2022/03/10 のログ
セレネ > 「…?」

それはどういう事かと聞こうと思ったが、
自嘲するような息を洩らす彼女にそんな無粋な事を聞くのは憚られた。

「オーダーメイドなのですね。それはお金がかかりそうな…。」

市販品ではなくきちんと自分用にオーダーしているとは。
感心するように蒼を瞬かせる。
彼女との話は知らない事ばかりで、驚く事ばかり。
会ったばかりだが、そんな印象を受けた。

「…では椎苗ちゃんと。
――ピンぼけ女神…。」

女神、との言葉には一瞬浮かべていた表情を固まらせるが、
努めてそれを隠そうと。
渾名にしてはなかなかなもので、何故そんなあだ名をつけたのか気になってしまう。

「あ、えぇ。有難う御座います。」

屈んでいた身を起こせば、彼女の後ろについて歩いて行くとしよう。

神樹椎苗 >  
「しいくらいになると、好みのデザインを見つけてもサイズがねーのですよ。
 まあ金ならいくらでもありますし、使わないのも無駄ですからね」

 経済に貢献しているので、妙に偉そうである。

「ここに入ってる店ですと、TOKO-ALICEが無難ですかね。
 色んな種類がありますから、見てて飽きねーと思いますよ」

 そう言いながら、案内していけば――。

 辿り着いたのは、フリルの海。
 『T.ALICE』と書かれた看板の下には、フリルやレース、リボンがふんだんに使われた衣服が並んでいる。
 まさに、見るからに『女の子』が一度は憧れたような『可愛い』を詰め合わせたような世界が広がっている。
 

セレネ > 「あー、そのお気持ち分かります。
可愛いデザインの物があってもサイズが合わなくて泣く泣く諦めるのってありますよね。」

細身に作られているものとか、己は胸元等の関係で着るのが難しい。
お金ならいくらでもあると聞くとお金持ちの子なのかなと思いつつ。

「へぇ。それは楽しそうですね。」

彼女の説明を聞きながらついて行った先に見えた光景。
一瞬で見て分かる、可愛い世界。
己が幼い頃に着てた衣服でも、ここまでふんだんにあしらわれた衣服は持ってなかった。

「貴女はどういったデザインのものがお好きなのです?」

娘に似合うかしら…なんて、もう顔も見られない義理の娘に想いを
馳せながら傍に居るであろう彼女に問いかけた。

神樹椎苗 >  
「しいの好みですか?
 そうですね――しいみたいに非の打ちどころのかけらもない完全無欠の美少女となれば、それこそなにを着ても服が合わせて来るようなもんですが」

 どこまでも自分を持ち上げていく。
 背は小さいくせに、視点があまりにも上からである。

「まあしいの美少女さを引き立てられるようなデザインが大前提ですね。
 あとは、ある程度手足が隠せる方が好ましいですけど、ミニも嫌いじゃねーです」

 椎苗自身はまるで気にしていないのだが、他人からの視線はどうしても集まってしまうのだ。
 それはあまり好ましい事ではないのである。

「そこさえ押さえてれば、カジュアルもクラシカルも、ゴシックもそれなりに着ますね。
 最近は民族衣装や軍服、制服なんかをアレンジした者も流行ってますが、そっちは気が向いたらって感じですね」

 なんて言いながら、フリルの海へと入っていってしまう。
 右も左もフリルやリボン。
 モノによってはかなり際どいミニのデザインもあったりで、バリエーションが豊富だ。
 

セレネ > 「貴女のように自分に自信がある方って羨ましいですね…。」

彼女より身長は高いのに、視点は彼女より下な己。
謙遜を通り越して卑下にもなり得る自信の無さは自覚してはいるのだけど。

「私もあまり肌を晒す衣服は好みではないですね…。
少なくとも外には着て行かないです。肌が焼けてしまいますので。」

手足が隠せる方が、との言葉には納得。
包帯や怪我の跡を堂々と晒して歩ける程、人は目立つ人物に対して無関心ではない。

「ロリータ服も色々と種類があるのですね。
椎苗ちゃんのような可愛らしい子には、色々と着せ替えてしまいそうです。」

着せ替え人形、と言ってしまうと失礼だろうけど。
目の前の少女には何が似合うだろうか。あれそれ考えるのも楽しいものだ。
なんて思っていればスルスルと進んでいく彼女の小さな背を追いかけて。
少し視線を外せば消えて行ってしまいそうな程の海。

