2021/06/30 のログ
神代理央 >  
少女から零れた言葉は、反論でも開き直りでもない。
ただ、真摯に謝罪する言葉。普段軽口を投げ合っているからこそ、少女が本当に反省している事は良く分かる。
同時に、落ち込んでいる――というか、気力を損なう程に思いつめているのも、分かる。
それだけの付き合いが、自分と少女の間にはあるのだから。

「………ん。分かってくれれば、それでいい。
私も少し言い過ぎた。悪かったな」

肩を叩いても、少女が此方に目を合わせる事は無い。
少しばかり言葉が厳しかっただろうか。少女なりに反省と自責の念を抱いているのだろうか。
くしゃり、と自分の髪を乱す様にこめかみに手を当てながら項垂れる少女を見つめた後。
突然少女の軍帽をひょい、と取り上げる。
そして、少女が反応する前に、その触り心地の良い白髪を、わしゃわしゃとちょっとだけ乱暴に撫でるだろうか。

「………ほら、お説教は終わりだ。お前がそこまで反省してくれるなら、私も此れ以上言う事は無い。
それに、素直に謝ってくれたのは嬉しく思う。だからもう、そこまで凹むな。もう気にしてないから」

少女の髪をわしゃわしゃと乱しながら、穏やかに笑みを浮かべて言葉を投げかけるだろうか。

ラヴェータ > 軍帽を取り上げられてすぐにそれに気づき少年の方に視線を向けた少女が目にしたのは先ほどまでの小言マシンガンとは異なる穏やかな笑みを浮かべた少年で。
頭上にある人肌の温かみとなかなか慣れなければ慣れる気もしない髪を乱される安心感と心地よさに少し驚いたために目を見開いて見せる。
少女の無防備さと素がさらけ出されたまま数秒おいて照れ隠しか、頬をほんの僅かに赤く染めながらムッとした表情を見せて

「...ふん、誰がへこんでいるというのだ、私がへこむわけないだろう」

いつもほどの勢いと軽薄さはなけれど、言葉だけは本調子のようで。
撫でられている手を退けるようなことはせずに、ふん、とそっぽを向いて見せ。
撫でられていることには文句はないようで。

神代理央 >  
「その意気だ…というと、此方も叱った手前もある。
きちんと反省したのなら、過剰に反応する事もないし…いや、違うか…」

此方は少女の行動を怒り、少女はきちんと反省の意を示した。
であれば、反省と謝罪についてはしっかりと評価すべきだろう。
起こった事は起こった事。それを反省出来るか出来ないか。
そして少女は、ちゃんと謝ってみせたのだ。
小難しい言葉でそれをあやふやにしてはいけないだろう。

……と、思考を走らせてしまうくらいには、何だかんだ此方もちょっと慌てていたのかもしれない。
何せ、振り払われるかと思った手はそのまま少女の髪を乱し続けている。そこに、文句を言ったり不満がある様子は無い。
怒り過ぎたかな、くらいには、少年も焦っていたのだ。

「……ええと、うん。きちんと謝れて偉かったな。
良い子にはチュールを買ってやろう。何味でもいいぞ。
ただし、1本だけだからな。食べ過ぎるのも良くないから」

乱雑な手付きを、少女の髪をきちんと整えるものへと。
手櫛で梳かす様に少女の髪を撫でながら、幼子に向ける様にそんな言葉を投げかけた。
普段の自分なら、少女にそんな言葉は投げかけないだろう。
しかしまあ、少しだけ素直になってくれた少女になら。
これくらい譲ってあげても良いかな、なんて思ってしまった。

ラヴェータ > 「ふん、考えておこう」

意気揚々と腕を組む少女。
チュールには勝てないのである。
恥も外聞も気にさせないチュールパワーには少年も頭を抱えたことがあるはずである。
それはともかく、それなりに少年の説教は少女に効いている訳で。
先ほどの発言(チュールではない)はそれを少年は気にしていると察したうえでの態度なわけでもあり。
とはいえ叱られた側である手前気にするななどと言えたものではない訳だ。
とはいえ、思い悩むまでもなく不要であるとなんとなく、少年なら何も言わずとも重過ぎるとらえ方はしないだろうと。
これは何というのだろうか?
付き合いの長さが生んだ信頼関係なのだろうか?

少年の撫で方が丁寧なものに変わったとはいえ、その心地良さは変わらず。
態度が軟化したことも合わせ手櫛に合わせてわずかに頭を揺らしつつ心地よさそうに目を細める少女は傍目には撫でられる人懐っこい小動物、基ペットのようであろうか。

神代理央 >  
「…現金なものだ。だが、それくらいがお前らしくて丁度良い。
まあ、私も偶には監査役らしい事を言わねばならんからな。
怒られる事が身に染みたのなら、以後気を付ける様に」

行くな、とか。禁止、とかは言わない。
少女の行動を縛ろうと思っている訳では無いのだ。
だから『気を付けろ』…まあ、要するに。心配させるな、と。
最後にもう一度繰り返して、少女の髪から手を離す。

「さて。それじゃあ、チュールを買いに行こうか。
此処からなら扶桑も近い。あそこなら、色んな味の物が売っているだろうからな」

最後にぽふ、と取り去っていた軍帽を少女に被せて。
むんず、と少女の手を掴むと、すたすたと歩きだしてしまうだろう。
監査役と監査対象。兄と妹。主人とペット。
他者から見たイメージがころころと移り変わった後、何時もの様に軽口を投げ合う関係へ。

とはいえ、少女が何を言おうと百貨店に着く迄は手を離す事は無かったのかもしれない。
それは通行人たちから見れば、歳の近い兄妹の様な。
そんな二人を微笑ましくみる者は、きっと少なくはなかっただろう。
二人の正体を知るゴロツキ紛いの者達は、明日隕石でも振るんじゃないかと真面目に世界の終末を予感していたりしたのだが。

ラヴェータ > 「ああ、貴様に負担ばかりかけてもいられんしな
気を付けるさ」

少年の心配は身に染みるたし染みている。
この再確認が今後の行動にどうかかわってくるのやら。

「む?そうか、ならさっさと決めてしまわねばな...一本ともなると悩ましいな...ふむむ...」

今からチュールを買いに行こうとなれば、少女の頭の中はチュールでいっぱいで。
何味かしか選べないという事実に唸っており。
背丈以外何もかも異なる異色の兄妹。
チュールを買いに行く途中、当然のように少年の方から握られた手を少女は無言で握り返した。
少年の反応からはあえて目をそらし...どことない安心感に短く笑って見せただろう。

...久々のチュールに醜態を晒す少女とそれを少年がどう思ったかは各自の想像に任せる。
大体間違っていないはずである。

ご案内:「古書店街「瀛洲」」からラヴェータさんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から神代理央さんが去りました。