2021/03/02 のログ
雨見風菜 > 「実験台だなんてそんな。
 治療能力があるのは間違いないです」

実際、『触手』での攻撃は即座に治療するからダメージがないと聞いて、
実際に虫を叩いてもダメージがなかったのは確認している。
その上で平然ともしていなかったから、痛いのも事実だろう。

「では、いきますね」

虚空に右手をやったかと思えば、空間に穴を開けて触手が引っ張り出される。
その触手が理央の左腕に巻き付き……強烈な激痛と、何かが癒着したり潜り込んだりする感覚を味わうだろう。
そうして少しした後には、少しばかり体積の減った触手が、十全に動き骨折の痛みもなくなった理央の左腕から離れる。

「これで大丈夫なはずですけど、どうですか?」

神代理央 >  
「…だと良いんだが。まあ、程々に――」

流石に、知人であり正規の学生である彼女を深く疑う事も無い。
上手くいけば儲けものか、と気楽に構えていたのだが――

「……っ、ぐ…!?これ、は――」

触手、という見た目に首を傾げかけた後。
一瞬、激痛に表情を歪ませる。
しかして、其処は最前線を張る風紀委員としての矜持もある。
歪んだ表情はしかめっ面に似たものへと変わり――触手が離れれば、深い溜息と共に軽く腕を振る。

「……痛みもさることながら、身体の中に直接入り込む様な感覚は人を選ぶかもしれんな。とはいえ…」

しゅるり、と包帯を外してもう一度腕を振る。
異形に指示を出す時の様に、軽く指を鳴らしてみたり。

「……うん。治ってるな。違和感も無い。思っていたより随分即効性もある。
見栄えと痛みと感触はまあ兎も角として、回復系統の異能としては中々優秀なんじゃないかな」

解いた包帯を制服のポケットに捻じ込み、地面に置いた紙袋を左腕で取り上げる。痛みは全く無い。

「…助かったよ、有難う。これで、勉強にも委員会活動にも専念出来る」

と、穏やかな笑みと共に彼女に礼を告げるのだろうか。

雨見風菜 > 「体の中に入り込む感覚もあるんですか……なるほど、確かに相手を選びますね。
 やっぱりなかなか使いどころが難しいですねえ……」

返す言葉もないと言わんばかりに。
まあ、風菜自身もあまり他人に激痛を味あわせたくないのはある。
自分はいいけど他人はそうとは限らないわけだし。

「さて、それはさておきお役に立ててよかったです」

気を取り直して理央の腕の完治を喜び、感謝の言葉を受け取る。
少々強引だったかも知れないが、相手が喜んでくれるのは嬉しいものだ。
やはり、医療の道を歩んでも良いかも知れない。

神代理央 >  
「意識の無い重傷者や、どうしても火急の治療を必要とする者には有効やも知れぬな。逆に、軽度の負傷や治療を急がぬ者には無理に使用する必要も無いだろう。
救急医療用の異能、と見るべきやも知れぬな」

と、所見を述べつつ。

「ん。私も思っていたより早く腕が治って良かったよ。
使いどころは難しいかも知れないが、有用な異能だ。
これからも、多くの人の為に役立てて欲しいものだな」

何にせよ、医療系の異能というのは善にも悪にも容易に転用可能だ。
正しい事に使ってほしい、と。穏やかな声色で彼女に告げるのだろう。

雨見風菜 > 「確かにそうですね。
 まあ、使う必要自体がなければ良いんですけども……」

使う必要が出る、ということは。
誰かがひどい怪我を負うということである。
風菜としては、そんな事態はないほうが良い。

「ええ、困ってる人の役に立てたいですね」

風菜も、根は善人である。
正しいことに使いたい、と思うのは同じだ。
……『糸』を移動用に使っているのは置いといて。

「困ってる人の役に立ちたい、といえば。
 他にも何か、協力できそうなことってありますか?
 例えば、美術教科……作品のモデルならお手伝いはできますよ」

さらりと、理央の事情を知らずに例として上げる。

神代理央 >  
「そうだな。使う機会が無いに越したことはない。しかし、必ず使う機会が訪れる異能でもある。
実際に受けてみて特に問題は無さそうではあったが、色々と訓練やテストを行い、能力そのものに慣れておくのも良いだろう」

どんなに平和でも、怪我人というのは必ず出る者。
であれば、その異能を最大限に活用する為に努力する事は悪くないだろう?と、笑ってみせるのだろう。
当面は、痛くしないで貰えると助かるのだが。

「ふむ?作品のモデル……?
私の履修している講義の中には、そう言った項目で試験に挑む者もいる。モデルに立候補すれば、さぞ喜ぶだろう」

面倒な事を思い出した、と言わんばかりの溜息と共に。
因みに、少年はというと。

「まあ、私は人物画は苦手の部類だから詳しくないが…。
絵を描くという事は苦痛では無いのだがな。
細々した事を行うのは、向いていないのかもしれないな」

と、肩を竦めてみせる。
絵心がある訳でも無いし、何とか描けても風景画くらいだ。
それでも、彼女の申し出には感謝の意を示しつつ、同輩の話題を出したその時、懐にしまいこんだ通信機が、渇いた電子音を立てる。

電話ではなく、メールの受信音。
失礼、と一声かけてから懐から取り出した携帯をチェックして――

「…やれやれ。試験勉強をする暇もない。
すまないが、仕事が入った故、これで失礼する。
怪我の件は、本当に助かった。有難う。
……一応言っておくが、怪我人を治す為に危険な場所とか、行ったりするんじゃないぞ?」

小さな溜息と共に携帯をしまい込み。
改めて彼女に礼を告げると其の侭背を向けて。
革靴の足音を響かせて、古書の香りが漂う街を、後にするのだろう。

雨見風菜 > 「確かに、そうですね。
 ……能力に慣れるには、怪我してる人が必要なのが心が痛むところですね」

風菜は理央の心中を読むことはできない。
理央は風菜の異能をすべて知ってるわけではない。
即効性はないが痛くない治療能力として、風菜が普段使っている『糸』があるのだが……

「あら、そうでしたか。
 いえ、モデルは何度かやっているんですよね」

なお、大抵はヌードモデルである。
ヌードモデルと指定されなくても、ヌードを提案したりする。

と、そこで理央に仕事が入ったと聞いて。

「ええ、お仕事がんばってください。
 流石に、そんなことはしませんよ」

蘇生できるとはいえ、そんな危険地帯にホイホイ入っていくほど馬鹿ではない。
とはいえ、忠告は受け取って理央を見送る。

姿が見えなくなってから、先日のストーカーめいた少女の件を思い出す。
だが去ってしまった以上は後の祭り、としまい込むのであった、

ご案内:「古書店街「瀛洲」」から雨見風菜さんが去りました。
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