自然と保護者の目線になってしまう。

神樹椎苗 >  
「お前は自信がなくて嫌味ですね。
 お前の『サイズが合わない』は、大抵の女には喧嘩売ってると思われますよ」

 等身大の自信は最低限合った方が、生きていく上でやりやすいのである。
 もちろん、自信があり過ぎてもトラブルに事欠かなくなるのだが。

「ああ、お前くらい白いと日焼けはしやすいでしょうね。
 すぐ腫れて痛くなっちまうじゃねーですか?」

 白い肌はメラニン色素が足りない分、太陽光に弱いのだ。
 黒くならずに赤く腫れてしまうのである。

「着せ変えてもらえるなら、しいとしては楽でいいですね。
 自分で着替えるには、それなりに手間が掛かりますし」

 なんてことない世間話のように話しているが。
 椎苗の動きを眺めていれば、すぐに気づけるだろう。
 椎苗は右腕をこれまで、一切動かしていないのである。
 それがなんらかの理由で動かないのだと察するのは、聡明な貴女であれば容易だろう。

「ふむ、色々選んでもいいですが――どうせなら、お前も着て見たらどうですか。
 普段、こういった服は選びもしないんじゃねーですか?」

 と、すでに幾つか選びはじめている。
 

セレネ > 「謙遜も度が過ぎると嫌味になるとは言いますが…。
いや、だって、その、本当にサイズが合わないんですよ…!」

隣の芝は青い。
自分に持っていないものが他者に多く見えて、羨ましいと感じて。
自分自身の事をよく見れていないのだ。
それにしてもこの子は随分と物怖じせず意見を言う子だと感じる。

「そうそう、そうなのです。
だから日中外に出る時は日焼け止めと日傘は欠かせなくって。」

春の陽気でさえ己には毒だ。
色素が薄い分と、月の女神としての気質もあるが。

「……もし試着したいとか、あれば言って下さいね。
お手伝いしますよ。」

先程己が悩んでいたライダースを指した手も左手だった。
てっきり左利きなのかと思っていたが、
先程から観察しているとどうやらそうではないらしい事が何となく察せられて。
蒼を細めてはそれだけ言葉を掛ける。

「――え。私ですか?
まぁ…そういった服を着るのもかなり久し振りですが…。」

まさかの言葉に蒼を瞬かせながら、ちょっと複雑な表情。
嫌な訳ではないが、今でも似合うかどうかが分からないもので。

神樹椎苗 >  
「はいはい、デカくていいですね。
 しいには永劫縁のない悩みですよ」

 やれやれ、とばかりに肩を竦める。
 物怖じしないどころか、無礼紙一重だ。

「良い日焼け止め知ってますよ。
 スキンケアと両立できるいい代物です」

 これでもドラッグストアの超が付く常連である。
 量販店にあるような商品は大抵の物は把握しているのだ。

「そうです、お前です。
 服と化粧は女の武器と鎧ですよ。
 装備を変えれば、気分も変わります。
 いつもの自分と、別人になってみたくはねーですか?」

 なんて、一着のシルクのフリルとレースで彩られた、愛らしいデザインの服を見せて見る。
 

セレネ > 「大きいのも大変なんですって…!」

小さいのも悩みがあるし、大きいのも悩みがあるし。
程々の体系が良いと思うが、そういった人々にも悩みはある物なのだろう。
永劫縁のない、との言葉と、先程の大きくなれればとの言葉。
何だか引っかかって少し思考を巡らせる。
――そうか、彼女は。

「本当ですか?…私の肌にも合えば良いのですけど。」

日焼け止めにも相性があり、己は肌が弱い性質。
だから良さそうな化粧品でも合わないものが多いのだ。
乙女の悩みどころ。

「……。」

選ばれた衣服は、一着の可愛らしいデザイン。
彼女が着たとして、それは非常に似合うものだと思う。
だが、己が着るのなら?

