2021/11/02 のログ
■黛 薫 >
「風紀に目ぇ付けられるくらいヤンチャしてんなら
変に気ぃ使ぅ方がキモチ悪ぃかもしれねーですし。
同類扱ぃもそれはそれでシツレイかもですけぉ。
あーしも不良学生ですんで?口は悪ぃっすよ」
馬鹿にしている訳ではないが、取られ方次第では
気分を害する可能性のある言葉への意趣返し……
とも受け取れる。相手の踏み込みに合わせながら
軽口で済む範囲を探る意図もあるだろう。
「秘密ってほど大層なモンでもねーですよ。
バレる相手にはバレるし、それこそ前回会った
風紀委員みたぃな人なら最初から知ってたりも
しますし?あーたには話しても構わねーってか
話さなぃのも不誠実かなって思っただけっす。
……やっぱ、見えてなかったんすね、その目。
そっちの方こそ話してヤなキモチになったり、
なんて言ってもお互い様っすかねぇ」
軽々に話してみせるが、やはり本人としては
積極的に明かしたい事情でも無かったと見える。
たまたま通りすがっただけの客の視線を嫌がって
さりげなく首の裏を手で隠すような反応を見せた。
異能を知らなければ見逃されるような仕草だ。
貴女の盲目を一方的に知ってしまった負い目から
黙っておけなかったのかもしれない。
■シャンティ > 「ふふ……あの、子……あの、風紀、の……子、が……すこ、ぉし……かわって、る……だけ、よぉ? ちょぉ……っと、妙な、子……だった、で、しょう?」
女は、自分の奇妙さを完全に彼方に置いて言い放つ。ただ、思いだけは嘘偽りなく。女としては、かの風紀委員は変わり種として記憶している。
「同類、扱い?失礼……? ふふ。それって、ぇ……私、が……とぉって、も……わ、るぅい、子……って、こと、か、しらぁ……?」
少女の物言いにくすくすと笑いながら応える。面白そうに、そして何処かからかうような笑い、に聞こえるかもしれない。少なくとも、其処に怒気は感じられなかった。
「ん……勘、違い、させ……ちゃった、か、しらぁ…… 別、に……隠、して……た、わけ、じゃ……ない、のだ、けどぉ……ただ、そう、ねぇ……貴女、も……か、もしれ、ない、けど……」
人差し指を唇に当てて、考えるような素振りをする。憶測だけの物言いなので的外れのこともあろう。外れたときに、どう考えられるのか。少しだけ思案するが。
「あえ、て……いう、必要、は……ない、で、しょ、う? 言わ、ない……こと、で……の、デメ、リット、より、もぉ……メリット、のほうが、大きい、こと、も……多い、し?」
情報は隠してこそ、意味があるときもある。特に欠点や弱点に当たるものは、だ。もちろん、盲目、程度の情報は目の前の少女と同じく調べればすぐわかることでも有る。
「……ふふ。それ、に、して、もぉ……律儀、ねぇ……貴女…… ふふ。好き、よぉ……そう、いう、の…… 」
裏を返せば、悪事には向いていない、ともいえるが。そう考えれば、それほど少女は擦れていない、という可能性も考えられる。――そんなことを思いながら。自らの考察癖に、心のなかでやや呆れて笑う。
「それ、に……して、もぉ……前、より、は……元気、そう、ねぇ…… 前、みた、い、にぃ……困って、る……こと、とか、は……ない、の?」
首を小さくかしげる
■黛 薫 >
「風紀って割とあんな感じじゃねーですかね……。
あ、えっと。悪ぃとか変わってるとか思ってなぃ
っつーと嘘になるかもだけぉ。何か頭イィ人って
揶揄ぅのスキだったり得意だったりするよなとか
思っ、いぁこれフツーに悪口か?ごめんなさぃ」
嘘を吐きたくない誠実さと言い訳が衝突を起こし、
何とも中途半端になる。貴女の見立てはおおよそ
正しく、悪事に向かない性根が滲んでいた。
「……ま、言わなぃ方が得なコトもありますよね。
あーしの場合、見られてんのが分かるってのは
相手の考えを読むのにも繋がるワケですし?
