2021/11/01 のログ
ご案内:「古書店街「瀛洲」」にシャンティさんが現れました。
■シャンティ > そこには、紙の匂いが漂っていた。今や古び、滅びゆく運命を背負っているやもしれないそれらはしかし。この瞬間だけは、たしかに此処で息づいている。女は、その匂いが好きだった。そして、それこそが彼女が生身で感じることを許される娯楽の一つでもあった。
「は、ぁ……」
小さく息をつき……そして、小さく息を吸う。存分に匂いを堪能する。もちろん、匂いの主の中身にも興味は尽きないが――今、この時ばかりは空気を浴びることを優先した。
「……やっぱ、り……いい、わ、ぁ……ふふ」
くすり、と少女のような笑みを女は浮かべる。
「……最近……好み、の……物語、が……ない、か、ら……これ、くらい……娯楽、が……ない、と……ね、ぇ」
■シャンティ > 女は、読者である。批評家ではない。まして、作家でも演出家でもない。ならば、物語の筋に口出しをすることは憚られよう。けれど――
「……感想、くら、ぃ、は……いって、も……いい、わ、よ……ね、ぇ……」
女の口から小さな吐息……否、ため息が漏れ出る。哀しみ、憂い……そういった湿度を持つ、吐息。手を伸ばし、一つの本に触れる。それは、作家が人生をかけて紡ぎ続けている長編の一冊。
「……長く、続け、ば……続く、だ、け……緩急、も……整合、性、も……くず、れ、たり……乱れ、たり……つま、らなく……なり、がち……よ、ねぇ……」
再度のため息
「いい、加減……切り、時……なの、か、しらぁ? それ、も……さび、しい……わ、ねぇ……」
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
一口に『本』と言ってもその内容は千差万別。
後世に伝えるために知識を詰め込んだ学術書。
人の心を動かすべく思想や体験を綴った随筆。
そして──空想上の世界で織り為される物語。
古書店街を訪れた少女は、物語にとんと縁がない。
手の届く範囲の現実を取り溢さないだけで精一杯。
空想を楽しむ余裕を持つ余裕がなかった。
とはいえ、人と人の関わりによって紡がれる
『リアル』という物語に心動かされないほど
枯れ切ってはいないので。
「あ」
たまたま見覚えのある姿を古本屋で見かけたら、
思わず振り返ったりもするのだった。
■シャンティ > 『それは女の記憶にある少女。目深に被った耳付きパーカーのフードの下からインナーカラーの髪が覗く。彼女は女に気づき、振り返って小さな声を上げる』
「……あ、ら?」
女は記憶を探る。あまり会ったわけではないが、印象深い少女であった。
「……ふふ、こん、な……とこ、ろ、で……会う、なん、て……ふふ。うれ、しい、わぁ……元気、だった……かし、らぁ……? 気に、なって、は……いた、の、よぉ……?」
くすり、と少女に笑いかける。腐り始めてしまった物語よりは、希望が持てそうな相手の出現に女の気持ちは少しだけ高ぶる
■黛 薫 >
「お久しぶりっす。半年くらい……いぁ、も少し
前かな?に、会ったきりなのに覚えてくれてて
ありがたぃ限りっすね。
あん時は親切にしてもらったのに逃げるみたぃに
いなくなっちまったし、名前も聞ぃてなかったし。
改めて、チョコとか紅茶とかありがとでした」
ぺこりと丁寧に頭を下げる。
明らかに錯乱していた異常な前回と比べるのも
おかしいかもしれないが、今日は前回の邂逅と
違って精神状態も安定しているようだ。
前回が悪かっただけか、今回が良く見えるだけか。
或いは何かしらの問題が解決に向かいつつあるのか。
錯乱さえなければ案外話は通じるらしかった。
■シャンティ > 『言葉は明瞭、声も平静を保つ。少女は「――」頭を下げた』
小さく小さく女は謳い、改めて向き直る。