「…私に似合うと、思います?」

踏み込みきれず、小さな少女に問いかけてしまった。

神樹椎苗 >  
「嫌味にしか聞こえねえのが、いっそ不憫ですね。
 ええ、後で面倒見のいい店教えてやりますから、行ってみると良いですよ」

 もっと深刻であれば医師処方を勧める所だが、幸いそこまでではなさそうだ。
 もしそうなら、今度は腕のいい皮膚科を紹介しなくてはいけない。
 もちろん、そういった医師のアテもあるのだが。

「――ふむ」

 そして返されるのは問い。
 ほんの少しだけ考える素振りを見せはするが――

「むしろ、なんで似合わないと思うんですか?」

 問いには問いで返してやろうと、意地の悪さが発揮されるのだった。
 

セレネ > 「事実なのに…。あ、有難う御座います…。」

元の世界では医者ではあったものの、外科専門だったので。
肌に関してはその専門の医者に聞いた方が早い。
今の所は他の専門医の世話になる程ではないから大丈夫だと思うが、
何かあれば彼女に頼る事もあるかもしれない。

「――え、」

返された問いに、一瞬言葉を失った。
何故似合わないと思うのか。それは。

「…その。
もうそういう服を着るような歳ではない、というか。
体型も考えるとロリータ服を着るにはアンバランスかなーとか…。」

しどろもどろな答えを彼女に。

神樹椎苗 >   
「気に入った服を着るのに、年齢制限なんかねーですよ。
 何歳でも、何歳になっても、女が服を着るのはてめーのためなんですから」

 誰に憚る必要なんてないのだ。
 あるのは自分がどうしたいか、その意思のみ。

「服だけじゃねーです、自分を飾るモノを前にして悩む事なんて一つですよ。
 着たいか、着たくないか。
 それだけです」

 なんて、極端にシンプルに話をまとめてしまう。
 けれどある意味では、それも一つの真理なのかもしれない。

「それで、どうなんですか?」

 着たいのか、着たくないのか。
 お前はどうしたいのか、と再び問いかけるのだ。
 

セレネ > 「…それは、確かにそう、ですね。
服を着るのは自分の為、ですが。…好きな人の為に着る服もあると思うのです。」

少女に好きな人が居るかは分からないけれど。
苦笑を浮かべながら、そう答える。

「やるかやらないか…そう、その通りですね。
ただそれだけなのですけれど、人によってはどうしても躊躇してしまって。
…服装以外なら決められるんですけどねー。」

彼女の言う事は尤もで、己自身もそうだと思う。
そうして、どうなのかと聞く問いかけに。

「……着て、みます。」

心から拒絶する訳じゃないし、世辞を言わない彼女が選んでくれたものならば。
それに、何事も経験なのだし。
答える言葉は、弱々しいものだったかもしれないけれど。

神樹椎苗 >  
「好きな相手のためだって、自分のためにはちげーねえですよ。
 ――ああ、勝負下着選びの方が楽しめますか?」

 椎苗にも好きな相手――恋人のような相手はいるものの。
 その相手を悦ばせたいのも、よく見られたいのも、結局は自分のためだった。

「――そうですか。
 挑戦は良い事です――安心するといいですよ。
 お前は間違いなく、服の方が合わせるタイプですから」

 そう言いながら、彼女に選んだ服を差し出す。
 彼女の白さを軸に据えて、神秘的な雰囲気を壊さないような淡い空色のフリルワンピースだ。
 

セレネ > 「……いや、その、うん。
自分が一生懸命選んだ衣服でも、それこそ下着でも、
相手が何とも思わないと悲しいですよね…。」

好きな相手に良く見られたいから似合う衣服を選ぶ訳で。
確かにそれは、彼女の言う通り自分の為だ。
明け透けな言い方の少女には恥ずかしさで此方がやや顔を赤らめる。
勝負下着だなんて言葉をどこで覚えてきたのだ。

「えぇ、父もそう言っておりました。
何事も挑戦する事が自分の持てる手札にも繋がると。
椎苗ちゃんは何というか、良くも悪くも素直な子ですね。」

差し出された衣服を受け取ると、しげしげとそれを眺めてから。
試着室を探し、そこに入って着てみるとしよう。

「…ワンピースは着慣れてはいますけど、このフリルはなかなか…。」

試着室内で着替え終わった己は、両手を軽く挙げたり背中を見たりしてやや忙しない。

神樹椎苗 >  
「お前みたいなのが、下着や服に気合入れてんのに何とも思わねーとしたら。
 それは男の方がおかしいですね。
 性的嗜好が人間と違うか、不能か――タマが付いてたらありえねーです」

