2020/06/14 のログ
神代理央 > 「…ふむ、成程。言葉が悪かった事は謝罪しましょう。職業柄というべきか、どうにも物騒な単語が口から零れてしまいがちでして」

処理、という単語には彼も思う所があったのだろう。
違反部活や二級生徒なら兎も角、風紀委員の保護対象たる彼等に不快な思いをさせるのは本意ではない。
此方を真直ぐに見据える彼の瞳を見返すと、素直に己の非を詫びるのだろう。

「魔法による小型化、ですか。いやはや、此の学園では驚く事に慣れ過ぎて、島を出た時には非常識な人間になっているやも知れませんね」

彼の説明にふむふむ、と首肯していたが、次いで投げかけられた言葉には一瞬きょとんとした様な表情を浮かべた後――

「……ああ、御心配なく。其処迄長く出歩くつもりも無いですし、風紀委員の制服と腕章を身に着けている以上は、多少の巡回も兼ねて帰路につくつもりですから」

初対面の相手に子ども扱いされるのは中々新鮮な気分だな、と委員会で若干擦れてしまった己は場違いな感心を抱きながら彼に向けて肩を竦めてみせるだろう。

羽月 柊 > 「いいや、仕方のないことだ。
 彼らも龍とはいえ、人間と相いれないことも多い。」

…子供達が自らの手でこの島を平定する。
委員と呼ばれる彼らのことは聞き及んではいるし、ある程度の行動も分かっている。
それでも、余りにもこの島は子供達にかかる負担が大きいのでは、とも思うが。

「賑やかな方面へ向けて一緒に歩くかとも思ったが、
 巡回する予定ならば手出しは不要か。」

まあ見知らぬ大人についていくのもそれはそれで危ないか、
と返事を待つでもなく言葉が宙に浮いた。


「…今の世の中は、非常識などと言うのはそうあり得ない。
 ほぼほぼ、なんでもありの世の中になってしまった。

 あるとするならば、自分と他人の認識の差だ。
 
 ただ話し合いが成立するならば、常識の擦り合わせも出来るだろう。」

何せ、こうして話してはいるが、
男にとって目の前の少年の性別も特に判別はしていないのだ。
その真意が分かればヘソを曲げてしまいそうだが。

神代理央 > 此方の謝罪を受け入れた彼に小さく頭を下げて応える。
次いで投げかけられた言葉には、小さく笑みを浮かべて――

「巡回ついでに学生街までお送りするくらいであれば可能ですよ。どのみち、此の区画ではもう問題は起こらないでしょうし」

彼の気遣いを受け取りつつ、周囲を軽く身渡して見せる。
すっかり人気の無くなった此のエリアでは、最早暴漢の類どことか出歩く生徒の姿がそもそも見当たらない程。
とはいえ、此方の提案も緩やかなもの。彼が望めば、という程度の口調であるだろう。

「話し合いが成立するなら良いのですけどね。
中には、対話すら不可能な連中も多々存在します。…まあ、それは大変容が起こる前から、変わらない事なのかも知れませんが」

空に龍が飛び交い、大地を一角獣が疾走し、海中に魔物が潜もうと。
何時だって人は争い、いがみ合ってきた。そんな有様を皮肉る様に、今度は大袈裟に肩を竦めてみせる。
尤も、現在進行形で認識の差が。即ち、彼が己の性別を未だ判別していないとは露程も思ってはいなかったのだが――

羽月 柊 > 「…なら、そうさせてもらうとしようか。
 体格を見て、息子と同じぐらいの子に見えてどうもな。
 送り狼をするつもりは無いが…。

 ああそうだ、身元を言っておこう。
 俺は羽月 柊(はづき しゅう)、研究区住みだ。
 これで粗方疑う余地は無いとは思う。」

しかし腐っても大人である。性別のことに関して明言はしなかった。

分からないのなら黙っているのが華である。
沈黙は金とは良く言ったモノ。


「人間の心は近くて遠い。それは確かに今も昔も変わらない。
 まぁ…それでも希望は捨てたくはないモノだがな。」

そういって学生街の方面へ向けて、歩き出す。
どこか諦めているような節のある少年とは、少し対照的な言葉を使う男であった。

神代理央 > 「御希望とあれば喜んで。市民の安全を守るのも私達の仕事ですから。
…ああ、此方こそ名乗りが遅れました。風紀委員会所属の二年生、神代理央と申します。以後お見知りおきを。
………ところで、送り狼とはいったいどういう意味でしょう?」

彼の言葉に小さな笑みと共に頷き、同行を願い出る。
名乗り出た際の音声を所持している小型端末で拾い上げ、データベースで確認。警告音が鳴らないという事は、取り合えず何の問題も無いということ。
流石に細かなプロフィールなどは端末を開かなければ確認出来ないが、流石に本人の前でする様な無粋な真似はしない。
尤も、送り狼という互いの性別に似付かわしくない単語には、簿妙に首を傾げる事になるのだが。

「希望を捨てぬ事、抱き続ける事は立派な事ですし、そうあるべきだと思います。しかし、そういった知性を持つが故の争いを全て否定する事は、どうかとも思いますけどね」

知性と感情があるからこそ、いがみ合い争い合う。
その争いもまた尊いものなのだろうと、のんびりとした口調で答えるだろう。

そんな会話を続けながら、彼を先導する様に学生街へ。
人気の無くなった古書の街には、研究者と風紀委員の語らう音が暫しの間響いていたのだろう。

羽月 柊 > 「子供に市民の安全をと言われると、どうにも調子が狂うがな。
 …ああ、分からないなら気にすることでもない。」

こんな夜遅くまで古書店にいるぐらいだ。
自衛の術は持っているのだろうと分かるかもしれない。
データベースに引っかからない程度では、あるだろうが。

そして探りの為に入れた言葉の一つに対して相手の反応を見れば、
これは少年かと漸く腑に落ちたようである。判断が遅い。


「……そう、だな。
 子供のうちは……それで良いのかもしれないな。」

そうして彼らは歩き出す。
僅かに伏せられた目線を誤魔化し、そう呟いて。

学生街へたどり着けば、男は別れを告げ、言葉通り研究区の方へと消えていくだろう。

ご案内:「古書店街「瀛洲」」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から羽月 柊さんが去りました。