2022/07/26 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 久延毘古書房(9F)」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
常世島内で随一の蔵書量を誇る書店、久延毘古書房。
島を訪れて間もない頃、久延毘/古書房と勘違いして
古書店街の方が大規模なのでは? と思っていたのも
今となっては笑い話。
「1フロア丸々書店って、広過ぎだろ……」
黛薫、2年生。不登校期間を含め5年近く在学して
おきながら、久延毘古書房を訪れたのは今日が初。
というのも、新書を購入する用事があったのは
入学当初の教科書類くらい。その頃はまだ此処を
古本屋だと誤解していたから、必要なものは全て
学生街で揃えてしまった。
以降は落第街に身を落として暮らしていたし、
本が欲しくても古書店街に足を伸ばす程度。
■黛 薫 >
そんな彼女が今更書店を訪れた理由は簡単、
復学して授業を受けられるようになったから。
もう少し踏み込んだ理由に触れると、復学した
時期が中途半端だったから。前期の授業日程が
終盤に差し掛かってやっとで学生証の再発行が
許可されたのだった。
当然正規の日程で期末試験を受けるには間に合わず、
夏季休暇期間中に理解度を示すレポートを仕上げて
その成果次第で単位を認めるという形に落ち着いた。
今日の目的はレポートのための参考書を揃えること。
この時期はテスト準備をするには遅く、新学期の
準備をするには早い。あわよくば書店が混雑する
後期の履修登録期間に先駆けて、後期受講予定の
授業の教科書も揃えておきたいところ。
■黛 薫 >
……と、意気込みを語るだけなら簡単なのだが。
「いぁ、広っっろ……」
ふらりと数回本棚の角を曲がっただけで方向を
見失ってしまいそうな本の海。検索システムに
頼らなければ目的の本に辿り着くことさえ難しい。
本屋で迷子になるなんて比喩か冗談だろうと
甘く見ていたが、既に帰り道すら怪しい。
「えっと? 高等数学基礎があっち、数理論理学が
向こう。計算機システム概論、アルゴリズム論は
こっちで、回路設計序論が……全然違ぅ方じゃん。
先にそっち行っとくべきだったか?
ナノテクノロジー基礎、もこっちじゃなぃし。
機械工学、魔導工学は真逆? てか遠ぃな……。
あぁもぅ、この辺は最悪後期入ってからでも
イィや。せめて学術的魔術基礎の参考書だけは
確保しなきゃ、方向……全然違ぇーし……」
■黛 薫 >
やっとのことで目的の本がある区画に辿り着いた。
あとは目的の本を籠に入れて次の本を探しに……。
「1ジャンルだけでこの広さあんのかぁ……」
感覚的に近そうなジャンルなのに検索システムは
別の方向を示す。よもやこの規模の書店なのに
ジャンル別の管理が行き届いていないのでは、と
邪推さえしたが、そうではなかった。
細分化した1ジャンルですら区画1つを占めるに
十分な蔵書量がある。同じ区画にあるのは同じ
ジャンルであり、近いジャンルはまた別の区画を
埋めてしまっている。
検索システム無しでは目的の本に出会えない訳だ、
と疲れ気味のため息を漏らしながら周囲を見渡す。
先生が挙げた参考書は比較的簡単に見つかったが、
棚の高いところにあって手が届かない。
(踏み台……流石にあるよな? この本の量だし)
ご案内:「扶桑百貨店 久延毘古書房(9F)」に紅李華さんが現れました。
■紅李華 >
「――好一朵茉莉花~♪
好一朵茉莉花~♪」
がらごろ、がらごろ。
今日は好きな本を買っていい日!
あれもー、これもー、あの本もー――
「滿園花開――?」
あれ、なんだかきょろきょろしてる人がいるー?
どうしたのかな。
「你好ー?
どうしたの、なにかさがしものー?」
がらごろしながら、声をかけてみよー!
なにかおてつだいできるかなぁ?
――鼻歌を歌い、大きなカートに本を満載しながら、がらがらと音を立てて、やってくる。
周囲を見渡して視線を泳がせているあなたに、不思議そうな顔をして声を掛けた。
■黛 薫 >
「えぁっ……こ、んばん、ニーハオ?」
落ち着かなさげに周囲を見渡していた女子学生。
声をかけられるとは思っていなかったのだろう、
やや上ずった声で挨拶が返ってきた。
近づいてみれば目線の高さは近く……と言っても
長い前髪と目深に被った耳付きフードの所為で
視線は隠れ気味。中国語を挨拶だと理解した辺り、
異世界人ではなくこの世界の住民だろうか。
もっとも、挨拶の発音はネイティブには程遠い。
それこそ中国語は挨拶しか知らないくらいだろう。
貴女が口ずさんでいた民謡が如何に有名であっても
意味すら理解出来ていないレベル。
「探し物、いぁ、それは見つかって……ます、けぉ。
ただ、ちょっと場所が……高ぃトコにあって」
突如現れた女性と傍らの本棚を交互に見やる。
身長的には大差ないし、助けてもらうのは無理が
あるだろうな……と失礼な思考が浮かびかけて、
慌てて頭の中から追いやった。
■紅李華 >
「你好!」
にっこり。
おかおが見えないけど、きっとかわいーおんなのこだ。
がくせーさんかな?