 明け透けどころじゃない物言いである。
 語彙が別の意味で壊滅的だった。

「しいは正直なだけです。
 素直というには、しいは少し性格が悪すぎますね」

 自覚はあるらしい。
 そして試着室に入っていく彼女を見送り――

「どうですか?
 普段と違う自分になった気分は」

 試着室の外から、そんな風に声を掛ける。
 

セレネ > どうしよう、この子己が知る限りの同年代の子より遥かにお口が宜しくない。
同じくらいの義娘を持つ親としては、唖然とするしかないものだが。
けれどももし、彼女が見目よりも長く生きているのならそうなるのも仕方ないのか。

そうして、彼女自身性格が良くないという自覚はあるようで。
自覚はあっても治らない、治そうとしないのは、己も同じだからとやかくは言えない。

「――何というか。こそばゆいような、気持ちです。」

試着室のカーテンを、顔だけ見えるようにズラして。
少し躊躇した後に、折角選んでくれた彼女に見せないのもと思い
スススと静かにカーテンを開けていくだろう。

「…どう、でしょうか。」

月色の髪と、白い肌と。フリルがあしらわれた可愛らしい淡い空色ロリータ服。
両手を前できちんと揃えては、彼女の正直な感想を待ってみよう。

神樹椎苗 >  
 そっと開かれたカーテン。
 そこには、どこか自信なさげに立ち言葉を待つ姿。
 その佇まいがまた、主張が強すぎない服に相まって、愛らしさが強調されるのだが。

「ふむ」

 上から下まで、じろじろと舐め回すように観察して。
 少し待たせ過ぎるくらいたっぷりと間をおいてから――

「120点って、とこですかね。
 100点満点で」

 むぅ、としかめっ面になりつつ、真っ正直に高得点をだすのだった。

「似合う似合わないで言えば、予想通り服の方がお前に合わせてます。
 着慣れてなさが見て取れますが、それもまたいいもんです。
 どこぞの、ご令嬢と言っても通りますね。
 奥ゆかしい女、から、愛らしい少女にジョブチェンジと言った所でしょうか」

 やはりむぅ、と唸りつつも高評価である。
 先ほどまでのお姉さんらしさをひっくり返したように、それまで見えてこなかった愛らしさが前面に押し出されているようだった。
 

セレネ > 彼女がじろじろと己を眺める。頭の先から爪先まで、しっかりたっぷりと。
己は少女の言葉を待つ間気が気じゃなく、蒼が少し泳いで。

「凄い高得点ですね…?!」

着慣れ無さもあるだろうし、どうなのだろうかと思っていたが
想像以上の高得点に口元を片手で覆う。
彼女の顔が随分と渋いのが少し気になる所ではあるが。

「そう……なの、ですね。有難う御座います。
でもこれは、選んだ貴女のお陰でもありますから。」

人の衣服を選ぶのもセンスが重要だ。
己に似合いそうな服を選んだ彼女の手腕も大いにある筈。
あまりに褒めるものだから気恥ずかしそうに手で顔を隠したりして。

「折角の可愛らしいお顔なのに、そんな表情だと勿体ないですよ?」

再び身を屈め、目線を合わせては機嫌を取るような言葉を投げかけてみよう。

神樹椎苗 >  
「当然です、しいの目は節穴じゃねーですから。
 ですが、素材がよくねーと成立しねえんです。
 まったくこれだから美女ってやつは得なんですよ」

 はぁ~、と大きなため息。
 彼女が屈んで視線を合わせてくれば、なおさらむすっとした表情になるだろう。

「ええい、だからお前が言うと嫌味にしかならねーんです。
 自覚しやがれってんです」

 左手の人差し指を、彼女の頬に押し付ける。
 肌艶にハリに文句なし。
 パーフェクトだった。

「――お前、しいは今、非常にむかついてます。
 責任取って、着せ替え人形になりやがれです。
 お前の姿、片っ端から写真に収めてやりますから、覚悟しやがれです」

 そう言って、左手をひっこめると、早速不意打ち気味に、携帯端末のカメラを彼女に向けた。
 

セレネ > 「椎苗ちゃんも可愛いのですから
今この場においてはお互い様みたいなものじゃないですか。」

可愛い子から綺麗って褒められるとなんだか落ち着かない。
いや常時己の見目等褒められるのは落ち着かないのだけど。
己が屈んだ事により少女のむすくれ度は増してしまったようだ。

