2022/08/10 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 異能・魔道具エリア(7・8F)」に蘇芳那由他さんが現れました。
蘇芳那由他 > 『君はどうにも危なっかしい。護身用の魔道具の一つくらい持っておいた方がいいかもしれないね。』

『蘇芳さ~…お前って何というか『危機感』が足りなくね?どうにもフラフラしてて見ててハラハラする時があんだよ。』

『あの、蘇芳君?流石に、散歩気分で『あっちの街』に行くのは先生どうかと思うのよ。』


クラスメートや担任教師などから言われた言葉を茫洋とした表情の儘でフと思い返す。
自覚が無い…と、いうよりピンと来ない。僕はそんなに無用心なのかな?
記憶喪失。身元不明、家族不明、出身地不明、異能及び魔術――『喪失』済み。
そんな、自分自身が『誰』かも分からぬ不安定な境遇でも、少年は大して重くは見ていない。

「…記憶が無くてもこうやって生きて行ける訳だし…けど…。」

やって来た扶桑百貨店の7・8階に跨る【異能・魔道具エリア】を物珍しそうに見渡しながら呟く。

「……護身用、とはいっても…僕にどういうのが『合う』かも分からないし…。」

異能も魔術も完全に無くしてしまった(らしい)自分には、この手のエリアはさっぱり意味不明だ。
そもそも、学生の小遣いで護身用に十分なレベルの物が買えるのだろうか?と。
よいしょ、と背中に背負った刀袋を背負い直して一先ずはエリアを物色してみる事にする。

蘇芳那由他 > 「…う~~~~~~ん…?」

異能で作成された物、異能の行使をサポートする物、魔術を使う際に用いる物。
どれもこれも見覚えも無ければ(そもそも僕に過去の記憶はさっぱり無い訳だが)、使い方も分からない。

「…えーと…僕は異能も魔術も使えないから…結構候補は絞られてくるのかなぁ。」

知力:凡人です。体力:凡人です。異能・魔術:失ったらしいです。
…うん、僕はきっととても『弱い』んだと思う。矢鱈ボロ…古めかしい刀は持ってるけど。

「…そもそも、剣術なんてサッパリだし…まぁ、喧嘩とかに巻き込まれたら逃げ隠れするしかないし。」

危なっかしかろうが無自覚だろうが、自分がとても『弱い』事だけは分かっている。
…分かってはいるんだけど、人間誰だって『死ぬ時は死ぬ』ものだろう。それが自然の摂理では?

あの、よく分からない【槍】に選ばれたのは、きっとそういう死生観…なんだろうか?
正直、アレから『声』も聞こえないのでさっぱり分からん。
気が付いたら、結構歩き回っていたようだが…目ぼしい物は見付からない。

「…店員さんとかに聞いてみた方がいいのかな…うーん…。」

蘇芳那由他 > 少年に足りないのは、記憶でも強さでもましてや死生観でもなく。
ただ、もっとシンプルに――『危機感』が致命的に足りない事だとは気付いていない。
恐怖心が無いから物怖じしない、脅威を感じないから致命的にマズいモノにも平然と対峙する。
自分が弱い事は理解していても、弱者だからこそ大事な大事な【命の危険信号】が壊れている。
――…或いは、元から綺麗さっぱり無いのか。

「…やっぱり止めとこ…多分、説明を聞いても理解出来ないだろうし。」

店員さんが丁度視界に入ったので、声を掛けようかと一歩を踏み出し掛けて思い留まる。
社会復帰も兼ねて学園に通ってはいるが、異能や魔術の授業は正直赤点ギリギリだ。
実技なんて持っての他、軽い戦闘訓練でも何とか付いていけるかどうか、という。

そんな調子だから、きっと懇切丁寧に説明されても自分は理解が足りないだろうと早々に諦める。
見切りが早かろうが、意欲に欠けようが…僕はこういう人間だろうからしょうがない。
…なんて、免罪符?にもならないけれど。屁理屈を捏ねるとすれば、異能や魔術はなくてもまぁ生きて行ける、的な。

「…でも、少しは異能や魔術が理解出来たら、こういうのを眺めていて楽しめたりするもんなのかな…。」

そもそも、お値段的にこれは良心価格なんだろうか?相場とかさっぱり分からないのだけれど。
一応、後見人は居ない事もないが、あくまでそれは仮初めの親代わりだ。あまりそちらに頼ったり迷惑は掛けられない。

蘇芳那由他 > 「…まぁ、折角来たんだし…もう少しだけ見て行こうかな…。」

一応、護身用の魔道具なり何なりを一つくらいは、という訳で足を運んだのだし。
ただ、財布の中身は心許ない事に加えて自分でも使い方が何となく分かりそうな物、となると。

「…使い方…操作手順がシンプルで効果も分かり易いのだと助かるんだけどなぁ。」

一応、簡易説明書きみたいな物はあるようなので、それに時々目を通しながら品物を眺めていく。
小一時間くらいは、熱心…には見えない表情で色々と見たり手に取ってみたり。
だが、どれもピンと来ないのか首を緩く傾げて棚へと戻してしまう始末。

「…僕にとっては護身用アイテムでも難易度が高い気がするかな、これは…。」

もうちょっと、異能や魔術の勉強はしておいた方がいいのかもしれない。
…記憶を失う前の僕は、一体どんな異能や魔術を扱っていたのやら。
まぁ、失ったモノはしょうがないし、記憶が無いせいか未練や郷愁も全く無い。

「…んー…今回は外れかな…?」

品揃えが悪い、という意味ではなく。そもそも、素人の僕がどうこう批評なんておこがましいもの。
単純に、自分でも理解できそうな魔道具などが見当たらなかった、というだけの話だ。
多分、新規入荷やら何やら入れ替えもあるだろうし、またいずれ来てみるのもいいかもしれない。
それはそれとして、もうちょっと何か良い物が無いか物色は続けてみるのだけれど。