「嗯――踏み台、いるー?
これでたりるかなー?」
がこん。
くるまから、踏み台をおろしてみる。
――カートに付属していた踏み台を降ろす。
スライドさせて二段になる構造で、30cm程度が二段で60cm程度の底上げ。
さて、目当ての本まで高さは足りるだろうか。
■黛 薫 >
「えっ、なんっ、あー……」
どうしてカートに踏み台を乗せているのか、と
疑問に思った様子。互いの身長を鑑みれば自ずと
答えは出るので、質問より先に納得の声が出た。
踏み台に足をかけ、何かに気付いて一旦降りる。
「あの、ありがとでした。助かりました」
一度用事を中断してまで感謝の言葉を優先する。
礼儀正しいのか、それとも神経質なだけなのか。
ともあれ貸してもらった踏み台のお陰でめでたく
高さは足りた。手に持っている本のタイトルは
『学術と神秘 〜魔術が持つ2面性について〜』。
学問としての魔法、魔術に携わる講義では度々
参考書として指定される本だ。
「……本、お好きなんすか」
彼女の買い物カゴの中身は未だその本1冊だけ。
対照的に山と積まれた貴女のカートに驚いたのか、
問いか感想かも曖昧な言葉がぽつり。
■紅李華 >
「おー、おー?」
あれ、降りちゃった。
どうしたのかな?
「――!
没有没有!」
えへー、お礼いわれちゃった。
ちゃんとヒトダスケできたかな。
嗯――『学術と神秘』?
お勉強の本かな。
「おー?
对对!
すきだよー!
きょうはねー、好きな本、お買い物していー日なの!
だからね、いっぱいいっぱい買うんだー」
――女の子のぽつりと零した言葉に、目をキラキラと輝かせながら、明るく楽しそうに答える。
袖余りの白衣を身振り手振りするたびに、頭の花がゆらゆらゆれてほんのりと甘い匂いを漂わせるだろう。
■黛 薫 >
「あぁ、なるほど。そーゆー日……」
目一杯散財して好きな物を堪能する。
そんな1日の悦楽には覚えがあるらしく、
すんなりと納得してくれたようだった。
踏み台を上り下りする際に髪が目に入ったのか、
手櫛で整える。袖が降りるまでの短い時間だが、
隠れっぱなしだった少女の表情が垣間見えた。
緊張と恐縮が入り混じったような内気な表情、
落ち着かなさげに動く蒼い右目は同様によく動く
貴女の袖の動きに引かれ、頭上の花へ視線を移す。
対照的に、複雑な色合いの左目は微動だにしない。
「その、花は? あ、いぁ、嫌なら答ぇなくても」
普段なら黙っていたかもしれないが、楽しげな
笑顔を浮かべる相手につられてつい口が緩んだ。
対する少女は陰気とさえ言える真逆の様相。
敢えて似ているところを挙げるなら、やや大きめ
サイズで指先が覗く程度に余ったパーカーの袖は
お揃いと言えるかもしれない。
或いは、もし。魔力や精気を糧に出来る体質なら、
纏う空気に花の香とは異なる蟲惑を感じ取れたかも
しれないけれど……それは個人差によるところ。
■紅李華 >
「对!
そーゆーひなんだよー」
ちょっとだけおんなのこのお顔がみえた!
うん、やっぱりとってもかわいい子だね!
「あう、嗯――おともだち?
你はお花はすきー?」
ちょっと近づいてー、お顔をのぞき込んじゃおー。
嫌がられちゃうかなー?
――気安い様子で数歩近づき、首を傾げて上目遣いに少女の顔を覗きこもうとするだろう。
近づけば余計に、頭に咲く大きな花が目立つ。
ついでに言えば、その花に負けないくらい丸く作られたお団子髪も目立つが。
とても重そうな頭に見えるだろう。
■黛 薫 >
漂う甘い香りから察するに、頭の上に咲いた花は
造花やアクセサリではない生花らしい。常世島には
色々な種族の学生がいるし、もしかしたら身体の
一部なのかも……と、深読みしてみたり。
『おともだち』という表現をそのまま捉えるなら
同一存在ではないが親しく感じているのだろうか。
やや幼い言動を思えば、特に捻った意味などなく
花を友だちと考えている可能性もある。
「あーしは……どーだろ。あんまじっくり花見た
機会、無かったかも。生まれたトコは木も花も
たくさんあったけぉ、お陰で特別感なくて……
島に移住してからも意識してなかった、かも」
距離を詰めてくる相手に隠しきれない動揺。
明確に伝わるのは、うっかり花に触れて手折って
しまわないかという気遣い。それを理由に距離を
取ってしまうと、嫌がっていると誤解されないか
という不安。
優しさと裏返しの臆病さが距離を計りかねている。