そもそ読めなぃ相手になら話したって大した
デメリットになんねーって事情もあります」
「律儀、っつーかは分かんねーですけぉ。
前回色々貰った恩は感じてますんで」
人、それを律儀という。とはいえ借りがあると
強調し、これ以上世話になる訳にはいかないと
暗に牽制してもいるので、強かさも持ち合わせて
いるようだ。
「前より元気ってーか、元気だから古書店街まで
足を伸ばしてるとも言ぇますね?他所で会えば
また湿っぽいあーしが見られるかもな。
困ってるコトだけなら、まーいくらでも。
それこそ今しがた話した異能についてだって
そーです。古書店街の外に出たら視線なんて
山ほどぶつかってきますし?」
敢えて日常的な、しかし容易くは解決出来ない
話題を持ち出すのも手を煩わせないためか。
■シャンティ > 「ん……あの子、は……ちょっと、別。ビジネス、ライク……と、いう、のも……ちょっと、違う、わ、ねぇ……感情、が……ない、わけ、でも、ない……けど。でも、どこ、か……機械、的……ちぐは、ぐ……なの、よぉ……?」
そんな女の風紀評。それが正しいかは、本人だけが識るところではあろうが。
「ふふ……だ、か、ら、ぁ……そ、う、い、う、と、こ、ろぉ……ふふ、かわいい、わぁ……」
くすくすと、笑う。ただでさえ気怠い声の女が、さらに言葉を切ってしゃべるので妙なテンポになる。しかし、同時にとても愉快そうだった。
「貴女、は……おち、つか、ない……か、も……しれ、ない、けどぉ……遠慮、しな、くて……いい、わ、よぉ……? 一々、気に、しな、い、で……ね? 貴女、の、こと……気に、いった、しぃ」
変わらずクスクスと笑って、楽しそうに告げる。女にとっては、ある意味面白いおもちゃ。新しい観察対象であり、手放し難い保護対象、にも思えたのである。
「ふふ……そう、いう……恩、を……感じ、て、たり……する、あたり、ね? 私、は……好き、だけ、どぉ…… 悪、ぶる、なら……すこ、ぉし……考え、ても……いい、かも……しれな、い……わ、ねぇ……悪ぶ、るの、やめる、とか……?」
それは、簡単には曲げられないだろう、と女は思いながら。それでもあえて、どこかからかうように口にする。別に、本気で矯正しようと考えているわけでもない。
「そこ、は……そう、ねぇ……お互、い……さま、みたい、なところ、か、しらぁ……日常、か、ら……不自由、は……つき、まと、う……もの、ねぇ……」
小さくため息をつく
■黛 薫 >
「可愛くねーーですよ、ホントもぅ。そーいぅ反応
すっから悪ぃ子っぽく見られんじゃねーんですか。
別の意味で落ち着かねーってんですよぉ」
反射的にフードに手を伸ばし、赤く染まった頰を
隠そうとする。だが対面する女性が盲目であると
思い出し、行き場を無くした手が彷徨う。
「悪ぶってるとかじゃなくて、悪ぃんですー。
誰が聞ぃてっか分かんねーし、具体的な例は
挙げにくぃっすけぉ。風紀に名前覚えられる
くらぃの不良学生っすよ、あーしは」
前回の邂逅、風紀委員との会話を思い出したのか
顔を顰める。無感情でなく、しかし行動は機械的。
そう評された理由も理解出来なくはないが……。
「お互い様、なぁ。あーたも困ってんならお礼も
兼ねてエスコート、とか出来れば良かったけぉ。
あーたの場合、目ぇ見えなぃなりに自立の手段
あるっぽいもんな」
盲目で、かつ周囲の状況を知る手段が無いのなら
本屋を訪れるにせよ点字書籍を扱う店になるはず。
様々な本が雑多に置かれる古本屋は向いていない。
■シャンティ > 「ふふ。かわ、いい、もの、は……かわ、いーい、の、だか、ら……仕方、ない、わぁ……?」
彼女の本の力で、少女の一挙手一投足の全てが見えてはいる。けれど、赤く染まった頬や、所在無げな手の動きについてはあえて言及をしない。礼儀であったり、引くべき一線である、と女は思っていた。
「貴女、が……悪、か……そう、じゃな、い、か……は。ここで、検討、する……課題、で、も……ない、わ、ねぇ……た、だ……そう、ねぇ……そう。」
人差し指を再び唇に当てる。考えるときの癖になっているのであろう、そのポーズ。今度はやや首もかしげている
「"物語"と、して ……いう、なら。悪、も……正義、も……つき、つめ、れば……なに、かの……選択、に……落ち着く、わ。なにか……取り返し、の……つか、ない……時。何を、大事に……する、か――それ、は……意識、してお、く……と。"万が一"の、ときに……役に、立つ、か、も……よぉ?」
「貴女、を……とる、か……それ、とも……其れ、以外、の……なにか、か」
なんであろうと苦渋の決断を迫られることはよくある。その際、明確に何を取るか、決めておくのは大事なことだろう。万が一、などこなければいいのだが。女はそう思った。といって、こういう話は、素直に受け取るかはわからない。いや、むしろ先程の感じからして到底受け入れがたいことかもしれない。
「エス、コート……?ふふ。お願い、しちゃ、おっか、しら、ぁ……?」
くすくすと、再び笑い。冗談めかして腕を差し出してみせた。
■黛 薫 >
「……決断に迫られたとき、半端じゃ後悔する。
そーいう解釈でイィんすかね、耳が痛ぃ話だ」
物憂げなため息は思い当たる節があったからか。
不良を自称しながら言動の端々には良心が滲み、
今は聡明に振る舞っているが初めての邂逅では
不安定な精神をすり減らしていた。
どっちつかず、それとも両端に振り切れすぎて
千切れそうになっている?心の芯足り得る物が
あれば、何を大事にするか決まっていれば……
惑わずに済むのだろうか。
なのに『貴女=自分』を取るか。それ以外を取るか。
その問いにだけは……『自分を選ぶ自信がない』と
答えられてしまう。とても口には出せなかったが。
「あーたがそういう仕草すっと、画になんな?