「あうぅ…本当ですのにー。」

ぷに、と小さな指が己の頬に。
スキンケアもヘアケアも毎日欠かさずしているので、ツヤもハリも問題ない。
仕返しと言わんばかり彼女の頭に手を伸ばして、
嫌がらないのならそっと優しく撫でようと試み。

「――えっ?」

取り出された携帯。
着せ替えされるのはどうやら己のようだ。
蒼を丸くし、驚くが、拒絶する事はしない。
彼女の気が済むまで今一度の着せ替え人形になってあげよう。

「…構いませんが、撮ったお写真は拡散しないで下さいね…?」

神樹椎苗 >  
「しいが可愛いのは当然です。
 でもそれはそれだってんですよ」

 理不尽である。
 理不尽の権化である。

「そんなつまらねー事はしねーですよ。
 価値のわからない有象無象に見せるには、勿体ねえもんですからね」

 彼女に大人しく撫でられながら、シャッター音を鳴らす。
 自分を撫でている、フリルに彩られた美女――『美少女』の姿をしっかりと収める。
 そして、ほどなく彼女の携帯端末が画像データを受信する事だろう。
 どうして連絡先を知っているのか――もちろんハッキングしたわけなのだが――これもまた理不尽である。

「――さ、そうと決まれば物色しますよ『ピンぼけ女神』。
 たっぷり可愛がってやりますからね」

 むふー、と妙な気合の入り様。
 小さな理不尽は、表情とは裏腹にどうやらご機嫌なようだった。
 

セレネ > 「うーん…?」

小さな体に大きな理不尽。
でも子どもってそういうものだから。
そんな事で怒る程己は短気ではない。
優し過ぎる可能性もあるが、彼女は何だか憎めない。
言葉は確かに辛辣ではあるのだけど、
己の良さを己自身に伝えようとしている気持ちが伝わってくるからだろうか。
それとも単純に、彼女が可愛らしいからだろうか。

「その言葉を聞いて安心しました…。」

プライバシーは守られるそう。
良かったと思えば、カシャリとシャッター音が鳴らされ己の姿を撮られてしまう。
だが教えていない筈のアドレスに今撮った写真が送られてきて再度驚いた。

「……どうして私のアドレスを…?
名前では呼んでくれないのですね…因みに何故そんな渾名なのです?」

言ってくれれば交換したのに、と。
後でお礼に愛猫の写真でも送ろうかしら、などと思いながら
気合が入っている彼女を微笑ましく眺めるだろう。

小さな理不尽さんに色々なロリータ服を着せ替えさせられ、
彼女が満足するまで大人しく付き合う事となるのは、これから暫くのお話。

神樹椎苗 >  
 子供にしてはどこか、それとも全部か、ズレてしまっているかもしれないが。
 『どうして』と聞かれれば、ふん、と鼻を鳴らして答えるだろう。

「また、暇つぶしがしたくなった時に、連絡がとれねーと面倒じゃねーですか」

 違う、そうじゃない。

「しいが、他人を名前で呼びかける事はありません。
 あだ名は、そうですね――直感ですかね」

 呼びたいと思ったように呼ぶ。
 それが椎苗のあだ名命名法則である。
 つまり、直感100%なのだ。

「ようし、お前に新たな扉を開かせてやります。
 帰るころには、フリルが無いと物足りない体にしてやりますからね」

 などと恐ろしい事をのたまいつつ。
 終始、上機嫌で彼女に遊んでもらう事だろう。

 ――後日、大量の写真が彼女の端末に送られる事になるのだが。
 そこにいつの間に取ったのか、と言うようなきわどい写真までが含まれているのはご愛嬌、という事で。
 

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」からセレネさんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」から神樹椎苗さんが去りました。