身に染みている。
然るに、当人が"今の所"と言うのだ。理解はしていよう。
「支配者等と宣えど、所詮人。首を飛ばせば民草と変わらぬ。
其方こそ、自惚れが過ぎるのでは無いか?」
余りにも尊大で、大それた物言いだ。
斯様な在り様を望む、ある種の脅迫概念めいたものか。
推し量るべき胸中はよもや、己が思うよりも歪に闇が蠢くか。
然れど、如何にして憎まれ役を受けおうとも、最早其れも限界と見る。
積もり積もった雪の果て。頃合いで在る。底に残った茶を、一気に飲み下す。
「然り。申せば柄でも無い事は百も承知。……"故にだ"、理央」
湯呑を置き、視線を戻す。
「互いに死線を交えし鉄火の支配者。
其方の戦の在り様を理解している。己惚れるので在れば、良く"理解した心算"だ」
思想に力。交錯の故に理解しえたものもある。
傍から見れば実に奇妙な関係なのやもしれない。
故に、然るに、今、言葉を交わさずして如何とするのか。
「……"頃合い"だ、理央。"もう良い"では無いか。
噎び泣き、懇願しろと迄は言わぬ。然れど、是以上は見るに堪えぬ」
「───────申したはずだ。三度目は無い、と」
故に、贖罪。
故に、清算。
故に、停滞。
たまさかの機会故に、つとに思いし事は此処で述べる。
常しえに変わらぬものなど、在りはしない。
刃より人に、大成せし男は言う。此処で居住まいを変えねば成らぬ、と。
───────故に、是以上は鉄火場にて。責務を果たすのみと成ろう。
湯呑を手放し、つづがなく申す男の言葉に嘘は無い。
如何なる立場成れど、慄き悲しみはすれど、感傷を抱かず斬る事が出来る。
斯様な世界で生まれた故の常識。故に、異邦人で在る、と。