ま、求められたなら応えてみせましょーや。
お名前をお伺いしても?Fräulein」
芝居がかった仕草で応え、恭しくその手を取る。
作法なんて知らないのでその仕草は拙いものだ。
らしくない自覚はあるので、微かに口元が緩む。
■シャンティ > 「わかって、る……わ。貴女、は……選べ、て……しま、う。いい、え……選べ、ない……だ、から……気を、つけ、て……? 私、そう、いう……結末、は……物語、と、して、は……すこ、ぉ、し……つま、らない……と、思う、か、ら」
それは半ば嘘であり、半ば本当の言葉。女の精神性は、悲劇じみた喜劇を。喜劇じみた悲劇を。それぞれに、"面白い"と受け入れる性質が有る。ただ、それでも――納得、いかないことも、ある。
「そう、なる……前、に……逃げ、る、か……助け、を……求め、る……か。それ、も……忘れ、ず……に?」
これ以上は、もう言うまい、と女は考える。必要なことは与えた。あとは本人次第、だ。
そして
「……ん。そう、いえば……あの、とき、は……あま、り、自己紹介って、感じ……じゃ、なかった、かし、らぁ……」
精一杯、芝居がけて手を取る少女にくすりと笑いながら。そういえば、名乗ってもいなかった、と女は思い返す。
「シャンティ、よ。シャンティ・シン。以後……おみ、しり……おき、を……? 王子……様?」
楽しそうに笑った
■黛 薫 >
「あぁ、その方があーしには受け入れやすぃかも?
つまんなぃとか、自分本位の方が分かりやすくて
いっそ好感が持てるわな。あーしのためだとか
言われたら、疑っちまうもん」
冗談めかした声音には自嘲の色が隠れている。
助けを呼ぶ権利、助けてもらう価値が自分にあるか。
黛薫はいつもそう考えては抱え込み、痛い目に遭う。
しかし心配をかけることに対する罪悪感はあるし、
"つまらない"と評されれば期待を裏切ることへの
恐怖が歩みを鈍らせる。触れた手から感じ取れる
緊張はその証左。極端なまでに失望を恐れるのは
他者の視線に敏感だからだろうか?
「シャンティ、ね。あーしは王子様なんて柄じゃ
ねーけぉ、お姫様はもっと似合わねーもんな。
その点あーたなら適役だ。
じゃ、慣れねーなりにエスコートさせて頂きます。
何なりとお申し付けくださいませ、ってな」
貴女の手を引き、望むままに連れ出していく。
更なる本との出会いを望むなら別の本屋へ。
安全に帰りたいならば帰路に寄り添おう。
拙いなりに歩幅を合わせ、盲目の貴女を気遣って
路傍の石を退け、段差があれば事前に警告する。
上手くエスコート出来ているかと緊張する指先。
誰かの視線を感じるたび、無意識に安心を求めて
握る仕草。繋いだ手は雄弁に黛薫の内面を物語る。
貴女が満足するまで、黛薫は付き添い続けた。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から黛 薫さんが去りました。
■シャンティ > その日 女は久々の満足を得た
ああ――まだまだ楽しいことが世にはある
それならば……
つまらないものは
もう……
ご案内:「古書店街「瀛洲」」からシャンティさんが去りました。