「ん……ふふ。面白、い……子、は……す、ぐ……思い、出せ、る、わぁ……あぁ……誤解、しない、で、ね? 馬鹿に、して、いる、わけ、じゃ……ない、の、よ? 」
女は応えながら、少し考える。そういえば、だいぶ過剰な反応をしていたり……それから、薬物を使っているような。そんな反応も会った覚えがある。それを思い出せば、随分と様子が違う。
「ふふ、逃げ、る……なん、て……それ、も……仕方、ない、わ、よぉ……はじめ、まして――なん、だ、もの……そう、簡単、に……打ち解け、られ、ない……わ、よ、ねぇ……?」
嫌われる、憎まれる、疎まれる……負の感情を当てられる事自体はそれほど苦にはならない。むしろ、なにかしらの感情を抱いてもらったほうが物語は転がるものだ、と女は考える。
「……それ、に……して、もぉ……前、と……すこ、ぉし……雰囲気……かわった、かし、らぁ……?」
顔を向ける、が。あいかわらず、そこに視線が感じられない。
■黛 薫 >
「あー、いぁ。悪意が無ぃ……か、どうかまでは
分かんねーですけぉ。印象だけで語るんなら
あーたが無意味に人を馬鹿にするとは思って
ねーです。つっても、何だろ……楽しめる?
ならちょっとくらい弄ったりしそーな雰囲気
無くもねーですが……」
飄々と風紀委員の敵意を流していた姿を思い出す。
別の人が相手ならもう少し確信を持って語れたかも
しれないが『視線』のない彼女の感情は読めない。
お陰でいつも以上に語り口は慎重だ。
「まぁ……初対面だと、どーしても警戒するってか
怖ぃ?みてーな気持ちはあるんすよね、あーしも。
んでもあーたは話してて安心出来る方っす」
僅かな逡巡が挟まる。簡単に打ち解けられない理由、
印象が変わった理由。両方に紐付く事情はあるが、
言及するには相手の『目』が関わってくる。
「んー、えっと。前回が特別タイミング悪かった?
みたぃなのもありますけぉ、こないだはもう1人
いましたからね。あーし、厄介な異能持ってて。
『見られる』と触られたみたぃに感じるんすよ。
だから風紀とか異性の目ってどーしても……って
事情もあります、はぃ」
異能を明かし、暗に『視線を感じない』貴女が
相手だと安心出来ると仄めかす。盲目について
言及されるのを嫌う人もいるかもしれないから
直接の言及を避けている。
■シャンティ > 『少女はやや逡巡しつつも、素直に思うところを述べる。「――」』
逡巡しつつも紡がれるそれは、少女の特性に踏み込んだ内容。どちらかといえばデメリットしかない告白は、女の興味を引く。厄介な能力を持てば持つだけ、人の人生は苦悩と苦痛に満ちる。それは物語としてはスパイスになりうるのだから……
「ん……ふふ。面白、い……評価、ね、ぇ……ふふ。本人、の……前、で……いっちゃ、う……あた、り……かわ、いい、わぁ……?」
実際、少女が口にする評価はあながち外れではない。であればこそ、それを言ってしまえばどういう可能性が生まれるか……それなりに聡明であろう目の前の少女がわからないはずもない。そうであってもあえて話に添えた、というその事実に女は笑う。好感が持てる、と判断する。
「……それ、私、に……いっち、ゃって……いい、のぉ……? 大事、な……秘密、じゃ……ない、の……かし、らぁ……? ふふ。それ、と。気に、して……くれ、た? 」
くすくすと女は笑う。弱みを晒した上で、相手には気を使う。なるほど、悪ぶるような雰囲気も有るが基本は人のいい娘なのだろうか、と女は思う。
「そん、な……力、が……ある、な、ら……バレ、ちゃって、る……わ、よね、ぇ……ふふ。いい、わぁ……じゃあ、正直、に……色々、いって、くれた、お、れ、い。私、は……ええ。"見えてない"、のは……確か、よぉ……?」
好感をもったからこそ、開示しても問題ないことはあえて口にして伝える。新愛の証、とでも言おうか